表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
499/2693

何が出来るのか

挿絵(By みてみん)

 燦々と輝いてた太陽が傾き、家路を急ぐ人がチラホラと見えて来る時間帯になった。ここら辺は大きなビルが建ち並んでる辺りだからな。そう言うビジネスマンが一杯だ。きっとサービス残業とかもってのほかなんだろう。

 定時に帰宅しなくちゃいけない人達がどんどん見えて来る。だけど不思議な事に、俺達が張り付いてるLROの運営会社からはそう言う動きが見えない。時々別の会社の人かな? が出て来る位で、あの調査委員会の影も形も見えないな。車はあるからまだ中に居るのは確実だろうけどさ……てか、奴等のあの車……よく駐車違反でしょっぴかれないな。どう考えてもあそこ駐車場じゃないんだけど……


「あの~お客さん方、あんまり無茶な遊びはしない方がいいですよ」


 タクシーの運転手が解放されたがってるのか、そんな事を言って来る。まあ既に数時間は拘束されっぱなしだし、運転手にとってはいい迷惑かもね。


「これは遊びじゃありません。私達は真剣なんです。それにお金は十分あげた筈です。まだまだ付き合ってもらいます」

「いや何をする気かは知らないけど、軽い気持ちで映画の真似して尾行とかはね……あんまり遅くなると親御さんも心配するだろうし、もしもあの車の人達が本気で危ない人達なら、それだけでただで済まないかも知れないじゃないか。

 これはきっと猶予の時間なんだよ。危険な事は止めときなさいという啓示なんだ。おじさんはそう思うな」

「おじさんがそう思うのならそうかも知れないですね」

「なっなら!」

「おじさんの中だけでは……ですけど」

「…………」


 こりゃダメだ--と思ったのかタクシーの運転手は前を向いて音楽を止めた。普段は絶対聞かない様な演歌が車内を満たしてた訳だけど、それを止めて次に流れ出すのはラジオだ。どっかのお笑い芸人がべらべらと喋ってる。

 そんなラジオを聞き流しながら、俺も日鞠に聞くよ。


「なあ、実際委員会の奴等を着けてどうするんだ? 居場所を暴いて、LROを停止しないでください! とか直談判する気か?」

「アホな事言わないでよ秋徒。居場所暴いてそこのデータをハッキングして横取りするか、ヤバそうなら破壊するわ。多分LROの稼働停止までは既に秒読みくらいの位置まで来てると私は思ってるし、でも妨害でもすればそれが少しは遅れるかも知れないでしょ」

「俺達はその代わりに刑務所に入れられそうじゃね?」

「大丈夫よ。バレる様なヘマしないから」


 いやいや、その自信はどこから出て来るんだ? 日鞠って別にパソコンが趣味とかのPCオタクな訳じゃないじゃん。ハッキングとかそんな簡単な物じゃないぞ。ああいうのはパソコンの腕に自信があってちょっと歪んだ奴等が行き着く場所と言うか吹き溜まりだぞ。

 そんなここ最近かじった程度でそいつ等の域にたっせれるとか、そんな甘い物じゃないだろ。俺だって「スーパーハッカーカッコイイ!!」とか言って中学時代やらかして凝りたしな。まあ前科一犯に成らずにすんだけど、その時理解したんだよ。

 ああいうのはやっぱり特殊な奴等がやるものなんだなってさ。平凡な頭じゃPCにさえ勝てない。ましてやかじった程度の知識じゃとてもじゃないが危なすぎる。日鞠の場合は外面があるんだし、学校中大騒ぎになるぞ……もしも逮捕なんてされたらだけど。


「最近色々と勉強してるもん」

「してるもんって……流石にいきなり国の組織へハッキングは安心出来ないっての」


 幾らこいつが規格外だからってな……物には順序ってのがあるんだよ。まずはそこら辺の緩いセキュリティから抜く事を始めろよな。なんでいきなり国の組織を対象に選ぶんだよ。


「そんな悠長な事を言ってたらLROが止まるのよ。このままじゃセツリちゃんだけじゃなくスオウもずっと向こうに行ったまま……無茶でもして誰かが引き延ばさないとダメじゃない。確かに今の私の腕じゃ危ないかも知れない。そんなの分かってるわよ。

