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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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選択権の再配

「終わりだな。両国とも、灰に成れ」


 その言葉が死刑宣告。テトラはどこかに居る暗黒大陸の軍勢にアルテミナスと人の国への侵攻を命じる気だ。アイリが参戦した事で一分というタイムリミットは無駄だと判断したんだろう。だけどそんな事をさせる訳には!

 でもあいつがやる事は思うだけ。妨害のしようがない。今まではこっちに意識を向けさせてたり、色々と邪魔を入れてた訳だけど、一番大きかったのはまだアイツがそれほど本気じゃなかったって事なんだよね。

 その気になれば思う事なんか一瞬だ。そしてそろそろ本当にウザくなって来ただろうしな。今度ばかりは本気で実行するだろう。これ以上の反乱を抑える為にも必要な事。邪神テトラが遂に無慈悲な一面を見せる時が来た。随分引っ張ったけど、今度ばかりはその肩書きに相応しい行為をやる。

 アイツはかつてこの世界を壊そうとしたって伝えられてて、そしてそれは後一歩まで迫ったらしい。それなら、二つの国を潰す事なんか、出来ない--訳ない。


「邪神待て!!」

「これ以上何を待つ必要がある? 終わりだ」


 そう言ってテトラはその目を閉じる。僕とアギトは地面を蹴って飛び出した。目指すは勿論テトラ。だけど間に合うかなんか実際分からない。けどこのまま手を拱いて何もしないなんて訳にはいかない。


「「させるーーん?」」


 目を閉じてたテトラが何かに驚く様に目を開いた。まあ正確にはそんな感じに見えたってだけ。もしかしたらもう命令は終わったのかも知れない。でも何となくそんな風には見えない。流石に早すぎる様な--だけど僕達は止まれないからそのままテトラに突っ込むよ。どっちにしたってここで止まる理由は無い!

 僕は風を使ってるからまだ少しは空中で動きを変えて変則的な攻撃が出来る。だけどアギトは最初からスキルを使って槍に炎を纏わせての一点突きの状態。こっちが合わせて同時攻撃に持っていく!

 するテトラの奴は僕達から目を離し、あたりを見回してる。余裕か? 上等だ。僕とアギトはそのままテトラとの距離をつめる。他に意識が向いてるのなら! そう思ってた訳だけど、テトラはその手のひらに力を集めてた。

 そしてそれは小さな盾の役割でもしてたのか、テトラの奴は手のひらで僕達の攻撃を受けて、そのまま受け流す。僕とアギトは二人とも奴の後方にそのまま流された。アイツこんな事を出来たのか。あの力、どれだけ万能なんだよ。移動にも攻撃にも防御にもと……制限がない。しかも無限に出せるとか流石は神だな。

 厄介すぎる。すると地面に何か光ってる場所が見えた。なんだあれ? 誰かが詠唱でもしてるのか? でも結構離れてるな……僕を狙ってとかじゃないよな? すると背後からテトラの声が聞こえて来た。


「どうやら裏切ったのはエルフだけじゃないようだな」

「何?」


 それってどういう事だ? 


「貴様達は知らんか。だろうな。なら知ってそうな奴に聞くとしよう!」


 そう言ってテトラはまず空中で自由の効かないアギトをたたき落とす。なんとかガードはした様だけど、勢いを増してアギトは地面に落ちた。そして次に僕だ。薄く手のひらに表してた力を今度は拳にのせての攻撃。それはいつもの形だけど、踏ん張りが利かない今は一撃でも食らうと速攻落とされるだろう。

 だから最初の一撃を風を操りかわし、逆にこっちの攻撃を仕掛ける。だけどテトラは素早く拳の力を切り替える事で受け流したセラ・シルフィングの刀身の動きを阻害しない様に掴んで、そのまま地面に僕を投げ飛ばす。


「うおおあああ--くっ!」


 地面にぶつかる寸前に背中のウネリを地面に先につけて勢いを殺す。地面にゆっくりと付くと、アギトがヨロヨロと立ち上がってた。


「大丈夫か?」

「なんとかな」


 流石僕の薄い防具とは違うな。まあフルアーマーも軽装も一長一短だと思うけど。時々羨ましくは感じるよね。防具は命を守ってくれる最後の砦だ。出来うるならば最高の防具で身を覆いたいと、誰よりも僕は思うよ。

