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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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零区画

 視界が光に覆われた次の瞬間、僕達は一瞬の浮遊感を感じた。そして目を開けるとそこは……


「なんだこれ?」


 思わずそう言わずには居られない。萎んでくイクシード3の勢い……セラ・シルフィングを鞘に納めて、一歩を踏み出すと、何故か床に波紋が広がって、同時に甲高い不可思議な音が響いた。


「スオウ!」

「クリエ、良かった無事だったか」

「良かったじゃないよ! どこ行ってた。行き成り消えて!」

「いや、消えたのはお前の方だけどな」

「んん?」


 なんでそこで首を捻るんだよ。周り見てちょっとは疑問に思えよ。


「確かにちょっと綺麗だし、感じも違うけど〜基本的に同じ所だよ。クリエはそう感じるもん」

「それはお前の感覚が異常なだけだ」


 ちょっとなんてもんじゃないだろこれ。周りの科学連中は目を点にしてるぞ。確かに構造とかはさっきまでの場所と多分違わないんだろう。だけど、さっきまで居た場所は時間の経過が顕著に現れてた。どこ見たってボロボロだった。

 けど……今いるこの場所はぜんぜん違う。空気からして違う。なんか往年の香りを保ってるような……さっきまでのカビと埃臭い場所とは偉い違いだ。天井から壁、柱に至るまでピカピカだし、さっきまでの場所では朽ち果ててた本がズラッと壁や棚に陳列してる。


「それにしてもこれは……」


 結構圧巻な光景だな。第一•第二の研究者達はこの光景に興奮して、本に齧りつきそうな勢いだ。


「ん?」


 いや違った。一人だけ、なにか目的でもあるようにストストと綺麗な歩幅を維持して歩調を進める奴が居る。ロウ副局長だ。錬金の研究者なら生唾モノの資料の筈なのに、どうしたんだろうか?

 あの人だって普通に興奮しておかしくない筈だけどな。何かもっと興味深いものでも見つけたとかか?


「これはどういう事なんでしょうか?」

「ふむ、お主なら少しは理解出来とるであると思うが?」


 質問に質問を返す統括。すると少し考えてセスさんが口を開く––けどそこに割って入る所長。


「俺の考えではここは別位相空間だな。さっきまでと重なりあうが、少しズレた空間なのだ。あの本が鍵となって、俺達の立ってた場所の位相を置き換えたのだろう」

「ほほう、落ちこぼれにしてはなかなかわかっておるな。大体そんな感じだと儂も考えておるである」

「まあこの程度なら当然だな。驚異的なのはこれだけの空間を崩壊させる事無く維持してる事だ。しかも向こうでは完全に朽ちてた物まで完璧に残されてる……どうやら、向こうのあの場所自体にはそれほど価値は無かった様だな」


 おお……なんだか所長が対等な会話をしてる? すっげー違和感が……


「目が輝いてるな……」

「当然だ。研究者ならこの光景に興奮しない訳ない。まあ、お前はもう関係ないだろうがな」

「そう……だな」


 セスさんの声が一段落ちる。顔にも影が掛かった様に見えるし、ほんと何があったんだか。セスさんは第一の統括までが目を掛けるくらいだし、その才能とかは折り紙付きなんだろう。

 それなのに研究者にならずに研究から遠ざかる道へ……勿体無いと思うのは僕の勝手な考えだな。三人の事も関係もイマイチよくわからないし……それに別にセスさんが未練タラタラって感じには見えない。

 彼は研究者という道から離れたけど、今の仕事に意味を見出してる様に見える。胸を張ってるしね。


「お〜い!」


 奥の方から聞こえる声。その声に僕達と治安部の皆さんだけが振り返る。研究者の第一•第二の人達はここの書籍に夢中の様だ。


「全く研究者って奴は……」

「研究者は貪欲であれである。好奇心こそが進化を促す妙薬よ。それで何であるかロウ副局長殿」


 フエッフエッフエ––と不気味な笑い声を上げつつ統括が声の方に歩き出す。僕達もそれに続いた。無数の波紋が地面に広がり、基準はわからないけど それぞれで鳴り響く音が違う

 色の付いたような鮮やかな音が響き渡る中でふと足を止めたクリエ。


「どうした?」

「ううん……なんか……ううんやっぱりいい」


 なんだそれ? 何かちょっとどこかおかしいな。まあいつもどっかおかしくはあるんだけど、何か気掛かりでもあるのか……そんな感じだ。前を見て立ち止まったクリエは今度は後ろを気にかける。


「ねえ、あの人達はいいのかな?」


 あの人達ってのはここの本に夢中に成ってる人達の事だろう。確かに着いてきてないな。でも統括もそれはわかってるはずだし、誰も何も言わないって事は大丈夫だと判断してるってことではないだろうか?

