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命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
722/2701

凸凹コンビ

「やっほースオウ。ここが拠点。境界線上の宮廷……」

「アホな設定を加えるな。なんだそれ」

「スオウくん昨日振りですね」

「ラオウさんもようこそ。中でくつろいでてください」


 しばらくしてから現れた二人はラオウさんとメカブだ。この二人……ちょっと強烈過ぎる。中に入ってと言ってたのも流石にこの二人を屋外に晒しておくことは不味いと判断したからだ。ラオウさんは最初とっても衝撃受けたけど、接してく内に多分僕は慣れてたんだろう。しかも会うのはアキバってある意味で特殊な空間だったしね。

 けどこのご近所に彼女がいる……それは違和感しかなかった。だって遠くからでもひと目で分かるし、民家の塀を軽く突き破ってるんだもん。さっきから時々聞こえてた悲鳴はきっとラオウさんを見たご近所さんが驚愕したんだろう。ハッキリ言ってシスターの格好してても怪しいし、逆に言えばシスターの格好だからこそ怪しい。

 だってあんなシスター居ねえよ! 筋骨隆々だもん! そしてメカブの奴はメカブのやつで……ね。なんか目がチカチカしそうな ジェケットにデカイサングラスはお菓子にトッピングする様なチョコレートみたいなのがいっぱい散りばめられてて、かぼちゃパンツはもこもこで、脚を覆うしましまのレギンスは目を回しそうな色使い。靴は厚底のチュリービーンズみたいなのだった。

 絶対に一緒に歩きたくないよ。誰か止めろよ。いや、お兄ちゃん止めろよ。


「あれ、シャアは?」

「アレは時空管理局に捕まった。惜しい奴を亡くしたわ。けど大丈夫。全ての使命はこの私、メーカーオブエデンが受け継いだ。何も問題ない」

「あっそ」


 どこの世界にそんな管理局があるのかは知らないけど、とにかくお兄ちゃんは来ないようだ。まあそもそもこういうイベント事に来るような人でもなかったけど。そう思ってるとなんだかえらく可愛らしい声が聞こえてくる。


「あっそって何だよ! もっと興味持てよコラ! 食っちまうぞ!!」

「うお、なんだ!?」


 いきなりメカブの胸の谷間に挟まてた不気味な黒ウサギっぽい人形がしゃべりだした。谷間だったからスルーしてたのに、これじゃあ直視するしかないじゃないか! くっ、相変わらずでっけーな。日鞠のを普段見慣れてると尚更……


「お前、こっちじゃなく胸見てるだろ?」

「いやいや、黒ウサギを見てるよ。万乳引力に引き寄せられてなんか無いから」

「そんな言葉作ってる時点で惹かれてんじゃねーか! メカブ、こいつは危険だぞ。お前の処女狙ってる!」

「処女言うなああああああああああ!!」


 ブルンと震えたメカブ。その動きは勿論胸にも伝わって、黒ウサギが射出された。


「おっと。で、なんなのこれ?」

「それは管理局に捕まった奴の仮初めの体。魂を変異定着させたらしいわ。全く、しぶといと言うかなんというか。ただの口うるさいマスコットに成ってざまあないわね」

「つまりはロボットみたいな物か? この向こうでシャアが見てると」


 なんとも彼らしいけど……さっきから自分に向かって噛み付こうとしてるんだこれ。ガウガウガウとえらく鋭く尖った牙をガキンガキンと鳴らしてるし……凶暴すぎだろ。


「シャアなんてアダ名俺は認めてない。負け犬みたいじゃないか!」

「だって真名を呼ぶことは許されないとか言うから……前のよりもシャアの方がカッコイイかなって。リスペクトしてたじゃん」


 くっそダサかったけど、仮面とか被ってたしね。だから気に入ると思ったんだけど。


「アレはリスペクトなんかじゃない。自分の力はそこのメカブとは次元が違うからな。あの仮面にはそれを抑えこむ力があっただけ。あんな自分に酔ってるキャラクターと一緒にしてもらっては困る」


