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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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どったんばったん

アホなやり取りもヒマワリの帰還で一旦お開き。僕的にはすごく助かったから良かったよ。あのままだったら、確実に僕は何かを失ってたと思うんだ。全く本当にこいつ等は恐ろしい。バカが一人いて助かった。


「はっぷっぷ〜なんだかみんなして僕の事をバカにしてる感じがする〜」

「いや、考え過ぎだろ」

「ううん、寧ろバカにされてないとでも思ってたの?」

「うんうん、ヒマがバカって世界が認識してるわよ☆」


うおおおおおおい‼ わかってたけど、二人とも酷すぎだろ。なんで他人の僕がフォローしようとしてるのに、姉妹のこいつ等が蹴落としてるの? ヒマワリの奴は目が潤んじゃってるよ。


「うっうう……ヒイちゃんもシクラも僕に冷たい。さっきまで僕を仲間外れにしてあんなに楽しそうだったのに−−」


そう言って何故か睨まれるのは僕だ。いや、どう言う事だよ。なんでそんな涙目で恨みがましい睨むの? 僕が一体何をしたよ。


「スオウはズルいズルい!! セツリ様にもシクラにも気にいられてて、姉妹の僕を追い出そうとしてるんだ!」

「してねーよ」

「嘘だ嘘だ! 僕がこんなに可哀想なのってスオウのせいだと思うんだもん!」

「それはお前の頭がアレだから−−」


ってこれを言ったらますます怒りそうだな。僕は咄嗟に言葉を飲み込む。でも気に入られて……ね。シクラはどうでも良いとして、セツリは実際どうなんだろうって思ってるんだけどな。寧ろ既に失望されてる筈だろ。

それに結局、お前たちが僕に絡むのはセツリの為ってだけだろ。


「むむ〜〜シクラに聞くけど、スオウと僕はどっちが大切なの!?」

「それって答えなきゃダメな事?」

「ダメだよ!!」

「ええ〜そっか〜☆」


ヤバイな、シクラの奴どう見ても遊ぼうとしてる。だって口元がニヤニヤしてるもん。どうやらよっぽどヒマワリをからかうのは楽しいらしい。いや、僕とヒマワリをからかうのが−−かも知らないけどね。


「う〜んそうね〜大切なのでしょ?」

「そうだよ! そんなの考えるまでもないよね!」


期待に胸を膨らませてる様にワクワクしてるヒマワリ。こいつスゲーな。全然シクラを疑ってないもん。今さっき泣かされた筈だろ? まさか既に忘れたのか? でもそれじゃあこの選択の意味がなくなるし、流石にそれはない……よな?

でも猫みたいな口元して期待に胸を膨らませて拳を握りしめて上下に振ってる様は、アホにしか見えない。お前のその目は一体どんなフィルターが掛かってるんだよ。ちゃんとシクラの奴の顔を見てみろ。

嘘つきの顔してるぞ。ニヤニヤと嫌味ったらしそうな顔だ。あれがお前が望む答えを真っ当にくれると? 悪いけど、僕にはとてもそうは思えない。なんかさっきから頻繁に僕にウインクしてくるしな。超ウゼー。


(ヒマワリって言え!)


僕は声には出さずに口を動かしてそんな指示を出す。まあシクラの奴が僕の言う事を聞くとも思えないけどさ、言わなかったら絶対に嫌がらせだけで僕を選びそうだもん。僕には嫌がらせ、ヒマワリに対してはそっちの方が面白そうって絶対に思ってるぞアイツ。


「う〜んそうだな〜☆」


勿体ぶるシクラ。すると何も聞かれてない柊がこんな事を言って来た。


「私は別に誰も大切なんかじゃないわね。私が大切なのはただ一人、セツリ様だけだもの。私達姉妹はあの人の為に有るのだから、互いにどう思ってるかなんてそんなの邪魔なだけじゃない? あの人が死ねといえば死ぬのが私達。

その筈でしょ?」

「そ! そんな事セツリ様は言わないもん!! それに僕達は姉妹なんだよ! そんな悲しい事言ったらダメだよヒイちゃん! ヒイちゃんはもっともっと末っ子らしく甘えて良いんだよ!」


