セラの名を持つ二つの輝き
僕達は大量のモンスターを蹴散らしながら前へと進んでいた。『セラ・シルフィング』その威力は凄いものだったんだ。こいつが有れば行ける! そう思えるほどに。
森を抜けた僕等に舞っていたのは束の間の息抜きの様な時間だ。そこでなんだか鍛冶屋とシルクちゃんは言い合っている。森を抜ける前に一悶着あったんだ。それを止めたのがセラだった。
いつもなら面倒な事はしなさそうなセラが積極的にイザコザを止めた理由。それは届いたメールに関係していて……セラはいつからその仮面を被っていたのだろう。
風が螺旋状にうねり、僕たちの道を造る。大量の獣人型モンスターが不用意にその風のトンネルを分けようとして風の鋭さと、新たに加わった雷撃の餌食となっていく。
『セラ・シルフィング』ハッキリいってこの剣の威力は絶大だった。シルフィングより一段階も二段階もパワーアップしてる事は間違いない。
新たに四つのスキルが加わって、そろそろ二桁も見えてきたところだよ。そして僕は、今その中の一つのスキルを発動中だ。
スキル名は『イクシード』これは二刀流のインフィニティスキルである『乱舞』を更に強化、効率よく使う為のスキルだった。
まあ、だけど今は第一段階イクシード1。これはどうやら乱舞の真似事が普通の状態でも出来るみたいだ。風を生み出せるのがその特徴でかなり使えるよ。持続時間も普通の乱舞より長いみたいだ。
このスキルの真骨頂はイクシード2かららしい。2から乱舞が平行して発動して、その真の力を見せてくれることだろう。
「うおおおおおおお!」
流星が煌めくセラ・シルフィングがうねりを上げる。風の道を抜ける度にモンスターの群が待ち受けてるから休む暇なんてない。まずは右を振り、そして復活した左手を振るう。左右から生み出された風は中央で重なり、襲いかかるモンスターを吹き飛ばして道に成る。
それを繰り返すこと五・六回。そろそろ森の終わりも近いはずだ。奥に進むときは見つからないようにしてたからかなり時間が掛かったけど、今はほぼ直線突破。行きに掛かった時間の半分以下でここまで来た。
だけどモンスターのただのAIもバカな訳じゃない。自我を持つのが異常なだけで、学習能力はちゃんとある。それにどうだか知らないけど、今いる獣人モンスターの思考は並列してるのかも知れない。
奴らは他の個体が味わった事を学習してるようだ。
こいつら、次第に風の終わりに集中してきてる。風に無闇に飛び込む奴らもいなくなってきたし、結集してきたモンスターどもに阻まれて風の道は徐々に短く成ってきてた。
(ここに来て更に増えてないか?)
そんな事を思いながらも風の道の終わりに向かって再びセラ・シルフィングを構える。だけどその時、後ろに続くシルクちゃんに併走して飛ぶピクの叫びが届いた。
「くぴぴーーー!!!」
それは危険信号? でもモンスターの存在は元々分かってる事だし、今まで叫びもしなかったのに何で今更? 後方に向けた視線を再び前方に向けた――その時、ピクのメッセージが分かった。
「――っつ!?」
「スオウ君! 危ない!」
シルクちゃんの叫びが聞こえた。見えたのは暗い霧が広がる様な森からこちらに向かって放たれた魔法の光。狙いはまさしく風の終わりで、僕が振り抜く前を狙ってやがる。
アーチを描いて降り懸かる無数の魔法。そして地面には直撃時にタイミングを合わせて突撃を掛けてくるモンスターの前衛部隊。どちらも片手で掃討出来る数じゃなく、かといって両手を一方に集中すればどちらかの攻撃は確実に当たる。
(迷ってる場合じゃない!)
