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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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大気圏突入

挿絵(By みてみん)

 眼下に広がるまあるい星。とてつもなく大きくて、そして地球と同じ位に綺麗な星だ。LROと言う世界はちゃんとこの通りにあるんだよな。まだLROは浸食されきってなくて、僕が今まで見て来たままの世界がある……よな?

 見た目的にはさっきまでとなんら変わりなく見えるけど、シクラ達が動き出して、プレイヤーは排除されたからな。実際それだけでも今まの世界とは違う--とも言えなく無いかも知れない。だってプレイヤーによっては国を纏めたりしてた人もいるし、基本国の拡張もプレイヤーがしてた。

LROはプレイヤーがなんだって出来たから、その存在感はきっと強かった筈だ。多く居たプレイヤーが強制的に抜けさせられれば、その穴は当然出来るだろう。

 プレイヤーだってこの世界の一部だったんだ。それを一気に失ったのなら、どこかが欠損したって……おかしく--


「くっ……」

「暑いよスオウ……」

「頑張れクリエ。頑張って耐えるんだ」


 僕はクリエに頑張る事をお願いするよ。だってそれしか無いんだ。僕達はシクラ達から逃げる為に、あの舞台から飛び出した。そして当然ながら、この星の引力に引っ張られてる訳で、実際僕達が目指すのはLROへの帰還だから、これは結局避けては通れない道なんだ。

 宇宙空間に出る時は不思議な力が一役買ってくれたけど、帰りはなんだかその気配無かったもんな。まあ本当なら、ちゃんとあの場所から帰る正当な手段はあった筈だ。決着がついて、願いが叶った時点でそれは発動する予定だったのかもしれない。

 けど、きっとシクラかどいつだかがその機能を強制的に停止したか、それか壊した……とも考えられる。奴等には目的があって、あそこでやっておきたい事があったから、早々に僕達が下に戻る事を防ぎたかった筈なんだ。

 だからこそ、全うな手段での帰還を妨害した……あいつ等なら、システムの一部を停止させる位出来るだろう。なんてたって遂に、本格的に世界を乗っ取りに掛かってるんだからな……全うな手段が本当にあったとしても使えない今、僕達には荒っぽい方法しか残されてない。

 大気圏を生身で越えるって言う無茶しか帰還の方法が残されてない訳だよ。


「残されてるなんて、言えないと思うがなこの方法は。元々考慮するべきじゃない方法だろ」

「そんなの分かってるけど……じゃあ他にどうやったらこの星の中に入れるんだよ?」

「無茶など、始めから承知の上だ」


 汗だくで僕達は言葉を紡ぐ。確かにテトラが言った通りに、この方法って実際考慮って言うか、選択肢に入れちゃ行けない物だとは思う。だけど他に方法らしい方法があの土壇場で見つかるか? もたもたしてたら、チートなあいつ等に叩き潰されるだけになってた。

 早々隙を突ける相手でもないんだからな。それにシクラ達が追ってこないのは、逆にそれだけ危険だからって事だろう。あいつ等のチート振りでも大気圏突入はやりたく無い事……追いかけてこない事は良い事なんだけど……そう考えると、イケル気がしなくなるな……元々、テンションだけで突っ走って来てたのに……不安が!

 でもやっぱり奴等が追いかけてこないってのは少しだけ安心には繋がる。これでシクラ達まで後ろから迫ってたら、焦りとかのせいできっと今以上に既にここが暑かった筈だ。奴等が追ってこない事をそれだけ危険--と捉えるか、危険だとしても、奴等が追ってこないと言う事実に少しホッとするか--それで心の持ちようが違うかも。

 だからここはリルフィンの言った無茶なんて始めから承知に乗っかるろう。その通りなんだよ。無茶なんて覚悟の上。寧ろこの位の無茶じゃないと、シクラ達を振り切る事なんか出来っこ無い。


