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命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
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 あれから数日が経った。僕の日常はまだ保たれてる。まあリアルが壊れるとかそうそう無いよね。だって世界は均衡を保ってるんだから。それは人一人ではどうにも出来ない様な、それこそ神とか呼ばれる人達がこの世界を作ったからなのかも知れない。けど向こうは……LROは神の手なんかない。作ったのは一人の天才。だからなのか、均衡を保つのは大変なのかもしれない。

 

 解き放たれたのは一匹の邪竜。あのスカルドラゴンはこの数日の間にかなり有名になった。なにせLROの各地に現れては、プレイヤーもNPCも関係なく襲う。各国ではあのスカルドラゴンの対策でてんやわんやだそうだ。だからそれぞれの国で討伐依頼が発行された。それが案外盛り上がってる感じ。まだ討伐は出来てないようだけどね。

 

 そしてとある情報筋……まあ実はアギト何だけど――から気になる情報を得た。でもこれは確証ではない。アギトもそれを見たわけじゃなく。戦闘を記録した映像を見せて貰っただけらしいから、真実は分からない。けどどうやらあのスカルドラゴン……強くなってるらしい。それも吸収とか奪取とかスキルとか特性とかではなく、アギト曰く……コードを食ってるようだったと。

 

 LROでの僕たちは情報体だ。この身体も本当の身体なわけない。なにせ本物はベッドで横になってるんだからね。けどだからこそ、リアルでは出来ない動きだって、物理法則の壁を超えて実現出来る。コードは自身のLROでの経験が全て詰まった物。それは思い出であったり、スキルであったりだ。この世界で自身を構成する情報の全てが詰まってるのがコード。

 

 それを他者から取るなんて……まるでシクラの奴の様。でもあいつはこのシステムに組み込まれてないやつで……だからこそ出来た様な物だと思ってた。けどスカルドラゴンは違うはず。このLROに元から設定されてた存在の筈だ。それにスカルドラゴンと化した領主の奴は、紛れもなくNPCだったんだからシクラ達とは全然違う。

 それなのにコードを食らってパワーアップなんて、そんなのこの世界を崩壊させかねないバランスブレイカーだ。このまま誰もが好き勝手にスカルドラゴンに挑んでいけば、それだけあのスカルドラゴンは強くなる。それはつまり誰にも止められなくなると言うことだ。シクラとかは目的があってコードを集めてたが、あのスカルドラゴンにそれがあるのか……ただ力を欲してるだけだとしたら、際限なく強化されていくその力を躊躇いはしないはずだ。そもそも理性なんてあるか分からないモンスターになってるんだから。

 モンスターとははた迷惑に暴れまわるものだ。ただ今回は規模が大きすぎるだけ。

 

「はあー」


 騒がしさがなくなった孤児院で誰かがそんなため息を吐いた。ここはスカルドラゴンになった領主が治めてた町だ。街全体が立入禁止となってるが、だからって厳重な警備がされてる訳じゃない。それにこの孤児院は町外れ。忍び込む事など容易だった。なんとなく、ついついここに集まっちゃうんだよね。そうしてここに皆集まって情報交換をしてるわけだ。

 

 そんなの集まらなくったってできるけど、皆毎日ログインしてるからね。顔合わせてやった事が良いこともある。

 

「これは私達の罪。私達で蹴りをつけるべきです」


 そういうのはオウラさん。確かにスカルドラゴンを生み出すまで何も出来なくて、そして奴を野に解き放ったのは僕達だと言えるかも知れない。誰もコードの事については気付いてないみたいだし、リアルに影響があるようなことにもまだなってないようだ。けど、そういうことじゃないだよな。この世界を楽しんでる人達がたくさんいる。

 それにこの世界のNPCはちゃんと生きてる。もう、なくなって良いものじゃなくなってる。少なくとも、この世界を楽しんでる人達はそう思ってるだろう。全員とは言えないけど、大多数の人達はきっとそうだと思う。

 

 そんな世界が壊れる。僕だってもうここに来れなくなるとかちょっと信じられない。いや、あの事件のあと、しばらくLROという世界は閉じられた。その時も自分自身は何か物足りなさを感じても普通に生きてた訳で、案外人は何にだって適応できるのかもしれない。でも……だからってみすみす手放して良いものじゃないのは確かだ。

 そしてそれが自分達のせいなんて……それは駄目。折角作り変えた世界だ。皆が幸せに成れるようにと……あの時は願った筈。

 

「とりあえず有力なチームに連絡を取ってみましょう。そして影響力の強い所からプレイヤー達へ警告を出して貰うんです」


 セラの奴は流石冷静に対応策を立ててくれる。確かに僕達が一生懸命理由を広めてくのは効率悪い。それにコードがどうとか言われても、そんなのを真に受ける奴等が何人居るか……それならば、理由は影響力のあるチームにだけ言って、そこから発信して貰う方が遥かに皆すんなりと納得してくれるかもしれない。

 

「それしかないか。それじゃあ皆、僕はあんまり役に立ちそうにないけどお願い!」


 僕はソロで人脈なんて……ここ最近の一心と一緒にやってたやつらくらいだ。けどほら……彼等っていっちゃ悪いけど弱小だし、役に立ちそうにない。とか思ってると、セラが凄く睨んできた。

 

「はあ? あんたは一番影響力のデカイ知り合いが居るでしょ。テア・レス・テレスのトップにはアンタが行くべきでしょ」


 その言葉に皆がうんうんと頷いてる。ああ、やっぱりそうなるよね。そりゃそうだよね。だって日鞠……こと会長は全チームのトップの長……いや会長か、だから当然そうなるしかない。

 

「別に僕じゃなくても、アギトやセツリでもいいとは思うけど……」


 なんだったらアイリでもオウラさんでもいいけどね。実際知り合いな訳だし。

 

「スオウ……あんたは大切な事を誰かに押し付ける奴なの? 幼馴染なんでしょ? 誰よりもアンタが行くべきだと私は思うけど違う?」


 セラの余りにも真っ直ぐな正論に言い訳なんて言葉さえも出てこなかった。確かに僕が行くのが筋ってものだ。何も間違ってなんてない。リアルでもここでも僕が一番、日鞠の事を知ってる。誰よりも長く一緒にいてきたのだから。

 

「わかったよ」

「あっ、それとローレもアンタの担当だから」

「おい……」


 厄介だから。あいつは関わると碌な事無いから!

 

「アイツは今回は無しで良いんじゃね?」

「確かにあの女のチームは謎だけど、単体でも戦力になり得る力を持ってるんでしょ? それが必要だと思わない?」

「それは……確かにそうだけど」

「だったらわかるでしょ?」


 怖い怖い……絶対に上司にしたくないタイプだよこいつ。確かにローレは単体でかなりの戦力になるだろう。どれだけ強くなってるか分からないスカルドラゴン戦には必要とは思う。けどローレか……でも結局僕の意見が通るはずなんてなくて、最終的に僕の担当は日鞠とローレとなった。既に胃が痛い……主にローレで。

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