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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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花の城

「ピーーーー」


夜がどこまでも続く空にピクの声が響く。辺りはすっかり宵が老けてしまって、だけど僕達にはどこがゴールなのか分からない状況だ。ただピクの後に付いて行ってるだけ……もう数時間は飛んでるけど、一体どこを目指してるんだろうか?

てか、本当にピクはスオウ君を感知してるのか、疑わしく思えて来た。疑いたくはないけど、そもそも距離が離れ過ぎてる物を感知するとか、無理があるだろう。ピクに特別な能力があるのなら良いんだけど……でも実際まだまだピクの事も謎だらけだ。

けどだからこそってのもあるんだよね。一応頑張ってはくれてるとは思うんだ。もうずっと飛びっぱなしだしね。休憩しないで大丈夫なのだろうか? もうかなりの距離を飛んでる筈だよ。地面を走るのとは訳が違うからね。周りは真っ暗でどこなのかもよくわからないけど、地図を表示させて確認する限り、既に一番国土を有してるアルテミナスを越えて海に出ちゃってるぽい。

どうりで明かりがどこにもないわけだよ。


「一体どこに向かってるんだろうな?」

「分からないよ。ただ闇雲に飛んでる訳じゃない事を祈ってるよ僕は」


後ろから声を掛けて来たリルフィン君に僕はそう返す。彼は召喚獣なんだから特殊なスキルを持ってても良さそうなんだけど……今の所はこの場面で使える物はないって事なのかな? 力が抑えられてる様だし、期待はあんまり出来ないんだろうな。


「大丈夫だろ。あのドラゴンは中々鋭いと俺は思う。時々旋回してる時もあるし、キチンと何かを感じ取ってる気がする。箔がつけが召喚獣になれるかもな」

「召喚獣って追加とか出来る物なのかい?」


それはビックリの情報だよ。基本決められた別格の精霊みたいなのが召喚獣なんじゃないのかな? リルフィン君然り、イフリートやノーム、エアリーロはその属性の頂点に位置する存在だから変わりなんてないだろうしね。

そこに成長で入れるものなら、古代とかから居るモンスターは入っちゃいそうじゃないか?


「まあそこは知らんな。なんとなく言ってみただけだ。だけどあのドラゴンは成長すればかなり凄くなりそうな気がしないか?」

「それはまあ、確かにそうだね。ピクは凄くなりそうではあるよ」


まあだからこそ、ピクを手にしたのがシルクちゃんで良かったと思えるよね。彼女ならピクを悪い事には絶対に使わないと、そう断言出来る。それ程に良い子だよ。付き合いが長いから保証出来る。


「デカくなったドラゴンをあの銀髪の女が操るのか。少し荷が重そうだな」


夜の風にその白い毛と髪を靡かせながらリルフィン君が言う。だけど僕はそうは思わない。ピクが大きくなってその背にシルクちゃんを乗せてるのは中々絵に成ると思うんだ。それに荷が重いかどうかはまだ誰もわからない。だってこれだけ広大なLROでサポートモンスターはピクだけなんだ。

ピクがどう成長するのかはシルクちゃん次第。そもそも成長要素があるのかすら謎だ。まあ無いわけないとは思うんだけど、シルクちゃんならどんな風にピクが成ってもきっと上手く付き合いきれると僕は思う。

優しいからね彼女は。そして何よりも寛容だ。気を使わなくて良い存在は楽だよね。僕は時々、他のプレイヤーから寄生虫とか呼ばれるけど、あながち間違ってないかもとか思う。シルクちゃんとなら二人だけで結構どこへも行ける。それはとても便利だよ。

パーティーメンバーを揃えるのだって大変だし、一人での移動は常に危険が付きまとう。幾ら馴れた道中だからって何が起こるか分からないのが、このLROの怖さだからね。だからこそ、シルクちゃんには助けられるよ。

誰もが求めるヒーラーを僕は常に一人独占してる訳だから、言い掛かりは仕方ない。しかも可愛くて腕が良いと成ると尚更だ。シルクちゃんは自覚が無いだけでヒーラーとしては上級で有名だからね。僕はその腰巾着なんだ。


