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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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盗み聞きにも堂々と

 都会のごった返す道路を進みながら周辺を見る。世間ではLROの話題で持ちきりだろう。デッカイ街頭のスクリーンにもそのニュースが帯状に流れてるし、所々では立ち止まってる人も居る。

 まあ大多数の人は普通に流れて行ってるように見えるが、LROはこの世界にかなりの影響を与えたのは間違い筈だ。それまでのTVゲームとは全く違う、フルダイブを実現しゲーム世界へ飛び込むことが出来る人々の夢を体現したゲームなんだからな。

 ゲームに興味なかった人さえも、その世界へ引き込んだ筈だ。人それぞれ、あの世界に向かう理由は違っても、もう無くなっていい場所じゃ無いはずだ。あの場所で過ごした思い出や時間は誰しもにとって衝撃的で忘れられない筈なんだからな。

 てか俺が困る。今更リアルのどこを冒険しろと言うんだよ。LROならリアルに劣らない程の広大な世界を同じようにどこまでも行けるんだ。それに身体能力もシステムの補助で向上してるし、モンスター達が飽きさせないスリリングな演出をしてくれる。大抵の所を旅行気分で行けるリアルと違って、手に汗握る本当の冒険がLROにはある。

 あの感覚が無くなったら、生きるってのが平坦になりすぎるんだよな。LROを知らなかったら、別に惜しいなんて思わないんだろうが……知ってしまったらもう捨てることなんか出来ないんだ。

 だから取り戻したい……俺達のあの夢の世界を。



『秋徒君? 秋徒君聞こえてますか?』

「あ、ああ、聞こえてますよ。音声は良好です」

『それならちゃんと返事をしてもらわないと困ります。こちらとそちらの通信手なのですからね。通信手とは世間の印象よりも重要な役割なのです。どんなに優秀な軍師が居ても、情報が遅れたり、正確でなければミスが起きて行動が後手に回り、そして最後には勝てなくなる。

 情報の伝達とはそれだけ大事なのです』

「……はい」


 なんだか怒られてしまった。別に通信手とかやりたくてやってるわけではないんだけどな。でもまあ俺には他に出来る事もないからな。日鞠の奴は誘拐犯と愉快にメール中でアイツのスマホが使えないから俺がラオウさんとの通信手段に用いられれるってだけ。

 別にそれならメカブの奴でも良いと思うんだが……こいつはなんだかどこか遊び感覚っぽいからな。横に目を向けると目がチカチカするような格好のメカブがスマホを操作してる。アプリでゲームとかやってたりするんだろうか? 

 実際そうだとしたらぶん殴りたいな。だが流石に手は出せないからな。それならなるべく気にしない方が良いか。平常心で居るためにも、メカブは視界に入れないようにしておこう。


「–––で、何でしたっけ?」

『全く、ですからビルの方には到着したのでこれからタンちゃんを起こします。起きていればいいのですが』

「もう着いたんですか? 早くないですか?」


 別れてからまだ二十分程度しか経ってないような……たしか三十分以上掛ってきたよな? 車で数十分も短縮するってどれだけ飛ばしたんだ? するとラオウさんはウキウキした声でこう言ったよ。


『流石に普通車とは馬力が違いますね。ついついアクセルを踏みすぎました。そのせいでパトカーに追われてしまいましたが』

「ええ!?」

『ああ、大丈夫ですよ。ちゃんと振り払いましたから。日本の道は狭く複雑ですからね。上手く走れば簡単です』

「へぇ〜そうなんすか」


 簡単って、それはもう犯罪だろ。いやでも、止まってしまうと職質うけて、ヘタすると車内にあるあのリュックの中身を拝見される事に成ったかもしれないよな。そうなるとどう考えても逮捕しかないし、逃げて正解だったのか……正しくはないけど、正解。

 なんかそんな感じ。てか、そもそももっと慎重に運転すればそんな面倒な事にならずにすんだはずだろう。ラオウさんが居なくなったら大幅に戦力ダウンするんだから注意してほしい。取り敢えずこの旨を日鞠からの言葉みたいに言っておいた。


