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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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黒い箱の役割

 潮の匂いを運ぶ風。ささめく波の音。眩しいくらいの砂浜……そして謎の黒い箱。この輝く場所でこの一つだけが異彩を放ってるように見える。名称は『バンドロームの箱』で今わかってるアイテムの効果は願いの成就(しかも僕限定?)かもしれないって事。

 ハッキリ言おう。もしもだ。もしもこのバンドロームの箱がその通りの効果を表す物なら……それはかなりヤバイと言うか最強というか最上級を超える価値のあるアイテムじゃないか? 


「本当にコレが願いを叶えたとしたら、とんでもないアイテムね」


 ミセス•アンダーソンがバンドロームの箱を眺めてそう言うよ。ほんとその通り。するとクリエの奴が僕達のなんとも言えない雰囲気を無視してこう言ってきた。


「じゃあじゃあ、これがあればなんだって出来るね。今の問題も全部これで解決だよ! …………そうだよね?」


 誰からも同意を得られないから、最後に不安気にそう付け加えたクリエ。まあ懸命だよ。これはクリエが言ったほどに単純な物じゃない。確かに僕も最上級を超えた––とか言ったけど、実際どれだけの規模の物を叶えてくれるのか––そもそも本当にこのアイテムが願いを叶えたのかまだわからない。

 もしかしたらウニを空から落とすだけのアイテムかも知れないしな。


「それは流石に無いだろうけどな」

「ぬお!? 人の心を勝手に読むなよな」


 テトラの奴にはどうして僕の考えがわかるんだ? そこは流石神なのか? でもやっぱりウニを落とすだけは無いよな。


「クリエの事無視しないでよ! クリエいい事言ったよ」

「良いことね……確かに可能性としては無いわけじゃない。けど僕は知ってる」

「何を?」

「それは、この世界はそんなやさしくないって事をだよ!」


 どれだけ辛い目にあわされてきたと思ってるんだ。流石に学習してるっての。


「いいかクリエ。このアイテムがなんでも願いを叶えてくれる夢のアイテムの可能性は僕の経験上、一%あればいいほうだ」

「たったのそれだけなの?」

「それだけなんだよ。このアイテムで全ての問題が解決できるなんてのは、それこそ夢物語。その位は普通に覚悟してた方がいい」

「じゃあ、そのアイテムで何が出来るの?」

「それは……てか、それをこれから確かめて行かなきゃいけないんだよ。安易に期待を賭けるだけじゃダメなんだ」


 僕は魂を込めてそうクリエに語ってあげる。ただ安易に楽を求めたって返してくれる世界じゃないんだよ。でもよくよく考えたらそれを差し向けてたのはマザーかも知れないよな。まあマザーは全ての統括らしいけど、干渉してたのかは微妙か。

 そもそもあのマザーって存在がいつから僕に目を付けてたのか謎だしな。最初から……

とかそんな要素自分に皆無なのは知ってるぞ。それともマザーには人の可能性を知るすべでもあるのか?

 可能性……そんな言葉ほど不確かで曖昧なものはないと思うけど。コンピューターとかが一番嫌いそうな言葉だと思ってるのは僕だけか? ゼロかイチかだろあいつらは。まあLROのNPC達はみんな不確かな物も含んでる気はするけどな。

 マザーは実際、どうなりたいんだろう。いやどうしたいんだろうか……か。僕に接触してきたって事は、やっぱりシクラ達を止めては欲しいんだよな。けど、それならそもそも、アイツ自身でやれない物なのかっても思う。

 マザーはなんだって出来るはずだろ? それともシクラ達はマザーの管理さえも外れてるって事か? でもそれならLRO自体をどうにかセキュリティ強化するとか対策はあるよな。やっぱりなるべくだけど、マザーは世界の行く末に干渉しようとしてないって事かも知れない。

 あくまでもシステムを動かし、高みから見守るだけ。まさに神様だな。


「でもねスオウ!」

「おっおう? なんだクリエ?」


 色々と考え事してたからクリエの言葉にビックリした。どうやらクリエはずっと僕の言葉を考えてたみたいだな。


「確かにね。確かにいっぱい辛いことあったよ。どうしてクリエにはお父さんやお母さんが居ないのって思ったこともあった。寂しかった。シスターは居てくれたけど、それでも寂しい気持ちはどこかにあったもん」


