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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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あと何歩……

挿絵(By みてみん)

 体と心が一致する。降り立つ世界は既に構成し終わった世界。そこは空は青く澄んでて、空気は清々しい、大地はまだブリームス自体崩壊したままだけど、そこはね……人力に任せる事にしたよ。この世界が続くなら、それは出来る事だろうから。


「何……が起きた? 何かが終わったのか?」

「まだ空中の城も奴等もいるぞ。どうなった?」


 テトラやオッサンやらがこっちに向かってそんな言葉を飛ばしてくる。特にテトラは自分さえも状況を把握できないのに困惑してるようだ。いや、テトラの場合は多分世界の変化に敏感に反応してる筈。

 それは神という役割を担ったNPCだから……だけどそれでもやっぱり全てを知り得る事は出来ない。こいつとこうやって話せるのもきっとあと少しだろう。


「全て普通だよ。花の城が空にあるのも、シクラ達がまだ存在してるのも、それはもう、この世界にとって普通だ。アイツ等はもう外れ者なんかじゃない」


 そうシクラ達はもうこの世界の一部。あいつ等はもう、外側にはいない。チートはもう、打ち止めだ。


「あらら、どうやらやられちゃたね☆ 花の城へ介入して直前で私達の創りあげる筈だった世界を奪い取った。横取りなんて、酷いことするねスオウ」


 地面に降りてるシクラがいつもの顔でそう言ってくる。まあ降りてるんじゃなく、もう既に飛べない筈だけど。余裕を見せてるようだが、組み込まれたシクラ達は既に特別なんかじゃなく成ってる。モンスターだって、もう呼べない。今居る姉妹だけが味方。

 今は圧倒的にこっちの戦力の方が多い。


「強がりもそこまでにしといた方がいい。わかってるだろうお前なら。自分達の力が無くなったことに」

「そうなの? なんか力が入ん無くなったと思ったら、そういう事か〜」

「バカ––じゃなくてヒマ、ちょっと黙ってて」

「シクラーー!!」


 吠えるヒマワリだけど、そんな元気なのは実際ヒマワリだけだ。後は平静を装ってるシクラと、地上に降りても寝てるレシアくらい。残りの姉妹は一様にテンション低気。当たり前か。自分達のアドバンテージはもうないんだ。これで余裕でいられるのは、それはバカか明らかな強がりか脳天気しか居ないだろう。

 つまり今普通なのがバカと強がりと脳天気で、残りの三人は案外普通の感情を持ってると言う事になるな。まぁ、そこは納得できる。でもすこしだけ懸念もあるにはある。シクラの余裕は本当にただの強がりなのか……って事だ。いや幾らシクラでもこれ以上の何かを隠し持ってるとは思えないけど……頭のどこかではシクラだから––という懸念が拭い切れないでいるのも確かなんだ。

 こいつに苦手意識あるからな僕。


「私達負けたの?」

「う〜ん、これは……」

「まだだ!! 確かに力は無くなった。だがそれは貴様等も同じに見える。それにNPC共も次々と無力化してる様に見えるぞ!!」


 悲観的だった柊と百合に同じく落胆してた筈の蘭が異を唱える。見た目通り、頑なな奴だ。でも実際、蘭の奴が指摘したことは正しい。世界は新しく構成された。それは最初期にだ。NPC達はきっと元の場所にあと少しで戻るだろう。

 現状が維持されるのはここだけ。何故なら、この街は元々滅んでたから。僕達が勝ち取った選択の前の世界に、再構成されたんだ。まだ時差で全てが完了してないだけで、NPC達は自分達の役割に戻るだろう。

 例外があるとすればそれこそテトラとクリエ位。それとこの街の人達は存在が曖昧だ。けど、街自体が滅んだ事に成ってるのだから、時間が経てばこの街のNPC達は消え去るだろう。所長もフランさんもセスさんも……無かったことになる選択を僕はした。


「うおおおおおおおおおおおおおおああああああああ!! 消えていく。俺の中の真理がああああああああああ!!」


 そう叫びながら転がってくるのは所長だった。殆どのNPCが空を見上げて止まってる中、この人も結構規格外なのかもしれない。


「奪う……のか!? ようやく辿り着いた夢の境地を俺達から!!」


 其の瞳は憎しみが込められてるように見える。けど当然だな。僕が勝手にやったんだ。皆は僕を信じて協力してくれたのに、僕が勝手にこんな事を……


「ごめん所長。けど所長ならまたきっと辿り着くさ。世界は再構成されたけど、それは完全に以前と同じじゃない。皆の居場所はちゃんとある。ブリームスにも新たな歴史がきっと……ごめん。覚えてることはないだろうけど、ありがとう。