 だからって他に誰がそんな危険を犯すのよ?」

「犯す奴は案外居ると思うけどな俺は」

「どうして?」


 日鞠は首を傾げて聞いて来る。まあ日鞠はまだ一度も向こうに行った事が無いからな……だからちょっと分かってない所がある。こいつにしては珍しいけど、こればっかりは経験した奴とそうじゃない奴の差って奴だな。


「LROは人を魅了する。あの世界を生き甲斐にしてた奴だってきっと居るし、最初にアレに飛びついたのはコア層だぞ。その中にはハッカーとかいたって、別にハッカーじゃなくても詳しい奴等は幾らだっているだろ。

 実際LROが止まるかも知れないってなったら、いろんな奴等が動き出したって、俺は別に驚かないな。それだけあの場所はもう一つのリアルでもあったんだよ」

「アンタもじゃあデモとか呼びかけがあったら参加するの?」

「それは……まあ、本当に効果があるんなら。でもああいうのって本当に応えてるか分かんないしな。座り込みとかやってる間に普通に停止させられたりしそうだろ」


 暴力的な展開に成るよりは平和的でいいんだろうけど、向こうは別に企業でもなんでも無いからな。向こうにはプレイヤーという人間を守るっていう大義名分がある。俺達が幾ら吠えたって「死んでいいのか?」って聞かれて「それでもいい」って即答する奴は流石に大多数はいないだろうしな。

安全の為と言われれば、幾らプレイヤーが反対したって、それは行われる事になるだろう。まあ危険があるんなら今までやってる人はともかく、新規の客は見込めない訳だし、そうなるとLROを運営する側としても辛いよな。

 俺達プレイヤー側にも、そして運営・調査委員会側にも一番良いのは、やっぱり安全を確保出来る事なんだよな。


「まっ、ああいうのを脅威と感じるのは、消費者が顧客である場合だけよね。でもそれでも全く効果がないって訳でもやっぱり無いわ。大切なのは知らせる事でもあるんだしね。でもそう言う事があったと他の誰かが知って、一部の人たちが騒いでるだけって思うか、それともそれが沢山の人達の思いだと認識するかは分からない所だけどね」

「そういう所で大切なのは数字だよなやっぱり」

「そうね。百人の抗議活動よりも、千人の抗議活動の方が効果的なのは明かね。それで秋徒はそのリーダーに名乗りを上げる気はあるの?」

「はっ?」


 なんでいきなりリーダーだよ。どこからそんな話が持ち上がった? 確か抗議活動に参加出来るか? って事じゃ元は無かったか? リーダーとか……響きは悪く無いけど、自分には流石に何千人も引き連れない。そんなプレッシャー耐えられるか。


「秋徒は大きいからやれるわよ」

「お前って俺の事を『大きいから』で毎回完結しようとしてるよな? それで納得出来た事なんか言っとくけど一度もないからな!」


 大きい事と関係無いし。別に小さくたってリーダーは張れるしな。そもそも俺にはそんな行動力も気質も無い。スポーツも齧った程度だし、基本アクティブじゃないんだよ俺は。汗水垂らして運動に打ち込むってキャラじゃない。

 恵まれた体格してるけど、俺はゲームやってる方が楽しいんだ。


「リーダーならお前がやれよ。やり慣れてるだろ?」


 確かスオウの奴が言うには保育園から今までずっとクラスの代表とか学校の代表ばっかりやってたらしいからな。日鞠程リーダーに相応しい奴も早々いない。


「やり慣れては居るけど、残念--私にはその資格が無いもの」

「資格?」

「あんたも言ってたじゃない。私はLROを知らないって。そんな私がLROを救う為のリーダーになれると思う? アンタは一度もLROをやった事も無い奴に従える? 偉そうに言われてどう思う?」

「……そうだな。確かになんか無理があるかもな」

「それが資格って奴よ」


 日鞠はドサッと座席に深く体を預けてスマホをいじり出す。まあずっと片手に持ってた訳だけどな。ちょこちょこ触ってた感じが今度は指を高速で動かし出してる。なんだか本格的に何かをやりだしたって感じだな。


