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命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
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こころ踊る

挿絵(By みてみん)

 海沿いの箱庭の街『ニューリード』。前のLROには無かったこの街はきっと何処か歪だ。何が……と言われたら困るんだけど、とにかく完全には溶け込んでない様な……そんな気がする。まあ、ただの違和感なのかも知れないけど。

 久々のニューリードは随分と活気が増してる様な感じだ。初めに来た時は磯の香りが街中にあった筈だけど、今はもう人の雑多な匂いの方が強い。すれ違う人々にそこらで売ってる露店のジャンクフードの匂いとか、息づいてる感じが増してる気がする。


「やっばり人増えてる?」


 もう再販してるんだっけ? それとも今日が特別なだけか? プレイヤーがニューリードに集まってるのかもしれない。そもそも皆、こっちがわ(LRO)よりもエリア側(新要素)に夢中だからな。

 自分達のエリアはこの世界には無いからエリアバトルが盛り上がってる昨今はこっちにわざわざ来たりしないんだ。勿論こっち側も大事なんだけど、今は向こうを見てる層が圧倒的だから仕方ない。

 でもそんな中、ここにこれだけ人が集まってるって事は日鞠が言ってた事が原因なんだろうか? それとも偶然? でもこんなタイミング良く重なるかな? 取り敢えず誰かに聞ければいいんだけど……知り合いはいそうに無い。

 気軽に聞ければいいんだけど、なんか視線がな……自意識過剰なのかも知れないけど、この姿はLROでは結構有名だ。しかも変な恨みも買ってるし……気軽にっては行か無いんだよな。


「てかこれからどうしろってんだよ」


 日鞠の奴から何も聞いてないぞ。あいつは「行けば分かる」とか言ってたけどさ、人が多いくらいで何もわからないんだが……


「取り敢えず中央広場にでも行ってみるか」


 ここはプレイヤーとエリアを繋げるニューリードでも端っこの方だからな。殺風景な場所に扉が現れたり消えたりしてる。ここじゃあ何が起きてるのかは掴めない。もっともっとニューリードの変化に近づかないと。



 てな訳で中央広場に来たものの……これは一体どういう事だ? 確かにプレイヤーがずっと増えてるとは思ったけど……コレはいくらなんでも増えすぎだろう。中央広場に人が溢れかえってる。いきなり人気ミュージシャンが路上ライブしたような状態だ。マジで何があるんだ?

 ここ中央広場の中心にはたしかエリアバトルのランキングとかを表示してる筈。皆の視線が同じ方向を向いてるってことは多分それを見てるんだろう。でもあれにこれだけの魅力はないだろう。じゃあ何を見てるのか?

 最近はランキングだって日鞠の奴が一位になってそこまで変わっても無いからな。でも取り敢えず僕の視線も周りと同じ方向に誘導される。中央に浮いてる透明な板の様な物。アレは物理的にそこにあるわけじゃなく、投影してる感じだ。


「「「おおおおおおお!!」」」


 いきなり湧き立つ群衆に一歩引いてしまう。え? 何? 何が起こったの? ランキングを見るも変化なんか無いように見えるんだけど……いや、左側のランキングの数字じゃないのかも知れない。右側には細かい数字が幾つかある。そっちは細かく変動してる様に見える。

 あれは何を表してるんだっけ? とにかくその数字が後少しで三万に到達しそうだし他の数字も軒並み万超えしそうな勢いだ。それが凄いことなのかと言われればよく分かんないんだけど……


(けどそうか、2位と比べれば解りやすいか)


 2位のチームの数字も細かく動いてるけど、日鞠達のソレとは桁が違うな。日鞠達のチームの数字は軒並み万超えしてるけど、2位以下で万超えしてる数字は一箇所だけってのが相場見たいだ。

 だからこそ、日鞠達のチームの『テア・レス・テレス』がどれだけ異常かよく分かる。これはつまり2位以下に圧倒的な差を付けてるということじゃないだろうか。でもいつの間にそんな圧倒的な状況になったんだろう?

