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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
451/2705

考え得る事

「ピク!」


大きく羽を広げて突っ込んで来た小竜は言わずもがなピクだよ。僕はピクを抱きとめてその感触を確かめる。羽ばたいてる羽はフワフワっで、胴体のクリスタル部分は冷んやり心地良い。やっぱりピクは最高だね。そう思ってると、バトルシップの方からドタバタと駆け寄る面々が近づいてくる。


「スオウ君!」

「テッケンさん! それにリルフィンも。なんか珍しい組み合わせだね」


それに後モブリが数人。その中にはもう一人見覚えのある奴が居る。


「おい、俺の事を無視するなよ! どれだけ苦労したと思ってるんだ!」

「ああ、えっと~どちら様だっけ?」

「テメーッて奴は! 冗談だよな!?」


僕の言葉に僧兵の一人である奴が怒り出した。まあ冗談だけどさ。


「はは、んな直ぐに忘れるわけないだろ? バトルシップを動かしてくれたんだろ? ご苦労様」

「なんか上から目線だな。気に入らねぇ」


全く、折角苦労を労ってやったのに気に入らないとは、随分と贅沢な奴だな。モブの癖に。大勢居る僧兵の中の一人だぞ。言っちゃうと目立ち過ぎだから。元老院の娘とフラグまで立てちゃってるし、彼はこれから自分の物語を紡いで行くのかね?

まあそんなサブストーリーはどうでも良いんだ。肝心なのはここによくこれたねって事だ。しかもテッケンさんまで……大丈夫なのかな?」


「スオウ君……無事だと信じて居たよ。やっぱりシクラの言葉はどこまで信用出来るかわからないからね。この目で確かめるまでは……と思ってたけど、元気そうで何よりだよ」


シクラ……そのワードに僕の耳は反応する。まさかあいつ、テッケンさん達にまで接触したのか? でもなんの為に?


「違うよ。接触したのは僕達の方なんだ」

「テッケンさん達がシクラ達に近づいたんですか? でもどうやって?」


あいつの居場所とかわかんないじゃん。それとも偶々鉢合わせた……は、この広大なLROで考えづらいな。どうやったの?


「はは、まあ偶然だったんだけど、ピクのおかげでね」

「ピクの?」


苦笑いしながら彼はそう言った。ピクはとんでもない事をやらかしたんだね。実際あいつとは積極的に会いたいとは思えないもんな。偶々偶然シクラに会うとか、そんなの天災だよね。ご愁傷様としか言えない。


「ピクの感知性能の高さは君も知ってるだろう。だから僕達はピクに賭けて君を探しに飛び出したんだよ。だけどピクが連れて行ってくれた場所は……シクラ達の根城だったんだよ」

「根城?」


何それ? なんだかやばい響きだよ。するとリルフィンの奴がこう言ってくる。


「確かにあれは根城と呼ぶに相応しい場所だったな。なんたって空に浮かぶ島だ。そこに御伽噺に出てくる様な城がたってたんだ」

「空に浮かぶ島……」


真っ先にラピュタが浮かんで来た。てかそのイメージが強すぎる。するとテッケンさんが僕の心を読んだ様にこういった。


「きっと今、スオウ君がイメージしてる姿はあながち間違っちゃいないよ。僕も思ったからね」


なるほど、テッケンさんもそう思ったのなら、このイメージを固定しても良いのかもしれない。だけど奴等、そんな場所を拠点にしてたのかよ。って、待てよ……僕は重要な事に気付いたぞ。


「あれ? 思ったけど、そこが奴等の拠点なら、まさかセツリとも会ったんですか?」


だってそうだよな……そこにはきっと居た筈だ。僕は小さなテッケンさんを見つめる。だけど彼は頭を横に振るうよ。


「ごめんよスオウ君。僕達はセツリちゃんには会ってないよ。居たのかも確認はしてない。僕達があの場所で会ったのはシクラと長女らしい百合姉さんとその次の姉の蘭姉さんって人だけだ」

「シクラ・ヒイラギ・ヒマワリに続いて百合に蘭ですか……後二人も実際居るんですよね」


確かアルテミナスで柱と共に降ってきた奴等は五人だったからな。シクラとヒイラギは僕達と交戦してたから、合わせて七人姉妹だ。この少子化の時代にそれはちょっと多いと思うんだ。せめて三姉妹くらいに当夜さんは止めておくべきだったよ。

うん、でも確かサクヤの事もシクラはお姉様って呼んでなかったっけ? 八人姉妹だ。


「いや、七姉妹らしいよ。サクヤ君は厳密にはシリーズが違うらしい。言うなれば彼女はプロトタイプみたいな物だったんじゃないかな? セツリちゃんからの評判が良かったから、のちに姉妹にしようと考えたとか」

