思い通りにいかない
なんだか毎回毎回書くのも面倒になって来ましたね。実はそんなにネタも無いし。しかも最近ちょっと立て込んでですね。いつものスケジュール通りに進んで無いのです。
だからまたまた今回は、お休みって事で。次回はきっと書きます。何か良いネタないですかね?
まあとりあえず本編をどうぞ!!
青い空に光る青紫色の光。咆哮と共に現れたその光を、この場に集う人達が一斉に見上げた。空に広がる波紋が綺麗に広がって、その軌跡を教えてくれてる。
「なんだあれ?」
「モンスターじゃないの!?」
そんな声が聞こえてる。確かにあいつのあの姿はモンスターと間違われても仕方ないな。
「そんな……ここら辺であんなモンスターなんて見た事……まさか邪神が!」
「まさか、契約とか誓いとかそんなの諸々は代表達を油断させるための罠!?」
おいおい、なんだかすっごく誤解され始めたぞ。あのモンスターを呼んだのは邪神の仕業と思われて、この場の特にNPC達が騒ぎ出してる。でも邪神達は既にあれがリルフィンだって気付いてるだろうな。
邪神とローレは別段慌ててなんかないからな。寧ろ待ってた様子さえ……考えすぎか?
「こっちに来るぞおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「「「うああああああああああああああああああああああああああああああああ!」」」
リルフィンがこちらを目指して向かって来るから、集まってた人集りが一斉にパニックに成った様に走り出す。これはちょっと不味いな。
「ここに居たんじゃ危ないです。ノウイ君とスオウ君は上へ!」
「そうっすね。鍛冶屋さん、この騒ぎの中申し訳ないっすけど、鏡の事頼みまっす」
「案ずるな。ちゃんとお前達が移動できる様にしといてやる」
僕達は頷いて、ノウイが出した鏡で一気に高い建物の上へ。するとあんなに騒がしかった周囲が遠く成った。ローレ達の背中が見えるベストポジション。まあ本当はその瞬間まで下で判断する気だったんだけど、あの騒ぎじゃな。
てか、モンスターらしき奴一匹で慌てすぎだろう。ここから見てるとそう思う。普通にこの街の周りにだってモンスターが一杯いそうだけどな。それなのに……だよ。
「まあリルフィンさんの見た目は普通と違うからじゃないっすか? 邪神が居るからこそ、特殊なモンスターが現れたと皆が思ってるんすよ」
「それは、まあわかるけど……」
ノウイのいう事は尤もとだけどさ……なんだかテトラの奴も損な役回りだよ。何か悪い事は全てテトラのせいって感じに直ぐに向けられる。あいつはそこまでこの世界を嫌ってなんかないのにな。寧ろ、あいつが嫌ってるのは、世界ってよりも寧ろさ……僕達五種族みたいな感じがしないでもない。
慌ただしくしてる下の人達が、どんどんと迫って来るリルフィンに更に怯えてる。だけどそんなの気にせずにリルフィンはその光を強くする。そしてそのまま自分たちへ突っ込んで来るとでも思ってた民衆を通り越す。
その瞬間「あれ?」ザワザワみたいな感じの空気が伝わって来たぞ。自分たちへじゃなく、頭上を通り越したリルフィンが何処へ向かうのか、彼等は理解してない。いや、目指す場所は視界に入ってるだろう。だけどそれを理解出来てない。
だって彼等からしたら、あのモンスターは邪神が呼び出したはずだからだ。
だけど実は全然違う。あれはモンスターなんかじゃない。世界の柱の一つで、誇り高き召喚獣。あの獣が狙うは、元から民衆なんてものじゃなく、もっと大きく巨大な方だ!