「承知は良いが、それならお前の力も貸して欲しい所だな。まだ吠える事しか出来ないのか?」

「テトラ、お前……もうちょっと言い方って物が--づっづあ」


 ヤバいな、言い方をわざわざ考えてるヒマも無いかも。今は僕のイクシード3の風と、テトラの力で周囲を囲ってなんとか燃え尽きるのを防いでる状態。でもこの状態があとどれ位続くのか……そこまでの知識が無い僕達にとっては、この状態が三分か五分とか続くのはちょっと厳しい。熱が直接触れてる訳じゃないけど、既にこの暑さだ。サウナ状態。

 そしてまだまだ成層圏の外側付近を考えると、ここから更に加速して勢いがついてく筈だろう。そうなると当然摩擦で発生する熱は大きくなって、もっと強い壁が必要になるし、内部のこの温度だってまだまだ上がると考えれる。

 正直言って、既に結構頭がクラクラしてる。これ以上には二人だけの力じゃ耐えられそうにない。だけどまだ鳥居の制約は続いてるんだっけ? どこまでがあの場所だと……認識されてるんだ? 流石に効果範囲広過ぎだろ。


「吠える事以外……俺だってやりたいさ。だが……まだなんだ!」

「ふん、こっちも鳥居の影響が消えれば、力を更に強めれる。だが……それはいつに成るか。その前に神と人と召還獣とモブリの様な存在のグリルでも完成するかもな」

「シャレになってねーぞそれ」


 いや、マジで。深くこの星に入ればきっと鳥居の制約は無くなるだろう。でも今の僕達の壁がどこまで持つか……それとの戦いだ。もしも制約の影響下から逃れるよりも先に僕達が焼け焦げたら……それまでだ。


「シャレでなんて言ってないさ。まあここで自分達の運を試すしかないな。俺達には、生き残る資格があるのか。それはきっと世界の意思の様なものだろう」

「神の意思でどうにかして貰いたいな、そう言うのは……」


 本当さ、マジでヤバいぞ。流れ出る汗が一瞬で蒸発するレベルに達してきたし、黒と黄緑色の風が覆ってる筈なのに……釜の中にでも居るみたいに周りが真っ赤だ。背中のウネリを伝って僕にはダイレクトにその暑さが伝わって来てる気もする。なんかスッゲー熱い。

 だけど例え背中が燃えても、このウネリを止める訳には行かないんだ。だってウネリが止まったら、きっとその瞬間に、僕達の体は燃え尽きるだろう。デッドエンドだ。

 だから僕は、皆の為にもこの熱さと戦い続けないと行けない。皆を守りたいのなら、それこそ誰よりも長く……僕はこの苦しみに耐える必要がある。


「世界はもう十分に育ってるんだよ。俺の手などもう離れてる。だから世界が自身で選ぶんだ。残念ながら一度出て行こうとした神など無力な存在なんだよ」


 全く、テトラの奴は潔良過ぎだろ。自分達が必死に育ててた世界なんだから、もっと干渉したって、そこまで文句は言われないと思う。時にはその神の権限を思いっきり使う所が見てみたい。特に今とか! まあそもそも今は力制限されてるせいで無理なんだっけ? 

 てか成長した世界ってそもそもなんだよ。まあ設定上は二人の神が作って育てた……って成ってるから間違いないじゃないけどさ、それってマザーとかとなんか被ってね? マザーの事何じゃないのか?


「確かにハッキリ言うとマザーで間違いない……様な、だがやはり何か違う様な……そこら辺は俺も良く分かってないな」

「おい……」


 つうかなんでこいつ一人だけ涼しげに話出来てるんだ? こっちは息を吐いて吸うのも困難になってきてるんですけど……ほらサウナで良く感じる喉が焼けそうみたいなあの感じが、十倍くらい強烈になってるからな。かなりヤバい。

 でも何故かテトラの奴は普通なんだよな。まあ汗はかいてるっぽいけど、そこまで辛そうには見えない。こいつになかなか攻撃が通らなかったのって、その服の防御力だけじゃなく、元々体が頑丈だったってのあるのかも知れない。

