三女の対峙
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」
盛大な雄叫びが大地に響く。朝も冴え冴えな今の季節に全く元気な奴等だ。きっと周辺の住民達も迷惑してるだろう。いや、結構いつも五月蝿くしてるから大丈夫か?
それにしても……一体どれだけ興奮してるだっての。大地ってか校舎が揺れている。
「凄いな。そんなに……なのか?」
近くの男子生徒がそう呟く。凄いって……多分摂理が来た時とか同じ反応してたぞお前等。超煩かったしな。他人の振り見て我が身を振り返ったか?
「外国人らしいぞ」
「金髪美女……か」
ゴクリ__と喉の音が鳴る。羨ましいのかお前等? 羨ましいんだろう。ホームルームが終わると同時に見に行きたいと顔に書いてある。
「おい、お前等。桜矢さんが俺達にはいるだろうが」
一人の男子生徒がそう言って教室の前方に居る摂理へと視線を投げる。摂理の奴は隣の生徒とお喋りしてる。もうクラスメイトとは壁を感じずに接せれるようだ。学校ではアイツはよくニコニコしてる。楽しそうで何より。
けどそんな笑顔が男子たちを虜にしてる。悩ましい物だ。
「やっぱりいいな」
「ああ、やっぱいいよ」
「うんうん」
摂理の姿を遠目に眺めながら男子生徒の目元が細くなって頬が緩んでる。そろそろ慣れろと思う。そりゃあ、摂理の奴は美少女だけどさ、毎回毎回見惚れてるなよ。
「天使だ……」
「いや、大天使だろ?」
「もう女神でいいんじゃないか?」
ほんと、呑気な奴等……そんな事を考えてるとふと摂理の奴と目が合った。それと同時にこっちに向かって手を振ってくる摂理。僕は取り敢えず目をそらす。傷ついたかも知れないけどしょうがない。
だって禍々しい視線が刺さって来るんだもん。摂理のせいで僕への風当たりは厳しくなった感は否めない。ただでさえ元から厳しいのにさ、摂理の登場で更に疎まれてるよ。
「一体どんな奴なんだろうな?」
「え? あぁあ……」
突如そう言って来るのは秋徒の奴だ。秋徒も気になってるんだろう。けど、僕はそんな秋徒に生返事しか返せない。なぜなら僕は知ってるから……誰が転校してきたかを。そう、誰がって事をね。
取り敢えずクラスも違うし午前中は平和が続いた。摂理の時と同じでもみくちゃにされてるんだろう。助かった。日鞠や摂理は悪意なんて無く僕へ迷惑掛けるんだけど、アイツの場合意図的に迷惑掛けてきそうなんだもん。
「スオウ、お弁当食べよ」
「ん、あぁ」
僕の席に弁当箱をもった摂理と鈴鹿がやってきた。別に毎回毎回わざわざ来る必要もないと思うんだけど。僕は昼休みくらいゆっくりしたいんだよね。摂理の奴が来たら妬み嫉みがなぁ……まあ教室で食べる訳でもないけどさ。
今は鈴鹿の教えてくれた場所があるからまだいい。教室だと味がわかんなくなる……色々と刺さって来るんだもん。
てな訳で僕も鞄から弁当箱を取り出して二人と共にここを離脱だ。
「…………あれ?」
鞄の中を漁って僕は焦る。うん……取り敢えずもう一度確認だ。
(やっぱりない……な)
端的にいうと弁当箱がない。それだけである。けど、今の僕には深刻な事だ。だって育ち盛りだよ。昼飯食べずに残りの授業を乗り切るなんて無茶だ。朝、確かに受け取ったと思ったんだけど……気のせいだったかな?
いや、今はそんな事よりも財布の中を確認したほうがいいか。
(う……ぐ)
思った以上にない。Suicaの方にはどれだけ残ってたかな?
