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命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
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何かが違う

スローライフ 第十二号

挿絵(By みてみん)

 その日は何かが違ってた。その何かがわからないまま授業は始まり、そして日は落ちて行く。そのまま帰ろうと身支度を進めてると「ちょ、ちょっといいか?」と風砂の奴がしどろもどろに成りながら話しかけてきた。


「いや、今日はちょっと……」

「え?」


 風砂の奴が意外そうな声を出した。いやいやこっちにだって予定とかあるからね。次々に教室から出て行く生徒の流れの中で、僕もこのビッグウェーブに乗る。いやまあ、普段の光景なんだけど。

でも何故か風砂の奴は食い下がってくる。


「た、大切な事……なのかも知れないぞ?」

「それなら大切な事じゃないかもしれないな。というわけでさいなら」

「何でだよ! ちょっとは気にしろよ!!」


 風砂の奴が声を荒らげるとは珍しい。けどいまいち乗り気に成れないというか……そうこうしてる内に人の波は薄れ、教室が閑散となる。人が居なくなると肌寒さを感じるな。さっさと帰って暖房の効いた部屋でぬくぬくとしたいものだ。

 けど風砂の奴がな……僕が相手にしてないとわかってるのか、言葉じゃなく無言で見つめる方針に変えたようだ。でも男に見つめられてもな。別に全然心にひびかないよね。寧ろ気持ち悪いって言うか……


「スオウ君」


 扉の方から聞こえる澄んだ声。ドアの方を見ると、そこには雨乃森先輩がいた。頼れるお姉さん的であり壁を感じさせない気さくなお姉さんである雨乃森先輩は、廊下に居るだけで沢山の後輩に挨拶されてる。人望が見て取れるな。美人なのに壁を感じさせないってのは凄いよね。


「何ですか? 彼氏のお出迎えならどうぞ」

「ちょっ、彼氏なんてそんなっちっ違うし」

「そっそうだぞ。変な事言うなよ……」


 二人の頬が赤く成ってる。いやもういいからそういうの。気恥ずかしさを押し込める様に一つ「コホン」と咳払いをして気を引き締めなおす雨乃森先輩。でもその瞳はちょっと恨みがましく光ってる気がする。


「スオウ君、ちゃんと聞きなさい。大事な話しが有ります」

「あ〜……ん」


 歯切れの悪い言葉しか出ない。風砂の奴はかわせたんだけど、雨乃森先輩はそうは行かないみたい。風砂みたいに甘くないからな。優しいけど、甘くはない人なんだ。そこら辺は日鞠の奴と一緒なんだよね。もっと甘やかしてくれて良いと思うんだけどな。


「なんなんです? さっきから一体」

「ようやく観念したようね」

「まあ、こんなしつこく来られたら流石に……」


 僕はブツブツとそうつぶやくよ。それにいい加減気になって来たし。最近はLROも停滞気味だしね。他にかまけてていいわけでもないけど、ここまで二人が言うんだしなにかあるんだろう。


「で、どっちなんですか?」

「どっち? ああ、それは……うぅ~ん、やっぱり内緒かな?」


 雨乃森先輩はちょっと迷ってそういった。これが風砂の奴がやったんならぶん殴ってやる所だけど、雨乃森先輩ならしょうが無い。「どっち?」と首をかしげてる風砂の奴は話についていけてないようだ。あれで理解できないなんてもうちょっと頭の回転早めたほうがいいと思うぞ。僕たちは二つの世界を知ってる訳だから、そのどっちかの話だと分かるじゃん。


「それじゃあちょっと付き合って貰うからね」

「はいはい、なるべく手早く済ませてくださいね」

「それはスオウ君次第かな?」


 背中を向けてそう呟く雨乃森先輩はとことん勿体ぶるつもりのようだ。これでしょうもない事だったら流石に雨乃森先輩だからって許されないかも知れない。




「あっ、スオウ来てくれたんだ」

「別に来たかった訳でもないけどな。この二人がしつこいから……」


 そう言って僕は先行してた二人を指す。すると風砂と雨乃森先輩はそれぞれ申し訳無さそうに頭を下げる反応と、親指を立てる反応とで別れた。その反応の違いは二人の日鞠との距離や接し方の違いが見て取れるような気がした。

 僕は今、生徒会室に居る。まあ、結局はここだよね……って感じなんだけど、なんか最近ますますアウェー感が強くなって来た気がするんだよね。それは一概に僕だけが生徒会のチームじゃないからだろう。

 こっちでもあっちでも……なんかLRO初めてから生徒会の結束ってのが強まっている気がするんだ。前は日鞠を信奉する奴等が集まっているってだけの感じだったけど、今はもうそれだけじゃない……みたいな?