「いやー二人とも面白い事を語ってますね~。そうやって色々と話せるのは大切だよ。彼氏・彼女なら尚更」

「え? いやいや、それは間違いです」


 タクシーの運転手が変な誤解をぶつけて来た。確かにそう見えなくもないかもだけど、あり得ないから。だけど運転手さんは「またまた~」見たいな感じで聞く耳を持ってくれない。日鞠はなんだかスマホに集中しちゃってるし……一人でおじさんの相手をするのか? 気が重い。

 そう思ってると、視界に黒いスーツ姿の面々が目に留まった。なんだか大量の段ボールを抱えてるな。


「おい日鞠!」

「来たわね」


 そう言ってパシャパシャと奴等を盗撮する。そしてまたスマホに視線を落とす。


「何をそんな真剣にやってるんだ?」

「ちょっとね。さっきの会話も無駄じゃ無かったかも。アンタが言うにはLROの為に無茶をする層って言うか……したい層は一杯居るんだものね」

「いや、まあ予想だけどな……」


 実際に見た事は無いぞ。そこら辺間違えるなよ。


「実際、ネット上では色々と熱が高まってるわ。まあまだ原因を発表してないから、運営の不手際的な方で怒ってるスレが多いけど、冷静な所は色々とLROの現状とか推測して原因を思考してるみたい。

 静かに燃えてる感じしない?」

「確かに冷静な層ってのは一定は居るだろうな。だけど、そいつ等も動き出すか……ってのは分かんないぞ。基本ネットゲーをやり込むのはリアルでは自分を晒せなかったりしてる奴なんだからな」

「分かってるわよ。アンタの言った層が居るって事が大切なの……ふふ」


 あっ、これはなんか悪巧みしてる顔だ。流石にそう言うのも分かる様になって来たぞ。中学からの付き合い出しな。妖しく瞳に光が灯ってる。きっとろくでもない事を考えてるんだろうな。いつもならそんな日鞠を蚊帳の外で傍観してるんだけど……今回は巻き込まれずには居られないだろうな。


「お二人さん、前の車が出ようとしてるんですけど、本当に追いかけるんですかい?」

「当然、見失わないでくださいね」


 調査委員会の車が出て、それを追う為にタクシーもゆっくりと発進する。まあ向こうは数台居るからな、見失うって事はまず無いだろう。それよりも向こうの本拠地を知って、日鞠の奴が何をやるか不安だ。


「なあ、実際奴等の行き先を突き止めたとして、それってどうなるんだ? 簡単に入れる様な場所じゃなかったら無駄だろ」

「簡単に入れる様な場所じゃないでしょうね。少なくとも重要な場所へはいけないでしょ」

「じゃあなんの為に尾行してるんだ?」


 こいつらを追いかけた所で何も知りよう無いんじゃないか? 百戦勝ち続ける情報は得られないじゃないか。すると日鞠は前の車を見据えてこう言うよ。


「外側からだって見えるもの、得れる物ってのはあるのよ秋徒。外堀を埋めるって言うでしょ?」

「確かにそうは言うけどな……」


 何を埋められるのか、頭の悪い俺にはわからん。調査委員会の進捗情報とかどうするんだよ? 外堀から得る方法でもあるのか? 実際奴等の情報は事細かい方が良いと思うんだけどな。


「そう言えばあいつら何か会社から持ち出してたな……」


 なんだったんだろうかアレは? すると日鞠の奴がその疑問に解答の案を一つくれる。


「多分だけど、アレはここ最近犠牲になったプレイヤーの資料とかじゃないかしら? 前に行った時、沢山あったもの」

「なるほど。でも三箱くらいもちだしてたよな? 一体どれだけ犠牲者が居るんだよ」


 段ボール一箱でもかなりの数だろう。薄っぺらな紙に犠牲者達のLROの登録情報が書いてある程度だろ? それが三箱も必要って……どう考えてもあの病院だけじゃ足りないだろ。いや、もしかしたら足りるのかも知れないけど、それはあの病院全体を使ってならって印象だ。

 流石に一部病棟だけじゃ絶対に無理な人数が、あの病院には運ばれた事に……いや、そもそもLROはネットゲームなんだし、都心に利用者が集まってる訳でもないか。きっとその県のデカい提携病院に分散させてるんだろうな。

