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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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はずかしき事

『どこじゃあああああ!! どこにおるんじゃめんこい娘よおおおおおおおおおおお!!」


狭い通路を消えてはどこからともなく現れる。その度にこんな事を叫んでる仙人モブリ。さっきまでの歌もうるさかったけど、今の状態も負けず劣らずだよ。本当に、どこにそんな体力があるんだよって言いたい位にしわっしわな体なんだよ。

なのに見た目からは想像も出来ない程にこいつはパワフルだ。変態でパワフルとか、存在自体が犯罪だよな。


「おい、爺さん」

「隠れてないで出ておいで! 儂をその御御足でまた踏み付けておくれやあああああ!!」


おいおい、こいつ癖に成ってるぞ。前に来た時、上手く騙してセラにボコボコにさせたのに、それが癖に成っちゃってるよ。セラの奴、こいつの琴線をビシバシ刺激しすぎたな。でも好い加減にこっちの言葉を聞けよ。そろそろ居ないって事に気付いてもいいだろ。

現実を受け入れろよ。こんな狭い場所で、早々隠れる場所なんかねーから。


「どこじゃあああああ! 一体どこなんじゃああああああああ!!」


その声はまるで喉を酷使しながら叫んでるみたいな感じだ。鬼気すら感じる程。


「だからいねーよ」

「わすを!! わすを見捨てないで遅れええええええええ!!」

「女はここには居ない。それを受け入れろ」

「ど・こ・じゃああああああああああああああ!?」


この野郎、僕とリルフィンの言葉は完全に無視だよ。最後の叫びなんか瞳から血の涙でも流さんバリの勢いだ。この爺いにはついていけないな。しょうがない、テッケンさんに現実を教えてもらおう。


「頼みます」

「任せてくれ。んっコホン『ちょっとどこ見てるのよ?』」

「んは!?」


テッケンさんの声真似に直様反応する仙人モブリ。ほんと、どれだけ叫んでても女の声だけは聞き逃さない耳してるよなこいつ。もしかして僕達とは違う構造してるんじゃないか? そんな疑いが湧き上がるよ。


「『ほら、こっちよ』」

「そっちか!?」

「『どこみてるのよ。こっちよ』」

「ほっほ、恥ずかしがり屋さんじゃのう。そこじゃなあああ!」


声に飛びつく仙人モブリ。だけどその姿を捉えた瞬間にピタッと動きが止まる。まあそれはそうだろう。だってその目に映ってるのは、求めてたセラじゃなく、自分と同じ大きさのモブリなんだからな。

数舜思考を巡らせて、仙人モブリはこう言うよ。


「どこに隠したんじゃ!?」

「『種明かし』 」

「声真似じゃとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


そんな叫びと共に、崩れ落ちる仙人モブリ。それはまさに世界の終わりでも想像出来そうな崩れ方だったよ。どれだけ求めてたんだよ。


「くっ……貴様ら、いたいけな老人を苛めて楽しいか!? 腐っとる! この世界はいつからこんなに腐ってしまったんじゃ!!」


おいおい、一人でに嘆きだしたぞ。そんな泣き崩れる程のことか? てか、ちょっと冷静に見渡せばすぐに気づけることだろ。自分で勝手に期待値を上げてるのが悪い。


「腐ってるのはお前の心だろ。教皇までやった癖に、邪心がありすぎじゃないか?」

「貴様に何がわかるんじゃ! お前たちはあの娘っ子の魅力を知らんからそんな事が言えるんじゃ!」


魅力? そりゃあ、セラは厳しいけど、頼りになる奴だよ。魅力だよねそれは。だけどこいつが言ってる魅力ってきっとそんなことじゃないよね。


「当然じゃ! そんなどうでもいいことじゃないわ! 女としての魅力じゃよ! あのロングスカートから蹴り上げる時に覗く黒タイツの魅力じゃよ!! そしてその脚線美に踏みつけられる快感が病みつきなんじゃ!!」