 クリエの言葉を聞いてるとテトラの奴と目があった。何か感じる物でもあるのか、なんだか責任感じてる様な顔してたけど、僕と目が合うと速攻で顔を背けやがったよ。まあお父さんと言っても差し支えない奴だしな。

 最初は道具としか見てなかったくせに、いざ関わり出すと直ぐにデレデレし始めたから、隔ててた壁がなくなった事がこいつの中でも大きいのかも。ついこの間までは自分の事だけを考えて行動してたけど、今は違うから……色々といろんな物を受け入れようとしてるってことかな。

 神様も大変だ。そんな風に思ってる間もクリエの言葉は続く。


「けどね、でもやっぱりクリエはそんなに不幸なんかじゃなかったよ。大切にしてくれる人、一杯いたもん。テトラも最初は怖かったけど、今はそうでもないし……それにクリエは助けて貰った。

 スオウや……みんなに。大切な人たちは一杯居なくなったけど、クリエは前みたいに空っぽじゃないの。クリエは大切な物を沢山沢山貰ったんだ」


 両手を胸に添えて静かに優しくそういうクリエは、なんだか今までで一番大人びて見えた。てか、いつの間にそんな悟った事が言えるようになったんだよ。するとにへら〜と緩い笑顔を見せて最後にこう言うよ。


「だからね、期待したって良いんじゃないかなって。クリエはね、クリエはね思うんだ」


 全く、ホント子供だな。でも、だから勝てないかなって思うよ。僕はクリエの頭をこねくり回してやる。


「あうあうあ〜」

「まあここは夢の世界だからな。希望がないと成り立たないかもな」

「うん?」


 よくわかってない顔してるけど、それでいいよ。夢の世界言ってるのはこっち側だからな。


「希望を持つのもいいが、さっさとどういう事か検証しろ。その箱の力が本当に望みを叶えるという物なら、色々と役に立つ」

「そうだな」


 リルフィンの奴が急かすから僕はミセス•アンダーソンから箱を渡してもらう。そして色々と試して見ることに。


「リルフィンの体が固まりますように」

「うぐ!」

「それからリルフィンの足元が急に穴になって落ちますように」

「ぬおおおおおおおおおお!?」

「落ちた先にウニがありますように」

「ぎゃあああああああああああああ!!」


 …………ふぬ、どうやら願いは叶うようだ。てかどこまで落ちてるんだ? 穴の深さを指定しなかったせいかかなり深いんですけど。リルフィンの姿が視認出来ない。てか底は真っ暗だ。僕は落ちないように注意しつつ、底に居るであろうリルフィンに確認を取るよ。


「お〜い、ウニはあったか?」

「そっちか!?」

「いや、流石に深すぎて確認できないし」

「もっと他に気をやるべき所があるだろ!!」


 何を一体怒ってるんだか? 僕はちょっと考えて「ああ」と思いつく。


「ごめんごめん、穴が深すぎたな」

「それでも無いわ!! 俺の身の心配しろ!」

「そっちか!?」

「なんで疑問形なんだ!! 当然だろうが!!」


 別にそんなカリカリすることじゃないだろうに。落とし穴程度でお前は死ぬのか? んな訳無いだろ。ウニだってそんな攻撃力高くないぞ。そう思ってると、穴の底から感情を必死に押さえつけてるけど押さえつけれてない感じの揺らめいた声が聞こえてくる。


「貴様がわざわざ体を硬直させなければこの程度––なんだがな」

「ああ」


 そう言えば最初に体の自由を奪ってました。なんとなく言ってみたんだけど、よく考えたら自由が効く効かないとじゃだいぶ違うかもな。死ねるかもしれない。まあここは柔らかい砂浜だし問題は––


「ウ〜〜〜ニ〜〜〜」


 どこからともなく呪いの言葉みたいなそんな呪詛が聞こえてくる。なるほど、ウニか。そう言えば誰かのトラップで柔らかいと思わせておいた砂の上にウニを置いていたっけ。誰だそんな危険極まりないことした奴。天才じゃね? 