 でもそうするときっと僕は誰にも勝てなくなってしまう。それじゃあ逃げてる事と変わらない。命を守る鎧は必要だ。だけどそれに頼りすぎたら、僕は自分の唯一の武器を殺す事になる。だから僕には出来ない選択肢。


「さて……やってくれたなエルフの代表」


 テトラの奴が僕達とアイリ達、そしてオッサン達の丁度中心部分に降りて来た。やってくれたな? ってさっき言ってた事か。確かに何かをやれるとしたらアイリくらいか。何をしたんだ?


「私じゃない。だけど私達がこの行動を取るのに必要不可欠な事は提案しました。出来るかどうかは分かりませんでしたけど、やはり魔法の国の代表ですね。間に合ってくれた。流石です」


 アイリが何かを提案して魔法の国の代表って事はノエインがそれをやったって事か? でもだから何を? まあ予想としては、テトラの外部への通信妨害--って所かな。ようはアイリがここまで出て来れたのも、ノーヴィスの協力を取り付けれたからか。


「次々と滅ぼす場所が増えるな。こんな結界など、その気になれば壊す事など簡単だ」

「分かってますよ。貴方なら簡単でしょう。ですが、それを私達がさせません!」


 アイリのその宣言に僕達は頷くよ。確かにテトラならこの結界を壊せる。そんなのきっと簡単だろう。それが行われれば、アルテミナスを含める三つの国が灰になる。それをさせない為にも、僕達はあのテトラを相手取り続けなきゃ行けない。思ったんだけど、さっき空中で見た地上の光は、もしかしたらこの結界を作る構成要素だったのかもね。

 ノエインにミセス・アンダーソンとかが人知れずに動いててくれたんだろう。ある意味で一番テトラ達に組入ろうとしてたオッサン達がこっちに気を取られてたのも大きいのかもね。監視の目が緩くなったからこそ、ノエイン達はこの準備を進めれた。

 まあウンディーネもスレイプルもテトラ側だけど、ウンディーネはさっきまでの水上戦でゴタゴタしてたし、スレイプルは……多分遠かったのが幸いしたのかな? それにそんなにその二国は人員が居る訳でもないしね。

 こっちが注目されてる隙をアイリは上手く使った訳か。自分たちが参戦するには、国という人質は重すぎる。だからまずはそれを取り去る方法を考えたのか。一体いつからこんな事を……


「ずっとですよ。私だってスオウ君の事は日鞠ちゃんに頼まれてますからね。見捨てたままでなんか居られません。アギトを先行させたのも時間稼ぎですよ」

「アイリ、お前そう言う事は事前にだな」

「ごめんなさい。でも上手く行く保証もなかったですし、それに感づかれる危険性は排除しておかないと。アギトは正直者ですから」


 要は顔に出やすいと。さすがアイリ、よくわかってる。まあアギトは嘘をつくのが下手っていうか、不器用というか結構分かりやすい所あるからな。体がデカい分心が小さいというか……いや、デカいから細かい気配りが苦手なのか? ボロを零しやすい--みたいな。

 まあ悪い事じゃないんだけどね。アギトの裏表無い性格とか、その体にあった積極性とか大事な要素だったよ。でも今回はボロ一つで国が終わるかも知れないから、アイリはより用心したって事だろう。


「まあ良いじゃんアギト。おかげで最大の人質はなくなったんだ。これでお前だって思いっきり戦えるだろ?」

「……油断するなよスオウ。結界を壊されればそれまでなんだ」


 僕達は空中に居るテトラを見上げる。黒い靄がその全身から沸き上がって来てるな。一撃でこの結界を破壊する気なのかも。させてたまるか。ようやく後顧の憂いなくアギトやアイリ、それにシルクちゃんや引いてはテッケンさんだってこれで自国の心配はしなくて良いんだ。

