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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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壊れかけの冒険者

 俺はもう駄目だ……何も出来ず、何も守れず、何も救えない。一体自分に何が出来るんだろうと考えて何も浮かびはしなかった。自分には何もない何もない何もない何もない何もない何もない何もない何もない何もない何もない何もない何もない何もない何もない何もない何もない何もない何もない何もない何もない何もない何もない……だけどその時、残っていた与えられた力を見つけた。証明しようと思った。

 それですべてが終わる。目の前にちょうどいい相手も来た事だしな。

(セツリ! 駄目だ! 行くなぁぁぁぁ!)


 その叫びは結局出てはこなかった。俺は何も出来ずに消え去る彼女を見つめる事しか出来なかったんだ。いや……実際には俺はそれを見てもいなかった。いられなかった。

 あの時、どちらを選択するか……その答えは同じだった。時間制限があるアイリと、比較的友好的に接せられるセツリ。それだけでどちらを選ぶかは明白だ。きっとセツリなら連れ去られても大丈夫だろうという思いが心に浮かんだ。

 それに黒く塗りつぶされる様になっていくアイリを見てるのは辛すぎだ。だから俺は安心したんだ。あの時……セツリがその身をす犠牲にする決断をしたとき……俺は心の中でホッとした。

 だから最後にセツリをみれなかった。見る資格が無かった。俺は自分を情けないと思った……だけどここにはもう、俺を避難する奴も罵倒する奴も、ましてや励ます奴も残っちゃいなかった。

 ただちっぽけな、アリンコの様な自分が地面の数十センチの盛り上がりを作って震えているという事実だけが土の味を噛みしめて伝わってくるだけだ。

 本当にそれは……きっとどうしようもなく情けない姿だったろう。俺は何で言えなかったんだ。


「必ず助けるから、アイリの為に犠牲になってくれ」


 ――てさ。そしたらもっと何かこの気持ちは違ったのかも知れない。セツリを犠牲にするのは変わらないけど、そこには目に見えない信頼関係があったはずだ。

 彼女は信じて同じようにしてくれただろう。だけどきっと……そうしてれば表情は変わったと思う。もっと強く信じれた筈だ。でも、俺は何も言えなかった。

 それがきっと本心だったからだ。犠牲にするだけじゃなく誰かも救うことも俺はそれで出来た筈だった。だけど俺が選んだのは安易な犠牲だった。誰かがそうしてくれるのを待って、期待して、胸をなで下ろした。