 まあ取り敢えず、この程度の願いはやすやすと叶うことが証明されたわけだし、助けてやるか。僕は再び展開してる謎の物体Xに手を触れて願うよ。


(もういいよ)


 ってね。すると穴の奥から地響きが聞こえてくる。そして一気にウニと砂が吹き上がってきてそれと同時にリルフィンの奴も吐き出される。


「おお、ちゃんとウニあるな」


 変な確認をしてる間にウニも消えて行く。そしてリルフィンが砂浜にドサッと落ちてきた。取り敢えず悪いことをしたし、労いの言葉くらいはかけてやるか。


「ご苦労だったな」

「貴様の上から目線程に腹立つ物はないな」


 なんだろう、砂を全身に被って立ち上がるリルフィンからは何かが立ち上ってるようにも見えなくない。まあきっと僕に対する怒りがほとんだと思うけど。このままでは一発くらい殴られるかも知れない。

 ふざけるのもここら辺にしとくか。


「はは、ごめんごめん。これはリルフィン、お前にしか出来ない任務だったんだよ」

「何、格好いい言い訳で流そうとしてるんだ! 俺じゃなくてもそこの邪神でも良いだろ!」

「いや、ほらテトラには流石に効かないかなっと」

「効かない奴のほうが安全だろうが!!」

「あ……言われてみれば」


 そこに気付くとはリルフィンもなかなかやるな。でも効かないんじゃ面白く……じゃなくて、反応が見れないじゃないか。分かりづらいだろ。


「それらなミセス•アンダーソンでも良いだろ?」

「お前な、ショック死したらどするんだ。年だぞこのおばさん」

「誰が年増よ! そこまで弱った覚えはないし、まだ半世紀くらいは生きれるわよ」

「半世紀って……」


 それは生きすぎだろ。どれだけ長生きする気だよ。いや、案外その程度の年なのか? 四十位なら半世紀立っても九十だし、行けないわけではないか。モブリって実際どの位なのか分かりづらいからな。

 元々が小さいし、シワとかでしか見分けがつかない。腰も曲がるには曲がるんだろうけど、流石にまだそこまでじゃないしな。


「実際幾つなんだ?」

「それは秘密よ」


 そう言ってウインクしたミセス•アンダーソンのババア。イラッと来たよ。なに今の? すっげー効果的にイラッと来たんだけど。スキルか何かか?


「なんであんた顔が引く付いてるのよ! 年寄りはウインクしたらいけないって決まりでもあるの?」

「いや、無いけど……自重はして欲しいよな。年を考えろって事だ」

「何が年よ。若さの秘訣は年を気にせずに生きることなのよ!」


 だからあんなアクティブだったのねこのおばさん。自分が年寄りって事を忘れる為に、色々と動き回ってる訳か。まあ健康にはよさそうだし、長生きは出来るかもな。けどやっぱり程々にしないと、いつかポックリと逝きそうでもあるよな。

 死因は過労死……ミセス•アンダーソンの場合はありえそうだ。


「お前らは漫才でもしてるのか? 今がどれだけ切羽詰まってるのか忘れたワケじゃないだろ。さっさとそのアイテムの特性を見極めないと行けないはずだ。余計な事に話題を逸らすな」


 テトラの奴が僕らがあまりにも関係ない事ばっかり話題にするから、流石に痺れを切らしたようだ。別に遊んでた訳じゃないんだけどな……こっちは至って真面目だったんだぞ。これでも。でも周りのこいつ等が……