 シスカが仕掛けてた弱体化の方は解除されてるみたいだし、今のハンデはスキルだけだもんな。肉体は結構調子が戻ってるのかも知れない。


「大丈夫か? 流石にお前達にはキツくなって来たか」


 だいぶ前から肉体的にはかなりきつかったけどな。そろそろ限界が見えて来ただけ。我慢って奴が限界を迎えてる。HPも地味に減ってってるしな……流石に地上まで持つ気がしない。てか、この勢いで地面でも海でもぶつかったら結局HPはゼロになるんじゃ無いだろうか? ほんと……絶望を目の前に掲示するのが好きな世界だよな。

 僕をどうしたいんだよLROは。


「そろそろ空に色が戻って来てる気がする。宇宙との境を越えるぞ。そう成ればきっと力が完全に戻る筈だ」

「それまで……持てば万々歳か……」


 どうだろうか? リルフィンとか毛が多いから僕よりもヤバそうだ。クリエも床で倒れてる。真っ赤に染まる壁は今にも燃え尽きそうだ。


「クリエ……生きてるよな?」

「……うん」


 クリエは子供だからこれ以上耐えられなさそうだ。折角復活して、シクラ達の魔の手から逃れて来たってのに、もう一度地上に戻す事も出来ずに終わるのか? そんなの絶対に嫌だろ。だけど誰も彼も出来る範囲で既に一杯一杯の事はやってる……これ以上何が出来るのか……僕には分からないよ。

 するとクリエがその小さな体から必死に力を絞り出す様にして体を起こす。おいおい大丈夫か? こっちにも手をかす余裕も無いんだぞ。ヨロヨロと上半身だけ起こしたクリエが僕の足下までやって来て靴に触れる。そして熱で乾いてしまった喉をなんとか鳴らしてこう言うよ。


「クリエ……だって頑張るもん。ずっと守られてばっかりで……何も出来ずに終わっちゃったけど……今度はちゃんとスオウの助けに成ってみせるの……」

「どういう事だ?」


 そう思ってるとクリエの周りに白い魔方陣が展開した。そして白いモヤモヤした物が足下から僕の体に昇って来る。


「これは……魔法か? いつのまに?」


 クリエは魔法なんて使えなかった筈だろ。いや、でも確かセラの奴がそんな片鱗があったとか言ってたかも知れないな。


「えへへ……お母さんにちょっとだけ……教わったんだ。いっぱいは出来ないけど、スオウの為に力を貸してあげる事位は……クリエにだって出来るんだからね」


 そう言って辛そうな笑顔を向けてくれるクリエ。力を分けるなんて無茶しやがって……相当辛いだろうにさ。でも助かる。その思いには必ず応えてみせるよ。


「サンキュークリエ……力がドンドン湧いて来る様だ」

「そんなに一杯……分けてないよ」

「そうなのか? でも……本当にドンドン沸き上がって来るんだよ」


 量じゃない……その気持ちが僕の心を繋いだんだ。僕はクリエから与えられた力をウネリに集約する。黄緑色の輝く風に白い光が加わって、僅かだけど熱さが和らいだ気がする。これなら……そう思った数秒後だ。僕達の中で何かが砕けた様な音がした。

 そしてその瞬間、テトラの奴が一気に動いた。


「来たぞ! 制約は破られた!! 出し惜しみする必要は無くなったぞ!」


 広がるテトラの力が熱を一気に遠ざける。中にまで浸食しようとしてた炎は追いやられ、僕の風の色とテトラの力の色が正常に見え出す。これなら--


「リルフィン、力が戻ってる筈だぞ! 立ち上がれ!!」

「言われなくても! ようやく面倒な制約からの解放か。すぅぅ~」

「ん?」


 大きく息を吸って体を反らすリルフィン。何をする気だ? って思ったけど、直ぐに察したよ。こいつがやりたがることって大抵アレだよな! 僕は咄嗟に耳を抑えようとしたけど、セラ・シルフィングを握ってる方の片手はさっきまでの熱と緊張で柄から離す事が出来なくて、ついでにもう片方は折れてた。

 だから僕はその咆哮を間近で聞く羽目になった。轟く狼の咆哮は鼓膜を破るかの様に揺らして三半規管を狂わし、脳の伝達信号を阻害して、僕と言う存在を機能停止に陥らせようとしやがった。一瞬マジで目の前が真っ暗になって、気付いた時には僕はイクシードも解除してテトラの靄の上に倒れてた。