 皆の分も伝えとくよ」

「ふざけるな!! 俺っ……が……二度も……こんな……こんな……俺は……自分の価値を一番……理解……して…」


 所長の動きが止まる。其の瞳には涙が途切れ、文字列が流れていってる。NPC達はそろそろ新たな世界に配置され直されそうだ。


「おい、お前その指の……」


 そんな指摘をしてきたのはアギトの奴だ。指を見るとそこに付いてるアビスのペンが輝きを放ってた。そしてスッと指から外れた。なんと! ガッチリとくっついてた筈なのに、これいかに!? ––とか驚いてると聞き覚えのある声がアイテムから発せられる。


『私は彼と行くとしよう。意思を継ぐ者だからな。マッドサイエンティストとしてはまだ未熟だが、だからこそ見守ってやらねばなるまいよ』

「その声、過去の方の所長か!?」


 何故そんな所に……いや、元々本人が作ったものだし、そう不思議でもないか。


『人間再生では我が代の情報は足りないからな。第三の方法だ。意思をアイテムに宿す『錬導器』の第一サンプルがこれだ。中々のものだろう』

「今までなんで黙ってたんだよ?」

『ふふ、第一サンプルと言ったろ。意思表示を言語化は出来ないのだ。それに貴様と同体化してた女は気付いてたようだったぞ』

「何!? てか相変わらず爪甘いなオイ」


 そもそもなんで第一サンプルに自分の意思を入れたの? 最終ロットにそこはしとけよ。意志が伝わればもっと色々と効率的に出来たこととかあったろ。それに苦十の奴気付いてたのかよ。なんで教えなかった? まあアイツはそう言う油断成らないやつだからな。


『だがこれで良かっただろう。最終的に。それに必要な事は仕込んでただろ』

「確かにコレを手にする仕込みは色々とあったな」

『全ては計画の内だ。それに手にしたアイテムに頼りすぎるのは良くない。未来とは自分達で切り開いてこそだろう』

「そもそもなんで今は普通に喋れてる?」

『それは世界の変革に影響されてるからだろう。これは予想外だが、再び喋れて良かったよ』


 そう言うアビスのペンは現代の所長の方に飛んでく。そんな見えない過去の所長に問いかける。


「これで良かったと思ってるのかアンタは? アンタ達にとっては––」


 未来に繋がったと言えるのだろうか? と言いかけて其の言葉が出る前に言葉を被せられた。


『何を言うかと思えば。やはりガキだな貴様は。繋がっただろ。何も無駄だった事などないじゃないか』


 そう言ってアビスのペンは所長の指へとハマり、輝きを失う。アレは所長の一部になったのだろうか。そうなるとアレだけのアイテム……超重要なイベントへと繋がるかもしれないな。そうなれば、いつかまた……


「この匂い」


 芳しい香り。微かに香ってくるその香りに顔を向けると、自身の周囲に僅かに残った花の咲く空間の中に小さな二人は居た。背中合わせで手を繋ぎ、孫ちゃんは空を見上げ、僧兵は顔を真赤にしてる。自分達がどうなるか……それを分かってるから、アイツは言う気なのかも知れない。

 孫ちゃんのフラワーガーデンも、既に風前の灯火だからな。再配置されれば、再び二人は接点が無くなる。孫ちゃんは元老院トップの孫で、僧兵は大多数居る僧兵の一人に成る。

 消えてしまう事でも……言うなら今しかない。二人の中で芽生えた心を確かめ合えば……もしかしたら何かが残るかもしれない。


「あ……あの……その……俺は……」


 緊張しまくりの僧兵。それはなんだかもどかしい。孫ちゃんはどこか達観してるようで、その瞳はまだ新たなシステムに侵食はされてない筈だけど微動打にはしない。そんな彼女が口を開いた。


「良かった。アンタみたいなただの僧兵なんかとデキちゃう世界が無くなって」

「––んな!? そ……それは……つまり……」


 お互いの手は恋人つなぎの筈なのに何故か僧兵は玉砕してる。二人は両思いだと思ってたんだけどな。いや、そもそも恋人繋ぎを許してるんだから、孫ちゃんだってその気の筈だろ。いつもみたいな気恥ずかしさでの恥じらい? でもここでそれしちゃ二人はもう……そう思って余計だとは思ったけど声を出そうとしてセラに止められた。