 自分の大切な物の為に二つを犠牲にした。一つは勿論、あんな事を言わせたセツリだ。結局彼女はアイリの為にその身を捧げた。

 そしてもう一つが、そんな彼女をアイツから任された信頼だ。スオウは俺なら大丈夫と判断した筈だった。でも結果はこの有様。

 言い訳なんて全てが虚しく……胸を張れる事も一つもない。結局俺は、負けたんだ。その言葉が目の前で回ってた。


「ク~、クック~」


 弱々しい声が憤りを覚えかけていた俺に届く。首を回してそこを見ると一匹の白いフクロウの姿があった。それはクーだ。

 同じようにぐったりしたクーはそれでも俺に何かを伝えようとしている。


「ああ……そうだな」


 体を茶色に染めながらクーは短い足である場所を目指していた。その先にはカーテナから垂れる黒い物に飲み込まれそうなアイリの姿。

 そうだ……せめて、アイリをちゃんと救わなきゃいけない。その思いをクーは思い出させてくれた。

 折れた心を拙い決意で裁縫して、俺もクーを見習って再び地面を這った。その時俺は気付いた。自分の瞳から流れ出る物を。

 それは熱くて……今のどうにか繋げてる俺の中の熱を全て持っていきそうなほどだった。だから俺はそれを認めない。歯を食いしばってこれ以上流れでないようにした。

 でも今度は口の中に砂利っとした音が広がって土の味を伝えてくるんだ。それは分かりやすすぎる屈辱と敗北の味。


「――かは――ごはっ――ぐえっ……はぁはぁ」


 喉をせり上がって来るような吐き気が襲った。体が勝手にそれを忘れさせようとしたのかも知れない。無かったことにするために口の中を別の味で満たしたんだ。

 だけどそれはもっとイヤな味だった。これはゲームだから別に食った物が出てきた訳じゃない。地面に広がったのは見た目は大量の涎だ。

 だけどそれは酸っぱくて……口の中にひたすら不快感を残す物だった。胃液までLROは再現してくれたらしい。

 立ち止まりそうになる。こんな自分じゃ無くてもと、心のどこかの自分が囁く。お姫様を助け出すナイトにはなれない事を俺は知ってるから。


「くー! くっくー!」


 だけどまたまた響くクーの声。今度は本当に俺を呼んでるかの様だった。情けない顔を上げて前を見ると、既にアイリまでたどり着いたクーが必死に立ち上がろうとしていた。

 アイリの体を使って拙い動作で……でも必死にクーは立ち上がろうとしていたんだ。でも傷のせいか途中で何度も何度もずり落ちてしまう。

 地面にポテンと倒れてしまう。でも、クーはそれでも諦めなかった。俺は自然と手が前に出ていた。地面を力強く握りしめお荷物になった体を引っ張っては、再び腕を前に伸ばす。その作業の繰り返し。

 俺もクーも何度も同じ事を繰り返した。するとついにクーはその白い体を持ち上げ、力強く羽を広げて見せた。そして俺も気付く。いつの間にかアイリが目の前に居ることを。

 どうやら俺は、クーに引っ張られたみたいだ。弱く、情けない俺をきっと見かねたんだろう。


「ありがとう、クー」


 もうそれしか言えない。クーは何の事やら? みたいな感じで首を捻ってるけど、間違いなく俺がここまでこれたのはクーのおかげだ。そしてセツリのおかげ。

 あの、何も出来ないお姫様が勇気と決意を持って選択したからアイリは今、ここに居る。俺の手が届くこの場所に。黒く落ちかけているとしても、触れたら分かる感触があった。

 情けなさすぎる自分……ふがいない自分……そのせいで間違った。いつも俺は、それに気付くのが遅いんだ。もっと素直に行動できたらいいのに……もっと素直に感情を出せたらいいのにな……スオウみたいにさ。

 アイツは思いついて行動するまでがとてつもなく早い。脳と体が直結してる。後悔をする前に動けがアイツだ。そして俺は後悔をする位なら動くなを選択してしまう。だから俺は気付いたときには遅いんだ。

 それがどれだけ大切でも、いつの間にか手が届かない場所に行っている。阻まれる。そして無様に足掻いた時には遅くて……結局後悔するんだ。

 何度、同じ事を繰り返すんだろう……何度繰り返せば同じ過ちをしないように人はなれるのだろうか。後悔は今も俺の胸を裂き、皮を剥いで心に痛みを刻む。それは決して忘れられない痛み。そう昔も思った筈の痛み。

 俺は上半身だけでも力付くで持ち上げた。そして体が重なる様になりながらも、アイリが握るカーテナへと腕を伸ばす。そして黒い物を吹き出し続けるカーテナをその腕から強引に引き剥がした。

 すると瞬間、途端に黒い影か墨の様な物は空気に溶ける様に消え去った。現れたのは変わりないアイリの姿だ。


「アイ……リ」


 消え入りそうな声で囁いた彼女の名前。それ以上の声が俺には出なかった。目を開かない彼女を抱き寄せて、その頭に顔を埋める。

 そして何度も名前を呼んだ。小さな声で……沁み入る様に。このLROは頭だけは絶対に変わらない自分だけのものだから。そこだけは変えようがない唯一の場所だから、一番近い場所で呼び続けた。

 届いて欲しい……目を開けて欲しい……許してくれとは言わない……でもそれだけで自分の情けない行いに意味を持たせたかったのかも知れない。

 懺悔だったのかも。犠牲にしたセツリの為にも、信頼を裏切ったスオウの為にも、俺はアイリに目を開けて欲しかった。大丈夫……その言葉を聞ければ少しは救いになるとでも思った。

