花の城 3
ドリルを揺らしてそう告げた彼女の笑顔に僕達は唾を飲み込み、冷や汗を垂らす。だって何が起こったのか、まるで理解出来ない。意味不明な力がつい先程使われて、そしてあたかもシクラや蘭姉さんのドタバタのあれやこれやが完全にリセットされてしまってる。
こんなデタラメな事を恐れない訳がない。あたかも時間を巻き戻したかの様な……だけどもしもそうなら、これはローレ様が使ってた時間操作よりも余程強力だ。一瞬にして前の時間に戻れるのなら、抗う術なんて無いじゃないか。
いきなり戦闘を中断された二人は「仲良く百合百合しましょう」って言ってる彼女をちょっと引いた目でみてる。あの二人が怒るわけでもなく、引いてるってのがもしかしたら力関係を示してるのかも知れないね。
「姉様、何故止めたのですか!?」
意を決した様に、蘭姉さんの方が一歩を踏み出しそういった。険しい表情の彼女。だけど蘭姉さんに姉様と呼ばせるドリルの彼女は終始ニコニコしてる。
「だって〜姉妹なんですよ〜。仲良くしないとって思うよ〜。百合百合しないとって〜思いま〜す」
「いや、百合百合はいいから。そっちの気があるのは百合姉だけ」
ホワホワした感じの百合姉さんにシクラが手厳しく突っ込む。シクラは誰に対しても態度を変えないな。
「ううん、私の読みだとヒイちゃんも実は〜百合百合願望があると思うんです〜。可愛いですよね〜ヒイちゃん」
なんだか一瞬でヒイちゃんって人が可愛い談義に……確かスオウ君が戦った末っ子だっけか? ノーヴィスに現れた三人の内に居たよね確か。
「ヒイちゃんが可愛いのは確かだけど、百合百合はどうだろ? どっちかは知らないけど、取り敢えず怒ると思うよ。そんな事いっちゃったらね☆ 」
「う〜ん、やっぱりお姉ちゃんの秘蔵同人誌を貸したら怒るでしょうかね〜。そうだ、今度ヒイちゃんの積んでる本の束の中にさりげなく混ぜ込ませて置きましょう〜。そしたらきっと気付かずに手にとって読んでくれますよね〜ふふ」
上機嫌に両手を合わせて口元に持って行き軽く笑う百合姉さん。可愛い妹を自分の世界に引き込もうとしてるんだね。
「あんな如何わしい本、速攻で閉じますよ」
「ええ〜欄は酷いなぁ〜。読んだらすっごく面白いのに〜」
「あんな軟弱で、恥ずかしい物なんか、柊の目に入れて欲しくもない! 姉様はもっと自重するべきです」
「あう〜」
蘭姉さんに怒鳴られて頭を抱えて涙目になる彼女。どっちがお姉さんかわかんないね。だけどその程度じゃ彼女は折れない様だ。
「ヒイちゃんだってちょっと目を通せば、のめり込んじゃうと思うんだけどな〜」
「一番下の子を毒さないでください。お願いします」
「う〜ん、じゃあこうしましょう〜!」
パン! と一回手を叩くと、百合姉さんは蘭姉さんの方へふらふら〜と歩み寄って彼女の後ろへ回る。そしてむき出しのくびれ部分を指で下から上へなぞる。そんな行為に蘭姉さんは「ひっ」と声をだした。
「姉様……また何をし出すんですか?」
「ふふ、可愛い末っ子の為に〜堅物お姉さんが満足させてね〜」
「何……をっ! ふおおおっおおおお!!」
百合姉さんは舌を蘭姉さんの首筋に這わせてる。そのせいで蘭姉さんはなんとも言えない声をだしてた。なんだろう……これは見てて良いのかな? 物凄く背徳的なんですけど……さっきの周りまで巻き込んでラグナロクをおっ始めてた状況から変化しすぎだよ。
ついていけない。ただ二人の絡みからは目が離せません。
「「「おお!!」」」
サラシの上から遂に胸を揉み出したぞおおおおおおおおおお!! あっ、しまったちょっと素が出てしまった。いかんいかん。だけど流石に目の前で胸を揉みしだく光景は、男として興奮せずにはいられない。
しかみ蘭姉さんは抵抗してるんだけど、次第に顔が火照り、息遣いも色っぽくなってる様な……
「可愛いよ蘭」カプッチューチュー
「んあっ!? そこは……ダメぇぇぇ!!」
ヤバイ、思わず前屈みになっちゃいそうだ。てか既にみんな内股になっちゃってる。だけどここで言っとくと、百合姉さんがチューチューしてるのは耳です。どっかの一部の部位とかじゃないですよ断じて。