「なにため息をついてる? 自分が欲しかったかあのドラゴン?」

「そういう事じゃないよ。僕は人の物を取る趣味は無いからね」

「上品な奴だな。欲が無いのかお前は?」


欲ね。僕だって人間だよ。欲くらいある。


「僕は誰しもに胸を張れる存在になりたいって欲があるよ。立派な人になりたいんだ」

「……変わってるなお前。いや、スオウの奴も相当変わってると思ったが、お前も大概だ」


何故か呆れられた。いや、この反応は言うなればいつも通りだ。みんな同じ様な目になるんだよね。まあ分からなくもないけど。昔まだLROが始まったばかりの時で、プレイヤーが冒険心むき出しでガツガツしてた時期。パーティーを組んでバトルに勝っても、振り分けられたアイテムを僕は仲間に譲ってた。

誰かの為になる行為をここでは僕はしたかったから、そんな事をやってた。最初は誰もがちょっと悪い体で受け取ってくれる。だけど少しすると、味を占める人とそうでない人に別れてく。そして味をしめた人達ばかりが、周りに集う様に成ってきた。

だけどそれでも、誰かの為になる事に変わりなんてないと思ってた。けどある時、僕はそんな自分を否定された。『誰かの為になるって、誰かから必要とされるってそう言う事じゃ無い』と言われたんだ。

でもこの言葉を言われた段階じゃまだそんなの理解出来なかった。僕はちゃんと喜んでもらえる事をしてると思ってたよ。だから結局はズルズルと、アイテムを献上する犬みたいな事をいつまでもやってたんだ。喜んで。


うん、今思うとここで既に大抵白い目で見られそうなんだよね。完全にパシリだし。奴隷根性でも染み付いてる奴みたいだ。だけど別にそのアイテム献上以外は普通の付き合いだったから、僕は本当に仲間の役にたってるってしか思えなかったんだと思う。


「お前もスオウもその精神はなんだ? 自己犠牲の賜物か? 他人の為に人生を捧げてるのか? もっと自由に生きれないのかよ」

「はは、それは同じ様な事を昔言われたね。でも僕は十分に自由だよ。昔に比べたら遥かに自由になった。自己犠牲は実際そこまで僕はしてないよ。スオウ君に比べたらまだまだだよね。正直あそこまで出来るかは僕には分からないよ」


誰かの為になりたいって思ってるけど、この命をかけれるかって言われたら、きっと躊躇してしまう。僕はきっとそういう人間だ。そこにきっとスオウ君と僕のはっきりとした差があると思う。口先だけと言われてもしょうがない人間なんだよね。


「あのバカは別に誰かの為に−−って思ってやってる訳じゃなさそうだしな」


ポツリと言ったリルフィン君のその言葉は深く真相を抉ってるような気がする。スオウ君は傍から見ると、誰かの為に一生懸命になってる様に見える。実際クリエ様の事はそうだろう。だけど一番の目的であるセツリちゃんの事はそうじゃなくなってる。

いや、やっぱりクリエ様の事もそうなのかも。彼はもういいと告げたクリエ様に速攻で反発したもんね。僕ならきっと、彼女の意見を尊重したかも知れない。僕とスオウ君の違いは自分を押し通すかどうかなのかな?

そんな所にある様な気がする。ほんと憧れちゃうよ。


「彼は自分を通しても仲間を作れるんだよね。ありのままで良いなんて良いよね」

「貴様もありのままじゃないのか?」

「ありのまま……と言いたい所だけど、実は違うかな? 本当の自分なんて見せたら、嫌われちゃうよ」


僕はだからこそ、誰かの為になりたいんだ。


「良く分からん奴だな」

「良く分からなくていいんだよ。直ぐに分かられたら、みんな居なくなる」


黒い世闇を見上げて僕はそう告げる。この世界で手に入れた物はどれも大切なものばかりなんだ。地位と名声もそれなりだけど、何よりも慕ってくれる人達がいっぱいいる。頼ってくれる人達もいっぱい居てくれる。仲間や友達と呼べる人達だって居る。僕はここで夢を叶えてる。