僕は力強く踏み切って更に加速する。みんなを先導する為に合わせてただけで、今の僕のスピードはこんな物じゃない。みんなから距離を取って僕は言葉を紡ぐ――
「イクシー――」
――いや、正確には紡ごうとした。だけどその時、後方から光の柱とも言える光線が飛び出して来たんだ。
「聖典八機・光度収束砲――ブレイク!」
それはセラの声。麒麟戦の時に見せたあの大業が今度は襲いかかる無数の魔法を右から左に移動して撃ち落とす。ぶつかり合った光はセラの光線を残して爆発と共に消え去るんだ。
だけど無数をたった一つの光線で全て防ぐなんて叶わない事だ。漏れた敵の魔法は容赦なく降り注ごうとしてる。けれどそのあまり物の魔法が僕に届くことはなかった。それは地面から生えてきた黒い壁がその魔法を防いだからだ。これは……鍛冶屋のスキル。
「勘違いしないでよ。アンタだけじゃないのよ、ここにいるのは!」
「そうだぞスオウ。上は消した。貴様は前を見ろ!」
セラと鍛冶屋の声が背中に当たる。ありがたい。前を見据えると迫りくるモンスターの群が思惑外れたからヤケになって突っ込んで来ていた。
だけどこれだけの数にヤケに成られるとかえって困るものだ。暴走……とでもいうのか? 例えるならそんな状態。モンスターどもの力は一時的に跳ね上がってる様だった。
自分の見立てよりも奴らは早い。雪崩の様に押し寄せる奴らはその姿だけでも相手に畏怖を与えるだろう。だけど今の僕にそんな物を感じてる暇はない。
なんとしてもこの両手にある二対の剣を振りかぶって道を造らなくちゃいけないんだ。僕は力を込めてシルフィングの柄を握りしめる。奴らの攻撃が届くのが先か、僕がシルフィングを振るのが先かの勝負だ。
既に放たれた武器より早く動けると自負できるけど、それもタイミングの問題だ。流石に遅すぎたら、向こうが先に僕の体を叩くだろう。
そしてこのタイミングは微妙だった。見立てより早く接近してた奴らの先頭は既に斧の様な武器を振っている。それでも、僕は自分を信じてシルフィングを振り切るしかない!
だけどその時、視界に何かが写った。それは暗い森の中で僅かな光を集めて、その桜色を輝かせる存在。羽を優雅に広げて、伝えるのは春の訪れの様な小竜。
ピクが後方からの声に従って炎を吐く。
「ピク! ブレスト・ファイア!」
「くぴ~~!」
暗い森に一気に熱気と光源が出来た。目の前のモンスター達がピクの口から放たれた炎に撒かれて断末魔の悲鳴を上げる。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「今です! スオウ君!」
そんなシルクちゃんの声が奴らの叫びに呑まれずに届く。ピクの攻撃は確かに届いた。奴らも悲鳴を上げた。だけどそれだけで倒れる奴はいない。
ピクはそれだけの攻撃力を有してはいないんだ。モンスター共は止まらない。だけどその一瞬で僕には十分だ!
「うあああああああああああああ!」
際どいタイミングに入った刹那のタイムロスが勝負の分かれ目だ。誰かが瞼を閉じて開いたときには決まっている。勝負とはそんな一瞬一瞬だ。
振り上げられた二対の剣に斬り裂かれたモンスターの体はピクの炎に撒かれて灰に成ったように消えていった。実際には灰じゃなくエフェクトが崩れただけだけど、そう見えたんだ。
そして振りかぶられた剣の動きに呼応するように、風は生まれ集い出す。続けざまに攻撃をしようとしてたモンスター達にその機会を与えず嵐はその場を蹂躙する。
吹き飛んでいくモンスター達が哀れだった。まあ、別に死にはしないだろうけどね。吹き飛ばしただけでそれだけじゃ、ピクの炎と同様に殺すことは出来ない。倒すのならこのセラ・シルフィングで直接斬るのが一番だからね。
でもこれだけの数を相手になんかしてられない。僕たちには急ぎの用があるんだ。みんなで勝ち取った風のトンネルに僕らは入り、足早に先を急ぐ。
「もうすぐだ。もうすぐできっとこの森は抜けられる!」
「ホント、そうだといいわ。疲れたし」
セラがちょっと後ろでそんな事を言う。毒舌じゃないって事は余程疲れたんだな。なんだかよく分からない大業やってたしその影響かも知れない。
「大丈夫だよセラちゃん。本当にもう出れる。ね、ピク」
「くぴー!」
シルクちゃんの言葉にピクは反応して前に出てクルクルと自分の体を回してる。なんだ? ピクにはLROの地図情報でも入ってるのか? それならGPSとしてスゴく便利なんだけど、そんな機能があるかな?
