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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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ワガママな私

「さて、まだ面白くなりそうね」


私はテラスの柵に腰掛けながらそう呟く。青が戻った空から吹いて来る風はなかなかに気持ちいいものだ。数時間前の騒動が嘘の様に静かになったノンセルス1の喧騒はいつも通りに感じる。まあ無理にでもいつも通りを装ってる……ってのもあるかもね。なんせここには邪神が居るんだもの。あんな戦闘と、そしてモンスターの大軍を見せつけられて、あいつに恐怖を抱かない奴はいないでしょう。

まあその前から、普通にNPCは恐怖してた筈だけど、あの戦闘はそれを更に強力に印象付けた筈だ。まさに圧倒的……そう圧倒的だったもの。スオウには悪かったけど、絶望って恐怖はスパイスとして必要だったのよ。


(あいつを敵に回しちゃいけない)


それを強力に思わせたかったもの。誰もが有無を言わさぬ程に、きっとあれで感じてくれた筈。仲間が居てもテトラが負けるとは思わないけど、圧倒的って奴が欲しかったのよね。でもどうせ負けないのなら、パーティーを圧倒するほうが印象的には強かったかしらね?

だけどまぁ、そこら辺は別にどっちでも良かった事。スオウはその役目を果たしてくれたしね。


「やっぱり、あの厄介な存在も嗅ぎ回ってたわね」


LROのシステムの外側に居ると言われてる奴等。アルテミナスの話は有名過ぎるけど、実際にこの目で見たかった。スオウを出汁にすれば出てくるかな? って思ったけど、思惑通りで良かったわ。それに予定外に殺さずに済んだしね。あそこで殺すのはしょうがないって思ってたけど、ホント悪運が強い。

それにスオウが後半に見せたあの力は興味深い。誰もがもう駄目だって思う所で、立ち上がる。本当に、見てて飽きない奴って思った。もう私の思い描くピースは揃ってる。だけど私は欲深いからね。今のままで滞り無くきっと世界は変わるだろう。でも、まだ何かが起こるのなら起きても良いと思ってる。

最後の懸念はあの外側の存在の姉妹な訳だけど、五種族が最大級の兵力を投入すれば足止め位は出来るでしょう。それにその位じゃ私が求めてるかもしれない「何か」じゃない。予想出来る事なんか、想定内でしかない。もしもまだ何かが起こり得るのなら、それは新たなピースが生まれる期待をしちゃうわ。

そんな何かを少しだけ期待して、私は満身創痍のスオウに貴重な情報を渡したわけだしね。何を起こしてくれるのか……スオウの行動は大体察せても、それだけじゃ済まないから面白い。あの力も、実際は仲間が居なくなっても立ち向かうのか−−って所もね。でも確証は無かったけど、スオウならって思ってたからやった事でもあるのよね。

あの時の表情はスクショ(スクリーンショット)を撮って置いたから、いつでも楽しめるわ。


「それにしても……」


私はそう呟きながら、部屋のほうのソファーに横たわってるクリエへと目を向ける。小さな体、小さな姿……それは庇護欲をそそられるってのはわかるけど、何よりもあれはNPCなのよ。夢でしかない存在に、スオウはどう考えてもこだわり過ぎね。

まあ、彼の言動からどうやらクリエ以外にも彼を突き動かす誰か−−が居るみたいだけど、その存在は知らない。その第二の存在が誰かは別としても、でもだからって全く勝てない戦いに挑むってのは、無謀としか言いようがないわよね。別にゲームとしてだけならわからなくもないけど、スオウにとってはそうじゃないんだし、命の賭けどころをミスってた−−−−と思ってたんだけど、あそこで死ななかったんだから、間違って無かったのかな?