「貴様、大層な事を言ってるが、それなら貴様で検証させろ。神だろうがなんだろうが知ったことじゃない。これは必要な事だからな」

「良いだろう。やってみろ」


 テトラは堂々と佇んでる。リルフィンは僕から箱をひったくって、望みを口にする。


「バンドロームの箱よ! 邪神に地獄の苦しみを味あわせてやれ!!」


 うわっ、なんて事を……と思ったけど、ただの黒い正方形の物体になってるバンドロームの箱に変化はない。ザザーッ、と波の音が押しては引いていく。虚しいBGMみたいだ。


「ちっ、やはり貴様じゃないとダメなのかもな。頼む」


 そう言って無造作に放り投げられた箱を僕はキャッチする。まったく、とんでもないアイテムかも知れないんだからもっと慎重に扱えよな。


「てかちょっと待てよ。さっきお前が言ったことを願うのか?」

「そうしないと、証明にならないだろ」


 確かにそうだけど……地獄の苦しみって……そう思ってるとテトラの奴が「やれ」といってくる。いつもどおりの余裕の表情。どうなっても知らないぞ。


「バンドロームの箱よ。テトラに地獄の苦しみを味あわせろ!」


 青い光が走り、正方形の塊だった箱が薄く分離してく。これはまさか、本当に地獄の苦しみを味合わせることが出来るのか? って思った。だけど展開したバンドロームの箱は何回かその組み合わせを変えたけど、直ぐに元の箱へと戻ってったよ。


「これは……出来ないって事か」

「具体的な内容じゃないからかしらね?」

「それよりもやはり貴様にしか反応しない事がこれで分かったな。そこの犬では何も起きなかったからな。貴様の時はできなくてもやってみる––位の事はした。その違いがつまりは使用出来るか出来ないかの違いだろ」


 確かにリルフィンの時は悲しいくらいに反応しなかったしな。ミセス•アンダーソンの時をそうだったけど……でもその場合はどうして僕だけに? って事に。単純に所有者だから……かな? 

 その可能性が一番高いか。でもやっぱりその場合、どうして法の書は僕以外にでも使えるのかって事だよな。もしかしたらシクラに細工されてるのかも知れないな。そのくらい出来そうだし……それか、元々の使用の違い。せめてあと一つでもアイテムが元の姿に戻ってくれれば……鍵のまま使用するんじゃ意味ないんだよな。

 誰かの手元でやってみないとこればっかりは検証のしようがない。


「取り敢えずは貴様だけでも使えれば問題はないだろ。誰が使えるかよりも、どこまで出来るかの方がそのアイテムの場合は重要だ」

「確かにそうだな……」


 使えないならまだしも、使えるのならそこまで気にする事じゃないか。テトラの言う通り、このアイテムの場合はどこまで出来るかが重要だ。取り敢えず簡単で具体的な事は出来るみたいだな。


「なあテトラ、もう一度いいか?」

「やってみろ。この神にそのアイテムがどこまで出来るか見てやる」


 助かる。僕はバンドロームの箱に願いを託す。


「テトラの体に傷をつけてくれ」


 僕の願いに再び箱は反応する。だけど、今度も何も起きない。


「じゃあ、腕を吹きとばせ」

「スオウ!」


 クリエが叫んだけど、もう遅い。願いは受け入れられてる。けどこれも不発だった。


「具体的にしてもダメか……じゃあ、テトラを…………殺してくれ」

「それはいくらなんでも酷いよスオウ!」


 クリエの叫びに胸が痛くなる。わかってるよそんな事は。でもこれはきっと叶わない。それを予想して、でも確信したいから言っただけだ。そしてその予想通りに、テトラは死にはしなかった。


「あんた、凄い事を言うわね。流石にちょっとヒヤッとしたわよ」


 ミセス•アンダーソンもビビってたのか。流石に分かりそうだと思ったけど。


「大丈夫だと思ってたさ。どうやらバンドロームの箱は誰かに直接の危害は加えられないようだ」

「お前、俺に何したか覚えてるか?」


 リルフィンの奴が恨めしい感じの目で言ってきた。流してくれたと思ってたら、根に持ってたのか。大したことなかったんだから良いじゃないか全く。


「覚えてるけど、あれは別にリルフィン自身を傷つける物じゃなかった。縛ることも穴を開けることもウニも、結果的にリルフィンに危害が及んだだけ。穴なんて落ちなければ良いだけだし、ウニだってあるだけなら別に普通だ」

「二次災害で傷ついただけだと?」

「てか、副産物的な? 直接危害は加えられないけど、願った現象の効果でならそれを可能に出来る。だからテトラに願った様な事は実現できないとみた」

「俺への縛りはどうなる? 体の硬直は危険だろ。体自身に影響してるぞ」

「それはきっと、命に関わらないからじゃないか? ようは体力が削られる様な願いは叶えられないんだよ。きっと」


 多分こんな所だろう。後は直接危害を加えなくて、どこまでの事が出来るのか……だな。けどあんまり派手な事はしたくないよな。でもこの箱の実力を見るには派手な事をしたほうが良いような気もする。