ヒマワリは柊に抱き付きにいくけど、顔面を抑えられて拒否されてる。


「あうあう〜お姉ちゃんの包容力を受け止めてよ〜」

「ヒマワリに包容力なんて皆無じゃない。それに私はハッキリ言ってあんた達全員嫌いよ。後、末っ子末っ子って、私が二番目に目覚めたんだから、それって納得出来ないのよね」

「でもヒイちゃんが一番ちっちゃいよ!」

「ちっちゃい言うな!」


ヒマワリの顔を握りつぶそうとでもしてるのか、かなり変な顔に成って行ってるぞ。ヒマワリの奴はそれでも笑顔でいるけど、あれは相当痛いだろう。


「ヒイちゃんはプライド高いもんね。まあ私はそう言う序列とか気にしないんだけど☆ お姉ちゃん達はお姉ちゃんだし、二人はやっぱり妹だしね」

「それはあんたが実質私達のリーダーやってるからでしょ。私は早く目覚めたのに、あんたに使われて、その上後から目覚めた奴等にまで妹扱いされるのよ。理不尽じゃない?」


なるほどね。柊も案外悩みを抱えてたんだな。でもだからって全員嫌いは言い過ぎだと思うけどね。末っ子恐るべしだな。愛されてるだろうに、ワガママにきっと育ったんだな。知らんけど。末っ子ってそんなイメージがあるじゃん。

目覚めたのは早いらしいけど、元からそう言う風に設計されてたとしてもおかしくないしね。だって少なくとも僕が知ってるシクラもヒマワリも柊の事大好きに見える。シクラは柊には確実に甘いしな。

ヒマワリも柊に不満は抱いてても、愛がある行動してると思う。まあそれが柊にはウザく感じるのかもしれないけど。


「じゃあリーダーやってみる? 別に変わってあげてもいいわよ。私以外でせっちゃんを確実に幸せに導ける自信があるなら……だけど? でもヒイちゃんなら出来るかもね☆」

「う……それは……」

「はいはい! 僕もリーダーやってみたい!!」


元気いっぱいに手をあげるヒマワリ。でもそれは無謀と言うものだろう。


「見なかった事にしてあげるから手を下げようかヒマ☆」

「そうね、ヒマには無理ね」

「……………あい」


ぐすぐす言いながら手を下げるヒマワリの背中には哀愁が漂ってた。悲しいな。お前の行動はギャグにしかならないよ。


「じゃあ僕はヒイちゃんを押すよ。可愛い妹だからね。シクラなんて僕から見たら嫌味な姉だもん! 日曜夕方六時半のアニメの姉だもん!」

「あら奇遇ね。私はあんたをそのアニメの弟の方だと思ってたわ☆ 」


二人してビチバチ火花を飛ばす。一体なんの争いをしてるんだか。


「ちょっと、二人して勝手に熱くならないでよ。はぁ〜別にいいわよ。シクラがリーダーで。別に不満があったってあんたのやり方は今まで間違ってなかったわけだし、今変わるのは色々と不味い。私達を導くのも、使うのも、実際飄々としてるあんたがあってるわ。

私はバックアップだしね。前に出るのは苦手なの」

「そんな事ないとおもうけどな〜〜」

「まあ私もヒマワリよりは出来るとおもってるわよ」

「はっぷっぷ〜ヒイちゃんは本当にいけずだね」


なんだか勝手に解決したのか? でも姉妹云々の所は結局曖昧だな。きっとこれからもずっと、柊はヒマワリを下に見続けるんだろうなって事だけはよくわかった。


(それにしても−−だ)


ヒマワリの奴さ、忘れてる事があるよな。いや、まあ蒸し返す気もないけどね。勝手に流れたのなら、それでいい。変な嫉妬に巻き込まれるのはゴメンだ。そう思ってると、シクラの奴が僕が安心した頃に爆弾を投下しやがる。


「ねぇねぇ、ヒイちゃんはスオウの事はどう思ってるの? 教えてよ☆」


こいつ絶対に狙ってるだろ。僕は細めた目をシクラに向ける。そしてそんなシクラの一言でヒマワリの奴が「あっ!」っとか言ってるから、もしかしたら思い出したのかもしれない。


「シクラ! そうだったよ。質問の答え聞いてない!」

「ニワトリ並みの脳みそなのに良く思い出したわね☆ まあだけどそれよりもまずはヒイちゃんの答えでしょ?」


そう言ってシクラは柊に視線を向ける。すると柊は僕をジトーと半目で見つめて来る。なんだその目は。どう受け取ればいいんだよ? そう思ってると、ゆっくりと上がって来る腕が僕を指して、そしてこう言われたよ。


「……死ねば良いのに」


酷すぎだろ!! 僕が一体お前に何をしたよ!!