LROは僕の全てだよ。


「ふん……ん?」


リルフィン君が何かに反応してるみたいに鼻をピクピクしてる。何かを感じ取ったのかな。


「どうしたんだい?」

「いや、潮の匂いが消えたなと思って」


それはただ単に陸に来たって事では? そう思ったけど、やっぱり周りをみても明かりは無い。陸なら何処かに街や村の一つは見えても良いと思うんだけどな。そうじゃないって事は海なのか? 地図で確認すると、やっぱり海だった。

広大な海はどこまでも広がってる。でもそろそろ陸地につく頃ではあるよ。次に近づくのはノーヴィスな訳だけど、その前の不干渉地帯をこのルートじゃ通る様な。まだまだ広大なLROだからね。実は国に属してない地域なんていっぱいだ。

そもそも交通が不便って短所があるからね。遠出をするならそれなりの準備が必要だから、圧倒的に遠くて険しい部分はまだまだ謎の部分が多い。中心部分は暗黒大陸になってて、それを囲む様にそれぞれの国はあったわけだけど、その外側にも世界は続いてる。

世界を快適に回ろうと思うなら、こういうバトルシップが必要だね。遠くに僅かだけど明かりが見える。日に近づいたのかな?


「ピーピーピー」


なんだかピクが激しく回ってる。これは見つけたって合図だろうか? とりあえずバトルシップはその場で止まる。僕とリルフィン君は甲板から乗り出して周りを見回す。だけどごめん、やっぱり暗くて良く分からないや。もう少し進めば日があるんだろうけど、まだここまで届いてない。


「ピク、近くにスオウ君がいるのかい?」

「ピー!」

「一体どこに?」

「ピー!」


だめだ、僕じゃピクの言葉を解読出来ない。それならせめてもう一度先頭きって行ってくれればいんだけど、なぜかピクは羽を休める為か、僕の頭の上に乗る。えっと……これはもう役目を果たしたって事じゃないよね?


「おいおい、マジでここにはなにもないぞ。誰だそのドラゴンに任せようなんて言った奴は?」

「いや、確か君もピクの事を一目置いてなかったかな?」


手のひら返しはいけないよね。さっきまでドヤ顔で「あいつは分かってるぜ」とか言ってなかったっけ?


「それは〜ほら、あれだ。誰にでも間違いはある」

「はあ〜」


僕は思わず大きく息を吐き捨てる。でも実際どうなんだろう。あれだけしっかりと案内(?)してた感じのピクだよ。それがもう役目を果たしたと思ったのなら、本当に近くにスオウ君が居るのかも知れない。

その思ってると、近くに通信用のウインドウが開く。


『ピクの案内がなくなっちゃいましたけど、どうしたら良いんですか?』

「そうだね……近くに何か見えないのかな? どうやらピクはもう飛ぶ気がないみたいなんだ」


大きく欠伸をして、僕の頭の上で丸くなろうとしてる。疲れたんだろうけど、実際このまま寝てもらっても困るんだよね。一体どこにスオウ君は居るんだい?


『う〜ん、島は幾つかありますけど、どれかに適当に降りて見ますか?』

「島って言ってもLROの島はちゃんと島してるからね。一個一個調べてたら霧が無いような……」


人一人を探すのなら、降りないとダメだろうし……でもそんな事をやってたら何日掛かるか分かった物じゃ無い。アギトから送られて来たメールによると明日の夜までがタイムリミットみたいだし、地道になんかいってられない。

だけど元からアテがあったわけでも無いんだから、可能性を否定する様に調べない訳にもいかないよね。みんながピクならっておもったんだ。それは勿論僕だって……そのピクがこの場所だと示したのなら、それを信じるべき。


「よし、やっぱり島を一つ一つ調べて−−ん?」


なんだろう……風に乗って何かが僕の鼻にくっついた。とってみると、それは花びら? 一体どこから? 島から風にでも吹かれて舞い上がったのかな? そうおもってると、リルフィン君がこんな事を言った。


