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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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魔鏡強啓の扉

「ちょっと、遅いわよ!」


 穴の側から地下を覗きこむとイキナリそんな非難を浴びた。小さい癖に態度だけはいつもデカイ孫ちゃんの声だ。まあ彼女はこの所かなり役立ってくれてるし、それは嬉しい誤算というか……そんな感じだから文句は言わないでおこう。

 孫ちゃん以外にも救護の人達やら、研究者や治安部の人達とかが救出作業にあたってる。その様子を見て背中の奴が気まずそうな表情に成ってた。まあそうだろうな。なんたってこいつがやったんだし、顔出しづらいよな。批難されるのみえみえだもん。

 だけどここで眺めてる訳にも行かないからな。取り敢えずはゴーレムを台座にセットしないと……それから何が出るか見極めないとな。どういうふうに転がるか……そして僕達自身がどう動くべきなのか、今の段階では判断できない。取り敢えず秘密裏に所長達とは連絡は取った。僕達には僕達独自の通信方法があるからね。それを使ったんだ。

 この指輪も通信機能あるようだけど、流石に得体の知れない物を簡単に使うことは出来ないだろう。僕達には孫ちゃんとアンダーソンが用意してくれた通信用御札があるからな。それを使うのが実用的だった。


 今日出掛ける前に全員分配っててくれたからな。所長達は成れないからか、指輪を使いたがってたけど、御札と指輪をリンクさせるとか、今の段階では無理だしな。それにその時は僕達には安易に指輪を手にする手段も無かったわけだし、御札を配るほうが簡単で確実な方法だったんだ。

 しかも多分ここの人達は御札を見てもいきなりそれを通信手段とはきっと思わないだろう。色々と都合がいい。てな訳でそれを使って一応今得た情報を伝えて、第零区画で三種の神器の資料を探してもらう事にした。

 二人からしたら驚きやら色々と疑問とか聞きたい事もあっただろう。だけどそこら辺は押し殺して貰った。なんせ統括に知られる訳にはいかない。怪しまれちゃ不味いからな。だからこそ、クリエの奴には連絡してないんだしな。

 アイツは子供な分、簡単に表情に出るからな。嘘も下手だし……クリエには資料探しも出来るとは思えない。だからいつもどおりにしてもらうのが一番だ。


「スオウ、アイツにはどうするんだ? 言った方がいい気もするが」


 テトラの奴がキーキー騒いでる孫ちゃんを見ながらそう言ってくる。確かに孫ちゃんの意見も聞きたい所ではある。だけど……僕は彼女の周囲を見るよ。


「今は止めておいた方が良いかもな。人が多すぎる」


 皆さん一生懸命やってくれてる。その集中はいいことだけど、どっかの誰かさんがこの部屋の他のゴーレムを砕いてくれたお陰で、随分と見晴らし良くなってるからな。下手に話してたら、誰かの耳に入らないとも限らない。

 まあ伝える手段は考えれば色々とあるんだけど、孫ちゃんなんか興奮してるしもう少し落ちつてもらって空のほうがいいかも知れない。


「そうか、じゃあ取り敢えず先に降りるぞ」


 テトラはそう言ってゴーレムとロウ副局長を抱えたまま軽く飛ぶ。そして地下にズドンと言う衝撃が響き渡った。突然の音と衝撃、それにバカでかいゴーレムを持ち上げた奴が突如降ってきたから、周囲が慌ただしく壁際に逃げていく。

 あらら……まあ気持ちは分かる。でも丁度いいから、今の内に僕も下に降りることに。軽く飛んだら背中の奴が変な声を出した気がした。だけど地下に降りてそいつを見ても、知らない様な顔してた。どうやら軽くビビった事を知られたくないようだ。

 まあ、実際どうでも良いことだし、突っ込むのはやめておく。それよりも皆さん無事なんだろうか? こうやって見るとかなり酷くやられてるけど……


「派手に暴れたな……」

「し、仕方ないだろ。ゴーレムは元々パワー系なんだ。それに微妙な操作までは出来ないしな」


 それはつまり、力いっぱい闇雲に暴れたって事か? おいおい、マジで死人が出てるんじゃねーの? そうなったらこいつ終わりだろ。流石に擁護出来ない。殺人は何したって取り返せるレベルの犯罪じゃないぞ。

