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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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見つめる今

 あの悪魔との一戦から既に三日が経っていた。僕達は試合に勝って勝負に負けたんだ。そんな気持ちで束の間の日常に身を委ねていた僕はこれも大切な事だと感じていた。

 だけどいつまでも負けたままではいられない。僕は再び彼女の眠る病院へ。そこで居合わせたLROの開発者の人とギーガスクエアへ。そこで見せて貰った当夜さんのパソコン。そこで見つけた隠しファイル。刻まれたファイル名は『命改変プログラム』

 それはもしかしたら最大級のキーワードなのかもしれない。

 僕は走る。走って走ってようやく沢山の人達の力を借りて僕は彼女の腕を掴むことが出来た。そう……出来たと思った。だけど彼女は僕の腕に捕まる事は無かった。

 掴んだと思った瞬間、彼女の細い腕は欠片となり消えていく。僕はその様子をただ見つめている事しか出来なかった。空に消えた彼女を捜したけどもうその姿を捉えることも出来ず僕は膝を付き地面を見つめた。

 その時、後ろから声がした。

「何をそんなに落ち込んでいるんだい?」

 僕はその声の主に振り返る事無く答える。

「自分が……情けないんですよ。沢山の人に助けて貰ったのに……僕は結局、助けたい人を助けられなくて……見失って……もうどうしていいのか分からない」

 空気を吐き出す機械の音と、キーボードを叩く様な音だけが響いている。僕はなんだか振り返らなくちゃいけない気がしたけど何故か首が回らない。

 その時、再びその人の言葉が続く。

「なら、諦めればいい。誰も君を責めたりしない」

 僕は真っ白な地面を見つめる。それは一番言われたく無いことだ。

「そんなこと……」

 僕はなんて続けようとしたのかな? 次のその人の言葉が衝撃的で僕の言葉は続かなかったんだ。

「それにあの子は……救われたいだなんて実は思ってないんだよ」

 

「あれ?」

 目覚めるとそこに写るのは十六年間僕の上に広がる天井だ。いつの間に寝ていたのだろうか……僕は頭に着けたままのゲーム機を取り外す。

 そう言えばアギト達からのメールを確認していたんだ。するとなんだか眠くなってあの変な夢を見たのか。最近ゲーム機をしたまま眠ると変な夢を僕は見ている。

 その夢に出てくるのは二人で僕といつもキーボードを叩いている人だ。その人は時には背中で、時には後ろから僕に話しかけてくる。だから声でけで顔は見たこと無い。

 だけど何となく……その正体に僕は感づいている。あれはきっと……そう考えていると家にチャイムの音がビクッとするくらい響いた。もうちょと優しい音にしてほしい。

 僕はゲーム機をベットに置いて部屋を後にする。静かな家の中を通り過ぎ玄関へ。ドアを開くとそこにいたのは長身でそれなりにガタイもいい秋徒=アギトだった。

 もちろんリアルでは赤髪に耳長なわけじゃない。普通の高校生だ。だけどコイツが赤く染めたらそれなりにアギトと同じように見えるかも知れないとは思っている。

「よ、スオウ」

「戻ってたんだ秋徒。何か用?」

 いつもと同じく気軽な挨拶する秋徒は僕の質問にあからさまに怒ったような口調になる。

「お前……メール見てないのかよ」

 メール? ああ確か見てたんだけど寝たから内容は殆ど頭に入って無かった。だってあの夢はいつも印象が強いんだよ。

「たく、取りあえず上がるぞ」

 そう言って他人の家にドカドカ上がる秋徒。コイツといい日鞠といい、なんだか僕の家はそんなに侵入しやすいか。まあ、日鞠の場合は普通に合い鍵持ってる訳だけど。そう言えば今日はまだ見てない。珍しい。

