白衣と助手と
助手と呼ばれてたキャリアウーマン風の彼女の後をついていき、たどり着いた場所はやっぱり少し寂れた建物前。リアルじゃぼろいビルだったけど、こっちもこっちでやっぱなんか廃れてる。どうやらあの頃から経済事情は解決してないようだな。
結構凄いことやったし、評価が改められたんじゃないかとちょっとだけ期待してたが……どうやらそんな事は無いようだ。
ボロい建物の壁にこれまたボロい看板で『公式(仮)第四研究所』と書いてある。なんか涙ぐましいな。公式ってなんだよ……だし、後(仮)も意味が……まあこの街にはちゃんとした研究所が三つほどあるんだよな。そこはちゃんとした研究機関として認められてる。
だけどこの第四研究所だけは違う。だからこそ(仮)なんだろう。公式ってのもなんか上のほうにちゃんと許可取ってあるか無いかだろ。
「ぼろっちい建物ね」
「こんな所に入るなんて私のプライドがなんか許さない」
ミセス•アンダーソンと孫ちゃんが散々言ってる。こいつら信仰心ない人には容赦無いな。
「確かにちょっと古いけど、クリエはこの方がワクワク出来るよ。何か出てきそうだもん!」
「それはフォローに成ってないと思うぞクリエ」
「うん?」
どうやら別にフォローしたわけでもないようだな。クリエは素直に自分の心情を口にしたに過ぎない。やっぱ散々ないわれよう。
「まあここがボロいのは否定しようもない事実だから別に良いわよ。何を言っても。場所になんか興味はない。面白い研究が出来れば別にね」
「何を研究してるんだ?」
そこ気になるよな。まあ錬金関係の何かなんだろうけど……でも僕達は大まかに錬金術と言うくくりでしか分からないからな。ミセス•アンダーソンや孫ちゃんは何か錬金の事を詳しく知ってそうだけど、機密とか言ってたしな。教えてくれそうではない。
それに結局この人も言ってたようにノーヴィスでは錬金は禁忌でもあるんだよな。それなら二人が知ってる事もたかがしれてるかも……この街ブリームスはずっと錬金に特化してきた街なんだろうし、きっと二人が知り得ない事もあるんだろう。色々と専門的な事を僕が聞いても意味無さそうと思えてくるな。だけど、何も知らずに居ると、大切な事を零しそうでもあるよな。理解ができなくたって、知っておくことは大切な事だ。
「今は星生錬金かしら」
「せいしょうれんきん?」
えっと……なにそれ? ミセス•アンダーソン達もわかってないぽいぞ。
「星生錬金とは、かつてこの地を消し去ろうとした三つのアイテムに迫るとも劣らない、錬金アイテム生成術よ。この世界に影響を与える程のアイテム作成が課題なの」
「それって……危険なんじゃないか?」
「そうだよ。危ないよ!」
クリエも僕の言葉に同意してくれる。こいつこそなんにもわかってないだろうけど、きっと雰囲気とかで察してるんだろう。
「危険なのは承知の上よ。だけど、進歩に危険はつきものなの」
「お前な、ここの昔の奴等がどれだけ苦労してこの街を守ったと思ってるんだ?」
「なにそれ? まるで見てきたかの様な言い方ね」
クスクス笑う彼女。だけど悪いけど、俺は見てきたよ。てか言うなれば当事者……じゃなく関係者か? 深く関わったんだ。協力してくれたのはこの第四研究所の所長達だった。なんとかアイテムの暴走を止めて、この街を今ここまで繋げたのはきっとあれがあったから。
ここの先人達が命と名誉を賭けて戦ったからこそなんだよ。それなのに、後輩にあたるこの人にはそんな事を言って欲しくなかった。
「見てきたさ。アンタはあの騒動をどこまで知ってるんだ? 知っててそんな事を言ってるのか?」
「やっぱりなんだか研究しがいがありそうよね僕は。知ってるかと問われれば、残ってる記録上の事は全部知ってるわ。それ以外はサッパリだけどね。なんてたってもう随分昔の事だもの。私達には知り得ない事もあったんでしょうね」