「感覚です。感覚。それにピクは森の出口を教えてるんじゃなく敵が居ないって言ってるんだと思います。そしてそれが即ち、森の外な訳ですよ」
「ああ、なるほどね」
シルクちゃんの説明に納得だ。流石にピクにGPSは望めないけど、敵感知の優秀さは証明出来てる。敵をどこからでも感じるこの森だから、感じない場所が出口になる。
それをピクは教えてくれた。こっちは安全だ! 出口だ! ってさ。
「うん? だけどこのLROにエリアの切り替えは無いんだぞ。それなら今この森で付いてきてるモンスター共が外に回り込んでる筈じゃないのか?
実際、最初にこの森で襲われた奴はタゼホまで追いかけられたんだろ? それなら俺たちだってそうなる筈だ」
「「「………………」」」
鍛冶屋が悲観的な事言うからみんなが口を噤んだ。でも、確かに鍛冶屋の言うことは正しい。LROにエリア移動時の切り替えなんて旧時代の異物はない。広大な世界が広大なまま広がってるんだ。
自身の足で踏み込める場所は大抵いける。モンスターは普段移動する範囲は決まってるけど、プレイヤーとアクティブした時は見失うまで追ってくるのが常識だ。
なら……居るはずだ。森を出た先にまで回り込んでモンスターは居る。
「けど、ピクは間違いなんて言いません!」
そう言いきったのはシルクちゃん。確かにピクの感知機能は凄いから、間違うなんてないと思うのも確かだ。考えられるのはピクのメッセージが違うのか、本当に外には敵がいないのかだけど、確かめるにはどっちも覚悟は必要だ。
「あのな嬢ちゃん、ピクが言ってる事の方が確率的に低いんだ。この風の向こうに居る奴らが俺たちを追わない理由なんて無いじゃないか。
どこまででも追ってくる……それこそ俺達にとっての安全地帯は町や村だけだったんだ。その神話も崩れたがな」
「だけど、追わない理由だってあるかも知れません! ピクが言ってる事は確かに確率的に低いかもだけど、それも決してゼロじゃない! この森であの子はテッケンさんよりも優秀な感知能力を見せてくれました。
それは信じられる事です!」
後ろではそんな二人の言い合いが始まってた。なんか珍しいね。シルクちゃんが誰かの意見に突っかかるなんてさ。やっぱりピクはとっても可愛いからだろう。
でも視線を動かしてチラッと見たけど、何だかシルクちゃんの怒る姿はとっても微笑ましい。棘があるんだか無いんだか分からないんだ。まあ有ったとしても決して刺さりそうも無いけどさ。
握った拳が綿飴みたいに見えるよ。フワフワだ。フワフワの粒子を彼女は放出している。 美少女だね。シルクちゃんを見てるとつい和んでしまうけど、今は和んでる場合じゃない。
「はぁ~」と大きなため息が付かれて、そちらを見るとセラがなんだか痛い視線を僕にぶつけてくるんだ。「何やってんのアンタ?」的な攻撃色をはらんだ瞳。
その痛さのおかげで……いや、せいでシルクちゃんの和み空気が僕の思考から消え去った。まあ、ここはおかげにしておこう。いつまでも後ろで二人に言い争って貰ってても困るわけだしね。だってもう、出口は直ぐそこだ。
「鍛冶屋もシルクちゃんももう止めろ。外に出れば分かるだろ。取り合えず戦闘準備だけはしといて――さあ、抜けるぞ!」
僕たちは風のトンネルを抜け出した。そしてそれと同時にいろんな事があった森から抜け出す。
木々が蹂躙して作り出していた緑の暗い闇と風が吹く度に鳴らしていた枝葉の合唱が不意に消え去り、現れたのは地面を優しく撫でる様に吹く風と、大地を太陽に変わって照らす月光の満ちる場所だった。
そしてそこには当然、森に居たモンスターの姿はどこにも無かった。後ろを思わず振り返っても、もう奴らの姿を見つける事は出来ない。
今度はあの森に立ちこめていた闇が覗く事を拒否してるみたいなんだ。入ったときには道を見失う程に僕達を覆って、出た途端に中を覗かせない様にするなんて……まるでこの森事態が生きてるようだ。