「何を? あのままじゃあの二人––」

「他人の恋路に割り込むなんて野暮なことやめなさい。それにアンタ割り込めるほどに男女の機微が分かるの? 経験ある?」

「……うぐっ」


 なんて残酷な事を平然と言うやつだ。いやそういう奴だけど。確かにセラの奴が言うように、そういう事は良く分からない。だけど、このままじゃ思いが無くなってしまうんだ。どうせ覚えてないかもしれない……だけど後悔はきっと残る……かも知れないじゃないか。

 てか覚えていられなくなるからこそ、今素直に成るべきなんだ。僧兵だってだからこそあんな情けない姿晒しても言おうとしてたんだ。だからここはセラに止められらたって……あれ? 静かに頬を伝う涙。孫ちゃんはそれを隠そうとはしない。僧兵の奴はその涙に次の言葉が出てこないようだ。自分が振られた筈なのに、どうして彼女が泣いてるのか……分からない。

 僕も分からない……どうして?


「だから、野暮だって言ったでしょ」


 そんな寂しげな声が耳には届いてた。


「私はね……気高いの。アンタみたいな一僧兵なんかじゃ全然吊り合わないんだから。私を本気で思ってるのなら、全て変わっても傍に居てよ。ちゃんと……今度こそ並び立つ場所にいなさい。そしたら……別の答え用意しといてあげる」

「………………………必ず……迎えに行くよ」


 固く結ばれた手に力を込める二人。足元の花が消えていく。その残り香と共に二人は寄り添って動かなくなった。



「このままならどうにか……なるかシクラ?」

「それはどうでしょうね。私達は組み込まれてしまったし、数は不利。唯一この状況で逆転の一手を施せるとするなら……」

「するなら何だ?」


 少し離れた場所で様子を伺ってるシクラ達。まあアイツラの現状を考えれば、無闇に飛び込んでくるなんてことはしないだろう。寧ろ待ってた方が状況は良くなる。こっちの戦力だってこのままなら直ぐに……


「まあもうちょっと見てた方がいいのは確かね。蘭姉無闇に飛び出さないでよ。 ほら、どうやら影響はプレイヤー側にも回ってるみたいだしね☆」

「そうだな」


 奴等が言うように、徐々にプレイヤーの皆も世界の変化に気付いてきた。当然か……だって、それは彼等にとってもこれまで育んできた物との分かれなんだから。


「聖典?」


 ガシャガシャンと音を立てて地面に落ちた聖典は青い光と成り消えていく。いや、それは聖典だけじゃない。目に見えてる力その物はその姿を消していく。


「ナイト・オブ・ウォーカーが……いや、それよりもこれはスキル事……消えてる。スオウ」


 アギトはそれ以上何も言わない。まあ僕達側はこうなる事を考慮してたからな。でも、そうじゃない人達は大変だ。特に特上のアイテムを持ってた奴等なんて……


「俺の力があああああああああああああああああああ!!」

「うあああああああああああああああああああああ!!」


 オッサンとそれにウンディーネの姫様が僕に特攻かけてきた。まあそりゃあね……二度と手に入るか分からないものだったからな。


「どういう事だ小僧!! 力なくしてどうやって勝つ!」

「そうよ!! なんて事してくれんのよアンタ!!」


 すごい剣幕な二人。けど意外なのがそこにローレの奴が居ないことだ。アイツこそ真っ先に僕に襲いかかってきそう物だと思ってたんだけどな。そんなローレは消え行く召喚獣達を見送ってるようだ。


『ありがとうローレ。たのしかったですよぉ』

「ええ、アンタには助けられてばっかりだったねフィア」

『楽しければ万事オーケーですよぉ』

『主、夢の最後まで付き合いきれなくて済みません』

『じゃが、世界が続くのであれば、わからんかもしれんぞエアリーロよ』

『我はチビに付くのは金輪際嫌だがな』

『そんな事を言ってイフリートは主の事をよく心配してたような?』

『燃やして蒸発させるぞリヴァイアサン。軟弱な体が気持ち悪いんだよ』

『そもそも貴方は暑苦しいのでエレガントな主には似合いません。次はないと思った方がいいですね』

『なんだと貴様!! か弱き主にこそ我の様な盾で有り矛が必要なのだ。貴様では役不足も甚だしい!』


 おいおいなんか口喧嘩始めちゃったよ。まあアレだな。なんだかんだ言ってローレは召喚獣達からは愛されてるな。けど、そんな召喚獣達とのお別れだというのに涙一つ見せてないのもまたローレ。感動とかするのかねアイツ。