 それを秋徒も思ったのかこんな事言いやがった。

「お前、奥さんは? 実家にでも帰られたか?」

「奥さん言うな! それに実家は隣だろ!」

 毎日アイツは実家に帰ってるよ。奥さんとか外で言ってないよなコイツ? 秋徒は日鞠に懐柔されてるからな。なるべく家に近づかせたくない。友達なのに。

「殆ど夫婦のくせに何照れてんだよ。それにアイツいないと生きてけないだろお前」

 なんて失礼な事を言う奴だ。確かに炊事洗濯家事全般アイツがやってるけど別に出来ない訳じゃない。僕がやる前に日鞠がやっちゃうから僕がアイツに依存してる様に見えるだけだ。

「ハイハイ、良いご身分だな。ミジンコ位の存在価値なのは認めてやるよ」

「そんなこと言って無いだろ!」

 何がミジンコだ。こいつ本当に友達か? ゲームの中での信頼を返せ。

「まあさ、俺が言いたいのはちゃんと日鞠の事も考えてやれって事だ」

 なんだその意味深な発言は? 

「どういう事だよ」

「お前、LROで起きてる事言ってないだろ? 自分に起きてる事も」

 リビングに入るドアの前。廊下で僕たちは向かい合う。

「言うわけ無いだろ。言ってどうなるんだよ。それこそ心配掛けるだけだし……下手すればアイツ取り上げるぞ」

 日鞠は僕の事には過剰なんだ。だけどそれでも辞める訳には行かない事だ。

「だから、これ以上面倒掛けるなって事だよ」

 そんな事言われるまでも無いことだ。これ以上世話されたら困る。色々と。プライヴァシーって大事なんだ。最近日鞠の行動がエスカレートしてるし。

 今日も実はいないと見せかけてカメラとか仕込んでる可能性だって……いや考え過ぎか。アイツだって一線はわきまえてるだろ。

 ドアを開けてリビングに入る。そしてソファに向かう途中で秋徒が置かれて居たヌイグルミを倒した。

 ガシャン……随分と重たそうな音がするヌイグルミだ。僕はそのヌイグルミを拾い上げて気づいた。目がボタンとかじゃ無い。これってカメラじゃんか!

「もう……遅かったか」

 そんな事を呟いてる場合じゃねーよ秋徒。これは家中を捜索しないと安心できない。

 駆け出そうとした僕をだけど秋徒が制す。

「まあまあ、そんなのそうそう見つかるわけないだろ。後から本人に聞けよ。それよりも本題だ」

 そう言った秋徒の表情は真剣だった。


 結果的な答えは収穫は余り無いとの事だった。あの悪魔との決戦から既に三日が経ち、だけど僕達はセツリを救えていなかった。

 悪魔を倒しても彼女の姿は無くて……それと同時に全プレイヤーに支給されていた彼女の位置を知る事の出来るシステムは使えなくなっていた。

 だけどみんなは探そうと言ってくれた。それはとても嬉しい事だった。そしてセツリの捜索に乗り出したんだけどその矢先僕は二回目の強制ログアウトを受けた。

 それは開発者の人達の仕業だった。どうやら僕の仮想空間への意識浸透率がもうすぐ二百に達するらしかった。だから答えを聞くために呼び戻した。

『僕は入り続けます。たとえ戻れなくなったとしても、このまま彼女を見捨てて忘れる事なんて出来ないから』

 それが僕の答えだった。沢山の人達も協力してくれてる。今更僕だけが危険だからと降りれない。それにやっぱり彼女を求める僕が居る。

 そして許可を得て再びログインしたときに怪しんでいたアギトに聞かれた。アギトも一回ログアウトして僕がどこから入ってるか調べたみたいだった。

 だから隠す事は出来なかった。僕は全部を話した。自分がゲームから戻れなくなるかも知れないこと。

『お前バカか!』

 と言われた。それは友達の事を本気で心配する顔だった。そんなアギトに僕は聞いた。

「アギトにとってLROって何?」

 それにアギトは「ゲームだよ。何度だってやり直しが効いて仲間とワイワイやって楽しく過ごす為のただのゲームだ!」と言った。それが普通で、そうであるはずなんだけどね。

「僕にはもうただのゲームじゃないよ。LROというゲームの中で僕は生きてる……そう感じるんだ。だから同じ様な彼女を放っておけない」

 もしかしたらもっと早くに初めて、普通に楽しめたのなら僕にもLROは最高のゲームになったのかも知れない。

 だけど……僕はその時自身の腕を捲って見せた。それを見てアギトは何かをみんなに話して僕はなるべくログインしないようにしてくれた。

 だから今はみんなの情報待ちの状態だ。そして秋徒からの話だとめぼしい物は無い。だけど一つだけ。あの悪魔を倒してから一気にクエストが溢れだしたらしい。だからこの中のどれかにアンフェリティクエストに関連したのがないか今検証中と言うことだ。