 それだけ重要な結界。通信妨害をしてるだけだけど、それが国を救う事に繋がってるんだからね。僕は目の前のオッサンや周りを囲んでる怪しげな人の軍勢に目を向ける。


「おいお前等、まだやる気なのか? 国という人質はなくなった。このままテトラ側に付いたって、お前達の国も今やテトラには敵って認識されてる。それでも僕達の邪魔をするのか?」


 既にこの行為に意味は無いんじゃないか? どっちに付いた方が良いのか……それをもう一度考え直す時じゃないか? するとシルクちゃんが前に出て来るよ。


「戦いましょう! 今国を守るってことは、私達が潰し合う事じゃない筈です。そういう風にアイリ様が、そして教皇様達が変えてくれたんです! 私を殺して、本当にそれで邪神が許してくれるんですか? そもそも、それはもう遅いって言われた筈です。

 国の為に立ち向かうべき相手は今は誰ですか!?」

「それは……いや、待て少し考えさせろ」


 そう言ってオッサンは自分の国の利益とか確率とかを頭で巡らせてるんだろう。だけどそこにアイリがこう言うよ。


「私は同じ代表として、シルクちゃんの言葉に賛成です。彼女の言葉のどこが間違ってますか?」

「お前……これも狙ってたな」

「勿論、私達が邪神に付く事に成ったのはローレちゃんの話術と、そして邪神の力に恐れを成したから。一国では勝てないんですよ。だからどこかが付けば身を守る為にも賛同するしかない。それに家は弱ってましたしね。

 そもそも国の人質は後付けだったんですよね。スオウ君から仲間を引きはがす為にローレ様が使った脅し。だけど邪神はそれすらも可能にする力を有してる。私達は益々縛られた。最初は平和が簡単に手に入るってだけの双方の不干渉条約だった筈なのに、それは違ってたんですよね。

 だけど今、私達を縛ってた最大の人質は解放されました。この瞬間、私達全ての国が選択権を取り戻した筈です!」


 選択権……自分たちの未来を決めるその重さは普通の一プレイヤーのそれとはきっとこの人達は違う。それぞれの代表は国を背負ってるんだからな。その選択は国の未来。しかも今それは最悪の事態の滅亡が選択次第で迫ってくるんだ。

 本当なら長い長い会議でも必要な程の議題だよ。オッサンには途方も無い物がその肩に乗っかってる。だけど、ここで決めて貰わないと行けない事だ。もう一度……今この場で!


「選択なんてない。滅び--それが貴様達の結末だ」


 テトラの声がこの場に響く。奴の黒い力が中央で黒い玉に収束してた。今までよく見た形だな。だけどデカかったり小さかったりした今までと比べれば普通か? いや、あの程度で十分壊せると判断したのかも。

 そもそもあいつの場合、どんな大きさでもその攻撃はえげつないからな。させる訳には行かない!! 僕は誰よりも早く地面を蹴る。目指すはテトラな訳だけど、結構高いからな。近づいてジャンプしないと届きそうにない。その為には目の前のオッサンとイケメンさんの場所を通らないと行けない訳だけど……行けるか?


「代表!?」

「くっ--全員動くな!!」


 そう言ってオッサンはそのバカでかい剣を大きく構える。それがこいつの選択か? すると後方からアイリの声が更に届く。


「私達が邪神とかわした契約は天罰だけ。もうそれさえ受け止めれば、恐れることなんか何も無い筈です! 私は身を持ってその罰を受け入れます。それで、自分の思いを通して国を守れるのなら安い筈です!

 だって私達代表は、それぞれの国の為に居るんですから!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお、乗れスオウ!!」


 振られる大剣が低い位置から迫って来る。乗れって--そう言う事か? 僕はオッサンの言葉に従って剣の背に飛び乗った。


「フンヌウウウウウウウウウウウウウ!」


 オッサンの踏ん張る声と共に、勢いを増した大剣は上方に振りかぶられた。僕はタイミングを見計らって大剣の勢いを利用して一気にテトラに迫る。


「させるかああああああああああああああああ!!」


 ぶつかり際に三連撃を叩き込む。万全になったイクシード3の剣戟にシルクちゃんの加速の魔法だ。いつもよりも更に速い! テトラの黒い髪が僅かに空中に流れる。そして次の瞬間、生成されてた黒い玉も弾ける。三連撃の一撃で切り裂いておいた。


「つくづく厄介な速さだなお前は」

「それだけが取り柄だからな!!」


 僕はテトラの防御を押し切って、強引に攻め立てる。はっきり言って、いつまでも空中に居られると厄介なんだよ。届くけど、飛べる訳じゃないからな! 強引にでも地上に引きずり降ろすんだ! 僕はテトラの防御の隙を突いて攻撃を叩き込む。流石にこの距離なら手数で圧倒出来る!