「なるほど、それなら数が多いのもある意味納得出来るかも知れませんね」


普通七姉妹とか大過ぎだろって、作ってる最中に思うだろ。だけどセツリが実は兄弟をいっぱい欲しかったとか言ったとしたら、当夜さんはそれに応えると思うんだ。だからこそ、あんなチートが大量生産される事に……そういえばこれは聞いておきたいや。


「所でその百合と蘭の力はどうなんですか? まあわざわざ自分たちの庭で戦闘なんかする筈ないと思いますけど。テッケンさんから見て、どう言う風に見えたのか印象を教えてください」


僕はテッケンさんの目を信じてるからね。分析力だってテッケンさんはあるんだ。そう思って言葉を待ってると、なんだかちょっと様子が変だな。テッケンさんだけじゃなくみんなが。なんかちょっと笑ってる様な?

まあ笑ってるって言っても、ちょっと頬が引きつり気味の笑い顔なんだけどね。何々、なんなんだ? 気になるよ。


「えっとね……実は彼女達は自分家の庭で激しいケンカをしたんだよ。それももうラグナロクかって位の戦闘だったんだ。それを思い出してね。はは、あれは参ったね。巻き込まれるだけで殺されるかと思ったよ」


なるほど、だからみんな頬が引きつってるんだね。僕はどうやら余計な恐怖を思い出させてしまったらしい。だけどあいつ等のケンカは確かにヤバイだろうなっては思う。シクラ以外のその二人の力は知らないけど、ヒイラギやヒマワリから考えても、絶対にションボイなんて事ないじゃん。

ケンカをしたのなら、その片鱗位は見たってことだろう? 聞きたいなそれは。


「う~ん、スオウ君は信じられないかも知れないけど……あのシクラの方が押されてたよ。えっと、言っとくとケンカをしたのはシクラと蘭って方だよ」

「まさか姉は全員シクラ以上の力を持ってるって事?」


確かヒイラギが一番末っ子だと言ってた。その次がヒマワリだ。そしてその次が確かシクラ……なんだよな? ここら辺は曖昧かも知れないけど、まだ知らない残り二人がシクラの妹か姉かで強さが違うのか?


「どうなんだろうね。実際、普段はシクラが連勝してるぽかったけど、それは遊びの範疇だったからね。真剣勝負ではシクラが押されてた。見てた分にはだけど……」

「だがあれだけでは判断は出来ないだろ。どっちも規格外に強く、さらにその上はどっちかなんて、途方もない話だぞ」


リルフィンの奴が横から入って来てそういうけど、言っとくけど僕達はその途方もない奴等とは切っても切れない関係だからな。無視なんて出来ないんだよ。


「それでも知っておきたいんだ。そりゃたった一戦でそいつの全てがわかるわけじゃないってのはわかってるけど、基準にはなるだろ。少なくとも、蘭って奴はシクラを追い込める力を有してるってことだろ? それはヒイラギやヒマワリにはなかったと思うんだ」


妹だから? まあそこら辺はよくわかんないな。そもそもヒイラギは後衛ポジションだもんな。役割が違う。それにヒマワリの力もやりようによってはシクラを追い詰めるとか出来るかもは知れないな。あいつ、爆発力凄そうだしな。ただ頭が残念だから下に見えるよな。

その蘭って人は頭が残念でもなく、姉妹特有のチート能力を有してるのなら、十分にシクラと渡り合えておかしくはない。


「うんそうだね。だけど参考になるか……僕達も直接見てたけど、何がどうなってたのか理解できてるわけじゃないんだ。それくらいに規格外の戦闘だったからね」

「まあ……それはあいつ等ですからね。想像出来ない事が想像できます」


取り敢えずなんか派手な事をいっぱいやってたんだろうって思っとけばいいだろ。きっとあながち間違ってないよ。


「はは、流石スオウ君。よく分かってる。想像出来ない事を想像してくれてたら助かるね。取り敢えずとにかくもう凄かったから、それを肝に銘じててくれ」

「はい、覚悟はできてます!」


どうせそんな事だろうって思ってた! あの姉妹の力が想像で及ぶ範囲にある訳無いじゃん……なんだろう自然と鬱になってくるな。そんな奴等を相手にしなくちゃならないと思うと、気が重い。頭が痛くなってくる。