 ここはゲームだけどさ……もうそこら辺よくわからないからな。魂とは一体なんなんだろうか? と。既にLROのNPC達には自我がある。シクラの野郎が変な事をしたらしいから、NPC達にそれが宿っていったんだよな。別に自我の目覚めが悪いとか思わない。更に人間らしく成るのなら、この世界に厚みが増すというかなんというか……取り敢えず、単純に悪い事とはいえないだろう。

 けど、自我って心みたいな物だよな? 心があるって事は、一つの存在として成り立ってる様な……魂が宿ってると言えなくないんじゃないかと思う。

 そう考えると、ここに居る全ての人達の存在が重くなる。ゲームでNPCなる存在はゲームの進行上で必要程度な存在だったのに……自我を持ち、世界を育んで来た一つとなるのなら……それはもう……


「仕方ないで済むのなら、アンタの神経は随分図太いのね。まあ、らしいと言えばらしいかもね。犠牲なんて厭わないのが研究者でしょ? 言いなさいよ、偉大な言葉があるでしょ? 全てを正当化させるアンタ達の伝家の宝刀が」


 孫ちゃんの奴が、真っ直ぐ睨んで背中の奴を見つめてる。その視線に耐え切れなく成ったのか、そいつは僕の背中に顔を隠す。おいおい、孫ちゃんお前よりもずっと小さいんだぞ。まあだからって怖くない訳じゃないけどさ、行動を起こしたのなら、それなりの覚悟成るものはあったんじゃないのか?

 けどこいつも見た目は子供だし、そこまで求めるのも酷なのかも。考えなかった訳じゃないだろうけど、直面した時の感情は、やっぱり想像とは違うだろう。それに孫ちゃんはホントズバズバ言うしな。

 こいつ他人の心抉るの大好きだもん。子供だからって甘えを許してない。だからこそ、逃げたのだろう。


「ちょっとスオウ。そいつ降ろしなさい」

「お、おう」


 命令されて僕は支えてる脚を放してみた。だけど後ろの奴はその前に僕の首に腕を回してしがみついて来やがった。


「おい、何やってるんだよ?」


 ちょっと苦しんだけど……止めてくんないそういうの。往生際悪いぞ。どっちみち色々と辛い目に晒されるんだから、今の内に孫ちゃんにダメージ与えてもらっとけよ。そしたら他の奴等は少しは遠慮してくれるかも知れないぞ。

 まあ期待薄だけどさ。周りに目を向けると、結構おっかない感じの視線を感じる。当然っちゃ当然だけど……もう逃げ場は無いんだ。今は事情を話した所で、信じて貰えないだろうし、甘んじて受けるしか無いだろう。

 だからとっとと放せよ。いつまでプランプランと揺れてる気だ。うざったいたらない。


「放せ!」


 体を左右に振るとそこまで力も無かったのかそいつは簡単に振り落とされた。尻を擦ってると、孫ちゃんが側に行った。


「さあ言いなさい。あるでしょ? 大定番の言い訳が。案外みんな同じ研究者なんだし、許してくれるかも知れないわよ」


 はてさて、そうなるだろうか? 確かにここブリームスの人間は誰しもが研究者的な教育は受けてそうだけど……だからって誰もが研究者気質な訳でもなかろうに……孫ちゃんに迫られてるそいつは眼球を震わせてる。

 いったいどれだけプレッシャー掛かってるんだろうか? てかなんか孫ちゃん妙に怒ってる? あれか、実は案外僧兵をボコられたの根に持ってるのかも知れない。素直じゃないけど、一応あれでも僧兵の事を信頼––なのかは分からないが、ちょっとは心許してる気はするからな。

 本人にそれいうと否定するけど、どっちも満更じゃないだろう。


「さあ、分からないなんて言わないわよね? 言ってみれば助かるかも知れないのよ。研究者なら、その情熱を貫き通してみなさいよ」

「……あっ、えっと……」


 研究者としての情熱か……それって今関係あるか? いや、まあこいつはレールじゃない道筋で成し遂げたいって言ってたし、関係はあるか。だけど、それじゃあきっと遅すぎるよな。今求められてるんだ。その力が。