テラスに出てるローレ達へと向かうリルフィン。
その時、後方のガラス戸から、一斉に何かが出てくる。あれは、きっと代表達の護衛だろう。どうやらリルフィンを危険だと判断したみたいだ。それぞれの自分たちの代表の近くへ行くその護衛達。だけど、その中で違う動きをする奴等が居た。
そいつ等だけは、護衛って任を放棄して、真っ直ぐに邪神やローレ達の方へ向かってる。
「おい、あいつ等なにする気だ?」
僕は身を乗り出してそういった。前と後ろから邪神を挟み撃ちにしてる構図……なのか? でもじゃあ奴らの目的は? そう思ってると、その護衛らしき奴らは、邪神達を飛び越えてリルフィンへと迫る。つまりは守る−−ってことよりも、危険を排除する方を選んだのか。
奴等は直接リルフィンを倒す気だ。まさか護衛が守る相手から離れて直接危険を排除しに来るとはな。いや、何処かで邪魔が入る事は想定してたけど、それは邪神とかローレとかの筈だった。だってあいつ等って守る必要ない存在出しな。自分への攻撃なんて自分たちで排除できる。それに実際協力関係になったからって、他の国の奴等が守るなんて……正直意外だ。
まあ、あの護衛達にとっては、ローレ達の為……なんて感覚はないのかもしれないけどね。でも……
「あれってやばくないっすか?」
そうだな、ノウイの言うとおりあれはちょっとやばい。あのリルフィンが普段のリルフィンならなんの問題もないんだけど……護衛達はそれぞれの武器にスキルの光を宿してる。だけどそれをリルフィンは一喝の咆哮で掻き消す。使っちゃったよアイツ。まあ仕方ないけども……これからどうするの?
そう思ってると、黄金色した光線が二本空を走り、それがリルフィンに襲い掛かろうとしてた二人に直撃する。
「あれは−−」
「セラ様っすよ!!」
ノウイが嬉しそうにそういう。確かに今のはセラっぽいな。咄嗟に聖典を使って邪魔者を排除してくれたみたいだ。そして邪魔者がいなく成ったところで、リルフィンは一気にローレ達へと突っ込んだ。その瞬間、テラスは煙に包まれる。これで奴等の視界は完全に絶たれた!
「ノウイ!」
「行くっすよスオウ君!!」
僕達は予め設置してあった鏡へと飛び込む。大丈夫、鍛冶屋はきっとこの鏡とクリエを結ぶ線上に移動しててくれてる筈だ。一瞬で終わる。その一瞬で、僕達はクリエを攫う! 体が鏡に吸い込まれる感覚−−そして後は集中だ。
僕の動体視力でクリエを確実に捉える。
ミラージュコロイドの力で一気に僕達は煙に包まれたテラスの中へ。何も見えないけど、だからこそ、誰にも邪魔されずに、僕達はクリエを攫う事ができる。ほんの一瞬で通過する訳だから、クリエはきっと移動なんてしない。だからそこにきっと……煙の中を進む中、鏡から鏡へと引っ張られる間で僕は煙に目を凝らす。
煙の微細な動きの違い。何かに遮られた様なその動き−−−−
−−−−次の瞬間、僕達は煙から開放されて地面の感触を確かめてた。辺りにはまだそう然としてる人達が一杯。邪神に突っ込んだモンスター……テラスに立ち込める煙。それ等を見つめて「あぁ」やら、「そんな……」とか呟いてる人達が沢山だ。何を発していいのか当人達もわからないのかもしれないな。
実際邪神を歓迎してた訳じゃないだろうし、こう成ったのは嬉しい様な……でも不味いような……だろ。
「あうう……」
腕の所から聞こえるそんな声。僕は腕に掛かる重さの原因へ目をやるよ。そこには小さな体のモブリの少女が一人。
「大丈夫かクリエ?」
「う……ん、スオウ」
「おう、遅くなった。ごめんな」