 でもそんな思いの言葉は届くはずも無かったんだ。結局は俺はアイリを使って逃げ道を作ろうとしてる。何も変わらないまま、俺はまた逃げようとしていた。

 アイリが小さく息を吐いては吸う音だけが俺の耳には届く。苦しむ様子なんて微塵もない、本当に安らかな吐息。きっと俺は今、世界を自分とアイリだけで構成していた。

 ヘタレな俺には図々しい考え方。だからそんな時間さえ直ぐに終わりを迎える。世界が全てを俺から奪っていく。そんな音が迫っていたんだ。


「クー! クー!」


 ようやく聞こえてきたそんなクーの警告音。実はずっと発してたのかもしれないが偽りの安らぎと懺悔を繰り返してた俺は気付かなかった。

 そして続いて届いたのは大量の足音。余りにも多すぎて地響きかと思った。もしかしたらこれもずっと前から聞こえてたのかも知れない。

 そして黒甲冑の軍が俺とアイリを囲んだ。警告音が頭に響く。イヤな奴が近づいてくる感覚を本能的でも悟ったみたいだ。

 そしてまさにその通りに奴は現れる。囲んだ軍が綺麗に割れてその先から白い騎士服に身を包んだ奴らが見て取れた。


(親衛隊……)


 それはガイエンが集めてた直属の部隊。アイリを警護する役目を担うとかなんとか大義名分を掲げた奴の犬。そんな奴らが軍の中を歩いて、俺の斜め左右に並んだ。

 そして最後にガイエンがその身を表して俺の所まで歩んでくる。そして周りを何気に見回してこう言った。


「これはこれは、随分と派手に暴れ回ったなアギト。軍もかなりやられたようだ。流石だな貴様は」

「――っ!!」


 俺はガイエンを睨み据えた。こいつの事だ、何があったかなんて知らない訳がない。それなのにこんな事を……いや、これさえも奴は利用しようとしてる。

 ここであったことは軍の末端までは伝わってないらしい。カーテナに寄って倒された彼らがそんな直ぐにまともに話せるようなるとは思えないし、それさえもガイエンは押しつぶすだろう。

 俺は奴に寄って犯罪者に仕立てられた。これだけの事が出来る事がないのに……無駄な栄光がそれを可能にさせるんじゃないかという疑いを軍に蔓延させている。

「返して貰おうか、我らが姫を。犯罪者と成り下がったお前に深く絶望するかも知れないが……そこは心配するな。私が新たなる騎士として彼女を守っていこう」

 掲げられる長剣。そしてその言葉の後に沸き上がった轟く様な歓喜。それらは全てガイエンに向けられていた。


「いや、今までも私が守っていたんだったな」


 いびつにつり上がった口元。そこには高尚な顔なんてなかった。だけど誰も気付くことはない。軍の連中は親衛隊によって視界を遮られてるし、何よりガイエンは一番前にいる。

 俺にとっての皮肉の言葉を紡いだガイエンは心底楽しそうだった。確かにもう、詰んだ状態なのかも知れない。

 セツリがその身を差し出してまで守ったアイリはあっけなくもう一つの敵の手に落ちるのかも知れない。俺は自分には何も出来ないと悟っていた。

 周りはもう何一つ、俺に期待はしてないだろう。犯罪者に落ちた俺を、周りは新たな英雄が切り伏せるのを楽しみにしてる。でも、それでいいと思えた。

 だけどそれは勿論、アイリを潔く渡すと言う意味じゃない。期待されない自分でいいと言うことだ。

 お姫様の騎士も始まりの騎士も勝手に付いてきた栄光も……そんな全部が剥がれ落ちて、ちっぽけな自分が晒されてただのアギトになっている。


「大人しく渡せアギト。お前の居場所はここにはない。今度こそしっかりと永久追放してやる。気まぐれで戻ってこれないようにな。その方がアイリ様も幸せだ」


 掲げた長剣を俺の眼前に突き出すガイエン。威嚇……なんかじゃないそれは警告・脅迫の類だ。後ろ盾は国という大きな力。対する俺は我が身一つ。

 何も守れず、打ちひしがれかけているエルフ一匹だ。けれど諦めきれない余った力がこの身にある……この場合はどうすれば良いんだろうか?

