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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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別の空

 夜も少しずつ深まって行く中、鉄の固まりが空へ飛び立って行く。星もよく見えない空へと、大きな翼を広げてその巨体を飛ばすんだ。アレには愛が乗ってる。めちゃくちゃギリギリだったけど、鳥取行きの便に飛び乗れた。

 実際チケットも取ってなかったはずだし、これは流石に次の便になると思ったんだけど、いやはや最近は便利になったようで、荷物も無いから保安検査場へ直行してった。しかもそこでスマホかざすだけでなんら問題ないし、どうやら最近は航空券も簡単に買える時代になってしまったようだ。

 近距離通信規格も普及してるしな。紙のチケットなんかなくても良い時代がやってきてる。その後はもうなんだか一気にVIP待遇。何故かワラワラと空港職員が愛の周りに集まってきてた。

 金持ちだからな。きっとお得意様とかなんだろう。愛の家なら普通に自家用ジェットとかあってもおかしくない気もするし。大株主とかかも。まあそんな訳で、無事に愛は島根へと飛び立ったわけだ。

 でも島根って島根空港って無いんだな。なんか聞いたこともないような空港で、あれは本当に島根行きか? って俺は思った。てかまだ思ってる。けど誰も突っ込まない所を見ると、あれで良いんだろう。出雲位ならわかるんだけどさ、米なんとかは知らない。

 出雲空港の便は十八時位で最終だったから、間に合わなかったんだ。だから米なんとかの方へ飛び乗った。広島や山口の方でもなんとかなりそうではあるけど……やっぱり県内の方が効率がよさそうではあるよな。


(落ちたりしないよな……)


 自分の時よりも不安になる。大丈夫だとわかってても、その確率が物凄く低いことだと知ってても、やっぱり不安は襲ってくる物だ。空の上なんて何か起こったら逃げ場ないからな。


「秋徒、何やってるの? 私達も急ぐわよ」

「おう」


 日鞠のやつのそんな言葉で俺は上を見つめるのをやめて歩き出す。流石にそろそろ長期休暇も終わるとあって、人がごった返してる空港内を自分よりも華奢な背中を見失わない様にする。

 長く細い2つの三つ編みが特徴的に揺れてる。腰を通り越して、膝くらいまであるからな。流石にここまで長いのは女性でもそうそう居ないよな。そう思ってると、前を向いてた日鞠の奴が僅かにこっちを向いてこう言ってきた。


「寂しくなった? 愛さんが居なくなって」

「寂しいってか不安だ。飛行機だからな。それに付く頃にはもっと暗いんだぞ。一人で島根なんてド田舎を闊歩するなんて……危険だろ!」

「あんた、島根県民に襲われるわよ」

「でも都会じゃないのは確かだ。愛みたいな子が一人で歩くには暗すぎると思う」

「明るければ良いってものでも無いと思うけど? その理屈だと、夜の新宿とか池袋とか渋谷とか安全になるわよ?」

「うぐ……」


 確かにそっちはそっちで危険だな。女を狙う野獣共がこぞって大挙してる街だからな。でもだからこそ、警官とかも多いはず。人目があるってことは、気をつけてればそうそう何かが起きることはない。

 ホイホイと怪しい奴らに付いて行ったりしなければな。でもそもそも人が居ない閑散な場所なら、いきなり誘拐とか犯罪が突発的に起こったっておかしくないじゃないか!


「人が居なくちゃ犯罪も起きようもないんじゃない?」

「迷子になるとか、慣れない土地で四苦八苦するかも」

「あんたは愛さんを何歳だと思ってるのよ」

「お嬢様だよ!」

「何歳って聞いてるのにその答えはおかしいでしょ?」


 日鞠は大きくため息を付く。でもこっちにとっては年なんて問題じゃないんだよ。愛は俺達と同じ世界を生きてきたワケじゃないんだ。俺達庶民とは違う、愛はお嬢様の世界を生きてきたんだよ。

 そしてその世界でも大切に大切にされてきたらしい。だからこそ心配なんだ。お嬢様って事が!