だけど向き合う覚悟はできてるんだ。だから良い……言ってくださいテッケンさん。


「蘭姉さんの最初の攻撃は見えない剣を振りかざしてる様だったよ。だけどそれを難なくシクラは受け止めたんだ。だけどそれはどうやら罠だったみたいで、蘭姉さんはその見えない剣でシクラを包み込み、何かを知ったんだと思う」

「何かを知った?」


話を聞く限りじゃイマイチよくわからないな。


「う〜んここら辺は一番よくわからない所だよ。多分蘭姉さんの戦闘にはあれが必要だったんじゃないのかな? っては思うんだけどね。それから武器を変えて、そこからはシクラの障壁を抜ける攻撃を彼女はしてた。

明らかに優勢に立てた理由はその包み込んで何かを得た直後からなんだよ」


なるほどね。確かにその可能性は高いかな。蘭って奴がそれをやった後に有効打を入れれる様になったって事は、シクラをそれで分析したとか? でも姉妹なのにそれもどうかと思わなくもないな。


「きっと姉妹だからって全部を知ってるわけじゃ無いんじゃないかな? 少なくともそう見えたよ」

「それもそうですよね」


姉妹や兄弟だからって相手の事を全部知ってる……なんて聞かないしね。めっちゃ仲良く無いとそんな事あり得ないよな。それに姉達はプライドの問題とかもあるのかも知れない。妹に全部を筒抜けじゃ姉の威厳とかが危ぶまれたりね。

ヒイラギやヒマワリの事をシクラの奴がよく知ってたのは、妹だからってだけでもなくて、ヒイラギの場合は自分の次に目覚めた子で一番長く一緒に過ごしてるからだろう。ヒマワリの場合は考えなくても直ぐにわかる。

あいつは何かを隠しておける正確じゃない。バカだもん。きっと新しい力を手に入れたら嬉々として喋りまくるだろう。自慢しまくるだろう事が目に浮かぶ。


「んで、その蘭って奴の力をテッケンさんはどう見てるんですか?」


大切な事だよな。直接目にしたからこそ、色々と考えた筈だよ。この人ならさ。僕は顔をめっちゃペロペロしてくるピクにちょっと戸惑いつつ、テッケンさんの言葉を待つ。テッケンさんは少し考えて静かに言葉を紡ぐ。


「そうだね……情報が少ないけど、やっぱりあのシクラを包んでそして武器にまで変わったあの技が彼女の力の肝なんだと思う。障壁を紙切れみたいに抜いてたし、敵の力を見抜いて効果的な武器生成まで出来る能力……かな?」

「それはまた……」


随分と厄介な力だな。流石チート集団。別に能力を見破るとかなら、上位のスキルや魔法にありそうだけど、そこから更にその場で効果的な武器を生成するってなんだよ。普通は対策とかに頭を使ったりする物だろ。

それを素通りして必倒武器を作り出すなんてずるい。まあチート集団にズルいなんて言葉は意味ないけどな。それを言うなら奴らの存在自体がズルいもん。流石に思い飽きたよ。ヒイラギやシクラでね。


「驚異的な能力だよね。一対一では決して相手にしたくないよ。実際はどこまでを見抜いてるのかはわからないけど、あのシクラを追い込んでた事を考えると、やっぱりね……相手にしたくない」

「一対一でしか効果はないのかな? 複数人には効果が薄い? その位の制約はあってもいいよね」


まあチートに制約とか求めるべきじゃないってのは分かってるんだけど、薄い希望を求めたりしたいんだ。だって最近辛いことばっかりでさ……だけど小さな希望も安易に求める物でもないのかも。やっぱり全然弱点がなかったら、絶望しか残らないもんね。

まったく、あの姉妹との戦闘を考えると夢や希望がつまみ取られてく様だよ。


「それはわからないよ。それに彼女達は規格外だ。能力がそれだけとも限らないしね。コードリリースという制限解除の裏技があるらしいじゃないか。あの能力がその裏技を使っての事かも僕達にはわからなかったしね。

簡単に彼女達の底を知ろうとしない方が良い」

「……ですね」


コードリリースはチート能力を更に加速させるしな。シクラを負かしたいから本気を出してた……って考えも出来るけど、結局の所はわかんないもんね。すると横にいたリルフィンが真剣な表情で、間に割って入って来る。


「底というのなら知れない奴がもう一人いるぞ。寧ろそっちの方が問題だ。テッケンもそう思ってるんじゃないのか? 奴の力こそまさに底が見えなくて恐ろしかったぞ」

「んっ……それは……」


なんだ? リルフィンの言葉でテッケンさんは更に難しい顔になった。もう口を開くのも重い感じだよ。えっと、確かもう一人は長女の百合って奴だよな。そんなヤバイのか?