「スオウ!」

「クリエ……ってっつ!?」


 頭に走る激痛。なんだ? 目に変な数字とかが浮かんでる様に見えるぞ。それに周囲が変な色に見える。テトラの力は黒の筈なのに青紫に見えるし、クリエの肌とか緑色になってる。なんだこれ? 気持ち悪い。

 僕は必死に瞬きを繰り返して、正常な状態に戻る様に祈る。


「おい犬、貴様なんて事をする? なんのつもりだ?」


 あれ? クリエは普通に聞こえたのに、何故かテトラの声が甲高く聞こえるぞ。ヘリウムでもすったのかアイツ? でもそんな訳ないよな……これってまさかさっきのリルフィンの咆哮のせいか? てかそれしか考えれないな。マジでなんのつもりだよ。

 自分の咆哮にどんな力があるか位分かってるだろうが。


「犬は止めろ。何のつもりも何も、咆哮はテンションが上がった時の性みたいな物だ」


 リルフィンの奴、テンションが上がったからあんな危険な咆哮を間近でかましたのか? 許せないな。これは一言僕も言ってやらないと気が済まないぞ。


「性? それで犬を止めろと? 貴様自分がやった事を分かってない様だな。流石に今のは近過ぎだ」


 そんな風にテトラは言った。僕もそのテトラの怒りは最もと思うから、続こうと立ち上がろうと、テトラの力の靄に手を付く。するとその瞬間、その手がズボっと靄を突き抜けた。


「ふえ!?」


 そしてそのままズボッと入ってズルッと外側に出た。その瞬間に見えたのは真緑の空に黒い光を放つ太陽。相当下にある雲は黄色してる。相変わらず色調がおかしい。だけど問題なのは色調よりもこの状況だな。

 どうやら既に大気圏は越えてる様だけど、雲よりも相当高い場所から落ちてるぞ。しかも僕だけ……どういう……


「スオウ待ってよ!」

「クリ--って! 何で追いかけて来る!?」


 それはやっちゃ行けない事だろ。テトラの力の中に居れば、どうにか成ったかも知れないけど、今のおかしな状態の僕じゃどうなるか分かった物じゃない。


「追いかけて来てるんじゃないよ。だってテトラの力も消えたもん!」


 そんなクリエの言葉に上を見ると、マジでリルフィンとテトラの奴も落ちて来てた。まさかさっきの近過ぎた--って言うテトラの言葉は、近過ぎたから通ってしまった--と言う事か? だからリルフィンの咆哮でスキルが一時的に解除されてしまった……と。

 本当に、本当になんて事をやってくれてるんだよリルフィンの奴は!


「おいリルフィン! どうするんだこれ!?」

「元の姿に戻れれば余裕なんだが……残念な事に消耗してる部分はそのままの様だ。俺には何も出来んな。まあこの髪でお前達を全員くるんで衝撃を和らげる事は一つの方法として提案しておこう」


 こいつ……なんかあんまり反省してないな。そう思える言葉だ。くっそ、だけど今はそんな事言ってられないな。


「テトラ、何か出来ないか?」


 僕は縋る気持ちでそう聞いた。だけど帰って来た言葉が「んあ?」ってな態度。まあただ単に聞こえなかっただけだろう。僕はそう思ってもう一度同じ事を言った。でもまた「は?」てな同じような言葉が返されるだけ……なんかちょっとカチンと来るぞ。


「そんな顔をするな。あの犬のせいでこっちの耳が聞こえないんだよ」


 なるほどそう言う事か。僕も片耳が聞こえないかも知れない。てか、それだけで僕の場合は済んでないけどな。てかちょっと被害がデカいぞ。これで性だからしょうがないとは思えない。自分で制御出来るだろ。馬鹿じゃないんだからなリルフィンは。

 テトラには言葉が届かないし、さっきの咆哮の影響も考えると靄は使えないかも知れないな。こっちもあの咆哮の時に使ってたイクシードが何故か起動出来なくなってるし……数字が刻まれてるからきっとその数字がゼロになったらまた使える様には成ると思う。でも悠長に待ってる時間は……流石にこの高さならある……のか? 