 でもそれをすればシクラ達に勘付かれるかも……何か誰にも分からない、とんでもない事って無いものだろうか? するとリルフィンがこんな事を言ってきた。


「あるぞ、誰にも悟られずにやれる世界規模の技が」

「なんだそれ? そんなのあったか?」


 そう言うと、リルフィンは「フフフ」と笑ってその白銀の毛をなびかせる。相当自信があるようだな。


「お前だって味わった筈だがな。答えは簡単、それは『時』だ。時間を操れば誰にも悟られる事はない。世界を止めれば、誰にもその瞬間の事は分かりはしないのだからな」

「なるほど、それはそうだな」


 時魔法か。確かにそれが一番いいな。実際世界の時間を止めれるかは微妙そうだけど。だってローレの奴の時魔法もかなり制約あったしな。きっとアレが通常の時魔法の限界なんだろう。

 リルフィンやテッケンさん達が見たっていう姉妹の一人の時魔法はまさにチート。アレに匹敵出来る事が出来るのなら、これは物凄い武器になるということに……試してみるか。


「この世界の時を止めてくれ!」


 展開してく黒い箱から分離する板達。そして組み合わせを幾つも変えていき、気付いた時には自分の周りが灰色になってることに気付く。灰色ってか、色がみんな落ちてるみたいな。

 まさか本当に時が止まってるのか? 近くにいたみんなは確実に止まってる……けど、少し離れてる波はさざめいてるな。それに上を見ると雲は流れてる。これはつまり、僕の周りの範囲だけの時が止まってるって事か。

 ローレのとあまり大差ないな。僕はバンドロームの箱にやめるように願う。すると周囲の色は元の色に戻った。いや、実際範囲外は元の色だったんだろう。僅かな範囲を囲んでそこだけ時を止めたに過ぎない。


「どうだったのスオウ?」

「時は止めれた。でもローレと同じ位の範囲だけどな。チート性能って訳じゃないみたいだ」

「十分凄いと思うけどな」

「……ふむ、そう言えばそうだな」


 シクラ達がいるから感覚がおかしくなってるな。確かに十分すごいアイテムだ。それなのに、チートに及ばないからガッカリするなんて、贅沢すぎるな自分。でもこれじゃあやっぱりこのアイテムだけで全ての問題を解決できるって事は無さそうだ。


「残りのはどんな事が出来るんだろうね? きっともっと凄いんだろうね」


 目をキラキラさせてクリエの奴はそういう。確かに残りのも気になる。この五つのアイテムで、どうにか出来るんだろうしな。一つじゃ無理でも五つなら……もっと知らなきゃいけない。


「このアイテムの事を知れるところって無いのか?」

「そうは言っても、そんなアイテムの事なんか聞いたことも……ちょっとまちなさい」


 なんだ? ミセス•アンダーソンは考えこんでる。そしてテトラを見てこういった。


「邪神、あんた錬金術は知ってるわよね?」

「勿論だな。俺が知らない事などそうそう無い。この世界の歴史ではな」


 錬金術……そう言えばそんなの最近どっかで聞いたな。


「お前はそのアイテムが錬金術で生み出された物かと疑ってる訳だな?」

「そうよ。これだけのアイテムが伝承もされずに埋もれてたなんて信じれない。可能性があるとすれば、弾圧や原因不明で世界から姿を消した錬金術で生み出されたアイテムだけ」

「錬金術なら、最近は人の国が研究してた筈だな。先日の戦いでも怪しいものを使ってた」


 リルフィンの言葉で思い出した。そう言えばなんかそんなのあったな。あの不気味な奴……でもこっちのはもっと洗練されてるように見えるけどな。でも取り敢えず行き先は決まったな。


「人の国へ。錬金術の事を探るぞ」


 バトルシップは再び飛び立つ。僕にとってのは始まりの地。そこに何かあると信じて向かう。

 第五百三十五話です。

 盛大に遅れてしまいました。ごめんなさい。次はリアルの方になります。


 てな訳で次回は金曜日にあげます。ではでは。

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