 少し前まで全然だったじゃないか。てか少し前からしかやってないのにトップ取るの早すぎ何だよ。先行してやってた奴等は一体何をやってたのか。不甲斐ないにも程がある。一月程度しかまだ経ってないような。


「んっ――」


 その時、暗く沈んでた空に閃光が走った。その光のせいで広場は更にざわめき出す。


「そろそろか?」

「本当に来るのか?」

「あっちの方で光が増してるぞ!」


 掲示板を見てた群衆は光に吸い寄せられる虫の様に移動をはじめる。この群衆達は何かが起こる――かも知れないって事を知ってるのか? まあじゃなかったら、こんなに集まってる訳が無いだけど。

 同調なんて僕には無いけど、ここは素直にあの光を目指すのが最良だろう。何かがある――のは間違いないだろうしね。


 てな訳で、光に誘われてプレイヤー達は港の方に集結した。港は更に多くのプレイヤーで溢れかえってる。どうやらあの光に誘われたのはあのランキングを見てた人だけじゃないようだ。

 光は何もない海の上で何回も起きている。太陽も沈み込んでるから、その光を陰らせる要素がないからかその閃光がダイレクトに伝わって来る。波打つようなその光。何が起こるのかと期待に胸を膨らませてるプレイヤーの鼓動の様にもその光は見える。

 そしてそれは突然起こった。光が最大限輝いたと思った次の瞬間、海上に街が一つ現れた。ニューリードよりも強い光を灯してるその街は随分とその……なんだか遠目でも美しく見える。

 それに潮の香りに混じって花の香りもするような? あの街は……もしかしてそう言う事なのか? てか……そうとしか考えられないよな。タイミング的にもバッチリだし。やっぱり日鞠の奴が見せたかったのはコレ……すると港の堤防が予めあったのの横にもう一つ流れる様に現れる。

 そしてその先には大きな扉。淡い光を纏ったその扉が、重厚そうな音と共に開いた隙間から光を漏らす。狭い隙間から吹く風は明らかにニューリードの風とは違う。ほんのり温かくて、微かな花の香り……一足早く春を届けに来たかのよう。


 そんな事を思ってると扉が完全に開き、その奥から一人の少女が現れる。それは紛れも無く日鞠だ。こっちでは会長だっけ? テア・レス・テレスのリーダーでいまやLROの頂点と言っても過言じゃないかもしれない奴だ。


「こんなにいっぱい、この瞬間に立ち会ってくれてありがとうございます。私達のエリアは今この瞬間、この世界と繋がりました。これからは私達の街『レスティア』は交易と交流を開始します。

 皆さんも気兼ね無くお越しくださいね」

「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」


 波さえもさざめき出すプレイヤーの叫び。日鞠の奴が脇に退くとプレイヤー達はこぞってその門の中に入っていく。あの向こうに日鞠達の街があるのか。そう思ってるといつの間にか日鞠が僕の側まで来てた。


「どうどう? 凄いこと起こっちゃったでしょ?」

「凄いことなのか? あんまりそこら辺分かんないんだが」


 僕はエリアの方には疎いんだよね。何かやってる訳でもないし。今のLROではきっと僕みたいなのは珍しいだろう。大体今は誰もがエリアバトルに夢中だから。でも僕的には新たな舞台よりも、生まれ変わった世界がどういう風に成ってるのかをちゃんと見ておきたいっていうか? そんな感じなんだよね。


「凄いことだよ! なんたってLROとエリアが繋がったんだからね。まあ厳密には完全に結ばれた訳じゃないけど」

「ふーん、やっぱよく分かんないな」


 そもそもこっちと繋がってなんかメリットあるのか? 交易するとか行ってたけど……


「どっちにメリットあるかと言ったらこの世界の方かもね。勿論こっちにもメリットはあるけど、エリアでは独自に色々出来るから。それこそもっと色んなエリアが繋がったら、それぞれの個性がきっとLROに影響していくよ」

「なんか楽しそうだな」

「それはそうだよ。でも……前はスオウもこんなんだったよ」


 そう言ってハニカム日鞠にちょっとドキッとする。下から覗き込む様な態勢で上目遣い……わざとかこいつ? てかこっちの日鞠はおっぱい盛ってないか? リアルではもっとちっぱいだろこいつ。やっぱ気にしてたのかな? 