「ヤバイというか……あれは恐ろしい能力だったよ。実際は蘭姉さんの様に何をどうしてどうやってそうなったのか……その全てが謎なんだ。気がついたら、そうなってて……正直、あれ以上の力なんて考えられないかも知れないよ」

「そこまで……ですか?」


いや、言葉が曖昧過ぎて何がなんだか全然わかんないんだけど……テッケンさんがそういうのなら唾を飲み込むしかない。ゴクリとね。けどまあ、やっぱりもうちょっと詳細にお願いします。


「えっと、彼女は二人がケンカをしてる最中戻って来て、二人が最大級の一撃をお互いに放つその瞬間にその力を発動したんだ」

「うんうん、長女だから止めようとしたんですね。それで?」

「わからない」

「うん?」


テッケンさんの方を見ると顔をそらされた。地味にショック! しょうがないからリルフィンをみると、自分も知らね−−って感じで無言を貫きやがる。しょうがないから僧兵に視線を移す。けれども奴も返す言葉を持ち合わせてなかった。

どういう事だよこれ? なんで誰も言葉に出来ないの? これじゃああれだよ。想像の余地もないよ。想像出来ない事を想像しようとする想像のためのイメージも想像出来ない……いや、訳わかんないな。様は何が起こったのか誰かプリーズって事だよ!


「……本当に何が起こったのかわからないんだ。大袈裟じゃなくてこれはマジだよスオウ君」

「いや、冗談とも捉えてないですけど……」


そんな笑い飛ばせる雰囲気じゃないもん。一匹だけノリが違うのはピクだけだよ。ピク以外の皆はここの空の色と同じ様にどんよりしてる。よくよく考えたら、外に出てもあんまり時間の感覚わかんないな。少し明るく成ってる気もするけど、暑い雲のせいでわかんないや。


「取り敢えずわかる事だけでも教えてください」

「そうだね……取り敢えず二人の攻撃はぶつかる事はなかった。気がついた時には戻ってたからね」

「戻ってた?」

「ああ、まるで時間を巻き戻したかの様に僕達は全員少し前の位置関係に戻ってたんだ。それにそれだけじゃなくて、空に昇った筈の太陽だって、もう一度日の出を迎えてた……」


ゴクリ……と今度は本当に自然とそんな音が出てしまう。だってそれは……一部分を巻き戻したってレベルじゃない。日の出までも繰り返したって事は、それは世界中が一度リセットされて巻き戻ったって事じゃないのか?

しかもそれを一瞬でやるって所がまさに驚きだよ。ローレだって時間操作には色々と手順や制約があった。だからこそつけ入る隙があったわけだけど……話を聞く限りじゃその百合姉さんには弱点なんてなくないか?

一瞬にして世界を巻き戻せるのなら、どんな攻撃を持ってしても通用しないじゃないか。


「それは確かに最強かも知れない力だね……」


ごめん、聞いた今は冗談と言って欲しいと願ってる。どう対策とれば良いんだよ。何も思いつかないぞ。


「だけど彼女が力を使ったのはそれだけだからね。もしかしたら僕達の前に現れる前に仕込みを済ませてたって事は考えられるよ。てか、そう思いたい。だってあれを制約も無しに使えるのだとしたら、神だって彼女には及ばないよ。いや、寧ろ神みたいな物だよ」

「確かに……話を聞く限りじゃテトラよりもヤバそうですね」


テトラで既に僕達の何歩も何十歩もいや、もっともっと前を行ってるのに、それを越えられたとしても更にまだまだ上が居る。しかも確実な敵として。LROは何回僕を打ちのめそうとするのだろうか? そんなに殺したいか僕の事を……

いや、これはLROというか当夜さんがバカみたいな機能をつけるからか。あれ? でも元はLROの存在じゃないんだからあの姉妹にはなんの力もあるわけないよな。じゃあどうやってあいつらはあんな力を得てるんだろう?

外側にいるから、システムの干渉を受けずに済む……そんな事をシクラは言ってたな。だからこそチートな能力を得られると……じゃあ奴等のそれ等の能力は目覚めてから自分たちで自由に設定してるって事なのか?