僕らはもしかしてあのモンスター達にじゃなく、この森事態に食べられ掛けてたのかも知れない。そんなアホらしいことを考えながらも背筋はちょっと強ばった。
周りのセラ達も何故か言葉を発しないし、もしかしたら同じ様な事でも考えてるのかも。
「何もいないな」
そんな僕の声が静かになった周りに消えていく。構えていた武器が今は不格好に見えるな。だけど有る意味、不自然な今の状況にみんな武器をしまわない。
「絶対におかしいぞスオウ。本当は今にも森の中からモンスター共が飛び出てくるのかも知れない」
一番警戒してる鍛冶屋が森に体を向けてそんな事を言う。確かにその可能性も無くはない。けど、ゴメンだけどそんな気配は一切無いんだ。
本当に長閑な風が吹いている。拍子抜けするほどの。森は幾ら見つめても闇を深めるだけで、モンスターの目が光ることも無い。
まるでさっきまでいた筈の大量のモンスターが消え去ったみたいだ。それは鍛冶屋が言うように本当におかしな事。けれど真実も、その理由も、今は僕達に確かめる術はない。もう一度森に入るわけにも行かないしね。
「もう大丈夫ですよ。ほら、ピクの言ったとおりだったんです」
シルクちゃんはいち早く武器を背中に戻し、飛んでいたピクをその両手に抱きしめる。シルクちゃんに続いて僕もセラも武器をしまう。ここに危険は無いと判断したんだ。どうしてかは分からない。
けど、ここに奴らは来ない。なら武器を構えてる必要なんて無いからね。
だけどそんな中一人だけ武器を頑なに構え続ける奴が居た。
「おい、いつまでそうやってる気だよ鍛冶屋? 取り合えず大丈夫そうだしもう良いぞ」
「そうですよ鍛冶屋さん。正しかったのはピクなんです。悔しいのは分かりますけど認めてください」
僕らの言葉も無視して顔を背ける鍛冶屋。ガキかアイツは。てか、そんなに自分の予想が外れた事を認めたくないのだろうか? それか原因はシルクちゃんかな。
森で派手に言い争ってたからバツが悪いのかも知れない。鍛冶屋は鍛冶屋なだけに頑固なんだろう。職人気質って奴が強いんだ。
「鍛冶屋さん! ほら、ピクにごめんなさいをください!」
「はあ?」
やっとで反応した鍛冶屋はちょっと苛ついた感じの声を出した。シルクちゃんはだけど怖じ気づに両手でピクを掲げて鍛冶屋の顔の前に突き出している。
なんだか一番迷惑がってるのはピクの様な気がするな。シルクちゃんも珍しくこの事に関しては引かないし……面倒な事になってる。
「貴方はピクを侮辱したじゃないですか。だけど正しかったのはピクなんだから謝るのは当然です」
「なんでわざわざそんなこと……別にいいだろ。あ~あ~ピクは凄いな~」
「全然心がこもってません!」
適当に応える鍛冶屋にシルクちゃんが今度はご立腹だ。あ~もう、なんでこんな事になってるんだろうか? 麒麟戦の時はあんなにみんなで協力して一つに成ってたのに見る影ないよ。
「はいはい、二人とももう止めろよ。今はアルテミナスに戻る事の方が先決だろ?」
僕は火花を散らす二人の間に入って仲裁を試みた。取り合えず目的を提示して問題は持ち越しに――
「スオウ君は黙ってて!」
「お前は黙ってろ!」
――しようとしたら二人から怒鳴られた。鍛冶屋はいいよ。別に心に刺さらないし、気にしないことは簡単だ。だけどシルクちゃんに言われたら泣きそうだよ。まさかそんな言葉が発せられるとは思っても無かったからテンションだだ下がりだよ。
優しかった風が冷たく空しく感じるのは気のせいかな?
「はあ~、アンタはどっちにも優しくて、どっちにも良い顔しようとするからそうなるのよ。そんなどっちつかずの言葉なんて安っぽいの、そして安直。
追い返されるのは当然ね」
肩を落として遠巻きに二人を眺めていた僕にそんな言葉を掛けたのはセラだ。いままで疲れたとか言って我関せずだった癖にどういう風の吹きようだ? てか、何企んでる?