「愛さんはあれで逞しいと思うけど。常識だってあるし、決して世間知らずじゃない。そこまで心配することなんかないわよ」

「わかってるよ。そんな事、俺が一番わかってる。でもお前にだってこういう気持ちわかるだろ? 大切な人が遠くに行くんだぞ。心配するのは普通だろ」

「まあね、でもこの程度だよ秋徒。ちょっと島根まで行って戻ってくるだけ。明らかに死地に向かってるわけじゃないんだから、ちょっとは落ち着いたほうがいい。知ってる? 島根は神様の国なのよ。大丈夫よ」

「今はその神様も全国に散ってるだろ」

「そういう事は知ってるのね。けど総本山なんだし、神通力がきっと通じやすいんじゃないかな? 愛さんは一杯徳を積んでそうだし、神様も無碍にはしないでしょ」

「だといいけどな」


 そう行って俺は両手をあわせて拝み出す。周りから変な視線を集めてる気がするが、気にしない。


「何やってるのよ?」

「いや、神様にくれぐれも頼むとお願いを」

「それならお賽銭が必要でしょ。神様だってただで願いを叶えてくれないわよ」

「なるほど、確かに。でも一体どこに賽銭すればいいんだ?」

「この場合は世界にお金を落とすことが大事なの。お賽銭は別に神様が欲しいから取ってるわけじゃない。神の国にお金なんて必要ないのよ」

「じゃあどうして賽銭を欲してるんだ? おかしいだろ!」

「あれはね、お金という物欲を捨てさせる儀式なの。お金に宿る物欲を捨てることで、覚悟を神様には見せてるの」

「そうだったのか……」


 なんだかそれっぽい事を言ってるぞ。じゃあお賽銭はそもそもが必要ないと? この場合な。


「なんでそうなるのよ。あんたはまだ物欲を捨ててないじゃない。そんなんじゃ神様は耳を貸さないわよ」

「そうか、金を投げ捨てないと行けないのか!」


 俺は財布から小銭を手のひらに広げる。だけどそこでまた、待ったが掛かった。


「何投げ捨てようとしてるのよ。そんな事したらお金に宿ってる神様が怒っちゃうでしょ」

「じゃあどうすればいいんだよ!?」


 あれもダメ、コレもダメじゃやりようがないぞ。このままじゃ俺の願いを神様が聞いてくれないじゃないか。そうなったら不安で押しつぶされるかも知れない。


「この国は多神教なのよ。八百万の神々が住まう国。全ての物に敬意を持って扱う必要があるの。さっき神様は別にお金を求めてる訳じゃないって言ったけど、神様を祀る神社仏閣はそうじゃないの。ああいうところの経営にはお賽銭が大切なのよ」

「おい、なんだか生々しい話になってきてないか?」


 経営とか神様と関係あるの? と言いたい。神様そんなの気にしてないだろ。だけど日鞠の奴は妙な迫力でこう言ってくる。


「当然よ。神様は神社仏閣に居てくれる物だと思い込んでるんでしょうけど、それを支えてるのは人なの。もっと言えばお金なの。ああいうのは維持費がかかるの。お賽銭で神様は人の物欲からの解放を見定めて、住職達はお賽銭でご飯を食べてるのよ! 

 この二つはね切っても切り離させない関係なんだから。神と人が一挙両得出来る考えられたシステムなのよ」

「なんだかそう言われるとありがたみが無くなる気がするな」


 世俗に塗れてないか宗教って?


「当然でしょ。世俗を渡ってるのが宗教なんだもの。生きるためにはお金が必要で、神様に居座り続けて貰うためにもお金は必要。いつでも願いを聞いてもらう代わりにお金払って居て貰ってるの」

「まあそこら辺の仕組みはもういいけどさ、じゃあ俺はどうしたら神様に願いを聞いてもらえるんだ?」

「まだわからないんだね秋徒。ちょっと愛さんにデレ過ぎじゃない。元々鈍かった頭が更に鈍くなってるわよ」

「うるせぇ!」


 別に愛にデレてるからこんな鈍くなってるわけじゃない。元々だ–––ってそれも悲しいけど、お前達と比べられるとどうしても劣るのは避けようがない事実なんだ。悔しいけどな。日鞠の奴は楽しそうにニヤニヤしながらこう言ってくる。きっと俺をからかうのは面白いんだろう。こっちは真剣なんだが。