 一応護衛の治安部の人達も何人か居るしな。


「大丈夫じゃないか。ここはさっきまでの不気味な感じはしないし」

「うん……それは、そうなんだけど……」


 なんかハッキリしないな。寧ろ不気味よりも清浄ってな感じだぞ。なんか世界樹の枝部分の隠し社と少し似通った感じを受ける。でも錬金で清浄ってのもイメージが結びつかない感じがあるかも。

 どっちかってっと錬金って邪悪な系統というか……邪道というか……そんなイメージが勝手にあるんだ。


「まあお前の方が感覚的には優れてそうだし、何か感じるのか?」

「わかんない。ここは声もしないし……それにスオウの言うように綺麗な感じするよ。でもね……なんだか胸がざわめくの」


 自分でもよくわかってないって事か。まあだけどそういうことって無いわけじゃないよな。なんとなく不安が募るってのはある。けどそれって案外杞憂に終わることがおおい。けどただ単に「大丈夫」なんて言うのも無責任っぽからな……


「そっか、でもだけどいつも通りだ。何が起きても対処できる様にしとこうぜ」

「うん、そうだね。大丈夫、クリエも役にたってみせるよ!」


 そう明るく言うクリエ。不安だけを募らせたってしょうがない。それを振り払うには自信とかしかないからな。この世界では次の瞬間何が起こったっておかしくない。でもそれにビクビクしてる訳にはいかないんだ。


「ん?」


 僕の前へ走り出し、フランさんの元へ行くクリエ。その一歩一歩の度に鳴り響く音は随分と軽やかでホワンホワンしてる。まあ別に音がおかしい事に疑問を持ったわけじゃない。ただクリエの足が波紋を広げる度に、何かが足の裏から底の方へ流れて行ってるようにみえる。

 ただそう言う演出ってだけなのか……それとも何か意味があるのか? 僕はその場で床を踏む。すると僕の足元からも何かが流れて行ってた。けどステータスに何らかの影響があるって訳ではないようだ。


「そう言えば……なんか包帯が外れた箇所の傷が目立つな」


 LROではなかなかなかった瘡蓋っぽくなってるぞ。治りかけで包帯が外れたから……魔法での回復なら一気に傷とか消えるから、こういうのは見えないんだよね。きっと完全に治るまでつけてれば傷も残らないんだろうけど、イクシードの風にとばされちゃったから仕方ない。

 まあ血さえ止まってればHPが減り続ける事ももうないし、いいんだけどね。女子じゃないんだし、そこまで気にかけることもない。


「おい、何をしてる? 置いてくぞスオウ?」

「うん……おう」


 何かを吸い取られてるようで気になるけど、これも気にしてたってしょうがない物だな。僕は皆に追い付くために歩き出す。



「どうですか統括様? 場所が同じならと思いましてね。そしたら案の定この通りです」


 この部屋の奥まで僕達を案内したロウ副局長がそんな風に自慢気な言葉を口にしてる。そして彼の後に付いてきた僕達の視線の先には更に地下へと続く階段があった。


「零区画へとつうずる階段か……となるとこの奥には本当の零区画があることになるであるな」

「ええ、今まで大量の人員を飲み込んで来た零区画……その真の姿が直ぐそこにあるのです!」


 すっげー興奮してるな。でもそれも無理ない。この場所に来たってだけで、大興奮だからな。その中でも更に貴重な物が保管されてるって事になってる零区画ともなれば、その興奮は計り知れない物だろう。

 よく耐えて僕達を連れてきたよ。ロウ副局長なら手柄取るために自分だけ先に零区画に入るって事をやってもおかしくないとおもってたんだけどな。第二研究所で満足できてないみたいだしね。

 でも上の方へは逆らえない体質なのか? 社畜って奴か。でも研究者って時点で、そういうのとはあんまり縁がない感じがするけどな。けどここはリアルとは違うか。それにかなり研究者の地位が高そうでもあるしな。

 上手く取り行って上を目指す奴が居たっておかくしないのかも。けど第一には絶対的に才能って奴が必要なのでは? でも第二で副局長まで行ってるのなら、可能性はあるのかね?

 まあ僕にはわからない部分だな。でも第一と第二以降には何か隔たりみたいなのがあるんではなかろうか? 第二が総数二百人位だって聞いたけど、第一は三十人位らしい。ようは第一が求めるものはそれだけ特殊な何か……って事だろう。

 努力だけでは得られない、特別な何かを持った者を集めてるのが第一研究所。けど思ったけど、この第一の統括は見た目は確かに狂ってるけど、案外話しも通じるし普通だな。こういう奴には取り入る術が有りそうな気もする。そもそも統括って研究者なのか? 現場から引いてる感じを受けるんだけど……他の研究者達と違ってメッチャ興奮してる! って訳でも無さそうだし、こんな変な格好の癖にある意味、自分の所の研究者を見る目は温かく感じる。

