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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
421/2702

バカが騒ぐ

「エイルと! ノウイ!の! 何故何故LROコーナー!!」


わーわー(パチパチパチ)


「さて、では不本意だけどまともにやろうか」

「そうっすね。ひどく怒られたっすし、ここからはお互いの遺恨はひとまず置いておくっす」


ギスギス……


「じゃあ早速何故何故を聞こうかな。ゲストのノウイにふさわしい何故何故だぜ」

「バチコーーーイっす!!」

「ぶっちゃけ、ミラージュコロイドってどんなスキルなんだよ?」

「ふっ−−す。ミラージュコロイドは、時と妄執に縛られない自由をおうがするためのスキル−−−−っすかね?」

「うわっ、こいつ何カッコつけて中二病な事言ってんだ? 超痛い。てか体がむず痒い」

「ふ……ふはははははははっす。別に痛くも痒くもないっす。良いじゃないっすか、たまには自分だって格好付けたって!!」

「まあ普段全然かっこいい所ではないもんなお前」

「ぬぐっ……エイルにだけは言われたくないっす。実をいうと、もう自分はなくてはならない存在っすよ。そうそうにリストラされた奴と一緒にしないで欲しいっす」

「ちっ、お前の存在価値なんてミラージュコロイドだけじゃないか!」


ギスギスギス……


「それなら、エイルは自分になんの価値もないって言ってるのと同義っすよ。まあ、エイル以上のソーサラーなんてここに満ち溢れてるっすからね。今のままじゃ没個性っすよ」

「逃げるだけしか出来ない奴にバカにされるんなて屈辱だ……」

「確かに自分は逃げるだけっすけど、それも極めれば立派な武器なんす。そこら辺エイル君にはわかんなしっすかね~」

「んぎぎぎぎぎぎぎぎぎ……」


ギスギスギスギス


「まあだけど、エイル君はまだ始めたばっかっすでしょ? まだ個性とか言える時期じゃないかもしれないっすね。でもこのままじゃ、本編復帰は難しいんじゃないっすかね? いくら役割的に出てきてないソーサラーって言っても、今の敵のレベルにはエイル君じゃ………うぷぷっすよー」


ギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギスギス−−−−−−−−バッカーーーーーーーン!!


「黙って聞いてればふざけんなああああああ!! ちょっと僕よりも先輩だからってお前にだけは先輩ヅラしてほしくない!! お前なんて誰も見習わねーよ!!」

「ミラージュコロイドは移動・侵入・逃走となんにでも使える万能スキルっすよ!!」

「戦闘力が落ちるとかゴミだろ!!」

「だからこそのパーティなんす!! ミラージュコロイドはパーティのサポートなんす! 最大三十を超える鏡を使っての鏡界間移動は戦闘の幅を広げるんす! それは戦闘力低下を補うには余りある能力だと思うっす!」

「思おうとしてるだけだろ。よく自分も戦えたらって思ってるくせに!」

「うぐっ!? それは否定出来ないっすけど、自分だけの役割って奴が自分にはあるっす。自分じゃなきゃだめって奴がっす! それが必要とされる理由なんすよ!」

「んぎぎ……」

「エイル君には、自分を否定するならそういう必要とされる個性を身につけてからにして欲しいっすね。ミラージュコロイド−−それはとっても素敵なスキルなんす。

戦闘が苦手だった自分に光をくれた……このLROには自分と同じような人がまだまだ居ると思うっす。だけど諦めないで欲しい。頑張ればこの世界は色んな形で答えてくれるっす!!」

「なに、勝手にまとめに入ってるんだよ!」

「もう自分の言いたいことは言ったっすから。次からは別の人に任せるっす」

「また変わるのかよ! ってまあお前よりは良いか」

「負け犬の遠吠えっすね。今なら清々しい気持ちで聞き流せるっす」

「あっそ、ならもっと言ってやる。バーカバーカ、アホアホ! 目が点なくせに偉そうな事ほざいてるなよ。セラに一生振り向かれるなー」


ブチっ−−


「最後のは取り消せっす!!」

「やなこったああああああああ!!」


ドカバカガガピーーーーーーーーー(EDの音楽と共にフィードアウト)