はい、ありがとうございます。変態です。間違いなく。何を涙ながらに語ってるんだよ。聞いてるこっちが泣きたくなるわ。こんな老人にはなりたくない。そう思えるね。


「な……なんじゃその目は? その残念そうな目はなんじゃ! 幾ら偽善ぶっても、男なら儂の言ってることがわかる筈じゃ!! 男は皆変態なのじゃ!! そうじゃろ!?」

「そうじゃろ? って言われても」


僕達はみんなで微妙な表情をするよ。確かに嫌いではないよ。その女の子のことはね。だけど皆変態はお前の押し付けだろ。確かに誰にだって多少の変態性はあると思う。でもそれをお前みたいにおおっぴらにはしない。

流石にドン引き物だぞ。女子には毛嫌いされるぞ。


「儂はこう成った時から、自分を偽るのは辞めたんじゃ。だからなんでもオープンなんじゃ。儂が男の本質じゃ!! 男を見る時は儂を基準にすればいいのじゃ!!」

「すっげー迷惑なんだけどそれ」


うんうんと周りのみんなも同意してくれる。こんな規格外の爺いが基準になるわけないだろ。マジでやめろよな。周りの女子達の見る目が変わるだろ。


「本質では誰もが儂とにかよっとるわ。儂はそれを知っておる。そしてあのエルフ娘のストッキングと足の感触も知っておる」


いや、何と何を思って染み染みしてるんだよ。それとそれを混ぜるなよ。途端に重みがなくなったぞ。すると仙人モブリは大きなため息を付いて、一人でブツブツ言い始める。


「はぁ〜、この悶々とした気持ちをどうすればいいんじゃ。あの痛めつけられた日から、あの娘っ子の事が忘れられん。もう一度貶されたい。罵られたい。そしてあの御御足で踏んで欲しい。そしてどうせなら舐めたい」


おい、最後はどういうことだよ。舐めたいって……


「男ならあの御御足を舐めたいと普通思うじゃろ? 黒ストッキングの上からベロベロと引かれる位に舐めたい! そして折檻されたい!」


ダメだこいつ。早くなんとかしないと……どうやらセラはとんでもない変態を生み出してしまったらしい。てかかなり酷くボコられてた筈なんだけど……そんなにあいつの折檻は中毒性があるのか?


「病みつきものじゃな。あの子には才能がある! 儂が保証しよう。あの汚物を見るような瞳と辛辣な言葉がたまらん!」


どう考えても普通は心が折れるんだけどね。特殊な爺いだったのがセラの不幸か。こんな奴も居るんだね。痛みを快感にまで昇華させるとか、ある意味ですごい事なのかも。まあ全く尊敬とかは出来ないけどね。

てかいつまでも変態話をしてる訳にはいかないんだ。全く、ようやくこっちに耳を傾けるように成ったわけだし、本題にそろそろ入ろう。この爺いはこんな変態でも実は昔の教皇で、しかも星羅を作ったとかいう奴らしいからね。かなりの情報を持ってる筈だ。しかもそれなら星の御子でもあるような……いや、いつからその制度が導入されたのかは知らんけど。

そもそも御子って感じじゃ全くないけどね。


「おい爺い。セラのことは今は良いんだよ。今は世界が大変な時なんだ。あんたは昔はすごかったんだろ? 邪神の事や星の御子の事を知ってる限り教えてくれ!」

「イヤじゃ」


スッゲー驚く程にあっさりと断られた。余りにもあっさり過ぎて、暫く断られたのに気づかない程に。


「スオウ君、イヤッて言ったよ今」

「え? ええ!? 一体いつ?」

「直前に」


こんなやり取りがあったくらいだ。いや、結論出すの早過ぎだろ。セラを探すのはなかなか諦めなかった癖に、どうしてちっとも食指がこっちには動かないんだよ。


「どうして!」

「めんこい女の頼みしか儂は聞けん」


この糞爺い……捻り潰してやろうか。だけど貴重な情報源だからな。てかもう頼りはこいつしかいないのが現状だ。そんな事出来ない。でもどうしようか。今は女なんて……いないしな。そう思ってるとおずおずと上がる小さく丸い手が一つ。


「あの〜」

「だれ?」

「酷い! 貴重な女の子ですよ!」


そう言ったのはバトルシップの乗組員の一人の僧兵だ。てか、え? 女? 居たっけ? 僧兵ってみんな同じ格好してるんだもん。気づかなかった。まあだけど有難い。女の子が居れば万事解決だ。