 俺は右手を振ってウインドウを広げた。抱きしめていたアイリを粗末な地面に優しく寝かせる。勿論少し後ろに、巻き込まれ無いようにだ。


「この後に及んでまだやる気か? 無駄な事だ。そこまで耄碌したかアギト」


 呆れた様な声を出しながらも顔には爛々とそれを受け取る用意がガイエンには出来ていた。こいつは俺を倒したいんだ。こんな俺をさ・・・


「くっく……ははははっははははははあ!!」


 背中を向けたまま俺は大いに高笑った。きっと俺は壊れたんだとどこかで自覚していた。そしてアイテム欄の奥から二つの装備を引っ張り出す。


「良い選択だ」


 その装備を見たガイエンがそう呟く。そうだろうな。こいつならそういうと思った。俺は右手に体を上回るほどの大剣を抱え、左手には輝く大きな盾を握っている。

 俺は立ち上がりガイエンが向けている長剣と自分の刃を強引にぶつけた。辺りに響く金属同士の悲鳴の様な高鳴り。だけど俺たちはどちらも笑っていた。

 奴の悪趣味な顔を言えない様な顔に俺もきっとなっている。だって俺は壊れてるから。奴と同じかそれ以下にまで落ちようとしてる。

 それを自分で選択した。


「お前が正義が悪かなんてもうどうでも良い……ただ、俺の証明につき合えよ!」

「ふん、何をそんなに証明したいのか知らないがな。別にやぶさかではない。私もただ、貴様を追い出

すのはつまらんと思ってたところだ!」


 二つの言葉がぶつかり合う。その様子に周りはざわめいて武器を構えだした。別にそれでも俺は構わない。ただ俺は目の前のこいつを……だけどそれをガイエンは沈める。


「やめろ! 武器を引け! こいつとは私一人で決着を付ける。騎士の名の下に我ガイエンは貴様に決闘を申し込もう!」

「なっ! ガイエン様それは!」


 軍の連中も相当ざわめいてるけど、親衛隊の方が何故か動揺している。こちらにとってはどうでも良いけど、目の前のこいつにこだわりがあるのは俺も一緒だ。そして決闘の申し出があったことを告げる内容がウインドウに表示された。


 【プレイヤーガイエンから決闘の申し出がありました。ルールはパターンBを適応。先にHPが七十五パーセント未満なった方が敗者となります。装備の交換は自由、アイテムの使用は禁止です。スキルに制限は有りません。

 この条件が呑めない場合はこちらから条件を提示する事も可能です。その場合は交渉を選択してください。

 この条件で決闘を受けますか? YES・NO】


 何とも手際の良い奴だ。俺はそう思った。前に佇むガイエンを見据えると挑発的に唇が動く。


「逃げるかアギト? お前はそれが得意だからな。私が追い出した? 引き裂いた? 全てはお前の被害妄想だ。逃げたのは貴様で、逃げきれなかったのも貴様だ。

 ここらで絶つとしようじゃないか。わざわざ対等にしたんだ。これでも逃げ出すか?」

「くっくくく、はははははははははは! 逃げ出す? もう俺にはそんな場所どこにもねーよ。全部無くした……いいや、これから無くすんだ」


 俺は決闘を受諾した。狂気が混じった様な笑い声を響かせてそれが望む事だ。言ったようにもう、逃げる場所なんてない。

 どうやってあそこに戻れというんだ。セツリを守れもしなかった自分がどうやってスオウの前に行けるだろうか。決闘フィールドが形成される。俺たちの立つ位置の中心から円上にそれは広がる。それは動けないアイリやクーを守ってくれるだろう。決闘対象者以外にはその攻撃の効果が届かない様になるフィールドだ。


『決闘』――それはLROにおける対一戦闘の形式で、ライバルが腕を競い有ったりするときによく使われる。後は時たまある、バトル大会とか……喧嘩とかレアアイテムの争奪が泥沼化した時とかも決闘の出番だ。

 条件を提示して、双方の合意の元に行われる決闘はとても格式高い物としてこの国では扱われてる。特に騎士同士の決闘は花の行事並だ。

 そして騎士同士の決闘はお遊びでは行われない。それは正真正銘の真剣勝負。お互いの誇りをかけた物なんだ。


 だけど、今の俺にそんな誇りはない。ただあるのは――


「お前は気に入らなかったんだよ! ガイエン!」

「奇遇だな! 私も心底貴様が嫌いだったさ! アギト!」


【デュエルスタート】その文字とラッパの様な音が吹き荒れると同時に俺たちは動いた。そんな怒号と共に。一回目の武器の撃ち合いで空気は震え、二回目の武器の重なりで大気が弾けた。