「したじゃない。私を酷い目に合わせた」

「うっ……なんだかそう言うとただの戦闘が途端に卑猥な事をやったかの様な表現に変わるな」


なんていう不思議! でも辞めて欲しいよな。女の子ってそういう所ズルいだろ。特にこう言う強い癖に女の武器まで使って来るとか、ズルすぎる。


「ひわい?」

「Hな事って事よ。ヒイちゃんはスオウにHな事をされたんだって」

「ええ!? それは許せないかもだよ!!」

「だからしてねぇよ!!」


バカは思い込み激しいんだからそういう間違った事を吹き込むなよな。僕の命に関わるだろうが! バカだけどチートだぞそいつ。


「おい、ちゃんと戦闘しただけってお前からも−−」

「私、切り刻まれてあられもない姿になりました」

「ヒイちゃんの柔肌になんて事を!!」

「だかたそれやめろ!!」


柊の奴、僕に負けた事根に持ってるんだろう!? 絶対にそうだろ。だからワザとシクラの口車にのって僕を困らせようと……やっぱお前ら仲いい姉妹だよ! この悪魔と小悪魔コンビが!! うう、ここに僕の味方はいないよ。既にみんなの姿が懐かしく感じる。

でもあれから結構時間経ってる筈なのに、メールも一つもこないとは……まあ監視が厳しいとか理由は色々と考えられるけどさ、一人くらいから心配するメールが届いても良いと思うんだ。それなのに一通もなくて……自分から送っても勿論良いんだけど、なんだかそれは負けた気がする。誰とも戦ってなんかないけど。

それよりも今は、目の前のバカが問題だな。今にも襲いかかって来そうなオーラを振りまいてるぞ。


「柊、僕はどうしたら良いんだ?」

「死んでくれたらいいけど、それはシクラの計画的にまずそうだからそうね−−土下座なんてどうかしら? 私の様な少女に土下座するって結構屈辱じゃない?」


土下座−−この姉妹は本当に鬼畜だな。確かにこんな自分よりも小さな子に土下座とか屈辱だろ。まあのローレの奴と比べるなら、まだ柊の方が抵抗少なくいけそうだけど……うん、その考えもどうなんだろうって感じだな。こいつ一応敵だし。


「ほら、どうしたの? さっさとやらないと、そこのバカが暴走するわよ」

「うーううーうーううー!!」


ヒマワリの呻き声みたいなのがなんか癪に触るな。でも今の僕はこいつとまともにやりあう力ないし……でも土下座は何かを失いそうな気もする。いや、プライドとかそんなのは気持ちの問題かな。何も気にせずにやってしまえば、土下座もお辞儀も別に大差なんてないよな。


(とは思うものの……)


実践するとなるとやっぱり何処かに抵抗が生まれるな。くっそ〜、僕はチラチラと視線をシクラに送る。「どうにかしろ」的な視線をね。いや、一番頼っちゃ駄目な奴だけど、他に誰もいないし、シクラの言う事は二人とも聞くだろ。


「スオウ−−−−大丈夫。格好良く撮って額縁に飾って上げるから☆」


ダメだこいつ。どうやらやっぱり誰も味方はいないみたいだな。ここを切り抜けるにはこのバカをどうにかしないと……命の危険を感じる事さえなかったら、土下座なんてしなくて良いんだよ。でも今のヒマワリは僕の事を大切な妹を襲った悪漢みたいに見てるだろうからな〜さてどうするか。半端な言葉なんて聞いてくれそうもない雰囲気だしな。


「ヒマワリ! お前また忘れてるぞ! シクラから質問の答え聞いてないだろ!」

「今は僕の事よりもヒイちゃんの事の方が大事かも」


駄目か。全く散々バカにされてるのに、ヒマワリの奴は健気だな。


「さあスオウ! ヒイちゃんにした事の反省をしてもらおうかな! 僕的にはぶっ飛ばしたいけど、ヒイちゃんが土下座で許すのなら、それでいいよ。でも土下座しないのなら……俺の拳が火をふくじぇえ」