 こいつの不確か過ぎる言葉に耳を傾ける者はきっといないだろう。てか、孫ちゃんは何を言わせたいんだ? 科学者が免罪符の様に使う言葉……それってつまり……


「研究の進歩の為には犠牲は必要……」

「そうそれよ! 悪の科学者っぽい。それで同意を求めて見ればいいじゃない。自分がなんとかする気だったんだ––って言ったら、その気概を買う奴ももしかしたらいるかも」


 そう言われてそいつはなんとか立ち上がった。もしかしたら言っちゃうのか? でもそれは流石に……どうだろうか? 僕的にはこいつのアドバンテージはそこじゃない気がするけどな。まだまだ年端もいかない少年……そこをアピールした方がいいような……だって子供には甘くなるものだろ。

 だけどそれを口出しするほどの関係でも無いというか……少年は喉を鳴らし、震える手を握って眉を吊り上げた。覚悟を決めたのだろう。張り詰めた空気の中、彼は口を開く。


「あっ、あの……俺の行動は研究の為だったんだ! だから悪かったなんて思ってない!! 俺だってこの街の事を思ってやったんだ!!」

「「「ふざけるな!!」」」


 予想通りに許されることはなく、怒声と共にそこら辺の石が飛んでくる。まあ、当たり前だけどな。流石に納得出来ないだろう。その攻撃に少年は必死に小さくなるしかできない。


「許さると本気で思った? 残念、そんな訳無いでしょ」


 ひでぇ……孫ちゃんやっぱ怒ってるな。希望を持たせて置いて叩き落とすとか鬼か。そう思ってると治療を受けてた研究者の一人がこういった。


「まってくれ! 確かに痛かったし、怖かったが……自分が思う方法を試してみたいという気持ちは分かる。それが正しいことだと、我々は誰よりも強く信じないと実行なんて出来ないんだ。時には犠牲は必要だ。

 それを止むを得ないと思うことも正直ある。それが自分達だったのなら、どうして彼を責める事が出来ようか……」


 僕は思わず孫ちゃんを見るよ。孫ちゃんは目を丸くしてそう言った奴を見つめてた。すると他の満身創痍状態の研究者達––多分第一の数人がそれに同意する。僕の視線に気付いた孫ちゃんはこっちを見て、パクパクと口を動かしてる。

 声は出てないんだけど、何故か僕にはそれが理解出来た。


『何言ってんの彼奴等?』


 多分だけどこういう風に伝えてきたんだろう。冗談で言ってたのに、本気で擁護する奴等が出てきたら驚いてるんだな。無理もない。しかも孫ちゃん達と一緒に来た第一の人達じゃなく、ここで被害にあった人達が言うから、少年を非難してた人達の手が止まってる。

 実際被害にあった人達の中には当然許せないと思ってる人も居る筈だけど、非難してたのは大半が後から来た人達だからな……そもそも被害にあった人達にはそこまでの元気がない。それに多分、研究者を守るために護衛の人達は身を挺しただろうからな……口出し出来ない人達が多数で、一番重要で一番手厚く守られてた第一の人達だけが言える。

 これってもしかして、あの少年を守ろうとしてるのか? そう考えられなくもないけど……でも被害者だしな……取り敢えず僕は孫ちゃんに向かって肩をすくめて見せた。


「ふん、やっぱり変人が集まってるのね。第一ってのは……テトラ、さっさとゴーレムをセットして」

「お、おう」


 孫ちゃんに言われて動き出そうとする前にテトラが僕を見る。ゴーレムをセットして、この街に仕掛けられた様々な錬金が動き出す。そうなってから、統括の奴の真意が分かる事になる。それを見極めないといけない。この子供の言ってることが本当なのかどうなのか……もしも最悪の方向に向かうのなら、色々とまた考えないと行けない。

 でも取り敢えずはセットしなきゃ始まらない。僕はコクリと頷く。そしてテトラに付いて行こうとしてた孫ちゃんを引き止める。一応話しておいた方がいいだろうしね。リルフィンや僧兵にも……と思ったけど、二人共傷の治療中らしいからまずは孫ちゃんにだな。