 でもぱっと見ではわからない程度に留めてるのはなんでだろう? もっと巨乳の気分を味わいたいんじゃないのか? もしかしてこのくらいならまだ成長するだろうという願望かな? まあ、なくはないよね。まだ僕たちは一年だし、成長する余地はある。


「あっ、スオウどこ見てるの? エッチだね~」


 そう言って日鞠は胸を抑える。防具とか全く装備してない日鞠は結構な薄着だ。てかラフな格好してる。こっちもそれなりに寒いんだけど……まあ寒さ対策は色々とあるから大丈夫なんだろう。

 なんかよく見たら日鞠の奴、うっすら光ってる様に見えるしな。演出か何かだと思ってたけど、熱を保つ魔法でもつかってるのかもしれない。


「別にお前の結局貧相なままの胸なんて見てねぇよ」

「その貧相具合が分かる程に私の胸を見てるって事だね」

「言ってて悲しくならないか?」

「別に! 適乳だし!」

「前からそれいってるけど適乳ってなんだよ。別に僕にはベストな乳なんて無いからな?」

「またまたー、スオウの好みは全部私に収束してるの知ってるよ」


 そう言って肩をポンポン叩いて来る日鞠。こいつはどんだけ自信過剰なんだよ。胸のことだって別に凝視してた訳じゃない。ずっと一緒に居るんだから見慣れてるから違和感があっただけだ。


「まあ胸の話はこのくらいにしておいて、そろそろいこっか?」


 少し真面目な雰囲気を取り戻してそう言った日鞠。僕はそんな日鞠から視線を外して海に浮かぶ街に視線を送る。

 人の姿はここからじゃ見えないけど、今あそこには大量のプレイヤーが訪れてるんだよな。てか僕の目でも見れないとか……結構遠いけど影くらい見えても良いと思うんだけどな。

 あの街はあそこに存在してるんだよな? 


「行ってみれば分かるよスオウ?」


 そう言って日鞠は僕に手を差し伸ばして来る。その手は思わず取ってしまいたく成る魅力がある。夜の街に光浮かぶその姿はなかなか美しいからな。でも……


「ああ行くか」

「むっ、何で一人で行こうとするかな?」


 僕は手を差し出していた日鞠を避けて歩き出す。不満を表す日鞠だけど、それも一瞬だ。直ぐに日鞠は僕の隣に並んで歩き出すよ。


「ねえスオウ?」

「うん?」

「私達は今、同じ方向を向いてるかな?」


 そんな日鞠の一言に足が止まる。同じ方向……ね。潮の香りに混じって届く花の香りを感じながら僕は再び歩き出してこう言うよ。


「別に同じ方向を向いてる必要なんてないだろ。繋がってればどうせ出会うんだから」

「……そうだね」



 肌寒い風を受けながら話してるといつの間にか扉の前まで来てた。近くで見るとやっぱり大きい。扉の中は光で満たされてて先の様子は見えない。この先に『レスティア』が……まだ観ぬ街がある。

 覚悟を決めて扉の向こうへ。光に包まれるのは一瞬。目が慣れるとそこには『レスティア』の街が広がってた。そこは中々にカラフルな町並みがあった。花の香りに間違いはなく、やっぱりそこかしこに花が飾られてて街を彩ってるよ。

 街のそこかしこにある装飾も花をモチーフにした感じになってて結構凝ってる。でもだからって歪で特殊という事もない。建物の形とかはちょっと曲線を多用した様な感じの建物が多いけど、街全体の建物の色はシックでモダンって印象の物が多い。

 だからこそ花で彩りが添えられてるんだろう。ちょっと近未来的何だけど、メルヘンも入ってる感じだな。でも日鞠はそんな少女趣味なかった筈だけど……けどこの整然とした感じは日鞠っぽい。

 街に雑多な印象は無く、遊び心もあるけど機能美がある感じ。適当にやってそうなのに実は色々と考えてる日鞠そのもの。


「これを一から?」

「ふふ~ん、どう? 凄いでしょ!」


 日鞠の奴は子供みたいに胸を反る。あんまり凹凸が無いのが悲しくなるからやめろよそういうの。これでもリアルよりはマシなんだからより悲しい。


「はぁ」

「ちょっ溜息出る場面じゃないんだけど?」


 僕の溜息に不満気な日鞠。まぁ日鞠は胸の事じゃなく街に対しての溜息だと思ってるんだろう。この街の出来とか考えたらソレはそれで溜息出るけどね。これを一月程度って無理あるよね? 

 どんなマジック使ったんだ? 土地自体はエリアバトルで他人のエリアをとれるから広くしていく事は容易いだろう。けど広くなっていくエリアを有効活用していくのは大変だと思うんだ。

 けど今最大勢力のテア・レス・テレスはこの街だけがエリアって事はないよな? いや、この街の広さも分かんないけど。実はここだけに開発を集中させてたんじゃ? 外にでると真っ白とか? 