『そうですね。以後気をつけます。そちらの情勢はどうですか?』

「こっちは別に変わりないけど……日鞠は相変わらずメールしてるみたいだけど進展があるのかは……日鞠どうなんだ?」


 僕がそう聞くと、助手席に座ってる日鞠の奴がこっちに視線を向けた。


「重要なのはまだね。結構手強いかも。フレンドリーな様でやっぱり奥の方には壁がある感じかな? そっちはなに?」

「かっ飛ばしてたら警察に追われたんだってよ」

「ちょ!? 大丈夫なのそれ? いや、あの人なら大丈夫でしょうけど、そういう事は辞めてって言っておいて」

「もう言った」

「あら、秋徒にしては手際いいじゃない」


 まあ、日鞠が言ったことにしたからな。でもちゃんと命令されたし、これで大義名分は手に入れたな。すると横からメカブの奴がスマホから目を離さずにこう言ってきた。


「それよりもお兄……じゃなくて、奴は目を覚まさないと思うけど。まだ寝たばかりだし、普段あんまり寝ないから寝た時は二日•三日位寝るわよ」

「二日•三日って……寝過ぎだろそれ」


 そんなに寝られたら困るぞ。てか異常だし。大学とか行ってるんだよな? てかあのビルとかそもそもどうしたんだろうか? 親の持ち物? 大学生が買えるとは思えないよな。でもタンちゃんのパソコン技術はかなりのものらしいし、もしかしたら闇の商売でもやってるのかも。

 ハッカーとかそっちのイメージあるしな。それにただずーっとなんの目的も無くパソコンいじってるだけじゃないだろうしさ。それじゃあただのひきこもり。普段睡眠を犠牲にする程の何かをやってるから、寝た時の反動が凄いって事だろうし、タンちゃんはああ見えて情熱有るよな。

 どっかの妄想だけの奴とは違う。俺はそう思いつつ横目でメカブを見る。何か得意な事とか有るんだろうか? まあだけど俺達と同学年程度だよな? それで得意な事って言ってもよくよく考えたらたかが知れてるのが普通だ。

 日鞠なんて基地外スペックのバカが居るせいで得意=プロ並みかそれ以上みたいな変な感覚を持ってるが、そうじゃないんだ。メカブの奴はそう考えると、言動は痛い奴だが能力的には普通の平凡な奴なんだろう。


「ちょっと何チラチラ見てるの? 気持ち悪い」

(この野郎……)


 やっぱムカツクな。良いだろう少し見るくらい。今は仲間なんだから変な事言って空気を悪くしようとするなよ。それにイヤラシイ事とか、お前相手には絶対に……絶対……そう絶対に胸以外では考えないから。安心しろ。


「なんだか胸の所にイヤラシイ視線を感じる」

「ばっ、バッカじゃね〜の? デカイからっていいい、幾らなんでも気にしすぎだろ。男が女の胸ばかり気にしてるとか思ってるんじゃね〜よ」

「秋徒、動揺しすぎでしょ」


 前方の日鞠から冷静な突っ込みを受けた。そんな動揺してたっけ?


「秋徒の言葉は信用出来ないよね。私も秋徒からの視線は気になってたしね」

「いや、お前のあってないような胸は見たことねーよ」

「愛さんに秋徒は巨乳好きってメールしとこ」

「止めろ」


 いきなりそんなメール受け取って困るのは愛だから。流れが理解できなくて一生懸命返すメールの内容はきっと「そうなんですか」って感じの奴しか無いだろ。その後、変に気にするように成るとかちょっと困る。

 別に愛は日鞠ほどスッカスカじゃないからな。


「誰がスッカスカよ。これから、これからだし。まだ望みはあるもん」

「そうだよ日鞠。きっと大きく成れるって!」


 そう言って前の座席に寄りかかったメカブ。するとその生地を圧迫するマシュマロがムニュッと……


(うおっ! やっぱデカイな)