どうやら、あの子にもスオウの思いは届いた様だし、無謀も時には必要なのかもね。まあ、私はしないけど。限りなくゼロに近い何かを信じての行動なんて、計画とは呼べないしね。でも実際は、スオウはそんな何かを信じてた訳でもないわよね。

勝てる……と本気で思ってたわけでもないのなら、死ぬ覚悟を決めてたのかも。けどどうしてかな? なんだか違和感があるのよね。まあそんなのはもう一度現れるだろう時にでも聞けば良い事ね。そもそもそこまで追い込んだ自分が、その時のスオウの気持ちを考察するのも失礼かも。後はただただ、静かに待っとけば良いだけだから、暇なのかな。


「そういえばスオウの仲間が近くに居るんだし、聞きたい事があるから行ってみよう−−って歓迎される訳もないわよね」


セラをからかいに行くのも楽しそうだけど、アイリが邪魔ね。あのお嬢最近変わったから。それにやっぱりこの姿で−−ってあれ? そういえばあの子はどこ? そう思って部屋に戻ってキョロキョロあたりを見回すと、部屋の隅っこで黒いオーラを放ってる小さな背中が見えた。


「なにそんな所でふてくされてるのよ?」

「ローレ様は……ぐずっ、もう私を必要としてないんですね……」


ああ〜その事ね。そう言えばまだわからないとか言ってた割には簡単に姿をバラしたものね。期待させてた分だけショックが大きかったって訳ね。でも自分でだって「例えそうなってもどうにかします」的な事を言ってなかった?

まあ期待させてた私が悪いけどね。やっぱりハッキリとお役御免と言うべきだったわね。だって実はそろそろ面倒だなって思ってたのよ。しかもあの場面で替え玉ってのもね。出来ない事は無かったけど、色々と都合って奴があったのよ。


「折角……準備までしてたのにぃ……」


そう言って震える彼女は私と同じ格好してる。服も履物も髪型も。これは実際、どっちで行くか迷ったって事だよ。最後まで正体隠したって良かった……けど、ここはカーテン越しとは違うじゃない。今までは表情とかそんなの全部、隠してこれたけど生はきっと違うでしょう。

そろそろ荷が重いかなって思ったのが正直な所。この子は良くやってくれたけど、基本良い子なのよね。察しの良い奴に変な疑いと疑問を持たれるよりは、堂々と宣言したほうが楽じゃない。


「確かに……私じゃローレ様の完璧な代わりにはきっと成れなかったと思う……ヒックっ、結局何も出来なかったし……」

「これからは別の方面で役に立って貰うわよ。そのつもりでしょ?」

「でもぉ……きっと私役立たずかなぁって……」


そう言って塞ぎ込むその子。もう戻って来てたからずっとそうやって泣いてたの? 数時間も立ってるんだからそろそろ立ち直りなさいよ。それに−−


「役立たずなんてわかってる事よ。それでも解雇しないから安心しなさい」

「ダメです!」


ええ!? いきなり大きな声をだす彼女。どうしてここで不満になるのよ。とっても安心出来る言葉だった筈でしょ?


「だって……私はローレ様の足を引っ張るなんてしたくない……から。こんな私でも……役に立ててた事が嬉しかったんです。でももうお役に立つ事が出来ないなら、人思いに!」


そう言って勢いよくこっちを向くその子。まるで覚悟を決めたかの様な瞳してる。眉を釣り上げて、必死に強がってる−−それが一目でわかるわよ。泣き腫らした目は赤いし、必死に釣り上げてる眉はピクピクしてるもの。

全く頑張るって言ってたのに、その言葉はどうしたのよ? 用済みになった瞬間、怖くなったのかしら。私は腰を下ろして、目線をその子に合わせる。それでもまだ、私が高いけど……両膝に頬を乗せて、不貞腐れた感じをだしながら、ジトーと見つめる。


「なっ、なんですか? 愛想つきましたか? それならほら! 早く言っちゃってください!」


瞳を硬く結び、拳を握りしめてそう言い放つ彼女。全く、しょうがない子なんだから。どうしてわからないかしらね。


「アンタはもっと私の事を理解してると思ってたのに……」


そう呟いて私はウインドウを開く。そしてあるアイテムを取り出した。


「はいコレ」

「えっと……どこに血判押せば良いんですかこれ?」

「全く、これが解雇通知書にでも見える?」

「いえ全く。だから聞いてるのに!」

「だから違うわよ。これを使ってやる事と言ったら、一つしかないじゃない。ほら」


そう言って私は彼女に背中を向けて床にペタンと腰を下ろす。床に広がる金色の髪を一掴みして、細やかに落とす。キラキラと輝く自慢の髪だ。そして後はなにも言わずに待つだけ。静寂の時が流れてる。天井が高いわね。それに玉ねぎみたいな屋根部分がくり抜かれた様になってるから、その分だけさらに高いわ。