 テトラから開放されたロウ副局長は、擁護派が出てくれた事で攻撃されなくなった少年の元へ。それを察した孫ちゃんがこう言うよ。


「アンタの行動を許された訳じゃないからね。取り敢えず拘束よ拘束!」

「はいはい」


 ロウ副局長は何か言いながら少年を立たせて、治安部の方々の方へ……そして僕はアイツの行動理由とかを簡潔に孫ちゃんに伝えてやった。その間に、テトラが台座にゴーレムを設置する。するとその瞬間、台座から光が地面に伝わった様な……するとその時ズドンと伝わる衝撃。

 何事かと思ったら、ゴーレムの奴が線状の光を放ちながら二本の腕を地面につけて口を開けようとしてた。口なんか見えなかったんだけど、無理矢理な感じで、口の形に割れると、爆発音の様な声がこの空間全体に響き渡った。


「っつ……一体何が……」


 そう思ってると、ゴーレムの目の前の空間がパキパキと剥がれ落ちていく。まさか今の咆哮で空間に亀裂でも入ったのか? すると今度はその亀裂が入った空間から、黄金の腕が出てきた。それがゴーレムの頭を掴む。そしてこっちのゴーレムは自身の腕を亀裂の向こうへ伸ばす。

 もう何がどうなってるのかわけが分からないな。あの黄金の腕は多分零区画のゴーレムの腕だと思う。それが伸びて来たって事はあの亀裂の先の空間は零区画に繋がってるって事か? 


「おい……あれはなんだ!?」


 誰かがそう言った。指さされたのはこの地下の天井に空いた大きな穴。外を望む事が出来るその穴の向こうには今のゴーレムと同じような光が立ち上ってる。ブリームス全体を巻き込んだ何かが始まってるって事か……


「孫ちゃんが言ってた積層魔法陣とかが発動してるのか?」

「そうみたいね。でもどんな効果があるのかは分からない。どうなるんでしょうね」


 少し焦りが伝わるような声。統括がマトモなら、この力をちゃんと使ってくれるはず……そう思ってると、僕の指輪から声が聞こえてきた。


『よくやってくれたのである。これで魔鏡強啓の扉が開く』

「これで、この街を守れるんだよな?」

『勿論である。魔鏡強啓零が開放され、この街の全てが生まれ変わる』

「生まれ変わる?」


 それってどういう事だ? 敵である、あの二人をぶっ倒せばいいはずだろ。魔鏡強啓零なら対抗出来るって––


『さて行こうぞ我が同士達。扉の向こうへ。少し時間がかかるかも知れぬのであるから、お主達はその間、この街を守っておくである。重要なのは第一•第二•第三であるぞ!』


 そう言った瞬間、第一の研究員達が一斉に消えていく。だけど一人だけ残されたのはあの少年。やっぱり直前の行動が問題視されたのか……だけどそれよりもこれは……するとその時、外から大きな音と悲鳴がこだまする。

 僕は急いで穴から外へ。するとそこには昼間なのにカラフルに光ってる町並みが広がってた。だけどその光の中に明らかに異質な色がある。真っ黒で粘っこい色をした光……あれはまさか……


「おい、避難所の方にあの黒い奴が現れたっぽいぞ。僕とテトラで先行するから、残ってる人達も後から追いついて……」


 ん? 上から見てふと思う。気のせいか? 人数を全部把握してないから確証はない……だけど、なんだか減ってないか? 人数が微妙に減ってるような……いや、でもそんな事がいきなり起こるわけ……


『生まれ変わる』


 何故か統括が言ったその言葉が頭に浮かんで来てた。


 第六百十二話です。

 スッゴク遅くなってしまいました。不甲斐ないです。もっともっと早く進めたいんですけどね。テンションが……あとPCで書いてると、色々と誘惑が……

 やっぱりもう一度ポメラでも買おうかな? 最近のは辞書も良くなってそうだし……でも高いんですよね。それに結局は自分の集中力の問題だし。

 道具に責任をなすりつけるのはどうかと……取り敢えずエタらないようには続けていきます!


 てな訳で次回は木曜日に上げれたらいいな。

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