階段を登りながら彼女は淡々と述べる。実際、あれっていつくらいのブリームスだったんだろうか? 数十年前位? 人の国が出来たのが数百年前って言ってたし、流石にそれよりも前って事はないよな。でも実際あの頃からブリームスは結構進んでた様に見えてたから、あんまり昔って気もしないんだよな。まあ画面の向こうだったし、実際に僕達が駆けずり回ったのはリアルの秋葉原の街だ。だからこそ、あんまり古く感じる事が無かったってだけかも知れないけどな。
「僕はさっきからこの街の事を知ってる素振りをしてるけど、それを示せる証拠はあるのかしら?」
「あのさ、さっきから思ってたんだけど、その僕ってのやめてくれない? なんかむず痒いんだよ」
てか……嫌な記憶を思い出す。僕の事を「僕」呼ばわりする人は世界にもう一人居たからな。
「そう? じゃあ名乗ってよ」
「僕はスオウだ。背中の奴はテトラ」
「クリエはクリエだよ! ピクの事は紹介したね」
「モブリの年食ってるほうがミセス•アンダーソンで、若いほうが孫ちゃん。僧兵は僧兵でいいとして白い毛の奴がリルフィン。分かったか?」
「それぞれ特徴あるから簡単ね」
確かに紹介するには苦労しないなこの面子は。だけどどうやら不満がある奴も居たようだ。そいつらが声をあげる。
「ちょっとスオウ、誰が『年食った』ですって?」
あっ、やっぱそこには反応するか。なんとなくしそうだなって思ったんだけどさ、他に思いつかなくて。だって孫ちゃんの方が圧倒的に若いだろ。モブリは四人も居るんだぞ。分かりやすさ重視した結果なんだから受け入れろよ。
「別に年増は年増でいいけど、なんで私が『孫ちゃん』なのよ! 私には立派な名前が––」
「だって元老院の長の孫娘じゃないか。孫ちゃんで十分だろ?」
「孫孫言われるのが、私は一番嫌いなの。私はね、七光りなんかなくても、上に立てる器なのよ!」
「それはどうかしら……」
ボソッとミセス•アンダーソンが呟いた。確かに悪いけどそれはどうだろうかってのは同意だな。実際そういうのって確かに受けてる側は嫌がってるのかも知れないけどさ……それを軽んじる事なんかお前達は出来ないぞって思う。
どこまででも付いてきて鬱陶しいんだろうけどさ、そのおかげは確実にあるんだ。実際孫ちゃんってどこまで優秀なのか判断ついてないしな。ここ最近はもしかして優秀な部類に入るんじゃないか? って片鱗を見せてくれたけど、それだけで今の地位に入れるとはハッキリ言って思えない。
あのくらいじゃまだまだ僧兵止まりだよな。でもそう考えればこの二人はお似合いということに。良かったじゃん。
「なんだその表情? てか俺の事も僧兵ってなんだよ! ここまで付き合っててそれはなくない!? 僧兵って一杯いるからな!」
「そんな事知ってる。だけど僕の中での最高の僧兵はお前だけだ」
「おっ……おいおい、そんな……って騙されるかそんなんで!!」
ちっ、馬鹿だからこれで連れるとおもったんだけどな。流石にそこまでじゃなかったか。惜しい。
「まあでも彼女はもう納得してくれてるし、良いだろ」
「「「納得出来ない!!」」」
三人が声を揃えて抗議してくる。だけど全員足元だからな。別段怖いわけじゃない。すると彼女は三人をそれぞれ指さして確認してく。
「問題無いわ。年増のアンダーソンに孫の孫ちゃん。後は僧兵でしょ?」
「年増じゃなくミセスよ!」
「孫二回も言わないで!!」
「もう僧兵が名前見たくなってるじゃないか!」
三者三様に切れたり絶望したり、面白い奴等だな。そんな三人を無視して彼女は名前をさり気に言うよ。
「私は『フラン•ルジェル』よ。フランでいいわ」