「ほら、あんたの好きな女の子だぞ」

「お願いします。どうか私達を助けてください!」

「う〜〜〜む」


何か思案顔の仙人モブリ。一体何に悩んでるんだ? 大好きな女の子なのに。そう思ってると、色々な角度から彼女を見た後にこう言ったよ。


「めんこく無いから却下じゃな」

「おい、なんだよそれ!?」

「儂はめんこい娘が好きなんじゃ。ローレとかあのエルフ娘レベルを連れてこんかい!」


くっ、ようはこの女僧兵さんじゃこいつの目には叶わなかった……そういう事か。なんて失礼な爺いだ。


「ざ……残念だけど、仕方ないですね。ごめんなさいお役に立てなくて。そんなに可愛くも無いのに、女ってだけで出しゃばって……す、すみばぜん……」


おいおい、彼女泣いちゃったじゃないか! 僧兵の同僚達が慰めてるけど、痛々しいよ。どこが彼女じゃいけなかったのかよくわからないな。モブリはスタイルだってそんなに変わらない。顔はよくわからないけど、別段彼女がブスなビジュアルしてるわけじゃ無い。普通のモブリだ。確かにモブっぽいけど、贅沢言うなよな。

そもそもなんで同じモブリに満足しないんだ? 求めるのがローレやセラって……いや、ローレはあれでモブリはモブリなんだけど……ビジュアル的にモブリじゃないからな。もっと同じ姿したモブリに反応しろよと言いたい。


「儂は妥協はせん。確かに昔の儂なら、そこのオナゴにも飛びついたかも知れん。だが今の儂は昨日の儂じゃないのじゃ。色んなめんこいオナゴを見て、儂の求める基準は高くなっておる!」


うっぜ〜。変態が変な信念持ってるぞ。どうするんだよこれ? ローレ……はいくらなんでもあんなレベルは早々このLROにもいないし、セラだって……てかこいつの好みがわかんないもんな。でも二人に特徴してるのは気が強いってことか?

気が強い女が好みなのかも。取り敢えず街に出て、プレイヤーの女の子に声をかけるか? その位しかやりようないよね。こんな状態だけど、きっと街にはプレイヤーが居る筈だ。クエストの為とかなんとかいえば、協力してくれる人はいるよね。


「テッケンさん、街の方に降りて可愛い子を連れて来ましょう。こんな状態でも普通にプレイしてる人達は居る筈ですよね?」

「それは居るだろうけど……」

「けどなんですか?」

「いや、協力してくれるかな? って思ってね。邪神の言葉で敏感になった代表達は、スオウ君に協力しないようにとか通達してると思うんだ。それはきっと、建前でもアルテミナスでもノーヴィスでもその筈だよ」


なるほどね。確かに約束した以上、協力をしない振りをしない訳にはいかないからね。でも−−


「だから別に名前までいう事ないですよ。ちょっと協力をして欲しいんですけど〜的なノリでいけばいいじゃないですか。そういうのはLROでは日常茶飯事なんですから、世界の情勢に関心もない人なら、変な詮索なんてしないでしょう」


そもそも僕の事なんか、覚えてまではいないっしょ。聞いた事はある〜くらいだと思う。それもなんか特殊なクエストやってる奴が居るって程度だろ。それなら検索でもかけられない限り、バレる筈もない。


「まあそうなんだけど……もしも僕達のへの協力が邪神にバレたらその国は……」

「いやいや、考えすぎですよ。あいつが世界を満遍なく監視でもしてない限り、奴が直接見れる筈もないこんな場所の事なんかわかり用もないです。それにそれって僕達への協力者を減らす為よりも、それぞれの国のちょっと野蛮な奴らが面白半分で邪神に挑みかからないように、させる為の方が強いんじゃないですか?

代表達の抑止力もそっちに働いてるでしょ」


ギルドとかがこの世界には幾つも存在してるから、そこの奴らが飛び出したりしない様にしてるんだろ。そんな妨害行為をしたら、その国事潰すとテトラは明言して、代表達は御触れをだしたんだ。直接あいつの前に現れないと、知り用もない事なんだよ。ここでやる事なんてね。


「うん、そうだね。それなら……それがいいのかな」


なんだろう? さっきからテッケンさんがちょっとおかしい感じがする。なんだかいつもの感じじゃない。もっと頼り甲斐がある筈なのに、今はそれを感じれない。何かを迷ってる? いや、隠してる?