 ホント全ての栄養胸に持ってかれてるんじゃないかって位にデカい。日鞠の奴は逆に体以外の全てに割り振ってる感じなのかも。だが俺達とそこまで食ってるものも違いなんて無い筈なんだけどな。やっぱ体の作りって決まってるのかね。

 日鞠の奴と全く同じ生活をしたって、同じ能力が手に入るなんて無いだろうし……栄養を十分に取れてれば、予め決まった様に体は成長して行くものなんだろう。牛乳を毎日飲んでる奴が絶対に巨乳とは限らないしな。

 俺は日鞠とメカブを比べながら、日鞠に向かってこう言ってやるよ。


「まあ希望を持つのは自由だしな」

「別にメカブ程なんて望んでないけどね。今の大きさでもスオウ的には十分だろうけど、惚れなおして貰うためにももう後ワンカップ位大きくなってくれてもいいかな〜って思ってるだけだから」

「ワンカップも大きくなればいいな。でも太ればその位直ぐに……」

「他の脂肪が付いたって意味無いでしょ?」


 ギロッと何故か二人から……いや、天道さんにも睨まれた。女子は太るって単語に敏感だからな。でも実際、日鞠の奴はもうちょっと太っても良いと思うけどな。バランス良いけどさ、俺的にはもっとムチッとしてても悪く無いと……求められてもないだろうけど。


『貴方達、一体なんの話しをしてるのですか? 今はミッション遂行中ですよ。緊張感を持たなければ行けません』


 俺達が乳の話ばっかりしてるから電話向こうのラオウさんからお叱りを受けた。まあ確かに乳の話しをしてる場合じゃないよな。


『メカブ、起こす方法は無いのですか?』

「別にガツンと一発やればいいだけでしょ。それでオーケーかな」

『ガツンとですか? 殺気で?』

「いや、そこは生かしてくださいよ」


 ラオウさん何言ってんの? 怖えーよ! 加減位出来るっしょ?


『ですがガツンとした起こし方はやったことがないので……ニュアンス的に強いじゃないですか? ですがそのニュアンス通りに事を運ぶと、そうなってしまいそうなんです』


 ガツンとするだけで人が死ぬものだろうか? そこは大いに疑問があるが、ラオウさんなら殺してしまうことも有るのかもしれないな。俺の思ってるガツンと彼女のガツンはどこかが根本的に違うのかも知れない。有り得そうだ。そう思ってると日鞠の奴が「貸して」と言って、俺のスマホを奪い取る。


「もしもしラオウさん? デコピン程度で良いですよ。それできっと十分でしょう。それよりもタンちゃんが起きたら例の駐車場付近の監視カメラの映像をハックするように伝えてください」

『了解です』


 監視カメラね。定番だな。今の世の中、意識はしないが監視社会だからな。街の至る所にカメラがある。その目から完全に逃れるって事は難しい。まあだけど誰でもがそんな映像を見れるわけでもないがな。だからこそタンちゃんにハッキングしてもらおうって事だろう。上手く行けば犯人の姿や、どこに向かったかとか、追えるかもしれないからな。期待はデカに。それにタンちゃんなら確実にやれるだろう。

 監視カメラのハッキングとかLROを調べる事に比べたら雑魚みたいな物だろ? よく知らんけど。


「取り敢えずタンちゃんに任せておけば大丈夫。映像が入って来たら本格的に対策練らないとね。こっちもそろそろ着きそうだし、もしも荒事になったら秋徒よろしくね」

『俺かよ!?』

「他に誰が居るのよ。もうラオウさん居ないのよ」


 確かにそれはそうだが……俺じゃやっぱ心許ないよな。まあラオウさんが頼もしすぎるのが異常なんだがな。あの人が居れば、大抵の荒事はなんとかなる––って勝手に思えるからな。

 俺じゃあせめて盾に成るくらいしか出来ないが、あの人は迫ってきた危険を殲滅出来る力がある。この違いってデカイよな。心に余裕が生まれるし、その余裕って部分が大事だろ。何も起きない事を祈るしかない––って既に起こってるけどな。