そう思ってると、髪に入る櫛の感触を感じた。髪と髪の隙間に入り、優しく撫でられるこの感じ。そう私が彼女に渡したアイテムは櫛だったの。なんの変哲もない、だけどお気に入りの奴。そんな物を取り出して、私はこの子に渡したの。


「なんのつもりですか? 私は髪とかし要因ってことですか?」

「ふふっ、そうね。それでも良いんじゃんない? てか、よく考えたらさっきの血判って何よ? マジだったの?」


時間差で効いてきたじゃない。自分の指を切るとか絶対出来ないでしょ。


「まっ、マジですよ! その位の覚悟を見せようって事じゃないですか!」

「そうだったんだ。ボケかと思ったわ」

「あんな場面でボケなんてしません。全くローレ様は直ぐに私をからかって遊ぶんですから」


なんだか怒らせちゃったかな?


「ごめんごめん。ねえちょっと相談していい?」

「なんだか私の話はスルーされてますね。もうローレ様は相変わらずです。何なんですか一体?」


ぶつくさ言いながらも丁寧に髪をといてくれてる彼女にこんな事を言うのは気が引けるけど、まあ言ってみよう。


「あのね、この髪切ろうかなって思ってるの」

「なにいっとんですかあんたは!!!」


いや、あんたが誰に向かって「なにいっとんですか!!!」だよ。てかなんか口調が違うわ。それだけ驚愕したって事? そう思ってると、その子は私の髪を一房持って私の見える範囲に現れる。


「こんなに! ……こんなに綺麗なのに切るなんて勿体無いです!!」

「でも綺麗だけの髪なんてそこら中にいるし、特徴付になってないって言うかぁ」

「なってますよ! ローレ様の髪程綺麗で輝いてる髪なんてありません!」

「でもあのシクラの髪は輝いてたわよ」

「あんな太陽のお陰で光れる月光色なんて、本物の光じゃない! ローレ様の髪は内側から光り輝く事の出来る髪なんです!!」


私の髪はそれほどオカルトチックじゃないと思うんだけど……でも良い感じじゃない。本当に、読みやすい子よね。そこら辺も可愛いんだけど。それに何よりも、本当に私の事を好きで居てくれてる。それこそ、どんな私でも。そこら辺が好きよ。……だから手放してあげない。


「それは嬉しいけど、毎日とかすのも洗うのもこう長いとやり辛いのよね。丸坊主にするわけじゃないし、別に良いんじゃないかなって? ショートのローレ様も見てみたい−−って言って?」

「駄目です! 勿体無さすぎです! それならもっともっと、この長さを楽しめば良いんです! 結んだり編んだり、色々出来るじゃないですか」

「だからそんなのも面倒なのよ。これからはブラッシングしてくれる子も居なくなりそうだし、この輝きもあと三日かもね」

「たった三日!? そんなの駄目駄目です! 私が毎日毎日髪をとかしますからそれはだめえええええええええ!!」


そんな叫びがこの部屋に響き渡る。寝てるクリエが起きそうなほどの叫びだったけど、全然どうやらそんな事は無かった。てか、天罰を食らってそれからずっと寝てるから、どうなんだろう? 異常かもしれないわね。