「何よその目? 別にアンタをからかおうなんて思ってないわよ。ただどっちつかずは有る意味無責任って事を知っときなさい。選ぶ事って大切よ」
「選ぶこと?」
時々セラの言葉は心の奥まで突き刺さる。ジャブジャブジャブ・ストレートの感覚。ジャブは普段の毒舌で、ストレートは深く確信を抉る必殺パンチだ。
まあ効いてるって事は当たってるんだろう。僕としては認めたくないけどね。
「お気に入りを選ぶこと。私の場合はシルク様ね。女が組んだら男は勝てないでしょ?」
「はは、確かに」
悪魔の笑みを浮かべてセラは二人に近づいて行く。男に取っては悪魔の笑みだ。自分が潰される訳じゃないのに寒気がしたよ。
いつまでも喧嘩して貰ってても困るから止めはしないけどね。ここは鍛冶屋には悪いけど、セラの毒牙に掛かって貰おう。セラはシルクちゃんの後ろに近づいてガバッと抱きついた。
「ふえええ!? セラちゃん、何?」
「シルク様、私は味方ですよ。ちょっと鍛冶屋! 貴方みっとも無いわね。ちっちゃいわ。とっても小さい。女の子一人に頭も下げれない男なんてさ・い・て・い・よ!」
いきなり女の子に言われたらキツい台詞を躊躇いもなく言いやがった。それも最後の部分を強調して。悪魔だ。やっぱりセラは悪魔だよ!
今の一撃で既に鍛冶屋はフラフラだ。なんだかんだ言ってもシルクちゃんは悪口言わないからね。その攻撃力の無さをセラが一手に引き受けたみたいだ。
「お……お前に関係ない事だ! 引っ込んでろ!」
「ふん、シルク様を侮辱する事は許さないって言ってるのよ。自分の間違いも認められないで何職人気取ってるの? 本当に誇りがあって芯がちゃんと通った人は、失敗を誤魔化そうとはしない。キチンと謝る強さを知ってるものよ。それも出来ないから貴方は職人として半人前なの。
一歩前に進みたいなら非を認めなさい! アーサーウエポンは絶対に作れないわよ」
頑張った鍛冶屋だけど、軍配はやはりセラにあがった。返す言葉も無いらしい。下に恐ろしい奴だなセラは。所で『アーサーウエポン』ってなんだろう?
「……済まなかった」
そんな鍛冶屋の声が聞こえたのは直ぐ後だった。それでもセラは納得してない様だったけどシルクちゃんはそれで満足したみたいだ。彼女の優しさは海より深い。
「まあ、シルク様がそれで良いなら良いですけど。それではこれらかアルテミナスに向かいますが、状況は芳しく有りません。
私達じゃ無く、アルテミナスがです。その報告をメールで受けました」
急に沈んだ様な目になるセラ。その瞳に浮かんだ色は不安や怒り。僕は同じ様な目をつい先刻見たから分かる。僕を必死に止めようとしてくれた時の目と同じだ。
みんなそれに気づいてる。セラの痛々しい空気に……そしてそれを一番感じ取りやすい位置に居るであろうシルクちゃんがセラの手に自分の手を重ねた。
「どう言うことセラちゃん?」
「……クーデターです」
端的に発せられたその言葉を僕達は理解できなかった。空に浮かぶ月が雲に僅かに隠れて光を減らす。優しかった風が一迅を凪いで草を巻き上げた。
そして再びセラは言葉を紡ぐ。その瞳から一筋の涙を流して……
「ガイエン様がアイリ様を捕らえて、その力でクーデターを……アギト様も……ごめんなさい。これは私のわがままです。私達の愛した国を……私達の愛したお姫様を……助けるのに力を貸してください……」
気丈な仮面の下にあった顔は女の子。セラに強く抱きしめられたシルクちゃんがその顔を見つめて僕達の思いを言ってくれたんだ。
「私達は仲間だよセラちゃん! 助けての声だけで……それだけで十分!」
僕達はその時、月光の元仲間として目的の空を見据えた。アルテミナスが在る、あの空を。
第五十三話です。
きちんと更新これからも守って行きます。良かったら感想とかくださいな。悪いところを指摘されれば、頑張って治します!
そんな訳で次回、第五十四話は日曜日に更新します。ではまたです。