いや、根本は変わらず日鞠の信者なのは変わってないんだけど、繋がりがそれだけじゃなくなったような……上手く言えないんだけど、LROのリアルでは絶対に体験出来ない戦闘とかで絆が深まってるのかも知れな。

 今までは縦の繋がりが一番強かったわけだけど、横の方にもソレが広がってる感じ。でもそのせいで僕の肩身はますます狭くなってる。そもそもがあんまり受け入れられて無かったのに他の絆が深まった分、疎外感半端ない。


「なんだかスオウがここに居るのって変な感じだね」

「そんなの最初からそうだったけどな」


 てか日鞠の奴がそれ言うなよ。お前がそんな事言ったらなんか本末転倒何だけど。誰のせいでここに居ると思ってんだ。僕は不満気な顔をするけど日鞠の奴は終始ニコニコとしてやがる。そんな顔されてたら僕がふてくされてるのがアホらしくなってくる。取り敢えずここに連れて来られた要件位は聞くか。


「何があるんだ一体?」

「うーん、一言でいえば『変化』かな?」

「変化?」


 日鞠の奴の勿体ぶる癖が出てるな。一回で分かるように言えないのかこいつは。まあ今さら何だけど……そもそもどっちの事を言ってるんだ? リアルか、それともLROか。


「そう変化。向こうでもこっちでも、刺激の為には変化が大切でしょ」


 刺激ね……日鞠の奴は十分刺激的な毎日を送ってる様な気がするけど。毎日色々と動いてるし、そもそもこいつで退屈なら普通の高校生なんて変化なさ過ぎだろ。学校に来て授業受けて部活して……基本そのローテーションだ。日鞠はそもそものローテーションから外れてる訳だし、変化有りまくりな方だ。


「お前の求める変化はおっかないんだよ」

「そうかな?」


 キョトンとした顔してるけどその奥の表情が僕には見える。わかってる癖に……何でもかんでも大袈裟にしたがる奴だからな。日鞠の変化は常人の考えてるソレとはスケールが違うんだよ。そろそろ気づけ。


「まあそんな訳で変化を求める為にも皆の意見が必要です。スオウも来たからには参加してね」

「何に?」

「勿論生徒会活動だよ。これから募る意見はこれまでにない卒業式の案だからね」

「別に普通で良いと思うんだけどな」


 結構卒業式って完成されてると思うんだ。あの独特の緊張感や静寂。進行していくプログラムと共に思い出していく三年間の日々。そしてその思いを溢れさせる合唱。泣く訳ないと思いつつもウルっときちゃうよね。だから無理に変える必要なんてないと思う。


「普通でも良いけど、アレンジは加えたいよ。高校生活は一生の内に一度しかないんだよ。とびきりの物にしないと!」

「そんなに気負う必要なんてないだろ? 余計な事しなくても皆それぞれ良い思い出にしてくれるって」


 思い出って大抵美化される物だろう。他人が何かする必要なんてない。それにあの儀式をやるから卒業した気になるのかもしれない。下手に変えなくていい事もあると思うんだ。


「良い思い出にしてほしいから頑張る――何もしなくても確かに言いのかも知れないけど、私達は生徒会だから。生徒会としてやらなきゃ行けない事がある」


 日鞠の声と言葉に迷いなんて一切ない。そして周りのメンバーもその言葉と意志に反対は無いようだ。どこまでもついていくみたいな顔をしちゃってるよ。ほんとブレない奴等だな。まあ、僕の場合はその結束が苦手なんだけど。一枚岩としてはいいと思う。そもそも僕一人が反対した所でどうにかなることなんかないしな。


 てな訳で、生徒会らしく会議が始まった。四角く並んだ机にそれぞれ着いて意見を交わす。――っておい、僕の座るスペースがないんだけど。いや、普段居なかったししょうが無いけど……そもそも寄り付こうともしなかったけども……


「まあまあ、ほらここが開いてるよスオウ」


 そう言って隣の椅子をペシペシ叩く日鞠。日鞠の奴は満面の笑みだけど、他の奴等の視線がヤバイ。『そこに座ったら殺す』という怨嗟が聞こえてくる気がする。じゃあ空けとくなよ――とも思うけど、信仰心の強いこいつらは日鞠の隣になんて座れないんだろう。それを裏付ける様に日鞠の座ってる長机だけ左右に誰もいない。独占してる形だ。