「何してるの? 早くしてよ」
「そうだよスオウ。もう私お腹ペコペコだよ~」
容赦なく急かしてくる二人。こっちだってペコペコだっての。こうなったらどっちかに借りるか? それしか無いような……けど、どこか抵抗感がある。そもそも鈴鹿とか貸してくれそうにないよな。そうなると自動的に候補は摂理に絞られる。摂理はブルジョアだし、簡単に貸してくれそうではある。けどそれは摂理の教育的にどうなのかと思うんだ。摂理はお金に疎い。というか、余り関心がない。
それは仕方ない事ではあるんだけど、価値は知っておかないとだろう。そうでないと当夜さんが可哀想じゃないか。だって当夜さんが摂理の為に残しておいてくれた財産だ。具体的な金額とか聞いちゃいないけど、それはそれはかなりの額らしい。
天道さんがそう言っていた。摂理はお金が減るって感覚がない。日常生活では減りようがない金額なんだろう。羨ましい限りだけど、金銭感覚が養えないってのは考え物だ。そもそも摂理の奴は小銭とか見たこと無かったからな。
もしかしたら摂理の奴は金は溢れ出る物と思ってるかもしれない。それは将来的にとても不味い。とても不味い……んだけど、今の僕もとても不味い状況だ。これからの半日を乗り切る為にも昼飯は必須。
(出して貰えよ。どうせ有り余ってるんだからいいだろ)
(何言ってるんだ。そんな事して誰にでも貸すようになったらどうするんだ)
僕の中の天使と悪魔が顔を出す。摂理はいわば真っ白な奴だ。これからどんな様にも染まるだろう。それは確かで……否応なし。真っ白なままでなんて誰も居られないのがこの世界だ。
摂理がこれからどんな風になるか……それは誰にも分からない。けど、僕達は色の一部にはきっとなる。だから……摂理の前で軽はずみな行動は取りたくない。
「摂理、どうかお金を貸してください」
「駄目かな」
あれ? いつの間にか口を突いて懇願しちゃってるぞ。しかも速攻断られたし。摂理の奴は僕が思ってたよりもずっとしっかりしてた様だ。
「本当はね……本当は貸してあげたいよ。けど夜々や日鞠から言われてるから」
なるほど、ちゃんと釘は刺してるって訳か。それはそれは良いことで。
「あっ、でも自分の為だけにって言われてるから私がスオウに上げたいのなら上げちゃえばいいのか」
摂理の奴がとんでもない事言い出してる。まあ最後は結局摂理自身の意思なのは間違いないんだけどな。でも折角日鞠達が釘を刺してるのに僕きっかけでそのたがが外れたとあってはなに言われるか分かった物じゃない。
僕はカードを取り出そうとしてる摂理を押し止める。
「いや、やっぱいいよ。なんとかするさ」
「なんとかって……どうやって?」
「それはやっぱ――」
僕は秋徒の奴をその視界に捉える。やっぱほら、秋徒なら気兼ねなんてしなくていいから。
「おい、秋――」
――バン!! と勢い良く開け放たれるドア。そして視線の集中と同時に教室中に声が広がった。
「グッドアフタヌーンで~~す、皆さん!」
教室中の動きが止まる。一体何事か――と動き出す者は居ない。皆突然の金髪美少女の登場に思考が追いついて無いようだ。
「あっ、スオウこれ、お弁当デス♡」
「「「なあああああにぃぃぃぃぃぃぃ!?」」」
僕の名前が脳に伝わった瞬間、クラスの男子共が吠えた。なんでこいつ等は僕の係る事にこんなに反応するんだよ。実は僕の事大好きなんじゃね? 気持ちわる……自分で思って「おゲエ~」となった。
「家のテーブルの上に置きっぱなしだったですよ」
テクテクと僕達の所まで歩いてきたクリス。その歩みに他クラスへ踏み込む躊躇なんか微塵もない。流石外国人、心臓が違う。
「てか、制服……」
朝、家に居た時は制服じゃなかったのに。僕の言葉を受けてクリスの奴は見せびらかす様に回って見せる。
「日本の学校はいいデスね。こんなキュートな制服があるんですもん。どうですか?」
「どうって何がだよ?」
「勿論、エンジェルみたいかって事ですよ」
えらく大きく出たな。普通自分から「天使みたい?」って聞くか? 聞かないだろう。どんだけ図々しいんだよ。いや、確かに見た目だけなら天使っぽくはある。認めはしないけどな。
「はっ、普通だろ」
「むっ……確かに摂理には勝てないかもですけど、イケてる筈デス」