コキコキと指の骨を鳴らして、変な決めゼリフみたいなのを決めるヒマワリ。やる気まんまんだな。良い様に使われてると気づけよ。


「反省って……言っとくけど僕達は正々堂々と戦っただけだ。ヒマワリ、正々堂々この意味がわかるか?」

「バカにすんな! そのくらい余裕だよ! 確か正々堂々って意味だよね」


お前はどこまでバカなんだ? 僕は悲しく成ってくるよ。でもどうやらそれは僕だけじゃなく、周りの二人もそうだったらしい。なんだか二人とも頭を抱えて深いため息をついてる。くっそ、このバカに四字熟語とか難しすぎたか。

思いを伝えるにしてももっと簡単簡潔な文じゃないと、ヒマワリの頭には難しすぎるんだ。


「ヒマワリ、今のは一旦忘れろ。じゃあお前はさヒマワリ。攻撃する時、敵がどうなるか? とか考えて攻撃するか?」

「ううん、僕は基本何も考えずに攻撃するもん!」


だろうな。自信満々に自分はバカですって言ってるぞ。


「じゃあ、その攻撃で服がビリビリ〜っと破れたら、それは悪い事なのか?」

「う〜ん、戦闘じゃしょうがないよね」

「それだよ!! 僕が言いたいのはそれだ!!」


ようやく伝わったか! 流石に自分で言ったんだから理解したよな? これでなんとか土下座なんて事、しなくて済むかも。この曇天の空に、ようやく光明が見出せたかもしれないな。


「なるほど、戦闘じゃしょうがないのか。戦ってたらどうしても服とか刻まれちゃうよね」

「その通りだよ! いや〜案外頭良いなお前」

「え? え〜あはは、まあこのくらいは当然って言うか〜実は僕は頭良かったりするかも〜だよね!」


体をクネクネさせた後にキラ〜んと瞳を光らせて喜んでるヒマワリ。こいつは直ぐに調子に乗るタイプだな。いや、これまでの事でわかってたけどね。


「じゃあ、土下座はいいな。これでどっちがおかしい事を言ってるのかわかっただろ?」

「え? 何が?」

「……………」


もう嫌だこいつ。僕の心はこいつのバカさ加減に折れそうだよ。今までの流れはなんだったんだよ。ただの茶番か!!


「頭でヒマワリを誘導するなんて無駄な事よ。ヒマワリの脳内回路は私達が持ってる物とは作りが完全に違うのよ」

「くっ……」


そんな事ある分けない!! −−って叫びたいけど、不思議と納得した自分が居る。柊の奴はどうせヒマワリは理解出来ないからって僕達の会話をスルーしてたのか。それにしてもこのバカのバカさは僕の想定の上をいってるのか。打つ手がない。バカは最強だな。


「おらおら〜早く土下座しちゃえよ!」

「……………………………………………すいまっせんした〜」


もう色々と諦めの境地にたどり着いた僕は無心で土下座してました。ええ、やっちゃったとも!! シクラがゲラゲラ笑ってるなか、僕は眉毛一つ動かさない無表情でやりきったよ。ふん、これで良いんだろ。これで! 僕は自分の中で心を殺す術を身につけたぜ。


「どうだったヒイちゃん?」

「ふん、実際どうでも良かったんだけどね。土下座されたって、私の屈辱は消えないし」


じゃあなんでやらせたんだよこの野郎。怒りが沸々と湧き上がってくるぞ。するとパンパンと手を叩く音がこの場に響く。


「さあ、もういいでしょ。そろそろ帰らないと、せっちゃんにばれちゃうわ。後は勝手にやってねスオウ」

「ちょっと待てシクラ。お前はヒマワリの質問に結局答えてないぞ」

「なんだっけそれ? ヒマ覚えてる?」

「う〜ん、なんだっけ?」

「なんでお前が覚えてないんだよ!!」


僕は思わず地団駄を踏むよ。色々と悔しい。なんだかいっぱい納得出来ない。こいつといると、気を張るのがバカらしく思えるな。


「ふふ、そういう姿を見れただけで良いかもね。不本意ながらもあんたを生きながらせた甲斐があったって物よ」

「柊……お前」


僕は柊に鋭い視線を向けるけど、直ぐにやめた。柊にはまだ先に言う事がある事を思い出したよ。確かに色々と不満はある……あるけど、ちゃんと伝えないといけない事はつたえないとな。