真っ暗な中に僕は居た。横たわったまま動かない体で、僕はただ、その場に漂ってる。するとどこからか聞こえて来る足音。その方向に視線を向けると、僕がぼろ負けした相手……つまりその足音の主は邪神テトラだった。


奴がこちらに向かって来る。悠然と悠々と、そしていつものその自信溢れる瞳で歩いて来る。その両手には僕を殺す為の黒い光。どこまでも、どこまでも……なんだか追われてる感覚に襲われる。

僕はどうにかしないと−−と思うけど、やっぱり体は動かない。もう何度味わったかわからないこの悔しい感覚に歯噛みする。するとその時、頬に感じる変な痛み。両方向から摘ままれた様にグニョーンと伸びて、変な笑い声と共に、僕の頬はどんどん延びてく。


「ふがっ!? がっがががががが−−−−」


なにが起こってるのかわからない。だっていくらなんでもあり得ない位に僕の頬は伸びてる。なになに? なんなんだよこれ? そう思ってる間に、目の前にはテトラが迫る。

向けられる腕に集まってる黒い光の魂。


(殺される!!)


そんな恐怖が募る。僕以外に何も誰もいない空間。助かる術は何も無い。僕は伸ばされる頬のせいでマトモな叫びもあげられないまま、その黒い光に消し去られる。




「ぁあああ!!」


瞳を開けて、上半身を起こそうとすると、体の中心部分にズキンと鋭い痛みが走る。そのせいで僕はドサッと元の態勢に戻った。


「はぁはぁ−−−−つっ!」


息も直ぐにあがって、思い出した様に全身の傷が疼き出す。今のは……夢? なんて嫌な夢だよ。シャレにもなってない。瞳を閉じて痛みに耐えてると、なんだかとっても近くで聞き覚えのある声が変な声を出してた。


「んっ……ちょっ……スオウあんまりそんなところゴソゴソしちゃ−−−−あっ、エッチ☆」

「あ?」


なんだか無条件でイラっときた。目を開けると視線のすぐ先にシクラの顔が見えた。なんだか僕を見下ろすみたいに−−っていうか、自分のすぐ横にシクラの胴体部分、そして辿ってくと適度な大きさの胸がみえて、その向こうで少しだけ頬を染めてるシクラ。

後頭部に伝わる体温とかさ……僕は一体どこにいるんだろう? なんだか状況的にまるで僕はシクラに膝枕されてる様な気がする。認めたくないけど。

すると耳元で別の声がこんな事をいう。


「シクラばっかりズルい。僕だって男の子を膝枕してあげたいのに。てか嫌がれてるよ。あっぷぷ〜」

「ヒマ、良い物あげるからちょっと顔寄せなさい」

「ええーー!! 良い物って何?」

「それはこれよ!!」


その瞬間バチーンと鳴り響く平手打ちの音。ひっぱたくんじゃなくわざわざ手のひらを顔面に押し付ける様に当てて、ヒマワリをぶっ飛ばすシクラ。「アブウウ」とか叫びながらヒマワリは後ろに尻餅を付く。


「え、えええぇぇえ!? いきなり何事? 痛いよシクラ!」

「あんたが失礼な事を言うからでしょ。こんな美少女に膝枕されて喜ばない男なんて居ないのよ☆ まああんたみたいなお子様にはわからないだろうけど」

「むむむ、僕だってわかるよ。それにスオウはシクラよりも僕の方が抵抗少なく受け入れてくれると思うな。ねぇスオウ!」


元気いっぱいの笑顔を向けるヒマワリ。そんな事を勝手に言われても、なんて言えばいいかなんてわかんね~よ。てか、一体何を張り合ってるんだよ。そう思って、無視してると、頬を引っ張られる始末。


「コラ、そんな態度取る奴にはこうぢゃ! 男の癖にモチモチほっぺしやがって、癖になっちゃうぞ」


うにうに〜と上機嫌な感じで頬を引っ張りまくるヒマワリ。なんてうざい奴。てか、この感覚……まさかさっきの夢の間中こいつ引っ張ってたな。僕がどれだけ恐怖と屈辱を感じたと思ってるんだ。