「もうしょうがないなぁ秋徒は。まあ私も恋する乙女だし、秋徒と愛さんの事は応援してあげようと思ってるからしっかり教えてあげるわよ」

「そりゃあどうも」


 いいからさっさとその方法を提示しろよな。俺達は少し速度を落として空港内を歩いてる。人にぶつからないようにするのが案外大変。


「秋徒、お賽銭に二つの意味があることは分かったでしょ?」

「え~と、神様は物欲を捨てることを見てて、そのお賽銭は神社の肥やしになるだっけ?」

「その通り。つまりそれは経済が回るということよ」


 はっ? もうよく分からん。経済はいいから神様との付き合い方をだな……


「だからそれを言ってるんでしょ。つまりは願い事をするには物欲を捨てて、経済を回すためにお金を落とせばいいのよ。だからあの美味しそうなお土産ロールケーキを買いなさい」

「どう考えても食いたいだけだろ!?」


 そう言ってるのに日鞠の奴はその店に直交しやがる。人の話聞けよ。


「何よ、願い事を神様に聞いて欲しいんでしょ? これも立派なお賽銭。商品を買うことでお店が潤って、明日へ繋がるのよ。材料だってそれで買うの。農家の人が作った材料が運ばれて加工されて、職人の手を経て販売される。

 それを私達が買うことで流通は回ってるの。ようは経済はそれで回ってるってことよ。いつまでも貯金ばかりしてると、一向に景気なんて良くならない。社会貢献よ。神様だってそれを推進してるんだから文句言わずに出しなさい」

「お……おう?」


 チャリーンとレジに消えてくお金。「ありがとうございました」と言ってくれた店員さんは可愛くてよかったけど、どこか日鞠の奴に乗せられた感は拭えないな。しかも何故か二個も買わされたし。


「一つはタンちゃん達へのお土産用。もう一つは今から会う人へのこれもお土産用。自分の為じゃないんだからね。そもそも手土産一つ持って行かないのはどうかと思うでしょ」

「それはまあ、そうだけど」


 何故に俺だけが金を払わなくちゃいけないんだ。


「払いたいって言ったでしょ?」

「言ってねーよ。俺は愛の無事を願いたいんだ!」

「願えばいいじゃない。条件は満たしたでしょ」

「そうさせて貰うよ!」


 二つで二千六百円くらいしたからな。どんだけ高額なお賽銭だよ。普通お賽銭って五円とご縁を掛けてワンコインが相場だろ。なんで札を二枚を取られなきゃいけないんだ。くっそ、その分効果が高いと割りきるしか無いな。俺は必死に「愛が無事に戻ってきます様に」と願う。

 これで効果なかったら、お賽銭なんて一生しない! 



 俺達は外で待っててくれた車に乗り込んで空港を後にする。今から数時間は車に乗ってないといけないな。首都の明かりはとても眩しい。この明かりの中にLROに関わってる人達はどれだけいるんだろう……とか考えてみる。

 きっとそれなりには居るよな。その人達はただ復旧を待ってるだけ……って訳でもないよな。大々的にニュースに成ってたし、もうあの世界には行けないのかと、落胆してる人達も居るだろう。

 サービスが再開されるかはもう誰にもわからなくなってしまったんだから。ユーザーは組んで行動したりしないのか? あの場所が無くなるのは相当な痛手だと思うんだけどな。今更他のTVゲームになんて戻れないだろうし、他にフルダイブを実現できてるゲームはない。

 唯一無二のLROを取り上げるなって声は少なくないだろ。


「それはアンタみたいなヘビーユーザーの声よ秋徒。アンタ達トッププレイヤーはそれこそ廃人同然で他にやること無いんでしょうけど、ライトユーザーはもっともっとお気軽に楽しんでた筈じゃないかな?