 それだけの速さがある。だけどテトラの奴は多少の傷を割り切って攻撃に転じて来る。膨大なHPとどんな攻撃にだってほとんど怯まないその脅威の耐性があるからこその強引な力押しか。流石のイクシード3でも空中じゃ押しが弱い。

 防御だけに専念してくれれば押し続けられるけど、強引にそのえげつない攻撃を叩き込もうとしてくるんだから反応しない訳には行かない。こっちは向こうの攻撃まともに数発食らえば昇天しそうな程度だからな。

 この格差、ホント泣きたくなる。でも当たらなければ良い事に変わりはない。空中でだってウネリを上手く使えば移動くらい出来る。僕はテトラの攻撃をかわしつつ更に攻撃を続ける。


「そろそろぶっ飛べ!!」


 腕を強引に弾いて、がら空きになった懐にゼロ距離から二つの剣で同時に二つの風の刃を放つ。テトラに当たり大きく膨れ上がる風の刃と共にテトラは地面に迫る。だけど途中で勢いが殺されてく? そして黒い力に膨れた風が拡散された。


「残念だったな」

「「「いや、十分だ!!!」」」


 その瞬間テトラに三方から迫るのはオッサンにアギト、そしてイケメンさんの三人だ。重量級の攻撃力を持つであろう三人がかなり地面に近づいたテトラに向かってそれぞれの攻撃を繰り出す。三人の攻撃が中央で重なり合い、大きな爆発となった。周囲に爆煙が広がってく。


「どうなった?」


 荒い息を吐きながら僕は地面に着地して状況を見極めようとする。直撃した筈だ。爆煙が周囲に流れていくと、同じ場所に三人の姿が確認出来る。そしてその更に向こうにテトラが倒れてるのが見えた。ようやく僕達はアイツを地面にたたき落とす事が出来たみたいだな。

 この光景に周囲のプレイヤー達は騒然としてる。てか、付いて来てるのかな? 色々と状況が動いて、立場も情勢も変わって来て、現状を理解してない人も多そうだ。だけど説明してる暇なんてないんだ。

 テトラを倒した訳じゃない。僕達はこれだけの協力者を得てようやく、アイツにまともにダメージを与えたってだけだ。本番はまだまだこれから。


「なかなかだったな。だが同時よりもチェーンボーナスを狙った方が良かったか?」

「代表、欲を欠いては行けませんよ。ギリギリでも奴はガードしてました。一人一人行ってたのでは崩せなかったかもしれません」

「確かにその通りだよ。奴を甘く見るなオッサン」


 案外息合ってるのかなあの三人は? そう思ってると、後ろからアイリ達が近づいて来る。そして侍従隊の面々が抱えてるのは、どうやらリルフィンにテッケンさんみたいだ。回収してきてくれたのか。


「シルクちゃん」

「はい、任せてください!」


 シルクちゃんは詠唱を開始する。これで三人とも復活出来るだろう。彼女は優秀だからね。僕は空に続く道を見上げるよ。もう流石にノウイの姿を確認する事は出来ない。一体どこまで昇ったのだろう?