頬を引っ張られた状態で死ぬなんて、恥ずかしすぎる死に様だろ。


「やめ……ろ。てか、誰だよお前」

「ぷぷ、面識すらないのによく言うわねヒマ☆」

「お面なんて持ってないもん僕! なに言ってるのかわかんないし」

「そうだった。あんたってバカだったわね」


残念そうな視線をヒマワリへと送るシクラ。でも確かに……今のは残念だよ。


「バカって言った方がバカなんだよ。だからシクラがバカってことだよ。あっぷぷ〜バカバカ〜」


まるで幼稚園児みたいなバカの仕方だ。頭の弱さが滲み出てるぞ。でもバカにバカと言われる事ほど頭に来る事もないから、シクラは眉をヒクヒクさせてる。普段はなかなか見れない光景だな。

こいつっていつも飄々と僕達の前ではしてるからな。でも姉妹の間では結構違うのかも。素を出してる感じ? するとシクラの奴はあきらかに作り笑いを浮かべてこう言うよ。


「全く、そういえばヒマ、美味しいキャンディーあるけど食べる?」


いやいや、いくらなんでも今の今で引っかかる訳無いだろ。しかもすっごく雑だし。


「ええ!! じゃあ僕はモロミザトサイダー味で!!」

「あるかそんな味!!」


引っかかったよ!! しかも味まで指定して来るとは、どこまで突き抜けたバカなんだ? ちょっと恐ろしくなったぜ。バッチーーーンと再び響く音とヒマの「嘘つき」って無念そうな声が聞こえてた。

今のは言える。引っかかる方が悪い。普段は絶対に引っ掛ける方が悪人だと思う僕だけど、今はヒマワリが悪い。一ミリ単位で良いから疑えよ。姉妹なんだから、シクラの事はよく知ってるだろ。


「あのバカはヒマワリ。可笑しいけど、私の一つ上の姉なの」


そう教えてくれたのは柊だ。柊は僕から少し離れた所で何か魔法を発動してる? するとシクラにぶっ飛ばされたヒマワリが起き上がりつつ僕の方を見てこう言うよ。


「見てたよね? スオウはこんな嘘つきなシクラよりも、僕だよね(二カッ)」


なんでそんなにドヤ顔してるのか、僕にはイマイチわからない。てか、だから何を求めてるの? いやいや、いろいろとわからない事がいっぱいあり過ぎて、実際僕は置いてけぼり感が半端ない。気になる事はいっぱいあるのに、それを何一つ発信出来ないこのもどかしさ。

しかも周りはそれを教える気が全くなさそうだしな。なんでこいつらこんな漫才みたいな事をやってるのか、身体中痛いのに頭まで痛くなるっての。


「ねぇねぇ〜ぼくだよねぇ! 僕って言ってよ! 」

「ちょっと動かさないでよ。結構慎重に体の組織を繋げてるんだからね‼」

「あっぷっぷ〜、どうせ殺すのに回復させてどうするのさ。セツリ様の為に今ここでやっちゃう方が簡単だよ」


こいつ……僕をどうしたいのか全然わからない。変に懐いてるかと思えば、殺す事になんの躊躇いもないみたいだ。どういう事なんだよ。


「それじゃあ意味ないってシクラが言ったじゃない。良いから邪魔なのよ!」

「意味ないってセツリ様の気持ちなんてわかんないと思うけど。今ここでスオウを殺して、それをセツリ様に言ったら、せっちゃんは褒めてくれるかもしれないよ」

「それは……っつ、ヒマワリの癖に賢そうな事言わないでよ!」

「理不尽な突っ込みきたあああああああああ!! 全く、ヒイヒイは困ると直ぐにヒスッちゃうからね。末っ子の特権ズルいよ」


自分がまともな事を言ったのに〜とふてくされるヒマワリ。まあ、今のは柊が言い返せなかったからな……案外普通の事もヒマワリは言えるんだなって僕は思った。でもここで誰も今のヒマワリの言葉を否定しないと、このバカはそれをやっちゃいそうで怖い。

