828
夜の街を車が行く。昼とは違う街並みに見える道路を進み、大きなホテルみたいな所に付いた。何故か制服に着替えさせたと思ったら……ドレスコードとかがあるみたい。どんな高級なお店なんだよ。てか何しにここに来たのか……ただの食事? 本当ならこのお金持ってそうなイケメンと来る気だったのか? 日鞠も日鞠だけど、こいつもこいつだな。
日鞠はまだ高校生なんだぞ。ロリコンか。そんな事を思いつつもただ後に付いて行くと、綺羅びやかな装飾で落ち着いた雰囲気のレストランの一角に歩いてく。そしてそこには何やら先客がいる。なんだが雰囲気良さそうな老夫婦な感じな人達だ。品が良さそうで、仲睦まじい。なんか金持ちっぽいな。なにやらイケメンがやけに丁寧に挨拶して、それに日鞠の奴も続く。なので僕も一応挨拶した。
誰かはしらないけどね。そして何故か始まる会食。コース料理が運ばれてくる。おいおいこれ美味いぞ。なにやら話してるけど、僕は次に何が運ばれてくるかに興味津々だ。
「なるほど、彼があの事件の……」
何か視線を感じる。僕は視線を上げると優しい瞳で見られてた。
「君はLROが好きかね?」
「……」
それは僕への質問なのか……確認するためにも日鞠へと視線を送る。すると頷かれた。どうやら僕に聞いてるらしい。
「好きですよ。楽しいですし」
「うんうん、そうだよね。あの世界は楽しい」
なにやらそれからはLROの話で盛り上がってた。どうやらこの老夫婦もLROをやってるらしい。向こうの世界で第二の人生を送ってる感じ? そして何やら会食の終わりにはイケメンが何かをお願いして、頭下げてた。うん、お腹いっぱいだ。なにやら得した気分。そして老夫婦は帰っていった。そして僕達も再び車に乗る。
「何だったんだ? ただ食事しただけだぞ」
「それで良いんだよ。さっきの人は出資者だから。接待みたいなもの。スオウの体験とか貴重だから、楽しんでくれるかなって思ってね」
「それだけ? 」
「うん」
こういう事を日鞠の奴はやってんの? 何故に日鞠が? こいつは今、どんなポジションに居るのか分からない。
「安心した?」
「は? なにが?」
隣に座ってる日鞠の奴がズイッ顔を近づけてくる。眼鏡の奥の瞳が真っ直ぐに僕を見つめてきた。
「なにかスオウ、心配してたみたいだったから」
「お、お前みたい地味な奴の事なんか全然だし。安心しかないわ」
「ふふ、そうだね。安心していいよ。私の一番はずっと変わらないからね」
そう言って日鞠は離れる。そんな日鞠を横目でちらりとみる。僕と日鞠の絆というか何というかに疑問なんて無いけど……でも僕は結構劣等感とかあるからね。日鞠がどんどん遠くに行ってる気はなんとなくする。
「スオウの話はなんなの? スカルドラゴンのことかな?」
恐ろしいやつ。要件まで完璧に把握してるじゃん。
「そうだよ。アレを倒さないとヤバイ感じだ。だから協力してほしい」
「それはいいけど、けど今中々難しい状況だよ。他の有力なチームにもきっと声掛けてるよね?」
「そうだな。有力なチームの方が影響力あるし」
「でも彼等は私たちに対抗心ある。軋轢は歯車を絡ませちゃう。だから私達は大々的に協力出来ないかも」
ようは一番である日鞠のチームが出張ると、色々と面白くないと思う連中が多いと言うことか。確かにそれはあるかも知れない。
「まあ、注意喚起くらいはするけどね。それにスオウはあっち側でしょ?」
「あっち側?」
「あれ? 他のチームと組んでエリアバトル仕掛けてくるんじゃないの?」
おいおいモロバレですけど? こいつの情報網はどうなってるの? 確かに二位以下の有力なチームはそれを企ててるみたいだけど、参加するかどうかはまだ……まあローレの奴が絡んでるから、関わらせられるかもだけど。
「いいのか?」
「スオウはやりたいことやればいいよ。私も私の道を行く。そうやって交わって来たじゃない」
「まあ、そうだな」
僕たちはいつだって一緒で、いつだって違う。それでもずっと続いてきた。だからこれが正解。やるんなら、全力。それでいい。とりあえず日鞠の協力は取り付けたし、次はローレか……やれやれだ。とりあえず送って貰って今日は眠りに付いた。