平面の隔たり
「ふっふふふ……ふふは……ふはははははははははははははははははははっははっっははははは!!」
天井を仰ぎ見て籠った様な声で盛大に笑い出すマスク姿のタンちゃん。その姿は誰がどう見ても引く物だ。てか怪し過ぎ。もしかしたらここは悪の秘密結社か何かじゃないだろうか? と思える様な光景だぞ。まあ真実は重度の中二病の引きこもりがノリノリやってるだけなんだろうけど……次の瞬間警察が踏み込んで来ても実は仕方ないんじゃないのだろうか? とは普通に思える。てかなんで笑い出したんだ? LROへの糸口でも見つかったか?
「はははh--うっごほっがは! ゲホゲホ」
「ちょっと、そんなの被って高笑いなんてするから……そもそも何なのそれ? 取った方がいいよ」
そう言って日鞠の奴が横で苦しそうに咽せてるタンちゃんに声をかける。まあ基本誰にでも優しい奴だからな。だけど日鞠の手がペタッとマスクに触れた瞬間、タンちゃんはビックウ! と弾んで椅子から反対側に転げ落ちる。
「さっ--げほっ!--ひゃ……ひゃわるな!」
「ひゃわるな? ああ、触るなって事? でも苦しいでしょ?」
「いいんひゃ! ゲホッ……ごほごほ」
「全く何をそんなに意固地になってるの? そのままじゃ……窒息するわよ」
見下げた瞳、声を一段下げた言い方で一瞬確かに脅したよな? 流石にあのマスクの下が気になってたのかも……そんな驚きがある様には思えないけどな。ここはリアルなんだからマスクから出て来るとしたら不細工か普通かイケメンかの三択しかないぞ。全く面白みが無い。LROならこのマスクの下から出て来る物にはもっと可能性感じるんだけどな。もしかしたら人の顔じゃないのかも……とか思えるけど、リアルじゃあり得ないからな。
「大丈夫でしょうか?」
「どうでもいいから、さっさと状況を説明してほしい」
愛は心配してるけど、俺はマジどうでも良いと思ってる。苦しいのは分かるけど、死にはしないさ。本当にヤバかったら流石にマスク取るだろ。てか、ホント日鞠の手が伸びる度に物凄い拒絶反応を示してるな……あれは日鞠がイラッとしても仕方ない気がする。
「人の助けなど……」
そんな事を言ってるタンちゃん。すると後ろの鍵が開く音がして「やった」と聞こえた。開いたドアから現れるのは勿論メカブだ。
「ふっふっふ、この私をないがしろにした事をようやく反省したみたいね」
「ゲハッガハッ……我が血を分けし存在よ……後は……たの……む」
「--ってきゃああああ!? お兄ちゃん何やってるのよ!」
ようやく中に入れた日鞠は折角決めてた台詞と格好を速攻脱ぎさってしまった。普通にお兄ちゃん言ってるしな。人の助けはいらないって、メカブに助けてもらうからって事だったんだな。メカブは急いでマスク姿の自分の残念なお兄ちゃんに近づく。そして二人してコソコソとこんな事を言ってた。
「もう早くお兄ちゃんそのマスク脱いでよ。えっ? 見せたく無い? もうじゃあそっちでね。それ普通の状態でも苦しいって言ってたのに無理するからだよ」
部屋の隅っこに行って、妹に手伝わせてマスクを取るタンちゃん。でも残念な事にここからはその顔は伺えない。それにしても仲良いなこの兄妹。まあ二人してのりのり中二病だしな。理解者はお互いだけなのかも知れない。いそいそと隅っこで息を整えて再びマスクを被り直してようやく仕切り直しだ--とか思ってたら、どうやらさっきの某SF映画のなんとかベーダーさんをリスペクトしてたマスクは止めたらしい。そもそも構造に問題あったらしいもんな。元から息苦しいのを付けてられなく成ったんだろう。
タンちゃんのマスクは今度はガン○ムシリーズに一人は必ず出て来るマスク野郎みたいに、目元を覆った物に成ってた。しかもさっきまでのマスクと違ってかなりこっちは安っぽい。節分の鬼の面かって程に安っぽい。きっと映像を見ながらそれっぽく紙を切って目の部分に穴をあけて、耳に掛ける為に輪ゴムを付けただけの代物だ。それで良いのかよ……と突っ込んで良いのだろうか?