「大丈夫、とっても可愛いよ!」
「摂理に言われてもあんまり嬉しくないです」
「なんで!?」
せっかくフォローしたのに拒否られてる摂理だった。まあ、クリス自身が勝てないとか言ってる摂理にフォローされた所でな……って感じだもん。クリスにはきっとこう聞こえてたんだろう。
「可愛いよ(私以下だけど)」
これじゃあ嬉しくないのも当然だ。取り敢えず僕は弁当箱を受け取ろうと手を伸ばす。けどその手は宙を切る。
「おい……」
「何ですか?」
あっけらかんとしてるけど今避けただろ。なぜ避けた? 僕は目で訴える。
「はぁ私は『可愛い』が欲しいデス」
なるほど、弁当が欲しければ『可愛い』と言えと……そう言う脅迫か。いや、別に言うくらいどうでも良いんだけどね。それだけでいいなら安いものだ。
「可愛い可愛い――ほら寄越せ」
「もう一回」
「は?」
何でわざわざもう一度言わないと行けないんだよ。僕は抗議の目を向け――
「もう一回」
「べ……ベリーキュート」
有無を言わせない迫力に気圧されて思わず親指まで立ててしまった。くっ、忘れそうになるけどクリスはリアルな刺客なんだよな。こいつは決して味方なんかじゃない……明確な敵……なんだ。
てかそれを弁当のやりとりで思い出すって妙に平和じみてるよな。
「取り敢えずよしとしてあげますデス」
ほっ――そう思ったら「いいな」って声がボソッと聞こえた。僕はその声が聞こえなかった振りをする。もう流石にそろそろ弁当食いたいんだよ。けどクリスの奴はその声を拾い上げる。
「摂理も言ってもらえばいいデス」
「はあ!?」
思わず思ってた以上の声が突いて出た。だってなんてこと言ってんだこいつは? 冗談もほどほどにしとけよ。いや、マジで冗談で済ましたい……でもなんか既にキラキラとした期待――と言う名のプレッシャーを感じる。
「いいの?」
いや、よくねーよ……とはその目を見ては言えない。でもなんとか回避したい。だってクリスに言うのとはなんか違うと言うか……
「そ、そのうち……早くしないと昼休みも終わるし……」
「私言ってもらった事無いのにクリスちゃんだけずるい」
「そう……だっけ?」
クリスよりは長い付き合いだし一回くらい言ってるだろ? なんかそんな気するぞ。
「そうだよ! 私いわれた事無い」
「それは問題デスね。摂理にも言うべきデス! でないとコレは渡しません」
またまた弁当が人質に取られた。くそ、さっさと攫っとくんだった。どっかの誰かさん程にヒロイン度高いぞ僕の弁当。
「うんうん、女の子は可愛いっていって貰いたい生き物だよね」
「「「だよね~」」」
教室で既に弁当を広げてる女子共がなぜか共感してやがる。
「摂理はもう言われ慣れてるだろ。今更僕が一度いったってな……」
「それは違うでしょうがぁぁぁぁ!!」
「そんな事もわかんないの? これだから男って奴はぁぁぁぁ!!」
「待て! 男子全部がアイツみたいなアホじゃないぞ! そのくらいの意味なんてわかってる! なあそうだろ?」
「ああ勿論だ! わかってる。わかってるさ! 俺達の言葉が積もった所でなんの足しにも成らないって……でも言わせてくれ桜矢さん!! 君は可愛い!! 天使だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「そうだぁぁ可愛いよぉぉぉぉ!」
「天使ぃぃぃ俺の天使ぃぃぃぃぃ!!」
ヤバイ……教室の空気が異様に高まってる。てか、皆変なテンションになってないか? 薬でもキメてるのかこいつら……そう思う程に異様な盛り上がり。
「流石デスね摂理。さあスオウ!」
この盛り上がりの中で言えと? いや、考えを変えるとチャンスなのかも? このテンションに紛らわせれば恥ずかしさなんてどこ吹く風かも。
「摂理……あのな――」
言葉が詰まった。だって摂理の目は冗談を許してくれる目じゃない。その目は求めてる。本心と言うか、寄り添える心を。摂理には周りの言葉なんて入ってないのかも。真っ直ぐに射抜く様な瞳……その目に嘘は付けない。
「ふ~」
取り敢えず一呼吸置こう。煩かった男子達が女子に叱られてその声を萎めてく。空気が沈静化して散らばってた視線がこっちに集まって来る。
(あれ? 鈴鹿の奴居なくね?)