僕がそういうと、クリエは一瞬泣きそうな顔をした。だけどグッと何故か堪える。そしてうつむき加減で僕の名前を呼ぶんだ。
「スオウ……」
「どうした? なんだか元気ないぞ。まあ不安にさせたのは悪いと思ってるけど、ちゃんと助けただろ。願いだってちゃんと……今度こそ−−」
僕は俯いてるクリエにそう言い聞かせてた。だけどその時、セラが横槍入れて来る。
「ちょっと悠長にやってる暇なんてないわよ。さっさとミラージュコロイドで脱出しないと」
「−−確かにそうだな。感動の再開だけど、ちょっとお預けなクリエ。厄介な奴らに見つかる前に遠くにいかないとな」
「……」
なんだかクリエの様子がおかしい気がするけど、きっと戸惑ってるだけだよな。もっと落ち着ける場所に行ってゆっくり話せれば、いつものクリエになる筈だ。僕はそう思う。
「鍛冶屋君ありがとうっす。その鏡で今度は逃走用の方に合わせるっす!」
「礼などいいが、どっちに逃げるんだ?」
鍛冶屋のその一言は案外重要だよな。森か、川か……実際ここまで上手く行くとはって感じだから、森で待機してるバトルシップの方に行ってもいいんじゃないかという気がして来る。沢山の人達に僕達の存在が気づかれて、その上でクリエを攫うのは不味い事だけど、幸い誰も僕達になんて気を止めてない。この状況なら、バトルシップで高飛び出来るかも。
そんな考えを巡らせてると、シルクちゃんがこんな提案をして来た。
「取り敢えずリルフィンさんを拾いませんか? そこまではルートは同じですしね」
「確かに、それもそうだね。シルクちゃんのいう通りだ。リルフィン君も頑張ってくれた。報告も兼ねて彼の元へ行こうじゃないか」
テッケンさんもシルクちゃんの提案にノリノリだね。まあ確かに、ごもっともだ。リルフィンは今回頑張ってくれた。自分の分身を作ってそれを誘導に使ってくれたんだ。実際今のはリルフィンは、あの真の姿になれないからな。
でもそれはローレだって知ってた筈の事なんだよな。それなのに……この有様だ。なんだか釈然としない。だけどクリエはここに……最大の目標は達したわけだし、別に問題ないよな。本当は宣戦布告もここでやる予定だったけど、これだけ順調なら、後でもいいさ。
別に本気で世界中を敵に回したい訳でもないしね。回さなくても良いのなら、それに越した事はないって事だ。僕達は手を繋いでミラージュコロイドの中へ……とした時、クリエが僕の腕から飛び出した。
「おい、名にやってるんだよ? 逃げるぞ」
僕がそういうと、フルフルと頭を左右に動かすクリエ。どういう事だ?
「どうしたんだクリエ? 僕達とは一緒にこないつもりか?」
コクコクと頭を縦に振る。そんな……どうして? そこでハッとするよ。僕達とは来れない理由……それがあるとすれば、アイツ等に何かされたとしか思えない。
「ローレかテトラに何かされてるのか?」
だけどそんな僕の言葉にフルフルと頭を横に振るう。違う? そんなバカな……だってそれじゃあクリエが自分の意思で僕達と行きたくないって言ってるって事になる。そんな事あるわけ……
「クリエちゃん……一体どうしたの? 怖がらなくて大丈夫だよ。私達はみんなクリエちゃんの味方なんだよ」
「お姉ちゃ……」
自分の服を握りしめるクリエ。今のクリエの服は今までの簡素な物じゃない。ローレが来てた服と似たデザインの和装の服だ。人前に出すから、アイツが着替えさせたんだろう。それにしても……だよ。
まさか最大の障害が、ローレでも邪神でも無く、クリエになるなんて……正直考えてもいなかった。一体なんでこんな事に成ってるんだ?