凄く甘くとろけた空間が形成されてる。あの二人の周りだけ背景がピンク色に輝いてる様に見える。百合姉さんのテクニックなのか、ただ単に蘭姉さんがああいう事に弱いのか分からなけど、彼女のキリッとした表情は今はもう微塵もない。トロットロになってる。
「ほら、こっちを向いて……」
そう言って優しく頬に手を添えて顔を自分の方に向けさせる。そしてそのまま、流れのままに「キス」−−−−−−しちゃった。しかも爽やかで甘酸っぱい方じゃない。濃厚でアダルティーな方だ。クチャクチャと音が聞こえてる。蘭姉さんの顎からは、二人の唾液が混じり合って流れてた。
なんだか自分たちが何しにここまで来たのか、ちょっと分からなくなりそうなインパクトだ。
「ぷはぁ〜」
「はぁはぁはぁ……くっ」
ようやく終わったキス。百合姉さんは満足気だけど、蘭姉さんの方は地面に腰を落としてしまってる。そして恍惚なのか、悔しいのか、よくわからない入り混じった表情で百合姉さんを見上げてる。
「なんで……私がこんな目に……」
確かに。なんでこんな事になってるのか僕達も説明を求めたいね。すると百合姉さんは沢山のドリル髪を揺らしてこういうよ。
「ん〜え〜と、あ! ケンカ両成敗〜ですよ〜」
明らかに今思い付いた理由だよねそれ。自分で手をポンってやってたもん。ようは今の百合百合は自分が食いたかったからと……本物だよこの人。そしてその本物は、後付の理由でジュルっと唾を飲み込む。
その視線の先にはシクラがいるよ。
「両成敗〜ですよ〜シクラ」
ニッコリ微笑む彼女は幸せそうだ。まるでこれで合法的に百合百合できるとでも思わんばかりに笑顔だよ。てか、思いつきの理由で上手く二人とも餌食にしようって魂胆だったのか。顔や雰囲気に似合わずに腹黒い事で。
「百合姉、私は蘭姉の様にはいかないよ☆ こう見えてガードは硬いからね」
「両成敗なんですよ〜。このままじゃ蘭だけが可哀想でしょ〜。これはケンカをしちゃった二人へのお仕置きなのです〜。拒否権はありません」
ケンカと言う悪い事を上から正すみたいに言ってるけど、本心は「さっさと百合百合させろ〜」だよね。だけどケンカしてたのは事実で、それを叱る権利を彼女は有してる。一応筋は通ってる……のかな? 最後の手段がおかしいけど、言ってる事は間違いじゃない。両成敗なのに、蘭姉さんだけにお仕置きじゃ不公平ってのは正しい。
だけど素直に従うシクラじゃない。
「そもそもケンカをふっかけて来たのはそっちで〜す。私は極力避ける努力をしたわ」
「だけどケンカをしてたのは事実ですよね〜。往生際が悪いですよシクラ〜」
ニコニコしながら彼女は今度はシクラへと迫ってく。シクラ、絶体絶命のピンチだな。肉体的には蘭姉さんとの戦闘時の方がダメージを受けそうだったけど、精神的にこっちの方が重そうだ。
「全く、百合姉は百合百合したい時だけは積極的なんだから。だけど私にはそっちの気はないの☆ いくら迫られても私は誰にも自分を明け渡さない。だから今回はこれで勘弁してよ」
そう言ってシクラは何かを投げる。それは世界の重力とか風とかの影響を無視して、真っ直ぐに飛んでしかも百合姉さんの目の前で止まる。そしてそれを見た瞬間に彼女の進行は止まった。そして次の瞬間咲き誇る花に赤い雫が幾つと落ちる。
ええ!? だよ。まさか彼女は鼻血垂らしてる? 丁度その投げられた物が僕達を通り越して百合姉さんの目の前に来てるから見えないんだよね。するとなんだか震える声が聞こえ出す。
「か……か……可愛い!! 」
その何かを両手に鷲掴みにして凝視する彼女。おいおい、鼻血鼻血。凄い量がドバドバ流れ落ちてるよ。一体なんなんだろうあれ? 順当に考えれば、サイズ的には写真が濃厚だ。しかも彼女のこの反応を鑑みるに、何か百合百合した写真なのは間違いない。
「だ、誰なの〜この可愛い娘は?」
「それで許してくれるなら教えてあげる☆」
「う〜ん、やっとでシクラとキス出来ると思ったんですけど〜ん〜でもでも〜許しま……しょう!」