「甘い匂いがするな。大量の花の匂いだ」

「大量の? 近くの島に花がいっぱい群生してるのかな?」


僕がそんな意見を出すけど、何故かリルフィン君は首を振るう。


「いや、どうしてか分からんが、そんな遠くない気がする。ハッキリと匂うんだ。直ぐ傍に大量の花があるみたいに」

「そう……かな?」


僕は鼻をクンクンしてみるけど、正直わかんないよ。まあ普通の状態じゃ流石に元がオオカミみたいなリルフィン君に及ぶべくも無いだろうし、意味無いか。僕はスキルを使う事に。『嗅覚強化』のスキルを発動するよ。無駄にいっぱい覚えてるからね。

スキルの数が僕の自慢だ。それが自信に繋がってると言っても良い。スキルを発動させて匂いを嗅ぐと確かに花の甘ったるい匂いが鼻腔を擽る。確かに犬並みに敏感になると、近くに香水臭い人がいるのかな? って位匂うかも。

確かにこの匂いの濃さは近さを示してるような……まさか空に群生する花でもLROにはあるのかな? LROだからね。あってもおかしくはない様な気はする。そう思ってると、遠い空にあった日の光が強く射してくる。瞳に刺さるその陽射しに瞼を細める僕達。

するとその時、リルフィン君が空を指差して震える声でこう言った。


「おい……なんだあれは?」

「え?」


リルフィン君が指差してる空を僕も見上げる。青紫に染まる空。夜から朝になる境目に居る僕の目に写ったのは幾らLROだからって信じられない光景だった。日光に照らされてその姿を晒されてるのか、空と同化してたソレが白日の下に現れつつある。空が透けて見えてるけど、その輪郭は最早ハッキリと見えてる。


「なっ……」


余りの驚きで声が出ない。だってそれはとてつもなく大きい。通信の向こうの僧兵達も驚きの余りの目を丸くしてる。全長は近すぎてわかんないけど、これは島が丸まる浮いてるって感じかな? いや、島ってほどに緑が好き放題に生え散らかしてるわけじゃない。手入れをされてる感じはあるし、何よりも建物が幾つかある。

あれだね。天空のなんとか……みたいな場所だよ。


「まさか……ここにスオウ君が? そうなのかいピク?」


そう聞いてみたけど、ピクは既に深い眠りについてた。ピクは自由だね。まあここまで頑張ってくれたんだ、後は僕達の役目だよね。


『ど、どうしますか?』

「とりあえず外から見てみよう。上へお願いするよ」

『了解です』


そんな指示をだすと同時に、バトルシップは素早く動き出す。現れた謎の物体の壁に沿って上昇して行く。見た感じ天空の城よりも機械っぽくはない。むき出しの地面はそのまま土みたいだ。だけど上に行くに連れて魔法の色が濃くなる様な感じがある。なんだか周りにも幾つかの島が浮いてるしね。それに壁際に生える花、そして上から見下ろしたその全景に群生する花は全てが満開だ。

風に吹かれると、花びらが幾つも舞い上がって来る。日光のせいかどうかはわかんないけど、その花びらは微妙に煌めいてる様にも見える。魔法によって咲かされてるのかも……てかこの島自体が… …魔法物体なのかも。

でも流石にここまで大きい物は始めて見る。大きな白い城があって、その他に幾つかの建造物つが見える。なんだか絵本の中から飛び出して来た様な島だよ。


「どうするよ?」

「ピクが示した場所がここなら、調べない訳にはいかないよ。周りの島を調べるよりも、よっぽどここの方が怪しい。そうだろう?」

「確かにそうだな……だが」

「だが?」


リルフィン君がなんだか険しい顔をしてる。何かまずい事でもあるのかな?