「−−いや、そういえばお礼言ってなかったよな。助かったよ柊。お前のお陰で今僕はこうやって生きてられる。ありがとう」

「……それって今言う事? 言っとくけど、今度ぶつかる時は、助ける−−なんて事しないわよ。私達は敵なんだから」

「そんな事、百も承知だっての。馴れ合いなんてしない。僕はセツリをリアルに連れ戻してみせる。だけどお礼はちゃんと言わないと、だろ?」

「……やっぱりあんたっておかしな奴ね。嫌いだわ」


あらら、結局嫌われちゃったよ。でもなんだか柔らかい笑顔を見せてくれた気がするのは気のせいなのかな? 実は言葉とは裏腹とか−−は期待しすぎか。


「よーし、帰ったらいっぱい食うぞ!」

「何言ってるのヒマ? アレ突破出来なかったんだから食事禁止でしょアンタ☆」

「ええ〜〜〜!? 聞いてないよそんなの!?」

「ご褒美にはリスクが付き物。当然でしょ☆」

「じゃあもう一回! もう一回やってくるから!」

「駄目よ。時間切れ。それに諦めてたじゃないあんた」

「あれは〜なんて言うか〜ハーフタイムって言うか〜」

「じゃあハーフタイム中に逃げ出しての失格ね。あんたは戦場に舞い戻らなかった負け犬よ☆」

「ガガ〜ン!!」


効果音を自分で言って崩れ落ちるヒマワリ。まっ、しょうがないな。バカには良いお仕置きだ。僕は心のなかでガッツポーズしてる。てか待てよ。


「おい、お前達は僕の足になるんじゃなかったのかよ。こんな所に一人置き去りか?」

「何? そんなに私達と居たいの? まあわかるけど、私達は美少女だもんね☆ でも女の子の行動を縛りたがる男は駄目だと思うの」


誰がお前達と長くいたいかよ。ただ僕は約束は守れって言ってるだけ。


「別に期限なんか決めてないじゃない。一回のタクシー代はタダにしてあげたんだからそれで満足してよ。二回目からは通常の運賃頂くぞ☆」

「確かに期限はなかったけど、それは無期限ともとれるよな?」

「私達がそんな安い女に見えてたの? 心外だぞ☆」


うっ……なんだかシクラの空気が少し変わった感じがする。ここら辺で引いとけと僕の第六感が告げてるぞ。顔は笑ってるんだけど、異様な迫力があると言うか……


「ふふ、大丈夫よスオウ。私達は行くけど、あんたの仲間が来てるわ」

「かなり離れた筈だろ? 見つけれるとは思えないけどな」

「仲間をもっと信じてあげても良いと思うけど☆ まあどっちみち私達はいくから、命が助かっただけで良かったって思ってね。サクヤお姉様お願いします」


命が助かっただけ……確かにそれを言われるとこれ以上を求める事は出来なくなるな。空中に現れる、ノンセルス1で見た魔方陣。まあこれでここまで来たわけだけど……便利だなこれ。


「ほら、行くわよヒマ」

「う〜」


ふてくされながらも魔方陣に飛び込んでくヒマワリ。そして嫌味ったらしく手を振りながらシクラも行って、それに続いて柊も行く。そして最後に術者のサクヤ。僕はその背に声をかける。


「サクヤ!」


するとサクヤは振り向いてくれた。生気のない瞳が僕を見つめてる。声は届いてる……のかな? わかんないけど、僕は伝えたい事がある。


「良かったよ。お前の姿みれて。なんかちょっと安心した。待っててくれ。お前もセツリも助ける! 絶対だ!!」


少しだけ流れた沈黙。サクヤは何も言わずに転移魔方陣へと消えて行く。なんの反応もなかったけど、でも良いんだ。ただ伝えたかっただけだから。きっとずっと泣いてるだろうあいつにさ。


魔方陣が消えると途端に静かになる。聞こえるのは遠くで吹き荒れる風の音。あのヒマワリでも突破出来なかった風の棲家。けど何かあるんだろう場所なのは確実。僕はなんとしてもあの風の棲家の中へ行かないといけない。

後戻りなんてもう出来ないんだから。

第四百三十二話です。

次回はきっと七日か八日に上げます。実家の方じゃネットないでしょうからごめんなさい。ではでは次あげる時まで ~。

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