まあ他に呼び方無いよな。彼女改めフランさんはカツカツとハイヒールを鳴らして階段を上がってく。タイトスカートの奥が見えそうで見えないのがなんか気になるな。いや別に見たいわけじゃないけど、タイトスカートってぴっちりしてるからお尻がヤケに強調されるじゃん。
しかも階段で上に居るわけだから、視界に普通にしててもそのフリフリと揺れるお尻が入ってくる訳だ。そうなるとな……やっぱなんか気になる。男として。そんな事を気にしながらチラチラ見てると、フランさんが階段を上がったところで聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「おお助手遅いぞ! てかなんでさっき通話を切った? これは我等の研究が飛躍的進歩をみせる時が来たということなんだぞ! そんな重大報告を良くも––」
「はいはい、街の外のガラクタ置き場で何を見つけてきたか知らないけど、こっちの方が重要だったのよ。面白い研究対象を連れてきたわ」
「何? それはいった……い––」
フランさんの後ろから出張ってきた僕達を見て青ざめる白衣のおっさん。わかりやすい反応だな。
「くっ、助手! 裏切ったか!!」
そんな事を叫んで方向転換。おっさんは反対側に走りだす。だけどその時、彼の前に腰を超える高さまである十字架が床に刺さった。
「逃さないわよ」
ミセス•アンダーソンがどうやらいち早く動いたようだった。十字架は後三つほどがおっさんの周りに突き刺さり周囲を囲む。
「くっ……」
「十字架よ、異教の徒に束縛を」
十字架の間に張られる光の壁。どうやら完全に逃がさないように結界みたいなのを張ってるようだ。完全に閉じ込められたおっさん。これでジ・エンドだな。いや、殺したりしないけど。
「なに? 僕達知り合ってたの?」
「まあな」
状況が飲み込めてないフランさん。だけどそこまで驚いてるってわけでもないみたいだな。
「何やったのあれ?」
「いや、別に悪気があったわけじゃないとは思うけど、僕達の船を結果的に盗んだ形に……」
「船? ああ、飛空艇ね」
そんな風に思い当たった事を言ったフランさん。だけどその時、捕まってる白衣のおっさんが「違うぞ助手!」と吠えた。
「飛空艇などというちゃちな代物ではない! こいつらが乗ってきてた船は魔鏡強経第一の理論で組み上げられた代物だ!」
「ええ!? ちょっ、それ本当!?」
こっちを見て答えを迫ってくるフランさん。だけどゴメン。僕にはその魔鏡強経なんちゃらは分からない。錬金の事も……と言うか魔法の事さえもサッパリな僕には、もう全く理解の範疇を超えてるんだよ。
僕はLROに居るのに一回も魔法使ったこと無いからな。別に一番簡単な魔法は使えるんだろうけど、今更そんな魔法が役に立つか? ってね。既存のスキルを高める事の方が絶対的にいいよな。
イクシードはまだまだ進化の余地あるはずだ。そもそも既にイクシード3で限界が見えてるんだ。イクシードを今以上に昇華しないと、ハッキリ言ってシクラ達と渡り合えるとは思えない。
使ってみたい気はあるんだけどね。魔法とか……憧れる。錬金も興味はある。フランさんのあのメガネ……掛けてみたくてウズウズしてるしな。
「魔鏡強経第一の理論の船ね……確かにそれは興奮するわね」
「言っとくけど、アンタ達に触らせたりはしないわ」
「だが触らないと修理も何も出来ないぞ。そもそも俺が逃げる羽目に成ったのはお前達が俺を信用しなかったからだ。この街に来て、軍隊に追われたりしたか?」
「それは……」
ミセス•アンダーソンが口ごもる。まあ確かにこっちにも否はある。でもそれならなんで逃げようとしたんだよ。自分の疑いを晴らすこと出来たじゃないか。
「それは貴様らが血眼で追ってきてたからだろう。条件反射で逃げたのは仕方ないと言うものだ。そもそも俺の話を聞く気あったのかという……」