「ふっふ、第二形態への移行が完了した。こちらの方が意思伝達に支障をきたさなくて済む」
「このメーカーオブエデンの力に感謝する事ね」
折角追い出してたメカブに助けられて、マスクはショボくなって……入れていいんなら最初からメカブを入れてても良かったし、マスクだって最初からそっちにしとけよ。まあタンちゃんはなんだかイヤに日鞠に拒絶反応示してたから、もしかしたらメカブしか触れれないとかで仕方なく? でもそれってどういう事なんだ? 女性恐怖症……は大袈裟過ぎか。俺が見るにただ単に慣れてないだけ……の様な気がする。メカブは兄妹だからって事だろうな。様はタンちゃんはシャイなのだ。
「まあこれで私の『力』が必要だと分かったでしょう」
「ああそうだな。そうだメカブよ。コレをやるからお使いを頼まれてくれ」
「わああい 二千円札だ! このレア度はジュレーヌ鉱山でしか取れないジュレーヌ鉱石並みね。かなりの物だわ」
どこだよそれ。二千円札は確かにレアだけど銀行とかに行けば普通に変えてくれたりする物じゃないのか? 知らんけど。一応まだ発行はされてるだろ。それに「このお札からは魔力を感じるわ。凄い!」とかぶつぶつ言ってる。ようはお金貰って嬉しいんだろうな。
「メカブ、それで好きな菓子やジュース買ってこい」
「その全ての取捨選択は私に一任すると?」
「勿論だとも」
「ふっ……見せて上げるよ坊や。私の本気をな!」
なんだか変に決まった台詞と表情を作りつつそんな言葉の応酬をする痛い二人。本気ってなんだ? 菓子選びに本気出してどうするんだよってツッコミはダメなのか? そう思ってると、メカブの奴は堂々とした歩みで部屋の外に出て行く。なんだか不思議だけど、メカブの背中は頼もしく見えた。雰囲気が多分そう見せてただけだと思うけど、なんか頼もしく見えたよ。なんかやってくれそうな雰囲気のメカブの背中は、扉が閉まると同時に消えて行った。
「アナタの妹さんアホね。折角部屋に入れてもらえたのに、自分から出て行くなんて……そもそもここ大きな冷蔵庫あるじゃない。お菓子もストックしてある様だし……」
日鞠のそんな言葉に周りをよく見ると確かに箱買いされてる菓子とか見えるな。冷蔵庫も確一人暮らしには似つかわしく無い大型が鎮座してる。なるほど、用が済んだら厄介払いされたって事か。タンちゃん案外酷い奴だな。自分が必要な時だけ良い様に使うとは……Sか? そしてそれでもお兄ちゃんを気遣ってたメカブはMか。買い物終わってウキウキで戻って来た時に、また自分のアホさ加減に気付く事になるなアイツ。前あった時はそんなアホだとは思わなかったけど……よく考えると外で痛い格好してるだけでアホだと分かるべきだったか。まあ前はそれほど絡んでも無いんだけどな。
「扱い易くて良いだろ? 調子に乗せれば言う事を聞き易くなるしな。疑問なんてどこかへ吹っ飛ぶ頭してるからな」
「そうみたいね。まあでも女の子はちょっとアホな方がモテるんじゃ無い? あの格好を止めればだけど」
「アレに彼氏など……出来うる筈も無い」
「それは嫉妬? お兄ちゃん焼き餅やいてるの?」
からかう様にそう言う日鞠。でも確かにちょっとそうなのかなとは俺も思った。バカにしてる様で、危機に成ると頼ってるし、同じ趣味だしで大切そうでもあるよな。ここに居させないのだって、もしかしたら巻き込みたく無いからかも知れない。自分は興味本位で関わってるけど、メカブにはそれをさせたく無いのかも。結構な大事だし、国まで関わってる事だ。実際危険が無い……なんて言えないからな。リアルでの危機なんて今まではたかが知れてたけど、今回はホント逮捕とか消されたりとか最悪しそうな雰囲気が僅かにあるとは思う。