 LROは元々医療関連での開発が進んでたんだし、ゲームの方に行った今でも最初期の頃の繫がりがあるのかも。そう言うの諸々、あの会社が取り込んだとかな。でないと、一ゲーム会社で犠牲者を隠すとか……それに病院が協力するとか、なかなか考えられないよな。


「あの段ボール全てが犠牲者の資料とは限らないでしょ。他にも色々と押収したんじゃない?」


 その色々が分からないんだけどな。徐々に黄昏に染まる町並みを車はひた走る。途切れる事なの無い車の波。輝きだした街頭が光の帯を作って流れてく。そして夕べが過ぎて、夜の帳が下り出した頃に、長い列を作ってた車が地下の駐車場に流れ入ってく。


「ここどうやら関係者以外立ち入れないみたいですよ」

「しょうがないですね。少し先に止めてください」

「了解」


 なんだかすっかり日鞠の運転手が板についた様に見えるなこの人。でも考えてみれば普通の対応だよな。お金ももらってるし、その分は付き合ってくれるんだろう。タクシーの運転手は直ぐさま路肩に車を一時停止。そこから僕と日鞠は外にでる。

 運営委員会の車が入ってた建物は、この都心においてなんとまあ嵩が低い建物だ。てか珍しい。流石にビル街って訳じゃない所まで来てるけどさ、それでも普通に四・五階クラスの建物が周りには一杯だ。だけどこの建物は一階しかない。

 このご時世に珍し過ぎだろ。しかも表札には植物園って……どういう事だ? 確かに緑の壁に成ってるし、やたらごちゃごちゃと植物が見えるけど……


「カモフラージュでしょ、区立って書いてあるじゃない。要はお役所なのよこれをやってるのは。表向きは植物園、でも裏では国際社会を揺るがす秘密結社って所でしょ?」

「いや、どこのSF物語だよそれ。一体お前は何と戦おうとしてるんだ?」


 そんな秘密結社との戦いなんて聞いてない。帰っていいか? 国際社会に自分が干渉出来るなんて思ってねーよ。秘密結社との戦いなら退散したい。俺はあくまでLROの中に取り残されたアイツの為に付き合ってるんだからな。

 世界を賭けた戦いなんかする気ない。


「別に間違ってなんか無いでしょ。奴等は敵よ」

「向こうも正義なんだと思うけどな」


 守ろうとしてる気持ちはきっとあると思うぞ。だって実際被害者は出てる訳だからな。向こうはこれ以上被害が出ない様にしようとしてるんだろ。それは当然の事なんだ。被害を隠して運営し続けた方が実際は咎められるべき側……


「確かに私達のこの思いは正義ってよりもわがままなのかも知れないわね。そのわがままで既に犠牲者は数百人……刑務所に入ってもおかしく無いかも」

「俺達もか?」


 それは流石に嫌だな。この年で刑務所に入るのは……てか前科をくらうのは就職とかで不利だろ。まあ将来なんて全然見えないけどさ。一応不安要素はあんまり多くしたく無いぞ。


「だって私達はLROの危険は分かってたしね。まあ他人が巻き込まれる……とは思ってなかったけど。私達は大丈夫でも、佐々木さん達はどう考えてもヤバいわよね。あの情報が明るみに出たら、避難殺到するだろうし……」

「そもそもどういうふうに被害者家族に説明してたんだ? 普通口止めなんか出来ないだろ。マスコミとかに話す人が居てもおかしく無いよな? それこそお金を貰ってたとしても……」


 嫌な考えだが、実際そう言う奴は居るだろう。まあお金なんか拒否してLROの危険を訴えようとする人だっているとは思うけどね。でもホント、どうやったら被害者家族を納得させる事が出来る? 考えてみると、数百人が犠牲になってて騒ぎに成ってない方がおかしいよな。

 一体あの人達はどんなマジックを使ってるんだろう?