気付いたら鈴鹿の奴が姿を消している。アイツ絶対面倒くさくなったから消えやがったな。相変わらずドライな奴だ。まあ鈴鹿がいたってどうにかしてくれるとは思わないけどさ……逃げられたと思うとなんか悔しい。
変に静まった中、お昼の放送が僕の心の支えだ。なんかよく分からない変な音楽が流れてる。一体誰のセンスなのか疑いたくなるけど、ある意味、この気の抜けた音楽のおかげで僕はこのプレッシャーに耐えられてる気がする。
ゴクリ――と唾を飲み込む。逃げられる空気でもないし逃げられる目もない。冗談めかして言うのも許さない。詰みですか? つみですね。覚悟を決めろ……自分の本心を言葉にすればいいだけだ。
(本心……本心ってなんだ?)
ふとそう思う。目の前の摂理に対して思ってる事……それが本心。でも、やっぱりそんな特別な事は無いような? さっきまで盛り上がってた男子達と同じ。素直に可愛い――とそう思う。飛び抜けて可愛くて綺麗で、どんなに人混みに紛れようときっと摂理は目立つだろう。
それくらいずば抜けてる。そんなに長い付き合いな訳でも無いけど、きっと誰もが摂理を見つけるのに苦労なんてしないだろう。日鞠の奴は付き合い長いからどこにいたって直ぐに目に留まる。でもそれは付き合い長い僕だから出来る事何だ。日鞠の奴は色々と規格外だけど、見た目は「え?」と言うほどに地味だからな。
でも摂理は違う。摂理は誰から見たって美少女だろう。誰が見たって可愛い言うだろう。だから僕も「可愛い」とやっぱり思うし、それしか言いようがない。けど、それで伝わるだろうか? 満足するのか? 天使や女神という奴も居たけど、そこまでは流石に思ってない。
(でもまあ、摂理自身が望んで「可愛い」と言う言葉を求めてるんだし、文句は言わない……よな?)
取り敢えず言わないと状況が動かない。ここは言うしか無いんだ。僕は心を決めて口を開ける。
「……か……かわ――」
「ちょっと待ったぁぁぁぁ!!」
激しい音を立てて教室のドアを開いた輩に一斉に注目が集まる。どこのどいつが僕の言葉を邪魔したんだと視線を向けると、そこにはそれなりの人数がおしかけてた。一体今度はなんだ? そう思ってると奴等は突如叫びだした。
「確かに桜矢さんは可愛い。そこに異論は無い。だが我がクラスのクリスさんだって負けてない! いや寧ろ我らはクリスさんを押そうじゃないか!!」
「おお~~~!!」
またややこしい事を言い出すアホがいっぱい……つまり彼らはクリスが転入したクラスの面々なんだろう。多分このクラスに日鞠や摂理が揃ってる事が羨ましかったんだろう。そこにクリスという外国人美少女が現れた。持ち上げずには居られないのかもしれない。
けどそんな他クラスの宣戦布告に等しい言葉をこのクラスの摂理派が見逃す筈が無い。
「いきなりなに言うんだ!? 桜矢さんこそが地上に舞い降りた天使! お前達だって昨日までそう言ってただろうが!!」
「昨日までの俺達と今の俺達を同じと思うなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
窓ガラスを震わせる大音量でそう言い放つ先頭の奴。明らかに昨日までの自分をあやふやにしようとしてるよな?