少なくとも妨害みたいな事をし出したら、逮捕位は簡単に向こうは出来るだろう。奴等のフルダイブシステムへの本気度はもう十分過ぎる程に見て来た。施設まで作って、研究員も用意して、犠牲者を集めて、これまで関わって来てた人を拘束までしてる。実際確か佐々木さん達は逮捕の方向に行ってると報道されてた気がしてたけど、あそこに居たからな。情報操作も始めたんだろう。バックは政府……無茶なんて幾らでも出来る。邪魔な奴等をありもしない罪で刑務所送りくらい簡単だろ。だからこそ、万が一を考えてメカブの事を核心からは遠ざけようと……
「まさか、アレも俺もこの世界とは交わらない存在というだけだ。我等持つ物は孤独からは逃げられないのだよ。そう言う宿命だ」
哀愁を漂わせて、紙切れの仮面を堂々と被ってる奴がそう言った。ヤバい、徐々に笑いがこみ上げて来る。やっぱり苦しくてもマスクの方がまだ良かったな。まだそっちの方がミステリアス部分が強くなって良かったけど、今の目元だけ隠す感じじゃ、本当に……本当にもうただの痛い奴にしか見えないぞ。
「それでも……誰もがずっと孤独のままでは居られない。きっとこの世界にはあの子の王子様も居る筈だけどね。その時までにシスコンは卒業してた方が良いと思うな」
「し、シスコンじゃない! 全く、言っとくがスオウとか言う奴なら認めんぞ」
「それはないない。だってスオウは私の王子様だからね」
「ふん、それもどうだかな」
タンちゃんの言葉にムッとする日鞠。確かに日鞠とスオウの奴の絆は長くて深い。この二人の間に割って入れる存在は早々居ない。だけどタンちゃんはこう言うよ。
「最終的に選ぶのはスオウ本人だろ? お前達がこの子の意識を取り戻そうとしてるのは知ってる」
そう言ってみせられたのはセツリの写真だ。色々とやっぱり調べてるんだな。まあ俺達の行動理由はどこにでもバレバレだけどな。周囲からはアンフィリティクエスト組とか言われてたし。そして目的のお姫様がセツリである事も有名だ。だけどセツリが実はリアルで眠り続けてる娘ってことは流石にあまり知られてないかもな。
「それがどうしたのよ?」
「命を賭けて助ける美少女……ヒロインは一体どちらだろうな? お前にこの言葉を教えてやろう。『幼なじみは負けフラグ』とな--ふぎゃ!?」
バッチィィィィンと盛大な音が鳴る。頬をぶたれたタンちゃんは女の子みたいに床に倒れてた。今のは日鞠に対して言っちゃ行けない事だ。地雷だよ地雷。
「貴様な!」
「ふん、スオウはそんな事思ってないわよ。それに例え今はヒロインじゃなくても、最終的にそうなるからいいもん。私はその為の努力とか怠ってないしね」
「まあそう思うのなら、それでもいいさ。人の恋模様も端から見てる分には面白い物だからな。人はいつだって下らない事で悩み苦しみもだえてる。無駄だとは思わないのか? そんな感情いらないとは思わないか?」
「思わないかな。だって大切な人が居るって事はそれだけで幸せな事だもの」
迷い無い瞳でそう告げる日鞠。すると俺の手に愛の手が! 今の日鞠の言葉に感銘を受けたのかも知れないな。ドキドキする。
「だからこそ、私はスオウを助け出すの! さっさと続きやるわよ」
「続きと言ってもな……俺達は結局向こうに行ける訳じゃない。このコードの三分の一も理解出来ないんだからな」
色々とやってると思ってたけど、結局あんまり理解は出来てなかったのか。でも糸口位は掴んだ筈だろ? なっ?
「糸口というか、気になる物はいくつか見つけた。だが、どうすれば良いのかは……やはりあの場所は今までのやりかたじゃ作られてないって事が分かった位だ。根幹をどうにかするとか、LROを解明するとかは本人以外は無理だな」
おい、諦め宣言早過ぎるだろ。数時間前の俺に任せとけ的な自信はどこいった? まさか最初のあの笑いはお手上げだから出てた諦めの笑いか?
「ふっ、まさか人間にここまでの物が作れるとはな……」
「人間じゃない割には大した事無い奴ね。私はまだ諦めてないわ。佐々木さん達がいじれてた部分は既存のプログラムが混在してるんだから、糸口はある。入り口さえ開ければ、リーフィアを使えばもう一度向こうに行けるかも」
「リーフィアか……」
タンちゃんは何かを思案し始める。何か思う所があるのか?