 可愛らしい声で渋いこと言うじゃないか。いや、言ってることはめっちゃ中二病だけどね。けどまあ不満だというならしょうが無い。


「じゃあそうだな……今っぽく『フル・フロンタル』でどうだろう? かっこ良くない? でもやっぱりフル・フロンタルって呼ぶのは面倒だな。フフタルとか原型留めてない感じで良いんじゃないか?」

「もう仮面関係ねーじゃん! まあこの姿には合いそうだけどな!!」


 何故かいきなり目がチカチカ光りだした。てかこいつ、動くのはどうやら頭だけらしい。体はふにゃふにゃしてるからそっちはモノホンのぬいぐるみなんだろう。頭部分に主要なパーツが集まってる感じか。

 でもそれじゃあ置いたら倒れるよね。今の技術じゃ頭を自由自在に動かすので精一杯だったのだろうか? でもさっきから頭だけは異様に動くから余計怖いよねこれ、首元の付け根部分のリングの上はもう縦横無尽状態だよ。


「どうやら気に入ったみたいだからこの黒き長耳の使者の名前は『フフタル』に決定だね」

「ああ……まあ気に入ったのなら僕としても嬉しいよ」


 取り敢えずメカブがフフタルの前に言った言葉はスルーしとこう。いつものことである。突っ込みたく成ったけどここは我慢だ。面倒だからな。そもそもメカブとか突っ込む所多すぎるんだ。絶対構って欲しくてワザとやってる部分あるだろ。

 だからそれに乗っちゃいけない。乗ってしまったら、もっと調子に乗るぞこいつ。


「ふふ、フフタル……不気味だから投げ捨てようかと思ってたけど、なんだか愛着持てるかも」

「お前、自分の兄になんてことを……」

「私の兄は死にました」

「死んでねえよ!!」

「だからってこっちを噛むな!?」


 なんて凶暴なうさぎだ。お前の妹を噛めよ。柔らかそうじゃん。そりゃあもう大層と。一部がとってもふくよかだしね。


「どこを凝視してるのかなスオウ? スオウの適乳はこれだよね!」


 そう言って高らかに胸を張る日鞠。薄い胸は張っても到底メカブには届いてない。これが格差と言うやつか。てかどこから現れた? 自分家で料理してたんじゃないの? まあ向こうからでもラオウさんは見えるだろうし、出てきてもおかしくはないけど。


「いや、適乳とか言われても……直に見た訳じゃないし……」

「み、見たいの?」


 張ってた胸を抑えるようにしてちょっと上目遣い気味に視線を向ける日鞠。見たいか、見たくないかと言えばそれは……ね。小さくても、気になる物ではあるし。するとメカブの奴がとんでもない事をさらっと言った。


「まあ大きさだけじゃないもんね。形だって重要だし、乳首の色とか乳輪とか適正というか理想あるよね。日鞠は、それすらもスオウの理想だと、それら全てを併せ持って適乳と言ってるのかな!?」

「そっ……それは……」


 珍しい。日鞠が追い詰められるなんて。しかも基本アホっぽいメカブになんて……でも会話の内容は女子がしていいものなのか疑問だけどね。まあ女の子が皆そんな綺麗で純粋じゃないってのはわかってるけど、男の前ではそう言う所は見せないものじゃん。

 思いっきり僕居るんだけどね。けど確かに適乳とか言うのなら、自分の好みドストライクでないとその言葉は使えないよね。まあそんな言葉無いけど。そもそも自分もどんな胸が好みかなんて……実際良く分かってないし。

 見たこと無いし、触った事ないし……自分で判断する材料さえも少なすぎると思うんだ。好みの胸とかある人はきっと、沢山女の人を抱いてきた人じゃないだろうか? 童貞には判断のしようが……


「つまりは日鞠はそうだったらいいという願望でしか適乳なんて言葉を使ってない! スオウが好きな胸が適乳なら、判断はスオウにしかできない。てなわけで質問だけどスオウ、どんな胸が好きか詳しく教えて!」