「納得出来ないぞ姉様!」
「却下で〜」
跳ね起きた蘭姉さんは瞬殺されました。「そんな……」そう呟いてがっくしとうな垂れる。
「だけど!!」
「だけども何もありま〜ん。蘭にはこの世の心理を教えてあげましょう〜。それは〜百合こそ正義! なのです〜」
ニッコリ微笑み指を一本立ててそう言った彼女には、何故だろう……誰もかなわない気がした。そしてそれは恐らく蘭姉さんも同じだったんだろう。悔しい顔して俯いてしまう。同じ罰を受けさえすれば、まだこの痛みも耐えられたのに……そんな顔に見えるよ。でも僕達からみたら、案外蘭姉さんは満更でもなさそうだった様に見えたよね。
シクラははっきりと嫌がってるけど、蘭姉さんの方は途中甘い顔になってたもんね。
「さあ早くシクラ〜。許しをこうにはこの愛でるべき対象の情報が不可欠だと〜女神様も言ってます~」
それは自分が女神様だと宣言してると受け取って良いのかな? 自分の声は天の声だと……そういう事か? けど、シクラにとってはその犠牲になる誰かの情報を渡すだけで、自分の貞操は守られるんだ。やっすい取引なんだろう。別段百合姉さんにはツッコミもいれずに続けるよ。
「はいはい、その写真のちっこい娘はローレって言って、今ドタバタを起こしてる張本人……黒幕って言って良い存在かな☆」
「まあ〜なんて可愛い!」
おかしい、今のシクラの言葉のどこに可愛いと思える要素があっただろうか? なんかメロメロしてるよ百合姉さん。てか僕達はローレだった事に突っ込んだ方が良いのか? あえてそこをチョイスするとか、僕達を意識しての事では? まだ彼女は突っ込みを待ってるのか? 煩わしい。
だけど流石にずっと空気過ぎやしないだろうか僕達。いつからか、ただ居るだけの存在に成ってる。いや、ただの状況説明役になってないか? これはもしかして、ドラ◯ンボールのヤム◯君的位置現象? 不味い、このままじゃこっそりフェードアウトだよ。彼が最後は戦闘にも参加出来ず、主人公達の戦いを遠くで見守る役目になったみたいに、僕もまたそんな事に……ダメだダメだ。
それじゃあスオウ君の役に立ってるなんて、お世辞にも言えないよ。約束したんだ。アギトがパーティーを離れる時に、シルクちゃんと共にさ。一回既にその約束は破られたみたいな感じになってしまってる。でも、気持ちが変わった訳じゃない。だからここでもう一度名誉挽回をしたい。だからこそ、僕はみんなに無理を言ってここまで来てるんだ。
スオウ君を探しに来たはずだけど、出会ったのは何故かシクラ。絶体絶命のピンチだけど、ここでこいつに一矢報いれば、少しは挽回出来るかな? それなら……僕は……
「な……なんでそこでローレなんだよ!!」
僕の声が復活したお花畑に響き渡る。勇気を振り絞って僕は叫んだ。届かない訳がない筈だ。だってみんなが僕を白い目で見てる。いや、確かに言う場面じゃもしかしたらなかったかも知れないけど、ここで言わないといけない気もしたんだ。数秒の間流れる沈黙。そよぐ風が優しく花を揺らして、空はどんどん鮮やかな青に染まってく。
「……じゃあこれでお仕置きは無しって事で☆」
「……まったくもう〜〜、シクラは本当に逃げるのが上手ですね〜。百合百合させてくれないのはシクラとヒイちゃん位です〜。ヒマは喜んで受け入れてくれるのに……それに蘭だって攻められ側になると弱いですからね〜。後の二人は淡々とお姉ちゃんを受け入れてくれます。もっと素直になって良いんですよシクラ〜」
「私は遠慮しときたいだもん☆ だって始めては大切だと思える人に捧げたいでしょ?」
「ふふ〜それは大丈夫。姉妹でのキスはノーカウント〜もちろんSEXもですよ〜」
「そこまで激しい事をやってたんだ百合姉……」
とうとうシクラが引いちゃった。キスとかのいちゃラブはわかってたんだろうけど、どうやらSEXまでは知らなかったみたいだ。でも確かに姉妹でそこまでするのは流石に……百合じゃなくてそれじゃあレズだよ。てか、華麗に僕の突っ込みはスルーされてる。恥ずかしさで顔を覆っちゃうよ!