 あれか、第一研究所の統括って事で研究者を守る立場にも居るからなのか? そう考えるとスッゲーまともな人の様な……あんなマッドサイエンティスト然としてるのに。


「うむ、我等は遂に真の零区画へと辿り着く。長年の悲願である」

「歴史的瞬間だ。流石俺だ。運がある」

「確かに運だけはあるかもね」


 統括とロウ副局長の後についてく所長とフランさんがいつも通りの会話をかわしてる。ホントあんなボロい第四研究所で燻ってたのに、今この場に居ることが驚きだよな。


「浮かれるな二人共。これだけの場所だ。何があるか分からない」

「その時に俺達を守るのがお前の仕事だろ?」

「残念ながら自分の警護対象は第一と第二の人達だけ。君達は含まれてない」

「へぇ〜あ〜そうなの。じゃあ旧友が死にそうになっても助けてくれないのね」

「今の自分には優先する人達がいる。もう学生時代じゃない。君達が自由を求める研究者になったのなら、身を守るのも自分達の役目だ。第一も第二の人達もそして自分達も、このブリームスの社会に加わってる。

 彼らは研究で社会に貢献し、僕達はその社会を守る役目がある。彼等はこの街の宝だ。それは何よりも優先される。だから二人は守れない。いつまでも学生じゃないんだ」


 そう言ってセスさんは二人を追い越していく。するとその時、小さなクリエの方を見る。向こうは知り合いのつもりだからな……でも今の会話でクリエの彼に対する印象は悪くなってるのか、頬を膨らませて睨んでた。

 それを見て、肩を落とすと一番前の統括達の元へ行く。そしてそれからはクリエ、所長、フランさんがセスさんに向かって嫌な視線を向け続ける時間が少しの間続いた。



 固く閉ざされてた扉が案外簡単に開くと、広い空間が現れた。上の場所は本がいっぱいだったし、零区画とかいうからまた本がいっぱいなんだろうと勝手に想像してたんだけど、どうやらそうじゃないらしい。

 地下の筈だったんだけど、光源がどこかも分からない光で満ちた不思議な空間だ。床は今までどおり、歩む度に波紋が広がる不思議な物。特徴的な物があるとするなら、中央部分にある黄金色のゴーレムか。台座の上に一体だけ鎮座してる。その台座には不自然な空きが二つ……これはもしかしなくてもアレかな?

 そして台座の中央からは一本の柱が出てて、それが微かに脈打ってる。


「ここが零区画……おい、錬金の真理はどこだ!?」


 そう言って所長がゴーレムに近づく。僕は止めようとしたけど遅かった。でもゴーレムは動き出す気配はない。そして所長はベタベタ触りながらその周りを一周する。


「このゴーレムが怪しいのはわかるぞ。そして不自然な空き……スオウ、確か残り二つの場所でもゴーレムを組み立てるとか言ってたな?」

「そうだね。たぶん十中八九そこには残り二つのゴーレムが来るんだろう。だけどここまでどうやって運ぶか……」

「そんなのはアイテムでどうにかなると思うわよ。バトルシップだっけ? の時も使ったじゃない」


 ああ、そう言えば使ったな。あのストローか。確かにあれならデカくても関係ないか。


「ふむ、取り敢えず他の状況を確認するである」

「分かりました」


 そう言ってロウ副局長は小人を取り出す。寝ぼけ眼の小人にお願いして他二つの映像を表示させる。すると対象の光景が現れた。一つは普通だ。活気に溢れながら作業してるのがわかる。だけどもう一方は埃が凄くて何も見えないし、映像もノイズが酷い。

 嫌な感じがする。


「はいこちら第二班です。なんでしょうか?」


 第二班は孫ちゃん達の方だな。事情を軽く説明して現状を教えてくれるその人は明朗快活な人だった。どうやら作業は順調の様だ。そして次は問題の映像の方だな。幾ら問いかけても反応がない。

 あっちは僧兵とリルフィンが居るはず……どうしたんだ? 


『くっ……スオウ達か……』

「その声、リルフィンか? 何があった?」


 映像にその姿は映らないけど、確かにリルフィンの声だ。その声が状況を伝えてくれる。


『見えてるか知らんが……端的に言うとやられた……』

「誰に? 黒い奴等か?」


 奴等がまた動き出したとしたら最悪だ。だけどそれをリルフィンは否定した。


『違う、奴等じゃない。これをやったのは一人の研究者だ。そいつが組み上げたゴーレム諸共全てを持っていった』


 その言葉に僕達はそれぞれ驚愕する。でもなんとなくそれが誰だか、僕には心当たりがある。僕は取り敢えず現場に行くことを提案しようとしてそれを見た。

 ロウ副局長が今までの顔からは信じれないほどに、凶悪に微笑んでたのをだ。

 第六百六話です。


 遅くなってごめんなさい。もっともっと進めたかったんですけど、色々と悩んじゃって。う〜んです……う〜ん。


 でもなんとかなるかなって事で次回は月曜日に上げます。ではでは。

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