「ボコってから聞いたわよ」
「それが嫌なんだ!! 全く近頃のモブリは好戦的だな」
モブリがというか、最近の女は……みたいな。肉食女子とか数年前はよく言ってたけど、好戦的なのはちょっと違うか。肉弾系とでも言っておこう。
「ね〜ね〜グリリン返してよ!」
「だから俺は別に盗む気などない。ただ修理がてら、構造を調べさせて貰えればそれでいいんだ」
「そっか〜それならいいよ〜」
「ほんとか!?」
クリエの奴の適当な言葉に嬉々とするおっさん。だけどそこで当然の如く待ったが入った。
「ちょっとクリエ、適当な事を言わないで。バトルシップはノーヴィスの技術の粋が詰まってるの。そうやすやすと開示は出来ないわ。けど修理はしてもらいたい。ここはお金で解決しましょうよ」
生々しい事を平然と言ったな。それで良いのか? 神に仕える者として……
「金などいらん」
「そうかしら? 資金面で苦しそうに見えるけど」
当たりを見回してそういうミセス•アンダーソン。確かに資金面で苦労してそうではあるよな。窓やドア、壁や床とか見渡す所全てに、涙ぐましい補強の後が……どの位前かは分からないけど、僕達が協力し合ったあのイベントのブリームスが過去で、その頃からこの建物はあったんだから、古いのは当然だよな。
「確かにここは資金がないわ。研究所内がこの有様なのはそのせいでもあるし、けど言っとくけど金と言ってもはした金なんていらないわよ。せめてこの位は用意できるんでしょうね?」
そう言ってフランさんは片手の指を全部広げた。五か……五十万?
「五千万」
「「五千万!!??」」
僕と僧兵の声が重なった。だって五千万って……幾らなんでもそれはタカり過ぎだろ。
「妥当でしょ。なんせ軍事兵器よ。そのくらいポンポン出せる代物の筈。だからこそ、そこのお偉いさん達は黙ってるんでしょ?」
なるほど、確かに個人で五千万って!? って思ったけど、国単位で考えるとそうでもないか。それにそこら辺の車を直す訳でもないんだもんな……それなりの費用だって掛かりそうではある。
「まあだけど実際に払えるの? って感じだけどね。ここは外の世界と隔絶してるからね。この街の独自通貨で払ってもらわないと意味なんて無い。出せる? 出せるわけないわよね?」
「くっ……」
歯を噛み締めるミセス•アンダーソン。確かに出せるわけない。外に行って戻ってきた時にドサッと放り投げていいんだったら可能だろうけど……このブリームスはどうやらこの街だけで完結させてるみたいだし、外の通貨なんてゴミなのかもしれない。
そうなるとな……個人で五千万ってそうそう払えるものでもないしな。
「だけど私達は研究者。お金は勿論好きだけど、それ以上に好きなのが研究なの。だから修理はしてあげるわよ。その船を好き勝手に調べさせてくれるのならね。勿論、それを飲んでくれるのなら、お金なんていらないわ。そうでしょ?」
「おっ、おう! 金などいらんから触らせろ!!」
フランさんの言葉に白衣のおっさんはあわせてくる。上手いこと向こうに主導権握られたな。てか、金を出したのが間違いだったかもな。でもこの街の事情なんてまだまだ僕達はわかってない。しょうがないか。
まあそもそも僕的には修理さえしてもらえるなら、好き勝手にやってくれて構わないんだけど、サン•ジェルクの関係者である人達はそうも行かないんだろうな。技術を守るのは大切な事だしな。
「わ、わかったわ。それで良いでしょう」
「ちょっと、何を勝手に決めてるのよ! これはアンタ一人が勝手に決めていい問題じゃないわよ」
ミセス•アンダーソンの決定に孫ちゃんが反論する。だけどミセス•アンダーソンは押し切るよ。
「じゃあどうするのよ? バトルシップがなくちゃこの先やっていけなくなるわ。いつまでもここで立ち往生してるわけにも行かないし、ここから出るにしても、バトルシップが直ってないと話にならないわ。