 ここはどう考えても涙流す場面だろ。めっちゃ頑張ってくれたぞ召喚獣達。


「全く相変わらず反発しあう属性同士は仲悪いんだから。でもまっ、それでこそアンタたちって感じ。これまでよくやってくれたわ。ここで一端お別れね」

『主……悲しく……ない?』


 ボソボソと呟く不審なノッポはメノウ。相変わらず単語単位でしか喋らない奴だ。でも感情を一番表に出さなそうな奴がそういったのが結構衝撃。召喚獣達もなんだかしんみりしてしまった。


「悲しい? バカな事言わないで。私はアンタ達を他の誰かにやる気はない。だって私は分かってるもの。次も絶対に自分が選ばれると。まああちらのお二人さんはその自信がないようでらっしゃるけど」


 そう言っておっさん達を見て鼻で笑うローレ。あれ? 助けてくれた?  そう言われるとプライドは高い二人、ちょっと引き気味になってくれる。


「だが星の巫女よ。我等は武器を失っただけではない。掛けてきた時間全てを奪われるんだぞ。それはどうあっても取り返せる物ではないんだ!」


 それにはぐうの音も出ないな。時間はどうやっても取り戻せない。大きい物を築いてたって事はそれだけこの世界に掛けた時間が大きいってことだからな。それらは確かに無くなってしまう。


「分かってた事でしょ。どうやってあのチート共に正攻方で勝つ気だったのよ。そもそも多分齟齬があったのよアンタ達は」

「齟齬だと? 我等はLROを守る為に危険を犯してまで来たんだぞ」

「LROは守れたじゃない。世界は多少変わってもここはLRO。そうでしょ?」


 そんなローレの言葉に僕は頷くよ。世界は変わってしまう。けど、やっぱりここがLROなのは変わりはない。ここはこれからもLROだ。


「ホラね。LROに変わりはない。アンタ達はLROという皮だけを見てたけど、そいつはLROの本質を知ってた。そして救いたいものは一つじゃなかった。最初から分かってたことよ。救いたい物を最初から私達は知ってたでしょ。何からこれは始まったの」

「アンフィリティクエスト……」


 呟いた言葉と共にローレは花の城を見上げた。幼い見た目なのに、其の姿は凄く大人びてみえる。


「何も間違ってないわ。世界は確かに繋がった。私達は掛けてきた物を失うけど、経験は失わない。それこそが金やデータでは得られない物。その経験が私に確信をくれる。私はまたアンタ達を手に入れる」

 ローレの視線は召喚獣達に注がれる。だけど消えいく中に含まれない一人がそこには居た。


「主……」

「リルフィン、アンタとの繋がりもこれまでね。他の皆は私が迎えに行くけど、アンタだけは私の元に現れさない。そのくらい、私達の絆なら出来るでしょ?」

「……勿論、必ず。我が認めた主は貴女だけ。貴女だけに全てを捧げる」

「ほんと、出会った時から可愛い子ね」


 頭をたれたリルフィンを撫で撫でするローレ。微かだけで鼻を啜ってる様な。いつの間にかリルフィンがフィンリルへと戻り、そしてローレは人に近い姿から、元のモブリへと変わってた。手が届かなくなった二人は互いに見つめ合い、フィンリルは新たなる世界に溶けていく。


 消えいくバランス崩し。新たな世界では一体誰の手に……でもきっとここに居る元所持者達は思ってるだろう。「次も自分が……」と。


「後悔はありません。ローレ様の言ったとおりです。カーテナは私に力をくれたけど、同時にいっぱいの試練も与えてくれました。それら全てはこの身に残ってる。私達だけはその経験をなくさない。ここまでの事、全部に意味はあったんです」

「ああ、間違いない」


 そう言って手を握り合うのはアギトとアイリ。そりゃあね。そりゃあ二人は掛け替えの無い物を手に入れたよね。何故か心に黒いものは湧き上がるような……


「ピク! ピクも行っちゃうの?」


 声はシルクちゃん。大きくなったピクは彼女を愛しそうに包んでる。向こうは心がほっこりするな。ちょっとズキンと痛みもするけど……だけどピクだって例外じゃない。


「ピク……ピク……ピク!」


 消えいくピクに必死に叫ぶシルクちゃん。ピクの欠片を集めるように手を動かすけど、止めることは出来ない。彼女の手が動きを止める頃、ピクの欠片も見えなくなる。


「ありがとう」


 彼女の涙声が綺麗だった。爽やかだった。そしてこっちに気付いて微笑んだその笑顔にドキッとした。もしかしたらシルクちゃんは理想かもしれない。とか思ってたら、クリエが飛びかかってきた。