「昨日までは言うなれば対岸の向こう側に舞い降りた天使を崇めてた状態だったんだ。だが今日からは違う。俺達の元に……そう、真に俺達の元にも天使が舞い降りた!! だからこそごめん……桜矢さん。俺達はもう君だけを見てはいられない!!」
「はあ……ってあれ? これって私振られてるみたいなんだけど……」
確かに摂理が振られたみたい。納得出来ない感じの摂理。けどそれは摂理本人だけじゃない。摂理派の奴等だって自分達の天使がこんな扱いされて黙ってる訳がない。
「お前等、桜矢さんになんて酷い事を……」
「だからこそ、誤ったんだ。これは俺達の決意の現れ。俺達は全力でクリスさんを支持して行く!!」
「つまり……戦争って事か」
「ああ……」
奴等が何言ってるのか僕にはよく分からない。よくもまあ、そんなことで火花散らせるな。
「うぅ……私のこのもやっとした気持ちはどうすればいいの?」
「ごめんデス摂理。どうやら私の可愛さも罪深かったようデス」
「クリスちゃんは本当に私の味方なの?」
「それはそれ、これはこれデス」
「そんな〜」
涙目な摂理に反して、クリスの奴は自分の支持者達に「ありがとデ〜〜〜〜〜ス!!」と返して盛り上げてた。クリスの奴は摂理と違って外国人らしいフレンドリーな一面があるからな……強敵になりえそうだ。言うなれば男子達にとって摂理は触れるのも躊躇われる高嶺の花だ。か弱くて守ってあげたい感じだろう。
それに対して、クリスはヒマワリみたいな感じだろうか? それも大輪の中、一際大きく美しく咲き誇ってるヒマワリだ。金髪だしそんなイメージがぴったし。僕的には食虫植物なんだけど……他の皆はヒマワリだろう。
「これは不味いな」
「何がだよ秋徒?」
いつの間にか近くに来てた秋徒の奴が何やら深刻そうな顔してる。馬鹿らしくて結構だと思うけど? 仲介主義者としてはこんなくだらない事も放って置けないのか?
「分からないのかスオウ? 摂理は誰もが見惚れる美少女。クリスだっけか? 彼女もあれだけの容姿とあの性格ならきっとこれからファンを築くだろう。そうなればこの学校は摂理派とクリス派に二分され……いや、二分までは行かないか。まだこの学校にはアイツが居る」
「アイツって日鞠か?」
話の流れ的にそうなるよな。そもそも今この学校を牛耳ってるのは日鞠だ。だから最大勢力は日鞠派なのである。まあアイツは美少女? だけど。でも確かに日鞠がいたら大変な事になりそうだよ――
「あれれ~なんだか騒がしいね。どったの〜?」
――な、って来ちゃったよ! タイミングがいいのか悪いのか……あれ?
「日鞠、丁度良い所に来ましたね。これで役者は揃いました」
「ちょっ、日鞠ちゃんを相手にとか無理だから。やめようよ」
「何言ってるですか摂理? いずれは倒さないといけない相手デスよ。彼女こそ摂理の最大の敵デス。わかってるでしょ」
「それは……そうだけど……」
ゴニョゴニョと何やら話してる二人。その間に女子達が事の顛末を説明してた。
「ふ〜ん、摂理ちゃん派とクリスちゃん派が出来てるんだぁ。二人共可愛いもんね」
そう言って微笑む日鞠。そんな笑顔に対峙してた男子達が罰悪そうに笑う。彼らも日鞠は別格なのだろう。まわりは別段気付いてない様だ。けど、僕には日鞠がくちょっとだけいつもと違うように見える。う〜んでも気のせい?
するとクリスの奴が一歩進み出てこういった。
「ふっふ、日鞠……その余裕もここまでデス。この学校の真のヒロインは誰か決めようじゃないデスか!!」
戸惑う周囲。クリス派の奴等でさえついていけてない。けどそんな中、やっぱり一番に返す奴はアイツしかいない。
「それ、面白そうだね!」
日鞠の安直なその発言でこの学校はかつて無い混沌の渦を巻き始めたんだ。
第七百五十九話です。
ますます遅くなってごめんなさい。取り敢えず一周で書ける様に頑張ります。そして日数を短くして行きたいです。
次回はなんとか一週間で上げたいです。