 ある意味、ハブられてる様に見えなくもないけどな。けどこいつらに限ってそれはないから遠慮なんだろう。


「う~ん」


 取り敢えずバイプ椅子でもないか視線を巡らせてみる。けどどうやらそれはないようだ。でもだからと言って死にたくはないしな。


「ん!」


 物が多い割に整理された生徒会室。そこで僕は一つの光明をみつけた。あるじゃないか開いてる椅子が! そこにむけて僕は歩き出す。どこに座るんだ? という視線を受け流しつつ僕はその椅子にドカッと座る。皆が座ってるパイプ椅子とは違う座り心地。お尻を包み込む感覚に肘掛けだってある。

 リクライニングだって完備だ。キャスターもついてスイスイと移動も出来て完璧だ。なんか高そうな椅子。この部屋で一番高そうなこれは……勿論会長用の椅子だ。つまりは日鞠が普段から座ってる椅子って事に……


「はっ!」


 脚まで組んで椅子を堪能してたけど、これって元々普段から日鞠が使ってる奴で……だからつまりは――失敗したかもしれない。だってこれには日鞠のぬくもりが宿っている訳で、ある意味聖域だったのかもしれない。窓を背にし、部屋全体を見渡せる位置に陣取ったこの席は会長という立て札が立っていて、この椅子もだけど、机だってなんだか高級感が違う気がする。

 校長室にあるのよりもいい物なんじゃないだろうか。


「まあスオウがそこでいいならいいよ。ほらみんなはじめるよ」


 なんだか文句言いたそうな奴等の視線が痛いけど、日鞠の進行で見逃された様だ。良かった良かった。提案されていく意見に、誰からともなく出される言葉が重ねられていく。皆積極的だな。やる気が満ち溢れてるから当然と言えば当然なんだけど……僕はというと頬杖をついて眺めるだけだ。

 でも時たまは日鞠の奴が話しを振ってくるからそれに適当に返してる。けどそれでも日鞠の奴に誘導されちゃうんだよな。適当な筈が、いつの間にか矢面に立ってるとか……そんな場面に変えられる。


 まあだけどなんやかんやで時間は経っていく。遅いか早いかは体感の問題だ。そしてそれなりに白熱してたおかげかそれなりに早く感じたよ。窓の外を見ると日はすっかり落ちている。窓をガタガタと揺らす風は触れても居ないのに寒さを感じさせる。いつの間にか北風が強くなってるようだ。


「もう帰っていいのか?」


 会議も終わったようだしもうここに居る理由なんてないだろう。そもそも来た意味もあんまり無かったような……重要なことなんてなかった。何のためにあの二人は来たんだか。


「スオウもう帰る気?」

「もう終わっただろ。ここ僕的に居心地悪いんだよ」


 針のむしろ状態だからな。一刻も早く帰りたい。


「それはスオウのせいでもあるよ。スオウの方からだってもうちょっと歩み寄っていいと思うな」


 日鞠の奴が耳元でそう囁く。他のやつに聞こえないようにって配慮なんだろうけど、こそばゆいっての。それにそんな事いわれてもってのもある。もともとお前という存在が溝の原因なんだけどな。けどまあ、ここまで居づらく成ったのは僕にも多少の原因はあるかもしれない。分かり合えないからって諦めてたら、絶対に分かり合えることなんてないんだから。


「でも今更どう歩み寄ればいいのかも……」


 僕はまだここに居る生徒会メンバーを盗み見てそう呟くよ。人と人との関係は難しい。特にソレが先入観なんて物で塗り固まれた後なら尚更だ。みんな僕のことよく思ってないからな。それはまあ……僕もそうなんだけど。わかってくれるやつだけでいいと思ってる。わざわざ仲良くしよう――なんて感情は自分にはあんまりない。

 今までもよく嫌われてたからかな? そこら辺を気にしてないんだよね。友達百人なんて思ったことないや。繋がりの薄い百人なんかより、密な十人とかの方が重要じゃなかろうか?