折角柊が不本意そうではあるけど、僕を回復してくれてるみたいなのに、ここでヒマワリに殺されるなんて最悪だ。


「でもでも、やっぱりセツリ様に良い子良い子されたいよね」


ウキウキきゃぴきゃぴみたいな効果音が似合いそうにピコピコ跳ねるヒマワリ。ひまわり色したポニテがクルクル回ってる。グワシグワシと拳を握ったり開いたりの動作はなんの確認だ? 背中に悪寒が走るぞ。

するとこっちを見て舌舐めずりをするヒマワリ。その瞳には『良い子良い子されたい』って文字が見えるみたいだ。今の瀕死状態の僕なら、今のはヒマワリの女の子そのものの拳でも一発で逝きそうだ。


「やめ……」


僕が弱々しい声を必死に絞り出すと、その言葉にかかる様に膝枕してくれてるシクラがこう言った。


「やめなさいヒマ。本気で怒るわよ」

「ひっ! −−−−でも」


シクラの本気オーラを感じ取ったヒマワリ。だけどヒマワリは良い子良い子を諦めきれないのか、さっき柊を黙らせた事をもう一度いう。


「ここでスオウを殺したら、セツリ様は僕に良い子良い子をしてくれるんだよ!」


いや、なんか変わってた。何時の間にか確定情報に成ってるぞ。流石バカは思い込みが激しい。でもだからこそ突っ走れるんだろうけどね。そしてそんなヒマワリの発言にシクラは頭を抱えるよ。ドヤ顔してるヒマワリに諭す様に言葉を紡ぐ。


「良いヒマ。よく聞きなさい」

「何かいう事があるのかねシクラ君?」


意気揚々としてるヒマワリ。そのせいでシクラに対して上からの目線でもの言ってるよ。きっと自分の冴えた発言が看破される事はないって思い込んでるんだろう。まあ実際、セツリの気持ちなんて誰もわかんないとは思うけど、相手はシクラだぞ。バカには荷が重いと思う。

そもそも既に呆れた表情をシクラがしてるのがね……どう見てもヒマワリの主張をぶっ飛ばす用意がありそうだ。


「ヒマ、私達はせっちゃんの夢を全てここで実現するのよ」

「そうだね。それが僕達の存在理由だよ。勿論わかってるよその位」

「じゃあせっちゃんがこっちで心置きなく過ごすには何が必要か言ってみなさい」

「え〜と、やっぱりお金かな!」


それは残念すぎる答えだった。お金って、そんな物どうにでもなるだろ。お前達みたいなチートが集まってるんだし、そもそも既にこいつらはシステム自体を掌握する気の筈だ。LROはリアルじゃ無い。システムを完全に掌握すれば、好きな時に好きなだけお金なんて用意出来ると思う。


「あんた何俗物にまみれた事言ってんの?」


そんな冷たい言葉を送ったのは柊でした。しかも超冷やかな目をしてる。流石氷を扱う女。その視線からも冷気が漂ってるみたいだ。すると流石におかしな空気を感じ取ったのか、ヒマワリの奴は少し頬を染めて、モジモジしながらこう言った。


「た……大切だよ。お金だって……綺麗事だけじゃ生きてけないよ!」


どこでそんな言葉覚えてきたんだ? って事をヒマワリの奴は叫ぶ。僕達は思わず溜息をつくしかない。


「あのね、ここでお金って残念すぎるわよヒマ。幾らバカだってね、笑えるバカとただ痛いだけのバカがいるって知りなさい」


シクラの奴は厳しい視線を向けてヒマワリをそう嗜める。


「ちなみに今の僕はどっちなのかな?」

「勿論、痛いだけの奴よ」

「ガガーーーーーン!!」


自分でそう言って崩れ去るヒマワリ。いちいちオーバーアクションな奴だ。


「僕の……僕の名誉はどうやったら元に戻るの?」


プルプル震える腕を伸ばしつつ、芝居掛かった声でんな事を言ってるヒマワリ。てか、名誉って……こいつにそんな物元からないだろ。そう思ってると、僕が思ってた事をまんまシクラは言った。