 そんな人達が真っ先に気にするのはサービスの存続よりも、危険と隣合わせだった事実。大多数の人達はLROのサービス再開を求めて調査委員会に訴えるなんて事はしない。むしろその逆でしょ。

 大々的にニュースに成ったんだし、LROで持ってたあの会社は潰れるかも。もう既にきっと抗議活動は会社の方に山の様に行われてると思う」

「誰もがLROで得た感動を蔑ろにして、抗議を始めてるってのか?」

「それはそうでしょ? だって危険だったのよ。だからアンタ達みたいにどっぷりと浸かってた人ばっかりじゃないの。危険があると分かってれば、躊躇う人は当然いるよ。それが普通。

 ましてやそれを告知しないで、既に何十人も意識不明者をだしてるなんて分かったんだよ。抗議はするでしょ? この状況でLROに戻ろうとしてるのなんて私達くらいか、それこそLRO廃人位よ」


 確かに考えてみればその通りか。いや、それが当然だってわかってる。てかあの調査委員会の奴ら、かなり上手くやってるんだな。LROを擁護する声は既に皆無……悪役を上手く作って、自分達は英雄の様に、他人が作った技術を盗む気か。

 確かに悪役というのも決して間違ってる訳じゃないし、危険を告知しなかったのは悪いからどうしようもない。もしも自分が意識不明に成ってたかもしれないんだから「そんな危険な物を良くも金を出せて買わせたな」って言われたら、言い返す事も出来ないよな。


「でも……それでもLRO自体が無くなれば良いなんて思ってる奴はきっと少ないと思うんだよ」

「どうしてそう言えるのよ? これからも命が関わるゲームに関わろうなんて思う人は少数派だと思うけど?」


 日鞠の奴は空港内で買ったコンビニおにぎりを頬張りながらそう言ってくる。日鞠の奴の意見は大体正しいことがほとんどだ。一般的に、日鞠の言葉を否定する奴なんて居ないだろう。でも今回は特殊なんだ。

 あの感動……LROで得られた物や衝撃は、決して易い物じゃない。まあコレばっかりは体験してない日鞠には想像もしようもない事だけどな。


「あれは軽いカルチャーショックなんだよ。人生観変わるほどの物がLROにはあった。それに魅了された人達は少なくないはずだ。確かに重要な事実を隠してた運営や会社は許せないかも知れない……けどそれで、LROというゲームが、いや違うか。

 フルダイブシステムのゲームがこれから一切無くなるなんて、誰も望んでなんかないってことだ」

「ふうん……でもそれはアンタの意見よね?」

「それじゃあダメか?」

「一つじゃね。どれだけの物か私は知らないし……あとちょっとだったんだけどな」

「ん? 何か言ったか?」

「別に」


 それからは俺にもおにぎりを分けてくれたけど、黙々と食べて外を見てるだけになった。何かを考えてるんだろうけど……それは俺には計り知れないな。そう思ってるとスマホがメールを知らせてくる。

 開いてみると、セラの奴からだった。これからはこっちで連絡取り合ったほうがいいだろうということだ。まあ確かにそうだよな。俺の知ってるメルアドとは違う連絡先が送付されてる。きっとLRO用の奴とは違うのなんだろう。取り敢えずそのアドレスにメールを打って、どこで会うのかとかを詰めることに。こういうのも日鞠は得意そうだけど、流石に二人は他人だからな。

 ここは俺がやるべきことだろ。テツはメールでもそんなに変わらない印象。リアルの姿は見たことないけど、年とか実際全然想像できないんだよな。なんてたって向こうじゃモブリだからな。

 リアルの姿が一番想像しにくい種族なんだ。モブリの愛らしさと反対でめっちゃゴツかったりするのだろうか? どんな感じなのか色々と聞き出そうとしてみるんだけど、どうやらテツの奴は自分の事はあまり話したくないようだ。

 ここまで来て隠したってって思うんだけどな。どうせ数時間後には会うことになるのに。てか数時間暇そうだからこうやって色々と余計な事もメールしてるのに、テツの奴はあんまり乗り気じゃないみたいだな。やっぱり俺達とはLROだけの付き合いの方が良かったってことなんだろうか?