「別に仲良くまで行く必要はないかもだけど、嫌われたままなんてやだよ」

「それはお前の感情だろ」

「そうだよ。私がやだし。やっぱりもっと私がスオウのいい所を言ったほうがいいんじゃ……」

「それはやめろ。学習したろうが」


 日鞠の奴は大抵失敗しない。けど、僕の周囲の人間関係はどうしようもないのである。だから日鞠自身は何もしてくれないのが一番。でもそれじゃあモヤモヤするんだろう。でも日鞠が動けば動くほど逆効果なのは中学時代に証明されてるからな。


「よっと」

「やっぱ帰るんだ……」


 鞄を持ち上げた僕を見て日鞠の奴がジト目で見てくる。そんな目で見られてもやることないし、いる意味もないじゃん。それとも僕が居なきゃいけない理由でもあるのか?


「なにかあるのかよ?」

「寧ろ今からが本番だよ。大イベントがあるからね」

「大イベント?」


 なんだそれ? 悪い予感しかしないんだが。日鞠は良くも悪くも周りを巻き込むからな。そして大体貧乏くじを引くのが僕だよ。周りを見るとさっきまでの資料とかを片付けながらそれぞれがリーフィアを持ち出してる。リーフィア……て事は、今度はLROか。全員じゃない様だけど、生徒会は確かそこまで長くやってなかった様な?

 日鞠はどうか知らないけど、生徒会ではここでしか向こうに入らない様にしてる筈だった。それで今現在LROの最大勢力何だから恐れ入るというかなんというか。


「LROに行くのなら帰らないとリーフィアないぞ」

「じゃじゃ~ん! あります!」


 日鞠がその手に持ってるのは確かに僕のリーフィアだ。いや、なんであるんだよ。僕の納得行かないという視線に気づいてるだろうに日鞠の奴はニコニコとしたままだ。不法侵入がどうとか色々と言いたい事はあるけど……今更過ぎるからまあいいや。


「はい、スオウ」

「別にいいけど、向こうで何するんだよ? こっちも忙しいんだけど」

「忙しいって進展ないって聞いてるよ」

「なんでも知ってる奴め」


 最近の動向とか言ってなかったのに……いやまあちょっと調べれば分かるだろうけど。取り敢えずうけとったリーフィアを僕は被る。頭に掛かる重さはいつもどおり。けどいつもはベッドで横になるからな……椅子に座ったままだと首が痛くなりそうだ。周囲の人達は慣れてる様で机に突っ伏したり楽な姿勢をしたり色々だ。

 よくもまあ皆あんな固い椅子で我慢できるな。絶対、体痛くなるだろ。僕は生徒会長の椅子をさり気に使ってよ。


「スオウ、入ったらニューリードにきてね」

「ニューリードって言っても広いんだが?」

「大丈夫、行けば分かるよ」


 そう言って日鞠はさっさと向こうに行ってしまう。残ってるのはLROに行かない居残り組と僕だけだ。日鞠が居なくなると途端にアウェー感が増す。だからとっとと僕も向こうへ。


「おい」

「ダイブ――」

「無視すんな」


 リーフィアの上からチョップかます副会長。この狂信者には近づかない様にしてるんだけど……なんか背筋がゾクゾクするよ。こいつは危険だ。日鞠のことを心棒する心が桁違いなんだよな。だから僕の事を毛嫌いしてるのも人一倍な筈なんだけど……


「何ですか副会長?」

「いや、精々気をつけてな――と」

「え?」


 副会長が心配? 僕の事を? LROに潜ってる間に殺る気か? そうとしか考えられないんだが。


「何する気だよ」

「何ってなんだ? なんにもしないさ。そんな事しなくても選ばれるのは私だからな」


 そう言って勝ち誇ったような顔をする副会長。選ばれるとかよくわかんないけど……その顔は見てて気持ちいいものじゃない。だからか、僕はついついいっちゃったよ。


「だれがあんたなんかに――んっ!」


 思わずでた言葉を手で抑えこむ。副会長の奴は聞こえなかったのか何もしない。けど伺うように視線を向けると僅かに笑ったように見えた。口角が釣り上がったような? でも、その後直ぐに離れていったから気のせいかも知れない。


(何であんなこと……)


 胸に湧くそんな思い。でも僕はソレが何なのか――分かってない訳じゃない。僕は一度息を吐いて心を落ち着かせる。そして気を入れ直して世界を渡る言葉を口にする。


「ダイブ・オン」

 第七百六十二話です。

 滅茶苦茶遅くなりましたね。いやー引っ越しとかあってその後だらだらしてたら、こんな事に成ってしまいました。ごめんなさい。

 これからはちゃんとやっていきます! 

 次は多分一週間後に上げます。

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