「元からそんなのないんだから戻り様がないわよ」

「そんな事きっとない!」


どこから湧き上がるかマジでわからない自信でそう言い切るヒマワリ。やっぱりバカは幸せだな〜と再確認した瞬間だった。


「そもそもよく考えたら、まだシクラからスオウを殺しちゃダメな理由ちゃんと聞いてない! 僕は実は出来る子と言われてるから見逃さないぞ!」

「誰がそんな事言ってるのよ?」

「ふっふ〜〜ん、聞いて驚けビックバンしろ、なんとそれはセツリ様だ!! セツリ様はシクラ達と違って僕にとっても優しいもん!」

「ふ〜ん」


どうでもよさそうに、シクラの奴は空気を漏らす。そんな態度が気に食わなかったのか、ヒマワリは顔を赤くしつつ、頭から蒸気を噴出させて文句を垂れる。


「それだよ! それ! そんな態度が僕を傷付けるってシクラ達は知らなさすぎる!! 本当なんだから‼」

「ねぇ知ってるヒマ? せっちゃんはね、ヒマの事がとっても可愛いんだって」


おっ、何故かシクラの奴がヒマワリの事を持ち上げるような発言してる。僕は直ぐに「裏がある」って察した。だってそうだろ? シクラの奴がただで誰かを気持ちよくなんかさせない。そんなのそれこそセツリくらいだろう。

だけど僕でもわかるそんな事に、この可哀想なバカは気付かない。


「ええ!? ってほらほら〜ね。僕知ってたよ。エッヘン!」

「ペットみたいに可愛いって、せっちゃん言ってた。『ペット』みたいに−−ね」

「ペット?」

「そう。ヒマはペット感覚なのよ。そのバカさ加減が人に追いついてないから、ペットくらいが丁度良いんじゃないかしら?」

「ぺっ……ペット……」


流石のヒマワリもショックだったのか、声に力がなくなって霞むみたいになってる。だけどまだ何処かに支えがあったのか、頭を何回か横に振って言い返す。


「だけど! セツリ様は良い子良い子ってよくやってくれるもん!!」


それかよ! って僕は心で突っ込んだ。声はれる程に元気じゃないからね。だけどそれさえもシクラの残酷な言葉が打ち砕く。


「ああ、それね。そんなの簡単よ☆ ヒイちゃんは良い子ってされた事ある?」

「ううん、そういえば私はないかな」

「ほらほら〜やっぱり僕だけがセツリ様にとってのとくべ−−−−」

「これでもわかんない? せっちゃんがあんたにだけ、そんな子供っぽい事をする理由。本当ならその愛でる対象ってヒイちゃんに行くべきでしょ? でもヒイちゃんは末っ子だけど、しっかり者。それをやる対象年齢じゃないの。

そこで適役はあんたになるのよヒマ。何事もそつなくこなせるヒイちゃんには実際良い子する事もなくそれが当然って印象だけど、あんたは何をするにしても落差が激しいからね。それに『良い子良い子』なんて、ご主人様がペットを愛でる定番文句でしょ☆

わかった? あんたは姉妹じゃない。家に居るペットなのよ!!」

「ぬぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


パタン−−とそんな叫びと共に後ろに倒れてピクピクし出すヒマワリ。どうやら心を打ち砕かれたようだ。シクラが喋ってる途中から汗が凄かったからな。それにしても容赦ない奴だな。身内にまでそこまでやるかって感じだぞ。いや、見てる分には楽しいけどね。

でも実際、こうやって眺めてると普通の姉妹だなって思う。抱いたらいけない感情なのかもしれないけど、 なんだか普通に仲の良い姉妹って感じ。ふざけ合って貶しあって、それでも協力する所では協力してた。

感心してる場合じゃないよな。こいつらのアホなやり取り見てると忘れてしまいそうになるけど、僕達はいずれ必ずぶつかり合う。それこそ宿命みたいな物で必ずだ。それまで僕が生きられるかは問題だけど、進む先の道には必須イベントとしてそれは必ずある。

大の字に倒れてるヒマワリを見て満足気に高笑いするシクラ。ホント良い性格してるよこいつ。すると打ちのめされてるヒマワリに代わって柊の奴がヒマワリが聞けなかった事を聞く。