だけどそこら辺は私にはわからないし、とりあえず今はこっちでしょ。


「言ったわね? 今、私の髪は自分がとかすって、言ったわね?」

「そうですけど……まさか!」

「ふふっ、しょうがないから許してあげる。私に髪を切らせたくなかったら、これからも私の髪のお世話をしてね」


私が膝に頬を乗せて微笑むと、彼女は私の髪にポタポタと涙を落とす。


「こんな私で良いんですか? 髪を人質にするなんてズルいです……髪の毛は女の子の命なんですよ」

「それだけの価値があるって、そう思いなさい。私はね、あんたが思ってるよりもあんたが好きよ」

「私は……その千倍位ローレ様が大好きですよ……」

「そう、それなら余計な事は考えなくても良いじゃない。お互いに居心地が良いから、一緒に居るの。今更あんた以外が傍についてもね、しっくりこないのよ」

「……はい」


震える声でそうつぶやく彼女。涙を拭いて、見せた笑顔は吹っ切れた顔してた。そして再び後ろに回って、私の髪をとかしだす。


「ジッとしててくださいね。長いからやりがいあります!」

「ただジッとしてるだけってのもつまらないわね」

「駄目です! これは私のお仕事なんですから! ローレ様に誰もが見惚れるように、完璧にとかすんです」


あらら、さっきまで失業しそうになってたのに、随分元気になっちゃって。


「そうだ、これだけ長いんだからもっともっと遊んでみましょう。三つ編みにするとか、ポニテにするとか色々あります。もっともおーーと、ローレ様を魅力的に見せるんです!」

「まあ……なんでも良いわよ」


元気になってくれたのならね。それにやっぱり髪を触らせるのは信頼しあった相手じゃないと嫌じゃない。面倒臭がりの私は自分でなんてしないのよ。だからこそ、必要って事。全く、ここまで私を振り回すのはあんたくらいよ。

私は小さいわ。でも、もっと小さな貴女が必要なの。足首を反らして下駄を履いてる自分の足を無造作にもて遊ぶ。後ろでは髪を必死にとかす安心出来る子。心地良い櫛が髪を梳く感触。思わずホッと出来る、そんな感覚は貴重よ。

だからこそ、手放す事なんか出来ないわ。


そう思ってると、テラスのほうに沸き立つ黒い影。そんな影の中から姿を表すのは邪神テトラ。全くせっかく和んでたのに緊迫感の元が戻って来ちゃったわね。そんな邪神はテラスから部屋に入ってくる所で私達に気付いてこんな事を言う。


「なにやってる?」

「見てわからない? 和んでるの。邪魔しないで。てかとっとと消えなさいよ。怖がってるじゃない」


折角の空気が台無しでしょ。基本あんたは怖がられる存在なんだから、もっと慎ましやかにしといて貰いたいわ。


「俺にそんな口の利き方するのはお前くらいだよローレ。全く、どこまでも生意気な奴だ。敵なら真っ先に殺してやるんだがな」

「奇遇ね。私もあんたが敵だったら、真っ先に無力化するわ。良かったわね。お互いにまだ協力関係で」

「協力? 俺たちは利用してるだけだろ。堂々と神を利用するお前は肝が座り過ぎだけどな」


神ね。確かに神クラスの強さしてるのは認めるわ。でもこうやって普通に接してる分にはそう言うの感じないのよね。ついつい忘れるというか。


「それ褒め言葉でしょ? てか、もう捜索は良いの? シクラを執拗に追いかけてたんじゃなかったの?」

「別に俺は奴らを捜しに行ってたわけじゃない。近くに奴等の気配はないしな。それよりもモンスター共を落ち着かせるのが大変だっただけだ。目の前に餌があるのに、食わせないってのも苦労するものなんだぞ」

「アンタには無条件で従うんじゃないの?」


なんの為の邪神よ?


「確かに大抵の奴らはそうだが、色々と説得しとかないといけない奴らが居るんだよ。俺の願いが叶う前にやっとかないと、いけないんだが……まだ大半の奴等が眠ってるのが厄介だな」

「あんたクラスの敵が居るって事?」

「俺程じゃない敵が居るって事だよ。だがかなり強い。特別な奴らだからな。そいつらは無条件で俺の言葉に従う奴等とはきっと違う」

「それじゃあ、私の構想が実現しないじゃない」


話が違うわよ。あんたが居なくなれば邪神の言葉に従うモンスター共を矯正して平和を実現する筈だったでしょ。


「そもそも完全な平和などお前も思っては居なかったろう。それに今よりも確実に平和にはなる。そこら辺を外出した程度で襲われる……なんて事はなくなる筈だからな」

「まぁ……それはそうね」


私は不安気にそうつぶやく。やっぱり一筋縄ではいかないわね。でもそもそもの要因は外的な物じゃないのよね。人が争う理由は人にあるわ。世界に敵が居なかったら、それでも人はどこかに敵を作るでしょう。