今から五千万を稼ぐ方法でもあるのなら提示してみなさい」
ってまあこんな感じだ。提示できるわけないよな。だから結局条件を飲んで修理を頼む事に。だけど僕には大きな不安があるんだけど……
「あのさ、この街って他にも研究所あるだろ? そっちに持ってったほうが良いんじゃないか? ここの設備で直せるのか?」
だってマジボロいよここ。グリンフィードは最新鋭だぞ。どうにかなるのか? そもそもの問題として腕や技術も不安だしな。第一や第二の方が良いような気がする。向こうはかなりデカかったしな。設備とか全然違うだろう。
「ふふ、まあ確かに設備じゃ家は叶わないわね。殆ど使えないものばかりだし」
「駄目じゃん」
「だけど錬金に一番必要なのは設備なんてものじゃない。想像力よ」
そうなのか? ドヤ顔されたけどさ、いまいち不安は取れないぞ。でもそのドヤ顔と自信で押し切られてしまった。
僕達は取り敢えず場所を移動中だ。吸い込んだグリンフィードを広げる場所に向かってるそしてどうやらそこは屋上らしい。ドアを開けると日が傾きだした空が茜色に染まってた。
そんな綺麗な空の下にいち早く歩み出る白衣のおっさん。彼は空を仰ぎつつポッケから例のホースを取り出してた。
「錬金とは何かをまずは言っておこう。錬金は魔法とは根本的に違う。真逆と言って良い。魔法は契約の塊だ。決められた事を実行する為に、契約し対価を支払い、実行に移す。それは世界に許された範囲でしか実行できない。
だが錬金は違う。錬金は契約に穴を開ける事が出来る。世界が構築されてる密接な契約の穴を突くのが錬金術だ。自分達の作ったルールを押し付けるみたいなものだな。
それによって許されざる事ができてしまう。かつてはそれで大変な事も数多く起こったらしい。だが全ては使う者次第だ。俺達はずっとこの力と向き合ってきた、良い友人に成れてる。
だから任せておけ」
振り返ったおっさんがなんか格好良く見えた。冴えない中年オヤジみたいな奴なのに、なんだこれ? きっと雰囲気とかのせいだな。でも錬金が何かって、今の説明じゃいまいちよく分からんがな。
そう思ってるとホースを持って先端を広い空間の方へ向ける。そして手前側の方に口を付けて息を吹き込むと––ってちょっと待てよ。思ったんだけどこの「広さ」で大丈夫か? バトルシップは普通の飛空艇よりも大分小型化されてるけどさ、それでもこの屋上じゃあ足りないような……だけど時は既に遅かった。
息を吹くと同時に先端からバトルシップの尻尾出てきて、まるでゼリーでも出てくるみたいにニョロニョロと全体が出てくる。そしてドガンと激しく建物を揺らしてめり込んだ。もうちょっと丁寧に扱えないのか? そう思ってると、半分以上が建物からはみ出してるせいで、ズルズルと道路の方へと滑ってく。
「おおおおいいいいいいいいいい!」
やっぱりか! だから足りないんじゃないかって思ったんだ!! このままじゃ大惨事だぞ。すると突如周りの建物から光のワイヤーみたいなのが伸びて来て、グリンフィードに巻き付いて落下を防止する。
「慌てないでよ。こんなの想定内だから。これで大丈夫でしょう」
想定内って……いいのかこれ? 半分出たままだぞ。しかも周りの建物の人達が「またお前らか!!」って叫んでるし。「勝手に変な細工するな!」っても聞こえる。許可くらいとっとけよ。
だけど目を輝かせ始めた二人にはそんな言葉届いてない。全くこれだから研究者って奴は–––茜色にそまる空に照らされる中、目の前の珍妙な光景になんだか思わず笑えてくる。
第五百四十六話です。
今回はいつもどおりです。良かった良かった。この調子で行きたいですね!
てな訳で次回は土曜日に上げます。ではでは。