「スオウ〜! 何がどうなってるの? お目目も消えちゃったよ。皆動かないよ!」

「皆変わるんだ。だから僕達はもう皆一緒には居られない」

「クリエは? クリエともお別れなの? クリエ全然大丈夫だよ」

「クリエは特殊だからな。テトラもそうだけどさ。けど二人もいつまでもこのままじゃない。変化は訪れるよ」


 そう必ず……


「ヤダヤダヤダヤダヤダ! 皆とお別れなんてヤダよスオウゥゥ……」

 

 涙でグチャグチャの顔を擦り付けてくるクリエ。頭に手を置こうとしたら、別の人が其の頭を撫でる。


「大丈夫だよクリエちゃん。お別れなんかじゃないよ。誰も居なくなってなんていない。ちゃんと皆居るんだよ。また会える。私達はまた会えるから。クリエちゃんだってきっと変わっても忘れないよ」

「ホント……」

「うん。だからこの時間をもっと噛み締めよう。もうちょっと頑張ってクリエちゃんよりもワガママな子を助けないと」

「クリエより? クリエお姉ちゃん?」

「そうかもね」


 其の言葉にちょっと輝きが増すクリエ。そしてクネクネしながらこういった。


「こほん、しょうがないな。お姉ちゃんなら仕方ないね。クリエはきゅうしょくなお姉ちゃんなのだ!! だから寂しくないもん! 妹助ける!!」


 きゅうしょくってなんだよ。多分究極とか言いたかったんだろう。そこは察してあげて突っ込まないで上げないであげた。まあだけどシルクちゃんのお陰でクリエは大丈夫そうだな。


「クリエでも今のアイツ等なら倒せそうな気がする!」


 おいおい超強気! 流石に気が大きくなりすぎてないか?


「ふん、お子様が何を言い出すかと思えば。いい気になるなよおらああああ!」


 バカが無駄に巻き舌してる。だけどそれを微動打にせずにクリエは片手を奴等に向けた。


「バカに付ける薬はコレしかないよね!!」


 そう言ってプルプルするクリエの手から小さな光がヘロヘロと出た。すっげー遅い。だけどそれだけでクリエはへろへろ。それを見てバカなヒマワリは調子づいて笑ってた。


「なにそれ? 攻撃のつもり。それとも……え〜と〜灯りかなにか? ぷぷぷ〜ヘッボヘボ過ぎだ––ボッ!?」


 届いた光が額に触れると同時にバカが爆発した。うっわ〜哀れな奴。クリエの攻撃は評価を改めよう。だけどバカ、お前の頭の方がへっぽこ過ぎだろ。良い例え思い浮かばないからって灯りはないと思う。

 滲み出てたバカ臭が溢れ出てるに変わったぞ。


「ヒマワリーーーーー! くっそ、この程度の攻撃にやられるとは!!」


 蘭だけが本気でヒマワリを心配してる。堅物のお姉様が居てよかったな。他の姉妹は逆に笑ったり恥ずかしさに顔を伏せたりしてるぞ。


「ふう、ともかく……このままじゃ不味いわ。最終手段と行きましょう」


 笑いを収めたシクラが手を掲げると、魔法陣が現れる。やっぱりまだ何か……


「返して貰う。そしてその存在は私達のコードの一部を埋める。答えよ黒き存在」


 魔法陣の中から転送されて来たのは、随分とやせ細った黒い奴だった。だけどそれだけじゃなかったから僕達には衝撃が走った。息荒く、そして野生の獣の様に爛々と血走った瞳をして、そいつが抱えて自慢の鎌を喉元に突きつけてる存在。

 それは…………セツリ。


「うがっぎゃっががが!! 俺は消えたりしねええええええええ! 俺はあああああ全てを食いちぎって生き残る!!」


 黒い怨念が、変わりゆく世界でうねりをあげた。


 第六百七十話です。

 遅くなりました。ごめんなさい。ミスっちゃいましたね。折角いいペースだったのに。でもあと少し。やりきります。


 てな訳で次回は木曜日にあげます。ではでは。

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