「テッケンさん、どうしたんですか? なんだからしくないですよ?」


僕がそう言うと、彼はまずそうな顔をするよ。わかりやすいねテッケンさんは。一体どんな不味い事があるんだろうか? 想像するに、そうだな〜彼の事だから実は女の子に話しかけるのが苦手とかだな。

うんうん、それならある意味イメージにあう。そんな事、別に恥ずかしがる事でもないのにね。僕だってそんなの得意なわけじゃない。そうそう女子と話す事なんかないしね。日鞠以外の女子とはってことだけど。

でも僕達は別にナンパをしようって訳じゃないんだし、もっと気楽に構えていいと思うんだ。パーティーに誘う気分で良いんだよ。


「うん、まあ女の子に声をかけるのが苦手って訳でもないんだよ。パーティーに誘うことは何回もやってるしね」

「ならどうしたんですか?」


てか、テッケンさんの口からそんな軽い発言が出るなんて……何回も女の子をパーティーに誘ってる……これってリアルで言ったら相当な遊び人だよね。LROで使う意味とは大分変わってくる。まあもしかしたらLROでも女の子達とパーチィーしてる奴らは居るかも知れないけどね。

そういえばLROでも合コン遠征とかがあるとか聞いたことある様な。吊り橋効果を期待して、男女でパーティーを組んで、ダンジョン遠征するんだよね。そして手強い敵に挑む事で、お互いを知り、戦闘で打ち解けあって、困難を乗り越えた事で心の距離が縮まるという、なんともお約束的な触れ込みだ。

まあ効果はありそうな気はする。それに初心者の子になら効果高いよね。慣れてないとそこら辺のモンスターも怖いものだ。だからでっかい敵とかを颯爽と倒すと、女子の胸にはズギューンと何かが刺さるかも知れない。それに戦闘なら、自然と会話もするしね。

ある意味盛り上げないといけない普通の合コンとかよりも楽なのかも。まあ全滅とかしたらそれはちょっと気まずいかもだけど、女の子を守って先に倒されるとかある意味良い見せ場……なのかも?

てか、こんなことはどうでも良いんだよ。問題はテッケンさんがちょっと変な事だ。これがあの変態爺いから情報を抜き取る最良の手段だとおもうんだけどな。なんでテッケンさんは乗り気じゃないんだ?


「そうだね。これはあんまり言いたくなかったんだけど、伝えない訳にはいかないかな。時間を無駄にする訳にはいかないからね」

「勿体付けますね」


本当に。一体なんなの? 期待して良い感じの事? 気になる。時間を無駄にってことは、テッケンさんが乗り気じゃないのは、その伝えないといけない事は、女子を探しに行く手間が無駄になる事なのかな?とにかく早く続きを。


「僕は分身を良く戦闘で使うじゃないか」

「そうですね。便利そうですよねあれは。分身って言うか実体が幾つも出来てる感じですけど」


一緒に攻撃したりもしてるしね。


「だけど実は、僕は分身だけじゃなく変身も出来るんだよ」

「う〜ん、別段あってもおかしくないですよね? てか、言いたくなかったんですかそれを?」


ぶっちゃけ普通だよ。変身する奴くらいあるだろうと思ってた。いや、見た事は確かになかったけど、こういうのじゃ定番中の定番だよ。


「変身は結構貴重なスキルなんだよ。それに僕のはいろいろと応用が聞くしね」

「それは良い事ですよね? なんで隠したがるんですか? ああ、切り札は隠すものだから?」


そう言う人は結構居るよね。よく使う決め技と、切り札は違う。でも変身が切り札ってのは確かに微妙かも知れない。まあどれだけ変身スキルが貴重なのかによるんだろうけど。そこら辺には僕は疎いからなんとも言えない。


「いや、そういう訳じゃなくてね……変身はおおっぴらには出来ない事情があるんだよ」


なんだか結構深刻そうなテッケンさん。一体何があると言うんだろう? 変身ってこんな深刻になることなの? 大体漫画とかだと、変身キャラってネタだよね。こんな深刻そうになる問題だとは思えない。