「気長な話だな」

「お前は入るなよ。俺たちが必ず見つけてやる。その時はお前の出番だ」

 そう言ってアギトは立ち上がる。そして目線は僕の腕に。僕は服を捲って腕をヒラヒラ見せてやる。

「分かってるって。それに大丈夫だからさ。入らないよ信じてるからな。だからお前も僕を信じろ。もどかしくて堪んないけどね」

「急ぐさ」

 そう言って秋徒は僕の家を後にした。今はただ仲間を信じるしかない。ずっと心にある気持ち……もしかして彼女は……そんな不安を押し殺して。


 正午過ぎ、結局日鞠は料理も作りにこなかったので外食ついでに病院に来ていた。都内でも有数の大病院。僕は前に来た道を通り慌ただしい病棟から離された部屋に入る。

 そこにはあの日救えなかった彼女が初めて出会った時の寝顔のままに眠っている。その顔を見ると胸が痛い。どうして僕は助けられ無かったんだろう。

 僕は近くの椅子を引き寄せて彼女の傍らに座った。そしてただ呆然と綺麗なその顔を見つめる。「生きてない私」最初に彼女に会った時そう自分の事を言っていた。

 そして不意に彼女の隣に眠る人に目が行った。僕は誰に言って居るのかも分からない声を出す。

「救われる事を望んでいない……じゃあなんで……」

 その時、ドアがスライドする音が聞こえて振り返る。そこにはどこかで見た顔があった。

「ああ、君も来ていたのかスオウ君」

 ん? 向こうが知ってるって事は面識はあるんだろうけど名前が思い出せない。だけどなんだか聞きづらいしそこは触れないでおいた。

「ええ、だけどもう帰ります。彼女を見てると自分が情けなくなるんで」

 そう言った僕を入ってきた人は追い越してセツリのお兄さん桜矢当夜さんのベットの前に行って伏せた瞳でこう言った。

「その台詞……良くコイツが言っていたよ。いつも丁度君と同じ位置に座っていたな。君たちはなんだか似てる」

 その言葉になんだか惹かれた。だから僕もその人の隣に並んで当夜さんの顔を見る。この人は妹の所に行こうとしてこうなっている。その思いは届いたのだろうか?

「あの……どうして、当夜さんは……」

 良く考えれば僕はこの人の事を知らない。彼女の兄で天才的な才能を持っていてフルダイブシステムとLROの基盤を作ったって事ぐらいしか。

 どうしてこの人はこんな事をしたのだろうか? どうしたかったんだろう。

 隣の人からの答えは簡単だった。

「分からないんだ。発売日の前日だった。朝一に会社に来た同僚がこうなった彼を見つけた。パソコンに遺書めいた文章を残してね。『妹の所に行ってくる。プログラムの実行を祈る』そう書いてあったよ」

「プログラム?」

 僕は一番引っかかった単語を口ずさんだ。

「それはきっとLROの実行プログラムじゃないかと思っているよ。あの事件で発売できるか危うい時があったんだ。」

 そう言えばLROは半年位発売を延期している。だけどあの時はかなりフルダイブのゲームって事が話題で発売が中止なんて事はあり得なかったと思うけど……じゃあ一体に何のプログラムか。

 思い当たるのはアンフェリティクエスト位だ。LRO自体じゃなく一部のプログラムの実行。このプログラムの実行こそが当夜さんの望みだったのかしれない。

 今、目の前で眠っている人が妹を助け出す為に作ったプログラムなんじゃないか? 