「で、実際ヒマワリを論破出来る事ってなんだったの? 全然違う話題で叩きのめしてるじゃない」


確かに……それは気になる。


「簡単よ☆ この世界を思いっきり浸って貰う為には、向こうへの心残りなんか皆無でないといけないじゃない。それをやるには『決別』が必要でしょ。そしてそれは誰かが与える物じゃない。完全な決別は、自分の腹で決める物よ。

その為の存在がスオウ。私達がここで殺しちゃったらそれが出来なくなるってのが理由。せっちゃんは確かにもう会いたくないかもしれないけど、それこそ『迷い』の表れで『未練』の証。まあせっちゃんがそれを本気で決めてくれたら、誰が殺そうと一緒だろうけどね」


そう言って僕の方に手を伸ばして来るシクラ。なんだ? 今の話を聞いたせいかその腕が妙に恐ろしく見える。


(振り払いたい)


そう心は叫ぶけど、僕の体はまだまともに動きもしない。するとその時、二つの腕が同時にシクラの手を掴み止める。


「むっ……」

「……」

「なんなのよ二人とも? 私がスオウに何かするとでも思ったの☆」


イタズラな笑みを浮かべて、二人にそう言うシクラ。リルフィンはそんな事を言われて「フン」と鼻息を荒くして腕を離す。だけどもう一人は動かない。


「サクヤ……」


巫女服に黒髪の少女。その瞳は虚ろでどこを見てるのかすらわからない有様だ。光が見えない。セツリの奴に感情を押し込められたから……でもそれならどうして? まさかそれでも僕を守ろうとしてくれたって事か?


「お姉様、安心してください。別に何もしませんよ。ただこんなシチュエーションは貴重だから、色々と楽しもうと思っただけ☆」


何が楽しむ−−だ。ゾクッとするっての。サクヤはシクラのそんな声に反応して、虚ろな瞳で見つめる。暫くそんな間が続くと、サクヤはその腕を離して少し離れた所で空を見つめて立ち止まる。周りは木々が生い茂ってる。どうやらどっかの森に居るみたいだな。でもそこまで深い森じゃない。

不気味さは微塵もなくて、寧ろ気持ちよさがいっぱいな所。瑞々しい緑の葉が太陽の光を受けて透き通って見えてる。

深呼吸をしたくなる空気と、日の暖かさを適度に感じれる素晴らしい場所だ。そんな中で、サクヤは余計に異質に見える。本当のあいつならもっとリアクションするだろうに、今のサクヤはただ光が降り注ぐ空を黙って見上げてるだけ。

僕がそんな風にサクヤを見てると、シクラの奴が僕の頭を撫で撫でとして来る。なんのつもりだこいつ?


「さあ、スオウ。もう少しお寝んねしとこっか☆ スオウは無条件で私達に構えるから、それじゃあヒイちゃんが回復やりづらいんだって。本当なら魔法で一発の筈なんだけど……スオウも落ちちゃったみたいだから」


その言葉に僕はピクッと反応した。なんでこいつそれを……いや、シクラ達に何かを隠すなんて無理なのかも。こいつらはシステムの外に居る。いろんな事を外からモニターを見るように覗けるのかもしれない。


「もう一回目が覚めたら、これからの事をかんがえよっ☆」


すると何か光が輝くのが見えた。そしてゆっくりと動かされるシクラの手の感触にだけ意識が集中してく。その一定の感覚で繰り返される動作がふわふわとした感じを誘って、感覚を閉じて行くような……ヤバイ、何故かわからないけど、これは抗えない感覚だ。

なんで……どうして? こいつらは敵なのに……その膝の上で眠るなんて、寝首をかかれてても文句も言えない状況。でも僕の意識は深みへと誘われる。深々と深い眠りの中へ……それは何故かとても心地良い感覚で、母親がまともだったらこんな感覚がその胸の中だと言える物なのかもと……僕は少しだけ思ってた。

第四百二十一話です。

なんだか前書きも本編もバカっぽい内容でしたね。ずっと緊迫してたから少しだけ筆休め的な? でも既に後半戦だし、もう休めないかも。後は一気に行きたいですね。

てな訳で次回は木曜日に上げます。

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