773
学校で惰眠を貪ってると頭を叩かれた。どうやら次は移動教室らしくさっさと手を貸せと鈴鹿の奴が無言でそう訴えてきてる。別に手をかすのはそれが役割だし全然いいんだけど、鈴鹿の奴の目がね……なんか反抗したくなっちゃうよね。
それに最近は色々とこう上手くいかないことが一杯で機嫌が悪かった。特に向こうでのこととかさ……だからだろう、間が悪かったんだ。
「わかってるっての。そんな目しなくてもいいよ。鈴鹿ももうちょっと愛想良くすればいいと思うぞ。なんか辛気臭い」
ボソッと言った最後がいけなかったのか鈴鹿の奴が教室中に響く声でこう言った。
「うるさい……うるさい! 辛気臭い? 私は意味もなくヘラヘラなんてできないのよ! バカみたいになんてなれない! それで雰囲気壊す? 知らないわよそんなこと! こっちからしたらバカみたいに笑ってられる周りの方が薄気味悪い!
私はね、あんた達が私を嫌ってるのよりももっともっとあんた達が大嫌いなの!!」
言い終わると鈴鹿の奴は肩で息をしてた。それだけ身体中の酸素を一気に使ったってことだろう。移動教室だったこともあり、教室にクラスメイトの半分くらいしかいなかったけど、前方と後方のドアは開け放たれていて外に見える同学年の者達まで止まってるのが見えた。
クラスメイトは言わずもがな、真正面でそう言われた僕なんか思考停止状態だよ。どうやら鈴鹿は僕以上に機嫌が悪かったようだ。なんと声をかければいいかわからない。突然のことで何がなんだがわからないでいると脱兎のごとく鈴鹿は走り去ってしまった。
思わず言ったけど、少し冷静になって恥ずかしくなってしまったのかもしれない。ポカーンとしたまま取り残された僕たちだったけど周りはだんだんと動き出す。
「なんだったんだ?」「凄かったな」
とかいう声が聞こえてくる。けど僕と摂理は動けない。そうこうしてる内に授業の開始を告げるチャイムがなってしまった。
昼休み、僕たちはいつもの空き教室にて弁当をつついてる。けどそこにいつもの鈴鹿の姿はない。というか、あれから鈴鹿は早退してしまった。よほど「やっちまった……」と思ったのかそれとも、もうどうにでてもなれと思ったのか……とにかく、鈴鹿は帰ってしまった。
そして当の本人がいないことをいいことにクラス中はその話題で持ちきりだ。それはまあ仕方ないとは思う。普段ほぼほぼしゃべらない鈴鹿が不満というか内心をぶちまけたんだ。クラスメイトはあの場に居た奴らに伝え聞いてそれぞれ不満言ったり、意外と言ったり反応は様々だった。
けど、良い印象の反応はない。そりゃそうだよね……バカにされたようなものだったし。それはしょうがない。それにクラスメイトと言っても鈴鹿はそのほとんどと接点なんかない。だからみんな好き勝手言えるわけで……深刻に悩んでるのは僕たちだけだろう。特に摂理はさっきから暗い、てか明らかに落ち込んでる。
こういう時に限って無駄に明るいアホがいないのが悔やまれる。そうクリスである。あいつ今日はこれないってメールしてきた。まあいつもならふーんで済ませるだけなんだけど、無駄にベラベラ喋る奴がいないのは今はきつい。
あいつ逃げたんじゃないだろうな?
「鈴鹿ちゃん……許してくれるかな?」
「許すって……別に摂理が怒らせたわけじゃないだろ? 怒らせたのそこの誰かさんで」
そう言って秋徒の奴が僕へと視線を向けてくる。反論のしようがない。今となれば何で鈴鹿にあたったのかとかあの時の行動を反省するしかない。でもまさか鈴鹿かあんな怒るなん思ってもなかったんだ。
てかあれは怒ったなんてものじゃないな。プッツンしちゃった感じだったな。きっと日々溜めてたものがあったんだろう。
「悪かった……」
「悪かったってスオウは何が悪いのかわかってないよね?」
日鞠のその言葉にも言い返せない。怒らせたのは僕だけど確かに何が悪かったのかは正直わからない。いや最後のワードがいけなかったのはわかるんだけ、その部分だけを謝っても何か多分違うんだろう。
鈴鹿だってあんな事言ってしまって恥ずかしさとかやっちまった感とかあるだろうしな。僕がただ謝っても学校には来づらいかもしれない。
「どうすればいい?」
縋るような目で日鞠を見る。すると日鞠は箸を置いてこう言うよ。
「もっと踏み込むしかないよ。そしてもっと鈴鹿ちゃんの事を知る。そうしないとどうしようもないかな。赤の他人のままじゃ駄目なんだよ。できる?」
なんか優しく諭されてるのが若干腹立たしいけど、やるしかないだろ。日鞠的には極力人と関わらない僕が積極的に他人と関わる事ができる?っていいたんだろうけど、僕だってLROでコミュ力鍛えてるから。
それにあいつは摂理のお世話役の一人なんだ。いないと困る。物凄く私的な理由だけど、困る事は困るからしょうがない。てな訳で僕たちは放課後に鈴鹿の家に突撃する事にした。
次も近々あげます。ではでは。