「あの……お願いがあるんですけど」

 僕は頭を下げて隣の人に頼み込んだ。


 連れてこられた会社はギーガスクエア。LROの開発会社だ。そこのLROの担当部署はとても忙しそうだった。そうそうちゃんと名前思い出した。あの人は「佐々木」さんだ。ハードの方の会社に行ったときに会議室に居たここの人だ。

 あの日は衝撃的な告白の連続で名前なんて入ってなかったんだ。

 佐々木さんは僕を同僚の人達に紹介してくれた。みんな忙しそうなのになんだか随分親しげだ。

「君がクエストを達成してくれないと路頭に迷うよ僕達は。それかその前に過労死かな」

 そう言うことか。なんだか大人な事情で僕を応援してくれてるらしい。今は大量発生したクエストの対応に追われてるとか。

 システムは一人歩きを始めたとか言ってたから出来る事はあんまりないそうだけど……苦情とか疑問の対応とかに忙しいみたいだ。

 僕はみなさんに一礼して当夜さんの机へ。そこは変わらずに残して置いてあった。簡素なディスク、パソコンが一台に写真が一枚あるだけの机。引き出しにはペン一本入ってない。

 僕にはあの椅子に座ってキーボードを叩く当夜さんの背中が見える気がする。そして時々写真を見つめる。そこには無邪気に笑うセツリの笑顔がある。

 リアルで笑った最後の顔だそうだ。ベットの上で白いシーツにくるまって舌を出した可愛い写真。

 僕は当夜さんの椅子に座りパソコンを立ち上げた。そしていきなり現れたのはメモ帳の画面一杯に書かれたプログラム言語だった。理解できない言葉の数々に頭が痛くなる。

 てかなんだかメニューとかが立ち上がらないだけど。これしかやってなかったのかあの人。

 ダメだ。もしもこの中にそのヒントがあっても同じ位の天才じゃなきゃ読み解けない。

 プログラム言語って意外とメモ帳とかに書くんだ~とか思いながら無駄にスクロールさせて居ると不意に何かが見える気がした。

「ん?」

 何だろうゆっくりスクロールしても何も見えないけど早くスクロールするとそこには何かが見える。僕は意識を集中する。あの戦闘の時の様に乱舞中は高速のスピードの中に居るから自然と周りが遅く見えるんだ。

 それがリアルでも出来るか解らないけど脳が覚えていてリアルの目に反映してくれる事を願った。

 そして僕の目は徐々にそれを捉えていく。人間には慣れという学習機能が有るのだ。まあだけどやっぱりゲームの体験も少しは影響してるだろう。スクロールの早さは字が線に成るほどだ。

 それを捉えることが出来たんだから乱舞中の体験が間違いなく反映していた。

 そしてそれは矢印? 向かう先は画面の右斜め上……そこにマウスのカーソルを持っていきポチッとクリックすると画面が変わり出てきたのは研究書? 

 いや違う……これはそんな大層な物じゃない。物語?

小説か? それは剣や魔法がある世界で大冒険を繰り広げる少女のお話だった。

 僕は周りの人達を呼んで見てもらった。

「これってLROの概念か?」

 確かにそんな感じだ。当夜さんはこれの通りにLROを作ったとしか思えない。だけど小説は途中で終わっていた。書き欠けのままあの事故がおきたのだろう。

 だからこそ当夜さんは妹が夢描いた世界を送った。そう言うことか? だけどそれじゃ逆にLROに縛り続ける事にも成りそうだけど……アンフェリティクエストの目的はセツリのリアルへの帰還だ。矛盾する。