「口を封じるには期待を持たせるのが一番。そして話した事によるリスクを知らせれば効果的。なんてたってフルダイブシステムの技術は彼等が一番持ってるだろうし、LROが最悪停止すれば、家族を救う事は出来ない……とか言えるわ。

 そして彼等はスオウに賭けてたし、対策も既に打ってるとか言ってたんじゃないかしら? それでも完全に封じれるとは思えないから、結局は時間の問題だった様な気もするけどね」


 そう言いながらさっきの地下駐車場の方へ回り込む日鞠。顔を向けて覗くと防犯カメラが見える。


「こっちは厳重ね。まあ植物園側にも数台のカメラがあったけど」

「え? カメラなんかあったか?」


 どこに? 全然気付かなかったぞ。


「向こうのは植物に隠されてたから。でもプロである私の目は誤摩化せないけどね」

「お前……ホント何に成りたいんだよ」


 何だって出来る奴だから、色々と要らない知識を溜め込んでるよなこいつ。プロってなんの? 盗撮か? 確かにそれに関してはこいつはプロっぽい。カメラとか相当拘ってるしな。そう思ってると日鞠の奴は僕の言葉にこう応えた。


「わ、私はずっとスオウのお嫁さんに成るのが夢だから」

「ああ、その質問俺の中でもう流れてたわ」

「酷い! 何言わせんのよこのバカ!」


 プンプンして植物園の方へ戻る日鞠。だって、そんなのボケにも成ってないと言うか……こいつの場合片手間だろ? お嫁さんなんて。もっと偉大な事を成し遂げそうな奴だからな。僕達は植物園の前で中をうかがう。

 繁盛してる様には見えない。ライトアップしてあったりもするけど、いかんせん中の建物がボロくてなんかちょっとホラーっぽいのもマイナスだな。進んで入ろうとはお世辞にも思えない。


「元々税金でやってるんでしょ? 客なんか来なくても良いんじゃない。隠れ蓑な訳だしね」

「まあ植物園の状態なんかどうでもいいしな。それよりもこれからどうするんだよ?」

「中に潜入出来ればいいんだけど……流石にそれには準備が足りないわね」


 準備出来てたら潜入とかする訳だ。こいつの日常は俺が思ってたよりも過激らしい。生徒会長ってそんな事をやってるの? まあこいつの活動は校外にまで及んでるのは周知の事実だからな。あんまり知りたく無いや。


「引き返すか? 流石に暗くなってきたしな」

「は? 何言ってるのよ。折角オープンなんだから、行ける所までは行くわ。私は転んでもただでは起きない女のよ」

「へいへい、そうですか」


 するとズカズカと堂々とした態度で植物園の中に乗り込む日鞠。全くこいつは……少しは緊張とかしないの? 一応本拠地だろここ。そう思いつつ、俺も日鞠の後に付いて行く。入り口は何とも古い自動ドアでガタが来てるのか、ガガッガガガウイ~ってな感じでなんとか開いた。手動に変えるか、修理するべきだろ。


「すみませ~ん!」


 呼びかけるけど反応はない。まさかこの都会でご自由に観覧してください--的な場所か? んな馬鹿な。でも少し待っても誰も出て来る気配はない。取りあえず俺達は中を見て回る。すると速攻で日鞠が何かを見つけた。


「ちょっと秋徒、ここ立ち入り禁止だって」

「みりゃわかるけど……それが?」


 次の言葉がわかる気がする。


「行くわよ! 地下施設に通じてるかも知れないわ」

「ちょっと待て、潜入は止めとくんじゃ無かったのか?」


 さっき準備が足りないって言ってただろ。その言葉はどうした?」


「だって誰もいないし、それになんだかまだ大丈夫そうな気がするわ。私の勘って外れた事無いのよね。それに最低限の準備はしとく」


 そう言ってスマホをいじり出す日鞠。数秒後に「よし」と呟いて、立ち入り禁止の通路に進む。観覧スペースは明るく照らされてたけど、こっちの通路は薄暗い。まるで闇が誘ってるみたい。


「大丈夫なのか本当に?」


 俺は一抹の不安を感じながらも日鞠を一人にする訳にもいかないから付いてくよ。絶対にヤバい事やってる。怒られるだけで済めばいいけど……俺は重く感じる足を進ませて日鞠の背中を追う。

 第四百九十九話です。

 今回の絵はクリエです。本編の方は日鞠の無茶に秋徒が振り回される感じで進んで行きます。色々と試行錯誤しながら書いてます。今回はリアルとゲーム両方の進行を入れて行きたいので交互になるかな?

 でもアルテミス編よりも読み易くしたいなって考えてます。まあだから二話で交代なんですけどね。


 てな訳で次回は水曜日に上げます。ではでは。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