「この匂いはキツイ。クラクラして匂いを嗅ぎ分けられない」

「それは我慢して貰うしかないかな? 取り敢えず降りてみよう」

「くっ、他人事だと思って。鼻が使えないと調子が出ないんだよこっちは。それにこの大量の花で何かを隠してる……とも取れる」

「それなら尚更だよ。その隠された物を僕達は見つけなきゃいけないんだ」


もしかしたらそれがスオウ君かも知れない。もともとこの島は全体を透過魔法で隠されてた位だよ。怪しさ満点だ。この大量の花で嗅覚封じも別段驚く事じゃない。そもそもこんな物自体の存在が驚きだからね。

LROが稼働して一年と少し。それまで一回もこんな物の目撃情報はなかった。それを僕達は見つけてしまったんだ。いや、ピクが導いてくれたんだけどね。


ゆっくりと花びらの中にバトルシップが降りる。舞い上がる花びらはやっぱりキラキラしてる。小鳥達が驚いて飛び立って逃げて行くよ。降りてみると、ますます御伽噺の中にでも迷い込んだ感じになるね。

全員武装して、周りに警戒しながら花びらの中を進む。あっ、ピクはバトルシップの中において来た。ベットの上に移して眠って貰ってる。


「胸くそ悪い場所だな」

「そうかな? 僕はとっても綺麗だと思うけど」


まあ綺麗なんだけど、どこかソワソワとしちゃうね。自分の場違い感を感じてるのかも知れない。


「取り敢えず目指すのはあの城で良いよね?」

「それしかないだろうな」


中世の城っていうよりも、細身で繊細な感じの城だ。横にはそこまで広くなくて、縦に長い感じ。この風景には良くあってるけど、孤独な城って感じだね。城下とかがあるわけでもないし、城だけがポツンとあるというのはなんだか寂しい物がある。

花びらの中を進んで行ってると、先頭きってたリルフィン君が立ち止まる。一体どうしたんだろうと思ってると、こう言った。


「誰か出てくる」

「え!?」


僕達は城の方に向かって武器を構えて警戒体制を取る。だってスオウ君を連れ去ったのはシクラ達だ。もしもここにスオウ君が居るのなら、一緒に居たっておかしくはない。警戒はしかるべきだろう。奴等の強さは実感してるからね。

僕達は開く扉を凝視しする。重い音が響き扉が開く。唾を飲み込み、何が出てくるかを見定めようとする。そして次の瞬間それが出てきた。


「あははははは、うふふふふふ、る〜んるんきゃぴ〜〜〜〜ん! 百合姉参上なり〜〜」

「「「「………………」」」」


こんなになんと声を掛けて良いのか分からない人は始めてだ。痛い……痛過ぎて言葉がもう生まれてこない。ごめん直視出来ないよ。


「うっ……うう……シクラちゃんがこれで掴みはバッチリだって言ったのに……シクラちゃんの嘘つき! バカアアアアアアアアアア!!」


そう叫びながら彼女はお花畑の向こうに消えて行く。


「一体なんだったんだ?」

「さあ、だけど不味い名前が聞こえたよ」


シクラ……確かにそう言った。なんだか変な空気になったけど、扉がドンドンと叩かれて僕達は再び警戒する。


「おい、あれって−−」

「うん、なんだか悶え苦しんでるみたいな感じだね」


扉のところで蹲って扉を叩いてる人がいる。最初は脅しか? とかおもったけど、震えてるんだよね。どうみてもあれは笑いを必死に堪えてるよ。月光色の髪が扉から覗いてる。あれはきっとシクラだろう。どうやらこっちに気づいてたっぽいね。

彼女達なら僕達が降りる前にバトルシップを落とせただろうに、それをせずに招き入れたって事は何かあるのかな?


「シクラ……だよね君は?」


僕は前に出てそう声を掛ける。するとようやく落ち着いたのかすくっと彼女は立ち上がる。そして後ろ向きのまま「ドルルルルルルルルル」とか口ずさみ始めてた。なんだろう、痛い事を言いそうな気がする。


「シクラちゃんだと思った?」


背中越しのままそういう彼女。まさか違うのか? そんな事が脳裏を一瞬過った瞬間、いつもの星を散らして彼女は振り返る。


「正解! 最強最悪なのに憎めない美少女シクラちゃんでした☆」


ふざけた事を抜かしてるけど、正直本当だから全然笑えないよ。さっきの人とは違った意味で言葉がなくなる僕達でした。

第四百四十五話です。

場面は変わり、今度はテッケンさん視点です。なんだか危ない場所に来ちゃった彼等はどうなるのか!?


てな訳で次回は日曜日にあげます。ではでは。

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