「罰ゲームかそれ!?」


 なんでそんな事を女子に話さないといけないんだよ。恥ずかしすぎるだろ。それにさっきも考えた通り、別段好みとか……ここは正直に話すか。


「わからないよそんなの。判断しようにも誰とも付き合ったこと無いんだし……どうやって判断すればいいんだよ」

「……まあ確かに。童貞には厳しいかもね。でも理想とかあるじゃん? 童貞なら尚更」

「さっきから童貞童貞五月蠅いな」


 地味に傷つくからやめてくれないかな。見た目同様、デリカシーを置き忘れてきた奴だ。


「お前だって処女処女言われたらなんか嫌だろ? 童貞禁止だ」

「処女はステータスじゃない。それに私は既に数万年は守ってるからもう宝と言っていいレベル」

「腐ってるだろそれ」

「処女が腐るかあああああ!」


 両手を向けて襲ってこようとするメカブをラオウさんがつかむ。流石にラオウさんの力には抵抗なんて出来ないメカブ。だから力を入れる所を体から言葉に変えるよ。


「ちょっとなにするの!? アイツは言ってはいけないことを言った!」

「それは貴女も大概ですよメカブ。喧嘩しに来たんじゃないんですから。それにそう言う話は女性が率先してするような物では無いですよ」

「一番年上なのに、一番赤くなってるわよ。もしかして……ラオウも処––」

「いやああああああ、何を言ってるんですか!!」


 赤面したラオウさんがメカブをグリングリンと回しだした。それはもう銭湯で子供に振り回されるタオルのように、彼女の体がウネッてる。


「ラオウさん落ち着いて!」

「そうです! メカブちゃんが死んじゃいますよ!」

「はっ、すみません。取り乱してしまって……」


 なんとか我に返ったラオウさんだけど、メカブの奴は……別に惜しくもない奴を失くしたな。


「うげええええ」

「ちょっ!? おい吐くなよ!!」

「メカブウウウウ!」


 振り回された影響か、メカブはその場でゲロを吐き出した。大晦日の日になんて物を見せてくれるんだこいつは!? フフタルの奴は取り乱してるのか頭が高速で回ってた。やっぱり妹の事は心配のようだ。僕達がアタフタやってると、玄関先から引き気味の声が聞こえてき来る。


「おいおい、何やってんだよ。食事前になんて物見せるんだ。気分悪くなるから日鞠の家に行っとくわ」

「それは駄目だよ秋徒。愛さんが入ってこないでって言ってたもん」


 それを聞いて買い物袋を落としてヘタれ込む秋徒。まだ怒ってるんだね愛さん。まあ仕方ない。秋徒が尻軽なのが悪いからな。


「くっ俺はどうしたら……このまま新年まで気不味いままなんて嫌だ!」

「そうだね〜、取り敢えず私がフォローして置いてあげたよ。けどまだ無理だね。だからメカブちゃんたちも手伝って貰うから、まずはその買い物袋貸して。中身は家に持ってってね」


 そう言って日鞠は中身をバサバサと落としてビニール袋だけ持ってきた。それでゲロを集める気か?


「穴掘って庭に流し込んどけば土に帰るだろ」

「それなら早く穴掘ってよスオウ」

「スコップとかあったか?」


 そういって家の方に歩き出す。でもそこでラオウさんに止められた。


「私のせいですので、私が穴を掘りますよ。メカブをお願いします」


 ゲロを吐いて気絶したメカブを渡されてもな……困るものがある。女子として見せたくない顔してるし……


(あれ? なんか腕おかしくないか?)