そんな心はきっと変えられない。結局、完全平和なんて、理想であって机上の空論でしかない。


「でも……私が求めるのがそこら辺の妥協者と同じだと思って貰っては困るわね。取り敢えずそいつ等の情報も横しなさい。あんたが居なくなった後に、そいつ等の相手をするのは私達なんだから当然でしょ?」

「そうだな。だが一つ確かめて起きたい事がある」

「何よ?」


そう適当に言ってると、膝を地面に落としたテトラの奴が、私の顎を持ち上げて顔を上げさせられた。なんて無作法な奴。女の子の顎を強引に掴んで上げさせるとは、私の何よアンタ。目の前に映るテトラの顔は結構近い。


「お前……今度は何を企んでる? 神をも身褒めるその頭脳。一体どこまで見てる?」

「なんの事かしら?」

「とぼけるなよ。俺が気づかないとでも? あの時、何をスオウに吹き込んだ?」


案外目敏い奴ね。バレてたか。吸い込まれそうな真っ黒な瞳。私とは正反対の漆黒の髪。静かに感じるその黒は……静かだからこそ、闇の怖さを備えてると私は思ってる。ここでぶつかるのは得策じゃないしね。


「別に新しいピースの欠片になれるかなって……思っただけ。補う物じゃなくて、新しい形に想像できるピースね。聞きなさい邪神。私が求める物はね、机上の空論や青臭い理想論なのよ。そんな物を本気で追い求めようかなって実は思ってたりしてる。

色々と斜に構えた態度とってるけど、私は本気で平和って奴を求めてるのよ」

「平和……か」

「そう、でも厳密にはちょっと違うかも。私は誰もが出来ないと思ってる事をやりたいのかも知れないわ。だから求めてるのは平和ってわけじゃなく、人が到達出来てない地点かも。実際平和がどれだけの物かなんか私は興味ないしね」

「くっははは、随分と歪んだヒーローだな貴様は」


いきなり笑いだしたテトラ。どこが壺ったか知らないけど、そろそろ離してくれないかしら? いつまで乙女の顎を鷲掴みにしてる気よ。良い加減首が痛いっての。


「ははっ済まん済まん」

「あんた、これで納得したの? すべては私の我儘よ?」

「納得などしてないさ。だがやはり、神を振り回す人は面白い。そして、お前達が見せる物が、俺達が願った物かもとも思う」


お前達? それって私とスオウの事かしら。そして俺達……それは自身と女神の事でしょう。あんた達の願った物はわかるわ。テトラ自身の願いと言動で、明言されなくても察しはつく。するとテトラは私を解放して、クリエの傍に。


「別に今更お前が何を企もうとどうでもいいさ。ここまで来たのなら……いや、お膳立てされたのなら、最後は自分の力で掴み取ろう。全ての障害は跳ね返す。それこそ邪神の生き様だ。なあ、そうだろシスカ? 最後まで俺は、俺が選んだ姿を貫くさ」


今までで一番優しい表情をしてクリエを撫でるテトラ。深い深い筈の漆黒で、静かだからこそ恐怖を携えるその雰囲気が今だけは少し違った。真っ暗闇でなんの鳴き声さえもしない森の深淵をいつものテトラの闇だとするなら、今のテトラは夜空の下の印象。そこは変わらない闇の筈なのに、恐怖なんて感じ得ない、優しい光に溢れる闇。

横目でそんなテトラを見てると、静かに響く振動に気付いた。ココココと揺れてたのが、次第にゴゴゴゴゴゴと大きくなる。所々から聞こえる慌てる様な声。変革の影響? いや、これは……私はクスリと笑って「続けて」と彼女に告げる。

不安気な彼女は、それでも私の言葉に従って、髪をとかしてくれる。見逃してあげるわ。今はね。テトラも別段気にしてない様だし、良いでしょう。足掻いてみなさい。自分たちの無力差が悔しかったならね。

第四百二十八話です。

やっぱり書き始めや、改稿後の一マス空けがなってない。幾ら明けてもどうやら同じみたいです。パソコンで投稿してる時はなかったのにな。どうしてだろ?

訳がわかんないよ。

取り敢えず次回は木曜日に上げます。

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