 そもそもどこまで昇ればいいんだろうか? 分からないけど、きっと金魂水を使う場所はある筈だよな。そう言えば……日鞠は上手くやったのだろうか? こっちに完全に落ちてからメールのやり取りが一切出来ないからな。リアルの方の状況が分からないんだよな。だけどアイツがミスる光景なんて想像も出来ないんだ。

 きっと上手くやってるだろう。でも確かダイブのタイミングとかはこっち指示だった様な……どうするか? まさかこんな弊害が出るとは思ってなかったからな……いや、方法はあるか。別に二人に伝われば良いんだ。それは僕じゃなくてもいい。

 今の僕にはまた、仲間が集って来てくれてる。


「アギ--」

「煩わしい。数で来れば勝てるとでも思ってるのか?」


 僕がアギトに声を掛けようとしたタイミングで丁度テトラの声が被って来た。くっそ、喋りだすタイミングくらい考えろよな。そんな文句でも言ってやりたい--なんて一瞬だけ脳裏をよぎったけど、テトラの方から寒気の様な空気が流れて来て、思わず唾を飲み込んだ。


(なんだ? なんか寒いぞ)


 そんな季節じゃない筈だけど--ヒンヤリとして張りつめた様な空気が広がって行ってる様な……


「やらせるか! 畳み掛けるぞ! もう俺達も後戻り出来ないんだ。出し惜しみなどせん!!」


 オッサンのその言葉に怪しいアイテムを持ってる奴等がさっき僕達にした様に、テトラの周囲を囲む。そしてその伸びてるチューブを自身の腕に突き刺した。おいおい、マジで何なんだあれ? するとそのチューブの中を何かが流れてく。そして構える盾みたいなのの中央にある鉱石が光を帯びていき、歯車が動き出す。

 そしてその盾はどんどんとその大きさを広げてく。何も無かった所から新たな歯車が出現してはそれが連結されて行くんだ。地面に付き、近くの同じ様に伸びて来た歯車と更に繋がって、テトラを囲む様に展開される謎のアイテム。ガチャガチャカラカラと、けたたましい音を拡散させながらそれはテトラをすっぽりと包み込んだ。

 そして完全に全てが連動した歯車は勢いを増して、その身に光を走らせる。するとそこでオッサンがこう宣言した。


「喰らえ邪神! これが我が国が復建させた練金『浄土連葬の仕掛け』だ!」


 その瞬間、鳴り響くは絶え間なく響く爆発音。そしてそれに伴ってテトラを囲んでるゼンマイが外側に伸びたり戻ったりを繰り返す。その度にカチカチギャリギャリと異音を響かせるけど、元に戻ってはまた爆発の連鎖に加わる--そんな感じだ。これは……かなりえげつない攻撃だな。

 確かにこんなのを僕達が喰らってたら、ひとたまりも無かったかも。一分なんて持ちそうに無い。一体いつまで続くんだ? 

 すると周りを囲んでる怪しいフードの一人が片膝をつく。なんだ? そう思って目を凝らすと、HPがどんどん減っていってる。まさか、この練金のなんとか仕掛けって代償に術者のHPを必要としてるのか。


「おいこのままじゃ! シルクちゃん!」


 シルクちゃんの回復魔法ならピクと併用すれば効率よく回復出来る。それで無限ループの完成だ。


「無駄だ。練金の代償中に失われた物は戻せない。それが練金の最大の代償でありリスクなんだよ」

「なっ!?」


 等価交換はどこに行った? いや、等価に交換してるからこそ……なのか。その最中での水増しはそうでなくなると。


「お前はあいつ等に死ぬアイテムを使わせてるのか?」

「貴様の様に本当に死ぬ訳ではない。戦闘不能になるだけだ。そうなったらシルクに回復をしてもらえば良い。今は邪神にダメージを与え続ける事の方が大事だ」


 なるほど、考え方によっては別に酷い事でもないのか。ここをゲームとしてみてるからこそ、出来る事だな。だけどそこで僕は異変に気付く。


「おい、なんだか地面が黒くなっていってないか?」

「何?」

「あれも変なアイテムの影響なのか?」

「いや、あんな現象は知らん……ん?」


 地面から染出る様に広がって来る黒い闇から何かが沸き立って来た。ヤバいぞ。凄くヤバい感じがする。そしてその勘はまさしく当たった。黒い地面から黒く歪な物体が次々と出て来る。そして次の瞬間、一斉に紅い瞳が輝いた。間違いないこれは----モンスターだ!

 第四百七十四話です。

 増えていく仲間。だけど邪神もいつまでもそれを許してる訳じゃない。この場にとうとう奴等が姿を現して、戦場は一対複数から、複数対複数へとシフトする事に成りそうです。


 では、次回は火曜日にあげます。ではでは。

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