だけどそれなら、納得できる様で出来ないぞ。だってそれならもっと圧倒的な……それこそ百合姉のような力を全員に振り分けた方が最強だろ。誰も相手になんかならない。だけど実際はそうじゃなくて、それぞれが自分に一番合った能力を得てる……そんな気がする。

まあ僕が知ってるのは三人だけなんだけど……あの三人とその力はイメージが近い。ヒイラギは扇子『天扇』を武器に氷を操る。ヒマワリはどうやら肉弾戦で、能力はイマイチようわからんけど、ノンセルスで見てた感じだと、なんだか砕いた物を見にまとってた様に見えた。きっとバリバリの猪突猛進な白兵戦タイプなんだろう。

そしてシクラは……シクラは実際どんなタイプだ? 一番戦ってる筈なんだけど、ヒイラギやヒマワリの様な本質が見えないな。いや、見せてないのか。あいつは規格外の超上級魔法を詠唱も無しに使えたり、髪を武器にしたり、変な翼で空飛んだりと色々だ。

形がない……自由……縛りがない……それがシクラの本質? ある意味であいつの印象とは重なる。テッケンさん達が出会った二人もイメージにあう力なのだろうか? この考察が何かの役に立つのかはわかんないけど、無駄じゃないかも知れない。その可能性があるんだから考えない訳にはいかないよ。


「力と性格の関係か……蘭姉さんはとにかく厳しい感じだったかな、厳格なお姉さんだよ。シクラの態度が気に入ってないみたいだからね。それを考えるとあの能力はそこまで彼女らしいとも言えないかもだよ。

似合いそうなのは日本刀とかの格好だったしね。百合姉さんの方は正直良くわからないかな。取り敢えずあの人は百合さえあれば生きていけそうだよ」

「いや、意味がわからないよ。特に最後の部分が」


まさか百合好きは時を操るのか? 物凄い真理だねそれは。するとローレも本当は百合だという事に。


「僕だって意味はわからないよ。だけど彼女の特徴は取り敢えずそこくらいしか−−あっ、そう言えば巨乳というか爆乳だったよ!」

「テッケンさん……そんな人じゃないと思ってたのに……」


なんだろうこの残念な気分。いや、自分が一方的にテッケンさんのイメージを持ってたのが悪いんだろうけど、彼がキラキラした瞳で爆乳っていうのは見たくなかったというか……


「いや、これは客観的な意見だよ。別に特に爆乳が好きなわけじゃないからね」

「まあシルクちゃんは普通ですもんね」

「そうそうあれ位が丁度いいって言うか−−ってなんでここでシルクちゃんが出て来るんだい!?」


超慌ててるよ。不意打ちだったからね。あれは本音ととってもいいの?


「二人は仲良いから、そこ等辺も関係してるのかな〜って思って」

「それは僕が女性の胸を見て付き合いを決めてる見たいじゃないか? そんなイメージあるのかい? もしもあるなら大変不本意なんだけど……」


確かにそんなイメージが横行してたら死にたくなりそうだね。


「安心してください。そんなイメージないですから!」


僕は拳を握って力強く言ってあげた。安心させてあげたいもんね。


「じゃあなんでそんな事を言うんだい!? 不安に成っちゃうよ!」

「はは、まあ胸は冗談ですけど、二人の関係は気になったりしてますよ」


だってあのシルクちゃんを独占してたんだもんね。やっぱり二人には特別な絆があると思うじゃん。だけどテッケンさんはため息一つ吐いてこう言うよ。


「今は僕達の事なんかどうでもいい筈だよスオウ君。話を戻そう。いや、やっぱりシクラ達の考察もここまでにしておこう。今僕達が直面してる敵はシクラ達じゃない。残り数十時間後には僕達はもう一度邪神と遭いまみえる事になる。

勝算はあるのかい?」


後方で渦巻く風の巣へと向かう全ての風がザワザワと聞き耳を立ててる気がする。もしかしたらエアリーロの奴も聞いてるのかも知れないな。まあだけどここに居るエアリーロなら良いだろ。気にするる必要はない。

僕は皆を見回すよ。なんだか縋ったような目をしてる奴がいたり、心配したり、ちょっと上から目線を向けてる奴が居たりと、みんな反応は様々だ。それは僕に対する期待値の違いかな? まあ取り敢えず言える事を言うとするかな。

僕はテッケンさんに向かって軽く笑顔を作って、直後言葉を紡ぐ。


「勝算は……今の所ないですね」


僧兵の皆さんの膝が地面に崩れ、嘆きの声がこだまする。

第四百五十一話です。

スオウの奴、勝算無いとか言い出しやがりましたよ。でも確かに今の状況では一発逆転の手さえ難しいですね。ほんと、シクラ達を仲間に引き入れてれば良かったと反省……だけど何か手はある筈で、それはきっともうどこかにばら撒いてあるかも知れないです。

もしかしたら……ですけどね。


てな訳で、次回は金曜日にあげます。ではでは。

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