「流石にそこまではまだやってませんよ〜。ヒマは喜んで付き合ってくれそうですけどね〜」
「あの子はバカなんだから変な事は教えないでよ百合姉。ハマったら速攻ビッチになるタイプよあれ。何が悪いのかもわからない、考えないで『気持ちいい』からでそこら辺の男について行く女になっちゃうわ。そんなの妹として見たくない」
凄い言われようだね。そんなに馬鹿な子が居るのか? でもヒマでバカ……思い返して見ればノンセルスに現れた三人の内の見知らぬ顔の娘はヒマって呼ばれてもおかしくないのかも。てか、そう呼ばれてたかな? あれだよね。ヒマってのはきっと短縮型なんだ。だからヒマ=ヒマワリなんだろう。 頭にヒマワリの髪飾りつけてたし、ヒマワリの花の色と同じ髪色をしてた。確かにあの子はちょっとアレだったのかな?
でも実際端から見てた僕達に強烈な印象で残ってる事は、きっと誰もが共通してると思う。それは彼女達の鬼の様な強さだよ。何人束になったって勝てそうになかった。それに実際、一番あそこでプレイヤー相手に暴れまわってたのはそのヒマワリ。バカだってお釣りが来る強さだったよあれは
いや寧ろ、バカだからこそ恐ろしいって事もある。僕達的にはセックス依存性にでもなって、そこの得体の知れない力を使う百合姉さんと、ずっとベットの上に居て欲しいくらいだよ。それなら戦う必要もなくなるよね。なんて良いんだろう。
「ふふ〜シクラはなんだかんだ言って妹達が大切なんですよね〜。でもそれはお姉ちゃんだって同じですよ〜。だからこそそこまで夢中にさせるほどはしませんよ〜。大切だからこそ〜もっともっおおおおと〜姉妹の絆を強くしたいんです。それが結果的にはセツリちゃんの願いに繋がる。それが私の考えなの〜」
「百合にそれだけの力があるかな? 」
「あります! 世界中が百合百合すれば、戦争なんておきません〜」
笑顔でハッキリとそう宣言する彼女。体を少しでも揺らすと、そのジャージをたわわに膨らませてるおっぱいがプルンプルンと揺れる。やばいな。あれは人を殺せそうな程にでかい。まあ実際はあの揺れから鈍器に出来る程の強度はなさそうだけど、窒息くらいには使えるかも知れない。
そんな風に殺されるのは、もしかして男にとってはご褒美かも知れないね。このLROでなら一回位、そんな殺され方で死んでみても良いのかも……ってイヤイヤ、何を考えてるんだ僕は! 僕は自分の頬をぺちぺち叩く。
「何をしてるんだ?」
「いや、胸が…… 」
「胸?」
「いや、これは僕の問題だから気にしないでくれ」
流石にあの胸を見てたら、邪な妄想が止まらなくなったとは言えない! これ以上仲間にまで痛い奴とか認識されたくないからね。
「百合で世界平和ね〜それはどうだろう? それは厳しくないかな☆」
「どうしてなの〜?」
「だって世界中が百合百合してたら男が溢れるわ。そうなったら不満爆発でしょ☆」
言われてみればそうだね。女の人に男すべてが相手にされなくなるとか、悲しすぎるよ。それってある意味男が存在してる価値が無くなったみたいなものだよね。それに百合じゃ生存競争から脱落したも同然。それは命ある存在として、本能が拒否するよね。不味いと思ったら、結局男女に落ち着くよ。
だけど百合史上主義のこの人はそんな事を思うわけもない。
「大丈夫、百合百合してる所を見せつければ、向こうもきっとホモホモしたくなるわ〜」
世界中が百合百合してる横で男達は世界中でホモホモ……ちょっと想像してみたら、吐きたくなった。そしてどうやらそれはリルフィン君達も同じ様だ。不思議だよね。百合はまだ観れる……というか今の想像対象が目の前の爆乳の人と、シクラでも蘭姉さんでも、そのヒマワリでも良いんだから吐き様がない。