「そもそもリーフィアってどうやって意識をLROに届けてるんだ? 知ってるか?」
「無線でしょ? Wi-Fiじゃないの?」
タンちゃんの言葉に日鞠は直ぐにそう返す。てかそれ以外に考えられないよな。有線で繋がってる訳でもないんだから無線規格を採用してるとしか考えられないじゃないか。だけどタンちゃんは真剣な面持ち……と言うか瞳部分は見えないから、雰囲気からそれとなくそんな感じを察した。そして重い空気を醸し出してこう紡ぐ。
「違うな。確かにリーフィアにはWi-Fiが乗ってる。だけど考えてみろ……LROには全てが行ってるんだ。この体の感覚から思考の全てだ。その情報量が一体どれだけになると思う?」
「……知らないわよそんなの。どのくらいなの?」
「そんなの俺も知らん。だが膨大なのは確かだ。更に高速な通信が出来て来てるが、それでも人の思考を完全に無遅延で余す事無く送信し続ける事なんて不可能に近い技術の筈だ。それだけ俺達の脳はとてつもない処理を毎秒してる」
トントンと自身の頭を叩くタンちゃん。確かにそこらへのスーパーコンピューターよりも脳が高性能なのは知ってるけど……不可能とまで言えるのか? 技術の進歩は著しいぞ。でも確かに深く考えるとLROは異常が一杯あるとは思う。でもそこは天才の秘密の技術みたいなので納得されてるよな。彼なら仕方ない……そんなんで有耶無耶になってる様な。いや、実は大層な研究機関とかは密かに研究をしてたりするのかも知れない。その価値は確実にあるよな。
「でもそれならWi-Fiはなんの為に詰んであるんだよ? 通信しないのに詰んでる訳ないだろ」
「通信はしてるさ。既存のネットワークをリーフィアは使える。その接続の為に詰んでるんだろ。だがそれを併用してLROと直接リンクはしてない。それは前に一度境界線上を越えようとした時にもしかして……と思った事だった。だがこの数時間で核心に至った。このLROの創造コードとも言える物には既存の通信規格に開かれた窓はない。俺達が考えてたよりもこちらとあちらの境界線は隔絶してるんだ」
おいおい、それはどう受け取ればいいんだ。道がないなら作ってしまえばいいじゃない! とは行かないんだよな?
「簡単に言ってやろうか? これは世界が違う様な物だ。道を引こうにもこちらの世界からはあちらが見えないみたいな物なんだよ。ネットワークという海の中に確かにLROはあるんだろう。沢山の人々が様々な場所から同じ場所へとアクセス出来てるんだからな。だがそのネットワークの海は、ずっと使われて来た海じゃないんだ。同じ様で同じじゃない。隣り合った平行世界……いや、平行というのは少し違うのかも知れない。平行というよりも平面。同じ場所にある様に見えて、角度を変えると別の高さで広がりあってる様な……」
「上手く言えてないわよそれ。訳分かんないし。取りあえずここでパソコンをいじっててもLROには届けないって事でしょ? 私達が普段何も気にせずに使えてたこの世界の情報が溢れてるネットワークという海とは微妙に違う海。そこにLROはある」
「そう言う事だ。まあ重なってる部分はあるんだけどな。だがそれはほんの表面でしかない。それじゃあダメなんだろ?」
「当たり前でしょ。スオウをセツリちゃんを連れ戻すにはそれじゃダメ」
日鞠の奴はキッパリと言った。まあ表面だけじゃな……でもそこから奥は海事態が違うと……そう言えばスマホで映像とか見れたのはアレは有線でリーフィア自体に接続してたからなのかな?
「なあタンちゃん。俺達スマホでスオウのリアルタイムの映像が見れたけどあれはどうなんだ? 何か使えないか?」
自分の胸にしまってても仕方ないから、僕は投げ捨てられる事を覚悟の上で言ってみる。俺の頭じゃ無理だけどさ、日鞠とあの中二病を拗らせたタンちゃんの知識と知恵が合わさればもしかしたら何かひらめくかもしれない。だから自分でダメだと思った事も言ってれば何かがあの二人の琴線に触れてくれるかもしれないからな。
「そう言えばリーフィアにはそんな機能もあったな。だが有線での接続ならそんな不思議な事もないだろ。直接リーフィアから映像を画面に映せば良いだけだ。ネットワークとか関係無い」
「そうだな。その位は流石に俺にも分かる」
ダメだったか……いや、でもそうだよな。これもダメか……そう思ってると今まで黙ってた愛がぽつりと言うよ。
「良くわからないですけど、携帯を繋いでも簡単な操作が出来るってちょっと近づいた気がしますよね。だってそれってその無線とかじゃ見れないんですよね? 繋げないといけない」
「う〜ん、そう言われると困るけど、配信機能はなかったと思うな確か。最近だとスマホとかの映像を簡単に飛ばせたりするけど、リーフィアじゃそう言うのは確かに有線仕様だな。まあ元から近くの誰かじゃなく、遠くの誰かとふれあうのが目的だからそう言う物なんだろうけど。あんまりリーフィア被ってる所は人に見られたく無いしな」
別にダサくは無いけどさ、部屋でアレを被って友達と遊ぶとかはないよな。友達と遊ぶとしても、それぞれの家でダイブしてLRO内で会うだろう。そう言う物だ。
「待って、それって普段は使用出来ない権限にアクセスしてるって事じゃない? いいや違うかも。普段から解放されてる部分だけど、特定条件下でしか利用出来ない機能だから道順とかが違ったり……」
なんだかいきなり日鞠の奴が思考し出したぞ。何かを思いついたのかも。
「タンちゃんどう思う?」
「確かにそれは少し盲点だったな。ネットワークから何でも出来る時代だから、有線接続の優位性を忘れてたかも知れない。人間にしては良い着眼点だ。直接リーフィアを操作出来る様になればあるいは……」
なんだ? 二人の顔がしかめっ面から僅かに綻んでる様に見えるぞ。行けるのか?