「漫画や映画は表面的な部分だけしかとりあげないからね。事実、LROで変身と言うスキルを誰かが得るまで、こんな問題になるなんて誰も考えてなかっただろう」

「なんだか壮大な話になってますか?」


BGMに重低音な曲が流れてそうなんだけど……マジで何があるの? この通路を照らす明かりの微かな揺れに、僕達の影が僅かに揺らめく。


「変身は、他者を完璧に写せるんだ」

「そうじゃなかったら、変身じゃないですよね?」

「そうなんだけど、それは自分の体の全てを他人に知られる事になるんだよ。男ならまだ良いだろう。だけどそれが女の子には毛嫌いされる。なんたって全てが映されるんだ」


なるほど、女の子なら確かにそれはイヤかもね。だけどここで一つ解決しておかないといけない疑問がある。


「それって、あの……テッケンさんがセラやローレの体に完璧になれるって事ですか? その表面的な部分だけじゃなく、触ったりとかも出来る……と?」


思わず唾をゴクリと飲み込んでしまった。いや、だってそれなら、色々と楽しめちゃうわけじゃないのかなって……


「それが問題なんだよ。変身は他者を辱める事も貶める事も容易に出来る。今はもっとも下劣なスキルとされてる程だ」

「変身ってそんな恐ろしい技だったんですね」


ギャグじゃないと恐ろしいな。でもそれなら、実際は取りたいと思ってる奴は多そうだ。貶めるのは二の次で、LROには可愛い子が多いからね。変身を使えば、その体が思いのまま……需要ありまくりだよ。でもだからこそ貴重なのかな?


「まあ貴重と言っても、バランス崩しとかにはいうに及ばないからね。条件が色々と厳しいだけで、挑む事は誰にでも出来るんだ」

「へぇ〜でもそんなスキルをなんでテッケンさんが……って野暮でしたね。何も言いません。しょうがないですよね。テッケンさんも男なんですから」

「ちょっと待って! スオウ君は僕も変態目的でこのスキルをとったと思ってないかい?」


そうじゃないの? でもテッケンさんは真面目だからムッツリなんだと思ってました。これで僕の予想は当たった事になるね。


「ち、違うよ! 僕がとったのは初期の頃だからね。こんなイメージは変身にはまだなかった頃なんだ!」


必死にそう訴えて来るテッケンさん。だけどその必死さが怪しい。僕はじゃあ聞いてみる。


「それじゃあテッケンさんは一度も変身で気になった女の子を辱めた事がないんですか? ただの一度も? 」

「それは……出来心というのも確かにないとは言えないけど……」


あるんだ。テッケンさんならもしかして……とか思ったけど流石にそんな聖人君士じゃないよね。でもある意味そう言ってくれて良かった気がする。身近に感じれるよ。テッケンさんもやっぱり人だよ。


「まあようは、変身ってスキルはおおっぴらには出来ないから、今まで隠しておいたって事ですよね? でもそれを使えばセラやローレにだってなる事が出来ると」


確かにそれなら、女子を探しにいく必要はないね。


「確かにセラ君やシルクちゃんは問題ないけど、ローレ様は無理だね。条件が揃ってないんだ。あと、何故かセツリちゃんも無理だね。きっと彼女だけは特殊なんだろう。条件は揃ってる筈なのに変身出来ないからね」

「それって、セツリにも変身してみようとした事があるって事ですか?」


ドキーン!! と来たのか、テッケンさんの背が延びた。分かりやすい反応だ。


「ははは、ナンノコトカナ?」


すっごい片言になってますよ。だけどそこら辺の追求は今は良いよ。今はやる気を失ってるあの変態仙人モブリに一発ガツンと気合を注入させて、協力してもらわないとね。ここで告白してくれたって事はやってくれるって事だよね。


「頼みますテッケンさん」

「くれぐれも内密に頼むよ。リルフィン君もね」

「別に俺は他人の秘密を言いふらす趣味はない」


その言葉に安心してテッケンさんは歩み出る。そして足元と翳した手の上に現れる魔方陣が上と下から彼の体を包み込む。そして輝きと共に、彼の身長がみるみる大きくなっていく。これが『変身』か。ポップでキュートなBGMをつければ、魔法少女の変身に見えるかも。

第四百五十七話です。

仙人モブリを操る為にテッケンさんは決心をしました。禁断のスキル発動です。

まあそんな重い物じゃないですけどね。

てな訳で次回は水曜日にあげます。ではでは。

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