 実際スオウの事とかこっちでは全然気に掛けてない……とか? 流石にそれはないと思うけど……少し勝手に凹んでるかも。結局話しはあまり続かないから、大体の予定を詰めてメールは終了。後は運転手の人に愛の事を色々と聞きながら時間を潰す事になった。



 首都の光が見えなくなって、だんだんと空に輝く星の数が増したように感じるまでになった。高速を降りてひた走る町並みは、東京とは違う感じをやっぱり受ける。ようやく茨城。だけどまだ車で走る必要がある。一時間前くらいに愛からは連絡が入ってたから、もしかしたら向こうの方が早く接触できてるかも知れないな。

 こっちはまだここから更に茨城の奥地へと進まないと行けないからな。日鞠の奴は既に寝息を立ててる始末。無防備なその姿はちょっとドキドキしてしまう。そのせいでこっちは眠ることもできない。

 まあ運転手の人にだけ働かせるのはどうかと思うから、こっちはずっと話し相手に付き合ってるんだけどな。既に愛の話しなんてどこへやらの話題だけど、俺はそれをずっと聞いててあげてるんだ。

 運転して貰ってるんだからな、このくらいは付き合ってあげないとだろ。


 高速を降りた直後はまだなかなか茨城も街だな––とか思ってたけど、そこから更に数時間進むと、明らかに人も街頭も少なくなって緑が増えてくる。家の感覚もまばらになってきたし、こんな自然に慣れてない俺は少し不気味に感じるほどだ。

 いや、LROでこれよりも不気味な場所に幾度も行ったけど、その時は力もあったからな。こっちで出てくるとしたら幽霊とかだろうし、流石にどうしようもない。まあでもここら辺は街と街の間くらいなんだろう。次の街に入ればきっとまだマシなはず。そう思ってると、山の向こうに街明かりが。きっとあの街にテツが居るんだろう。待ち合わせはファミレスだ。

 備え付けてあったカーナビでその店を確認。時間も時間なだけあって、駐車場には一•二台位の車しか無い。人通りもやっぱり余り無いし……田舎の人達は寝るのも早いものなのかな? とか思いながら既に寝てた奴を起こしてやる。


「おい日鞠、付いたぞ」

「ん……もう?」


 もうってなんだよ……お前は寝てたからな。こっちはやっとだ。別に寝かせておいても良かったんだろうけど、スヤスヤ寝られてるとなんだかムカツイてくるから起こしてやった。それにやっぱり知り合いといってもこっちでは初対面だからな。いささか緊張はする。

 こういう時は一人よりも二人だ。こいつは誰とでも直ぐに打ち解けるしな。まあ俺もそのスキルには自信あるんだけど、心強いに越したことはない。


 独特の電子音が鳴り響き俺達の入店を知らせる。店員が愛想よくいらっしゃいませというのはどこも変わりはない。さて……テツはどこに……一時間前くらいには既に付いてるとメールが有ったんだけど。

 そう思ってると、日鞠が勝手に歩き出す。「何名様ですか?」って聞く店員を無視してだ。やめろよな印象悪いだろ。普段ならそんな事しない奴のくせに、まだ寝ぼけてるのかも知れない。

 俺は代わりに待ち合わせしてるんですけど……的な事を行って中に続いた。


「おい、お前誰か知らないだろ」

「簡単。殆どの客は複数人じゃない。まあそれでも二•三組だけど……取り敢えず一人で居る客がそうでしょ?」


 なるほど。確かに言われてみれば。てか電話して何か合図を送ってもらえばいいんじゃね? そう思った矢先、日鞠が奥の角の席に座ってた人に既に声を掛けてた。


「貴方がテッケンさんですか?」


 見える後ろ姿は決して体格が良いものではない。それに店内で帽子……本当にあの人なのか? 俺はその顔を拝もうと前に出る。見えた姿は俺の予想とは全然違った物だった。


 第五百三十六話です。

 テッケンさんは一体どんな姿なのかは次回へ持ち越しです。色々と想像しててください。まあリアルですから、人間ですけどね。


 てな訳で次回は日曜日に上げます。ではでは。

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