 やっぱりまだ足りないピースが一杯ある。きっとそれをかき集めないとクエストクリアは不可能だ。何となく僕はそう感じていた。彼女たちを知ることがクエストのキーなんだ。

 目の前にある拙い字で書かれた見知った世界での物語はなんだか僕を悲しくさせて涙を抑える事が出来なかった。

 救いたいのに救えない。解りたいのに解らない。いろんな事が子供の僕には重すぎるのかも知れないと思った。

 だけどそんな心が弱くなった時……決まって僕を動かす奴がいた。そしてこの時も当然僕の携帯を揺らしたのアギトだった。僕はメールを開きその文面を飲み込んだ。

【クエスト『精霊琥珀の山海城』の城でそれらしき人物を観たって目撃情報があった。送られて来た写真も貼付したから確認して観ろ!】

 僕は震える手で添付されたファイルを開く。そこには水の中に生える巨大な木。そしてその木の枝に守られる様にして中央で泡に包まれ眠るセツリの姿があった。

 僕は携帯を額に当てて目を閉じた。良かった……彼女は生きていてくれたんだ。あの世界からまだ消えて居なかった。それは僕の中で安心から勇気に変わる。

 行かなくちゃいけない。僕は画面を閉じようとして気づいた。あの小説のタイトルだ。始まりには何も書いて無かったからタイトルは未定なのかと思ったらファイル名の所に書いてあった。

 そしてそのタイトルは『命改変プログラム』。僕の心が氷柱を刺された様な痛みと冷たさを感じた題名だった。


 家に付いた時には既に日が落ち欠けていた。鍵を開けようとして掛かってない事に気付き中へ、すると美味しそうな匂いが漂っていた。

 僕はキッチンで跳ねるように料理を作っている三つ編みした後ろ姿に声かける。

「どこ行ってたんだよ」

「う~ん、おしえな~い。あれだよスオウ。押してもダメなら引いてみろ作戦だよ」

 つまりは自分が居なくて寂しいと思って欲しかったって事か? 何故に今更そんなメンドい事をカメラ仕掛けてまで……って、思い出したぞ!

「日鞠、お前が隠して設置したカメラ全部だせ!」

「そんなのありません」

 もの凄くハッキリと嘘付かれた。僕は証拠は有るんだと近づいた時あることに気付いた。なんだかやけに手足に絆創膏を貼ってる。それにシャンプーの香りもする。この時間にシャワー浴びるなんて今まで無かったのに。

 何か汗かく様な事でもしたのだろうか? 僕は訝しげに日鞠を見つめる。するとわざとらしく鍋の中の料理をお玉で僕の顔に少量ぶつけた。

「殺す気かぁ!」

 めっちゃ熱いんだけど。

「手が滑ったんだよ~テヘ」

 可愛く決めたけどおかしな手の滑り方だったぞ。

「もう、スオウ早く手を洗ってくる! 晩ご飯もう出来るよ」

 自分の犯罪を棚に上げての母親面か。

「ちょっと急いでるから今日は」

「じゃあ今度は鍋全部を――」

「食べます! 食べさせて頂きます!」

「うん、よろしい。早く手洗いうがいをしてくるのじゃ!」 

 トボトボと僕はキッチンを後にする。なんて危ない奴だ。あんな脅迫ないよ。食べ物は粗末にするなっての。このまま部屋に戻ろうか? 鍵もかけられるし……だけどその時昼間の秋徒との会話が脳裏をよぎる。

 心配なんて掛けたい訳じゃない。面倒だって別に見てくれなくったっていい。最初はそうやって突っ張ってた筈なんだけど……日鞠はいつでも満開に笑顔を咲かせてやってきた。

 だからいつの間にか今の状態が普通になって……こんなのおかしいのにお互いに触れてこなかった。きっと僕も壊したくなかったんだ。アイツがいると家の中が暖かかったから。


 僕はカタンとならして椅子についた。そして両手を合わせて二人で「頂きます」を言った。それはいつもの光景で、変わらない日常。

 こんないつもの日々が失われるかも知れない。同時に箸を伸ばし取り合いするおかずの先にある笑顔がもしかしたら見れなくなるかも知れない。

 そしたらきっと泣くんだろうな……そう思って心の中で呟いた。

「ごめん」

 ものすごく大変でした。今日はもう更新は無理かなって思うくらいに。それは一昨日書いていたこのファイルが何故か半分以上ぶっ壊れていたからです。何故かテンテンしか表示しなくて落ち込みました。

 なんとか間にあって良かったです。元のはそのまま使ってるからおかしな所もあるかも……でも何回も読み返したからなんとかいけるはずです。

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