 俺たちはどちらも手の内を知っている。得手不得手までをも知り尽くしてる。特定の色のエフェクトを武器が纏えば何が次に来るかは予想が付く。

 ガイエンは俺の大剣と盾の二段構えの攻めを焦らず受け流しその隙間に長剣を滑り込ませて来る。けれど俺は奴の長剣から放たれる剣技をそこまでの動作で絞り込める。

 そしたら盾で防ぎ、あるいは刹那でどう動くか判断して大剣を振るう。

 三回目の交錯でようやく俺は奴の体を武器ごと弾く。武器で戦うと言うよりも盤上で推理戦でもやってるかの様な感覚だった。ガイエンの一挙一動を見てるとあの頃の光景が重なるように頭に鮮明に奴の技を伝えてくれる。


「こんなもんか! こんな物かよガイエン! それなら俺だってやれるじゃねーかよ! そんなわけねーだろ!」


 よくわからない事を叫んでると自覚はあった。だけど止まらない。茹だったように頭は色々な物を流し込んでくるんだ。いや、吐き出してるのかも知れない。

 そして弾かれたガイエンは一度唾を吐き出し長剣をこちらに向けて言い放つ。その顔をいつもの何十倍にも歪めて。


「こんなもん……だと? それはこちらの台詞だ! 貴様はこんな物か! そんな軽い剣をいつから握った!」


 再び辺りに連続した金属のぶつかる音と、同時に弾ける様々なエフェクトが浮かんだ。俺たちは少しずつ、でも確実に相手のHPを削っていく。本当に同じくらいのペースでだ。


「軽いさ! 俺の剣はいつだって軽かった! お前は黒過ぎんだよ! 真っ黒な野望を剣から滲みださせやがって、その野望も全部、ここで打ち砕くぞ! それは、俺には出来る事かあぁぁぁ!」


 ガイエンの放った十二連撃を強引に俺は盾を付きだして防ぎ、そして大剣を真っ直ぐに突き刺す。それを体を回転させて剣に沿う様に交わした奴はその勢いのまま俺の側面を切り捨てに狙う。

 そしてぶつかる長剣と盾。纏った黄色いエフェクトは本物じゃない盾をその場に出現させてくれたんだ。そして突きだしていた剣の腹でガイエンを払った。


「「ガイエン様!」」


 周りからのそんな声が耳をつんざく様に聞こえる。暗躍してきたお前もこんな所で終わりかと思った。だけど地面を転がったガイエンは酷く不適な笑みを称えていた。


「フハ、フハハハハッハハ! ……つまらんな。つまらん奴に貴様は成り果てた様だアギト。そんなに証明したいのなら教えてやろう!」


 奴は何の策も労せずままに俺に向かってきた。ただそこには倒されるなんて思ってもない顔を張り付けて。俺は首を取るつもりで剣を振る。その顔に一瞬何かを感じた。それは恐怖かも知れないし、憤りだったかも知れない。

 避けようともしないガイエンは直前で長剣を無造作に構えてそれを受けた。すると当然、長剣は音を放って折れ去った。

 だけどガイエンは飛ばされた先で何かを拾って立ち上がる。そして周囲に響く悲鳴の様な声。大量の子供の叫びの様だ。そしてその中でガイエンは呟く。


「貴様は全てを無くす。まさにその通りだ。何も守れもせず、救えもしない奴より、私の野望は高尚だ。聞こえるだろう我を認める祝福の叫びが!」

「何が祝福だ! お前はここまで……俺はまだやれるじゃないか!」


 俺は飛び出した。最後の一撃の為に。だけど奴は腕を掲げて言い放つ。その手には悲鳴を発する謎の指輪がある。


「リア・ファル、これは王を選定する。その意味が分かるか貴様に? だらけた貴様のおかげだよアギトォォ!」


 ガイエンが拾い上げた物を左腕で突きだした。それは王剣カーテナ。アルテミナスを統べる力が今、ガイエンに握られた。

第四十九話です。

 いつも通り遅くなりました。なんだかもう当たり前すぎてこれが普通? みたいな。まあ、実際はこれでもきついんですけど。まあ、なんとかやって行きたいと思います。見捨てられない限りは頑張ります。

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