 服に隠れてわかりづらいけど、肩が落ちてると言うかなんというか……そう思ってるとラオウさんが場所を指定しもらってそこへ尖らせた手を突っ込んで穴を掘ってた。そして直ぐに二十センチ位掘ちゃってそこに日鞠がビニール袋でゲロを集めて持っていく。

 処理が終わると、穴を埋めて完了だ。匂いがちょっと残ってるけど、まあ直ぐに消えるだろう。


「手が汚れちゃいましたね」

「いいえ、私のせいですから。それよりもメカブは?」

「あの……なんか肩がおかしく感じるんですけど気のせいですかね?」


 そう言いつ手を伸ばすとラオウさんに止められた。


「待ってください。これは……外れてますね」

「外れてる……」


 え? 何それ怖い。脱臼って事? ゲロ吐いて脱臼して、一年分の不幸が襲ってきたかのようだよ。メカブ……このまま寝かせてたほうがいいかもね。起きたらショックだろう。取り敢えず病院と行きたいところだけど……大晦日ってやってるのだろうか? 


「だ、大丈夫です。外れたのなら戻せばいいだけです。戦場の経験が有りますから、医療行為も出来ます」


 なるほど。確かに戦場でなら怪我なんて日常茶飯事だろう。そしてそこに医者が居るわけじゃないだろうし、多少の傷は自分達でなんとかするものなんだろう。ラオウさんなら脱臼位自分で戻せても不思議じゃない。


「取り敢えず折れてなくて良かったって事ですね」

「ええ、折れてたら流石に私でも今直ぐにくっつける事は出来ませんからね。脱臼で良かった」

「そうですね」


 そんなやりとりでちょっと安心……って空気になりかける。けどそこで秋徒の奴がこういった。


「いや、脱臼も超痛いぞ。ラオウさんには蚊が刺した程度かもしれませんけど、一般人には脱臼辛いですから。戻した後もしばらくは違和感と痛みあるし、メカブの奴耐えられるのか?」

「や、やっぱり私のような人間がこの様な楽しい場に混ざろうとしたのが、そもそも行けなかったんですね。大人しく一人で神に祈っとくべきだったんです」

「ちょっ、ラオウさん!」


 ラオウさんはそう言って肩を落としてしまう。案外メンタル弱いな。いや、大抵の事にはこの人動じないんだろうけど、多分こういう友達同士の事とかは慣れてなさそうだからね。自分が誰かを傷つける……そう思ってる節もあるし、実際そういう事を経験してきたのかもしれない。

 だから想像以上にこういうことに関してはデリケートなんだろう。僕は秋徒を睨むよ。そしてラオウさんに優しく声を掛ける。


「そんなラオウさんが居て悪い事なんか無いですよ。メカブのこれだって自業自得な所もあるし、ちゃんと治しておけば問題無いですよ。そもそもメカブだし、気づかないかも。気付いても気のせいってのを押し通せば案外コロッと騙せますよ! なっフフタル?」

「そうだな。こいつアホだからな」


 フフタルはあっさりと同意した。それでいいのか? いやまあメカブだし、そこら辺は行けると思うよ。それにどうせメカブの事だから、変な設定を吹き込めばノリノリで受け入れるだろう。「新たな力が目覚める前兆」とか適当に言っとけば多分問題ない。


「私は許されるでしょうか?」

「勿論。なあ日鞠!」

「うん、メカブなら大丈夫だよ」

「そうでうか……そうですね。ちゃんと謝りましょう」


 そう言ってラオウさんはブランブランしてる腕を持ってゴキッと肩に押しこんだ。一瞬ビクッとメカブの体が反応したけど、目を覚ましはしない。痛くなかったのかな? まあ派手に甚がられるよりはマシだけどね。


「取り敢えず部屋のほうで寝かしときましょう。客間の掃除してたし、ちょうどいいからそこに。おい秋徒……って何やってる?」


 秋徒の奴が、何故か門で姿勢を低くして道路を伺ってる。ここはLROじゃないんだぞ……と言いたい。


「実はさっきから気になってたんだけど、変な奴がいるぞ」

「変な奴?」


 僕も気になって門から道路を覗く。すると確かに居た。電信柱の下にへたり込んでる誰か。黒いコートで全身を覆って、帽子も黒でサングラスにマスクもしてるように見える……あれはまさに、絵に描いた様な不審人物!? 何故かわからないけど、変な奴等がここら辺に集まってるのだろうか?


 第七百二十二話です。

 遅くなりました。次回は月曜日に上げますね。

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