 初期状態のままとかなら威厳がなくなるぞ。てかこの街の外とかに出れるのだろうか? ニューリードからはレスティアの街しか見えてなかったけど。そもそも海の上にあったんだけどね。

 でもそれは繋がりというかだけだよね? 物理的にレスティアに渡った訳じゃない。なら今僕達は日鞠達のエリアに居るはずで、それならこの街の外にだって行ける筈では? どういう感じに成ってるんだろう。


「どうしたの? 黙っちゃって?」

「いや、どういう風に繋がってるのかなと思って」

「ふふ、相変わらずひねくれてるねスオウは」

「どういう意味だよそれ?」


 僕は純粋に気になった事を聞いただけなのにひねくれてるとか言われるとは心外だ。それに僕よりもよっぽど日鞠の方がひねくれてるだろうが。


「か~いちょ~~!」


 そう叫びながら走ってくるのはなんだかすごい格好の子供? あれもプレイヤーなのか? だとしたら羞恥心を疑うんだが? だって近づいて来るその子は布切れ一枚しか装備してない。まあ装備と言っても巻き付けてるだけなんだが。

 だからこそその危うさが目を惹きつけるともいうか……


「ロリコン」


 ぼそっと日鞠が呟いた。おいおいあのな、そんな安易にそんな言葉を使ったら本物の人に失礼だろうが。そもそもあんな格好してたら誰でも目が行くし……しかたないんだよ。


「かいちょう! かいちょう! もうすぐアレだよ! だから早く!」

「はいはい、勿論わかってるよ」

「むーはいは一回っていつも言ってる~」

「あれれ、怒られちゃってる私?」

「怒ってます」


 子供が頬を風船の様に膨らませてる。なんか可愛い。てか普通以上にとびきり可愛い娘だ。薄く青が入った色素の薄い髪は神秘的で、その細い手足の甲には何やら模様の様な物が浮かんでる。

 大きな瞳はキラキラと輝いてるし……いやマジで輝いてるからね。瞳孔にラメでも入れてるのかってくらい。なんか……不思議な感じの子供だ。


「じー。ジー」

「いや、口でじーって言うなよ」


 その子が僕の事超見てる。なんかその目で見つめられると落ち着かないな。


「かいちょう、この人が?」

「そだね。どうかな?」

「なんか地味?」

「あはははは」


 おい、この失礼なガキぶん殴っていい? でも流石にそれはまずそうだし大笑いしてる日鞠にもイラッとするからこっち殴っとくか。軽くチョップして黙らせる。


「イターイ」

「わざとらしいんだよ。それよりも何なんだよあの娘は? てかまともな服着せろよ。靴も履かせろ」

「そんなのこの子には意味ないよ」

「意味ないって……」


 何だそれ? やっぱりなにかある奴なのか? 当の本人は僕達の周りを楽しそうに走り回ってる。こうしてるとただの子供にも見える……アホさ全開だけど。


「今のスオウには必要ないから大丈夫。それよりも上観ててよ。上!」

「はぁ? 必要ないってそれ――」


 その時、大気を震わせて夜空に花火が咲いた。特大の一発は始まりの合図。それから連続で花火が上がる。それに合わせて一気に街がライトアップされて雰囲気が変わった。陽気な音楽も流れ出して街全体がお祭ムードになる。

 テンションの高い連中は早速騒ぎ出してるよ。


「いいのかアレ?」

「お祭りだからね。それじゃあ私はそろそろ行くよ。スオウもいっぱい楽しんでね」

「バイバ~イ」


 そう言って日鞠とその子は行ってしまう。一人残された僕はその場に立ちつくす。


「楽しんでって言われてもな」


 一人でテンション上げるのって難しいんだけど……そういう精神構造してないし。取り敢えず色々と見て回るかな? 日鞠が造った街だし興味はあるからな。花火の音に陽気な音楽。皆の楽しそうな声をBGMに僕はレスティアの街に繰り出した。

 第七百六十三話です。

 遅くなりましたね。文章自体はもっと早くできてたんですけど、スローライフの方がですね。結局別の絵にしました。スローライフは次と同時に上げます。

 本当はpixivにもあげたいんですけど、何故か漫画あげようとすると固まるんですよね。自分だけなのかな? 


 取り敢えず次回も目標は一週間後です。ではでは。

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