 ぐんぐん迫って来る様に見える地上と海。どっちも今の僕の視界では気持ち悪い色をしてる。こう成ったらリルフィンの奴の毛に包まれるしないのかな? でもここで手柄をやるのがちょっと癪と言うか……本当ならこんなダメージ受けずにみんなで力を合わせて無事到着--ってのが出来た筈なんだ……それなのに……リルフィンの無駄な習性のお影で苦労が増えてるんだ。

 だからちょっと気が進まない。でも……背に腹は代えられないか。


「おいリルフィン! お前のその毛、本当に信頼出来るんだろうな?」

「愚問だな。俺の毛は燃えもしないし切れもしない。召還獣を拘束するのに使っただろうが」


 確かに……そんな事もあったな。それなら大丈夫……か? 召還獣相手に大丈夫だったんだし、行けるとは思う。やってもらうしか無い。このままじゃどの道ペシャンコだ。


(だけどホント……この視界は何なんだ?)


 色がおかしく見えるってだけで違和感が半端ない。それに変な数字もまだまだ一杯だしな。線が出てその上に数字が出てるから、何か意味がありそうな気もするけど……僕にはそれを読み取る知識が無い。けどこうやって見るとLROもやっぱり作られた世界なんだなって感じる。

 普段は余りにリアルで鮮明だから、別世界に来てる気になってるけど、数字みたいなのが空中に浮かんで見えると、途端にデジタルっぽく感じるというかね。人の手が入ってる物なんだと、思わされる。


「スオウどうしたの?」

「いや、ちょっと視界がおかしくてな。でも大丈夫だよ。リルフィン、しょうがないからお前の案採用で」

「安心しろしっかり守ってやるさ」


 なんだろうこの言い知れぬ不安は……リルフィンの活躍ってあんまり無いから……かな? そう思ってるとリルフィンの白銀の毛がこちらに向かって来る。自由自在に伸ばせるのか? 便利な毛だな。そう思ってると、目の前に何かが落ちて来た様な気がした。

 僕は思わず「うわ!?」っと叫ぶ。


「避けるな。俺を信じろ」

「いや、そうじゃなくて、今何か落ちてこなかったか?」

「別に、何も見えなかったが?」


 気のせい? そう思って僕は頭上を見上げる。するとその時、沢山の瓦礫が落ちて来る様に見えた。反りが入ってる板みたいな大量の瓦礫。僕は思わず身をすくめる。


「おい! どうした?」

「いや、今瓦礫が……」

「そんなの落ちて来てないぞ?」

「スオウ大丈夫?」


 クリエにまで心配されてる。ダメだな……これはダメだ。でも確かに見えたんだけどな……けど当たった感触も何も無いってのは、やっぱり幻覚? 今の状態がおかしいから、ああいう変なのが見えるのもしょうがないのかも。

 LROにさっさとこの状態を直して欲しい物だな。そう思って僕は再び上を見る。


「え?」


 信じれない光景がそこにはあった。全てがおかしく見える瞳は、今まさに最大級におかしな物を映してる。メルヘンの色合いの世界の中で、天蓋が砕かれた空の向こう側……そこから身を乗り出して僕を見つめてる黒く大きな存在。それは頭らしき物をこちらに向けて来ると、次の瞬間一斉に、その体の至る所から目がギョロリとわき出して来た。

 僕はあまりの光景に瞬きすら出来ない。なんだ? なんだ? 僕は今何を見てる? 全然思考が働かない。すると僕の瞳がその黒い存在の頭の天辺から伸びる線を見つけた。それを辿って行くとこう示してあった---------[Mother]と。


 第四百九十七話です。

 内容はもうサブタイトル通りですね。少し時間が戻ってシクラ達から逃げる為に飛び出した後からスタートです。今回の絵はセツリ魔女っ子バージョンです。最初の方に出て来た奴ですね。


 てな訳で次回は土曜日にあげます。ではでは。

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