だってみんな美少女だ。美少女同士なら脳内映像も美しく再生される。でもホモは……何故か僕の中のイメージでは、筋骨隆々のマッチョマンで再生される不思議。きっと互いの肉体美を褒め合いながらやってるイメージが勝手にあるんだとおもう。美少年ならもしかしたら違うのかも。
でもどうやらシクラも「ないわ〜」とか言ってるから、やっぱないね。男が百合に寛容でホモに抵抗あるのは同性だからって事もあるのなら、女の人は百合に抵抗あってホモの方に寛容なのかも、とか思ったけど違うんだね。やっぱり気持ち悪いのはどう考えても男のほうか。
いや、別にホモも百合も否定はしないけどね。そういう人達が実際問題居るのだってわかってる。需要があるから、供給だって成り立ってるってのもちゃんと理解してるから、百合好きもホモ好きもそれなりに居るんだよね。だから悪いなんて言わない。ただ世界中がその二極化は本当に勘弁してほしい。
男である以上女の子は大好きだからね。目の前で百合百合してるのに、こっちに開かれてる門はゴツイ筋肉の両腕だけとか、生きる意味を無くすよ。
「男なんて可憐で可愛い女の子を食い散らかす事しか考えてないケダモノなの〜。あいつらは子種をどれだけ沢山の女に孕ませるかを競ってるのよ〜。そんなの〜(根絶やしになれば良いのに)」
あれ? 今最後の部分良く聞き取れなかった。だけどなんだろう、僕達全員、喉元に凶器を突き立てられたかの様にゾクリと来た。っそう思ってると一度仕切り直す様に百合の人は手を叩く。
「さて、喧嘩も終わった事ですし〜、そろそろあなた達の処遇を決めましょう。シクラちゃんは〜この人達がここに来た理由はわかるのかな?」
「大方スオウを探してて、迷いこんだって所じゃないかな? でもここには闇雲にこれる訳もない筈だけど……それに朝日と黄昏時にしか弱点がないこの島を偶然で見つけるのは出来良すぎよね?」
なんだろう……ちょっと不味い雰囲気になってきたかも。こっちに少しは構って欲しかったけど、あくまで少しで良いんだ。寧ろ聞きたいのはスオウ君の居場所だけでいい。
「う〜んそれじゃあ実の所は〜スオウさんを探してる振りをしての奇襲ですか? 大胆ですね〜」
「そ、それはちが−−」
「流石にそれはないわ。だって実力差は見せつけてるしね☆」
確かに違うと言おうとした。でも余裕でそう言われるとちょっと癪に障る。だけど言い返す事は出来ない、戦闘になったら僕達なんて一瞬で殺される。僕やリルフィン君はまだ持ちこたえるくらいは出来そうだけど、僧兵君達はそうはいかない。
「じゃあ〜ここに居るのは何故?」
「やっぱり偶然、それもやっぱりスオウを捜してて……かな? まああいつはここにはいないけど、なんだかそこの召喚獣は話があるみたいだし、お茶でも飲んでけば?」
「「「……」」」
どうする? 中に進められてるけど、既にスオウ君はいないといった。行くのは危険じゃないか? そう思ってると、リルフィン君が前に進む。そしてこう言った。
「頂こうか」
まさにそれは了承の合図。蘭姉さんが必死に抗議してたけど、笑顔の奥で黒いオーラを出しまくる百合姉さんも一応許可したから、引き下がるしかなった。僕達はしょうがないからラスボスのダンジョンに挑む心意気で、そのおもてなしとやらを受けに進み出す。
第四百四十七話です。
花の城 第三回は百合姉さんの無双回でした。百合姉さんは設定的に長女です。あれ? 長女はサクヤじゃないの? って言われるかもだけど、サクヤとシクラ達は微妙に違うのです。
サクヤだけは直接的な姉妹じゃないと言うか、シクラ達は元がシリーズ製造みたいな感じです。だから百合姉さんはシクラ達の直接的な姉です。
てな訳で次回は木曜日にあげます。ではでは。