「可能性はある。スマホ単体では厳しいが、PCを併用すれば性能で劣る事はないだろう。システムは訳が分からないが、あれを形作ってるのは現代の部品だ。オーパーツじゃない。それにリーフィアは正式な入り口を持ってるからな。そこに流れる信号を増幅させれば、向こうとのコンタクト位は……」
「取れるのか?」
「わからんが、試す価値はある。足がかりにはきっと出来るだろう」
おお、ようやく見えて来た希望だな。何にもない一般人の俺達にも僅かな光が差し込んで来た気がする。それなら早速……そう思ってると日鞠が良く無い事も言って来た。
「浮かれるのは早いわよ秋徒。問題は色々とあるわ。まず今はLROへの道が強制的に閉じられてる事よ。これは一端末であるリーフィアからはどうにも出来ない」
「おいおい、いきなりお手上げじゃないか!」
少し気持ちを浮上させて落としに掛かるとか、最低な事をやるな。さっきの希望は偽りか!」
「それでも……試してみるしかないわ。どうなるかは分からないけど、やってみる『価値』だけはあるの」
だけって……でも確かに他に良い方法がある訳じゃない。賭けるしかないよな……俺は息を肺から思いっきり吐く。
「分かったよ。俺はお前達を信じてる」
「私もです。日鞠ちゃんとタンちゃんさんを信じます。何か出来る事はありますか? 協力します」
「そうですね。それならお姉様の家の財力を駆使してリーフィアの総取りを−−」
「何言ってるんだお前は? そんな事させれる訳ないだろ!」
てかきっと既に販売中止になって回収されてる筈だろ。今からじゃどの道手に入らないぞ。
「そう言えばそうだったわね。全く、数があった方が良かったのに」
「それなら私のリーフィアを提供します。お役に立ててください」
あっさりと愛はそう言ってるけど、アレはに個人情報がぎっしりと詰まってるんだけどな。
「個人情報よりも今は大事な事があります。そうでしょ? 秋君」
柔らかく微笑む愛の顔を見せられて否定出来る訳がない。俺はこの娘にめろめろなんだからな。しょうがない、俺も自分のを提供するか。一人何もしないなんて出来ないからな。
「俺と愛ので二つ、日鞠は持ってないしな。そっちはどうなんだ?」
「俺が二台持ってる。使ってないがな。それとメカブのも合わせて三つだな」
勝手に合わせてって言ってるけどいいのか? まあ良いんだろう。アイツもなにかと言っては協力してくれるしな。
「そうと決まれば取りに戻りましょう秋君。善は急げですよ」
「そうだな」
俺達は日鞠の車でリーフィアを取りに戻る事に。少しずつでもやれる事を見つけて動き出せてる……その筈だ。エンジンが始動して、僅かな振動が伝わって来る。日鞠の奴はリーフィアないから、ここに残ってタンちゃんと一緒に一足先に色々とやってみるそうだ。流れ始める車外の光景……信じよう、道は開かれる……その事を。
第五百二十七話です。
もう謝るのも億劫に成って来たけど、一応言っときます。ごめんなさい。まさか昼まで食い込むとは! 誘惑するのものが多いのがわるいんだ!! PCで書いてるとどうしても……それに近くにはiPadもあるし、ついつい手が伸びちゃうんですよね。
どうにかしないと行けないですね。心を律しないと。取りあえず努力して行きます。
てな訳で次回は水曜日に上げます。ではでは。