 これ以上、何も起きないことを願おう。俺はそう思いながら後ろを見る。直ぐ後ろは普通の乗用車が良く入れ替わったりしてるが、その後ろの車はずっと同じだ。流石に真後ろに付けるのは不味いと思ってちょっと離れてるんだろうが、バレバレだっての。


「なあ日鞠、追いかけて来てる奴等、振り払ったりしなくていいのか? ずっとついてこられたらジェスチャーコードのことがバレるかもだろ?」

「もうバレてると思うけど……」

「なに!?」


 どういう事だそれ? 何で奴等がジェスチャーコードの事を知ってるって思うんだ? すると日鞠の奴はスマホに目を落としながらこう続けた。


「まあ追いかけて来てる側は知らないかもね。知ってるのは誘拐犯の方かも」

「ああ、運転手さんに吐かせたって事か」


 なるほど、それは確かにありえるな。あの人だってジェスチャーコードとかのワードは知ってるからな。具体的にどんな物かまでは知らないだろうが、そういう何かを探してるって事だけでも有力な情報だ。


「違うわよ。そうじゃなくて、この車には盗聴器位付いてるかなって思って」

「はい!? ––んっ!」


 俺は変な声を発した後、急いで口を手で閉じた。だって盗聴器って……てか何で普通にお前は口に出してるんだよ。他の二人もビックリしてるぞ。


「いやほら、わざわざ運転手さんを拉致したのにキーはそのままだったじゃない。中には容易に入れた。そして私達を使って、LROへの道を探させたいって向こうは考えたわけじゃない。

 だけど人なんてそんなに簡単に信用出来る物でもないでしょ? そもそも向こうは誘拐なんてあくどい事をやってるんだから、どこで私達が反撃に転じるか分からない。情報はなるべく新鮮な内に欲しいはず。

 それなら、移動手段に使えるこの車に盗聴器位仕掛けてるかなってね」

「いやいや、堂々と言いすぎだろ!」


 そういうのってバラす物じゃないよな。こっちが気付いてるとか勘付かせちゃ駄目だろ。


「ちょっと日鞠、盗聴って……つまりは向こうはこっちが行方を追ってるのまでわかってるって事?」

「そうかもね」

「そうなったらイタチごっこじゃない? 勝ち目ないじゃん」


 確かにな。犯人たちは俺達の反抗心も知ってしまった訳だし、運転手さんに何をするか……なんで予め伝えてくれないんだよ。そう思ってると日鞠はこう言うよ。そして同時に俺達に向けてスマホの画面を向ける。


「まあどうにかなるんじゃない?」

『大丈夫。全部を隠すよりもある程度こっちの情報を与えた方が、動きって読み易いのよ。それにメールもしてるしね』


 メールね……本当に有意義なのかそれ? 分からん。分からんが……こいつは癪だけど信用できる奴だ。いざって時は頼もしい。俺はため息を一つ吐いてどかっと後部座席に戻る。


「分かったよ」


 こいつを信じるしか無い。今までの問題と敵の大きさも規模も桁違いだが……だからこそ、俺にはこいつしか信じれる奴が居ない。だから……それだけ。諦めと一緒に、全てを抱えてついてくしかない。


「まあ聞きたい奴には聞かせとけって事でしょ。そういうの私も嫌いじゃないわ」

「そうね。下等な人間風情にはそのくらいにハンデは必要でしょ」


 二人もそう言いながら、盗聴という可能性を飲み込んだ。どうして俺の周りの女達は自信過剰気味なんだろうか? 少しは奥ゆかしい子も必要だよな。まあそれが愛に当たるんだろうがな。

 そう思ってると車窓の景色がどこか見覚えのあるものになってきてた。ようやくこっちも到着か。摂理と当夜さんが眠ってた病院が視界に入る。最近良く来てる気がする場所だ。だけどそれも当たり前か。

 あの場所も切り離せない場所なんだろう。ジェスチャーコード……二人だけの秘密のおまじないって奴がここで判明することを願おう。

 第五百六十九話です。

 いつになく遅くなってしまいました。次回も遅れるかもです。切羽詰まってます。どこかで調整が必要ですね。


 とりあえず次回は日曜日に上げます。ではでは。

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