「まさか、クリエちゃんはローレに洗脳されてるんじゃないっすか?」
「それだ!」
僕は思わず大声だしちゃったよ。でもノウイは良い事言った。それならクリエがこんな謎の行動を取るのも頷ける。てか、もうそれしか考えられない。
「クリエ、センノウ? なんてされてないよ!」
「自覚がないだけだよ。あいつはそう言う奴なんだ」
そう、最低の奴がローレなんだ。だって前の戦闘の時にだって言ってたじゃないか。「洗脳は相手に洗脳されてるとさえ気づかせずにやるものよ」って言ってた。それでいえば、今のクリエが洗脳を受けてたとしても、それを自覚してない可能性は十分にあり得る。
「洗脳は厄介よ。どうするの?」
「解く方法もわからないんだ。無理矢理にでも連れてくしかないだろ」
「だからクリエはセンノウなんて!」
「じゃあ、どうして僕達とはいけないんだ? ハッキリとした意思があるのなら、言えるはずだ」
「そ……それは……」
口ごもるクリエ。やっぱり自分でもなんでこんな事を言ってるのかわかってないんだな。洗脳はだろ。卑怯な手を使いやがって……って今更だな。そもそもローレが卑怯な手を使わなかった事なんかあったっけ? だよ。
やけにアッサリと救出出来たと思ったけど、こういう仕掛けをしてたから、たかをくくって何もやってこなかったのか。本当に性格悪い女だ。
「クリエ、洗脳されてても僕達はお前を見捨てたりしない。置いてなんていかないからな!」
僕は強い眼差しを向けてクリエにそう言った。無理矢理にでも連れてく。それは当然だろ。このままあいつ等の傍にいたらクリエはどうされるかわからない。良い事になんか成らない気がする。わざわざここまでクリエを持ち上げて……ローレの奴はクリエの死亡フラグでも作ってるのかって思えてしまうんだ。
だってローレにとってテトラが存在し続けるのは厄介だ。そしてもしも願いを叶えてテトラがいなく成っても、クリエがいたら一緒だと思う。だってクリエはそう成ったら英雄みたいなものだ。人々の指示はきっとクリエに向くだろう。
それじゃあローレ教はなり得ない。もしもローレの奴が少しでも謙虚でNO2の方がいろいろとやりやすい−−とか考えるタイプの奴なら、この戦いの後にクリエを人形にして実権を全て握るローレが出来上がってもおかしくないけど、残念。
あいつはNO2で収まろうとする玉じゃない。絶対にNO1を取りに行く奴だ。だからさ……もしもクリエが英雄になるなんて事は許さないと思うんだ。許すのだとしたらそれは……死しての英雄だ。功績を残して死んで、その後に英雄と呼ばれるバージョン。
それならローレの障害にはなり得ない。寧ろ、奴ならそんなクリエの死だって利用するだろう。その算段が今から出来出てもさほど驚く事もでもない。そう言う奴なんだよ。だから、こいつが嫌がったとしても、おいてなんか行けない。利用なんて……させないんだ!
僕はクリエに向かって手を伸ばす。グズグズなんかやってられないからな。だけど信じられない事が起きた。僕にとって、それは本当に信じれなくて、ショックな事……
パンッ!!
と響く乾いた音。弾かれた手がそんなに痛いわけ無いのに、妙にジンジンとしてた。
「クリエ……」
「やめて……よ。クリエの事は……もう放って置いて!!」
涙を振り回しながらそう言ったクリエ。「じゃあなんで泣いてんだ!」って言ってやりたかった。本当にさ。こいつ等がここで出てこなかったら、確実にそれを僕は言えた筈だったんだ。
「ふふ、鳩が豆鉄砲喰らったみたいな目をしてるわよスオウ」
「ローレ!?」
「潔く身を引くのも男の務めだと俺は思うがな?」
「テトラ!? お前達何で?」
「言っとくが、その二人だけじゃねーぞ」
「−−っつ!!」
周りを観ると、何時の間にか囲まれてる。しかも五種族の兵隊全てが揃ってるじゃねーか。一体何時の間に?
「どう言う事だ? テラスに居た筈じゃ? それに煙はまだ−−」
いや、自分で言ってて気づいた。いくらなんでも煙がこんな一箇所に留まり続けるなんてあり得ない。まだあのテラスに残ってるとか、おかしいだろ。つまりあれは……
「フェイクか。僕達に上手く行かせた様に思わせて、しかもあれがあり続ける事で、油断を誘ったと」
「まあその通りね」
そう言ってローレの奴が指を鳴らすと、テラスの煙は消えて行く。やられたな。これはマジでシャレに成らない状況だ。四方八方を囲まれてる、しかもそれが神にバランス崩し持ちって……どういう修羅場だよ。笑えないぞ。
でも取り敢えず救いがあるのは、知り合いがその中にいる事か。ここを切り抜ける為に選ぶとしたら、モブリかエルフ……そのどちらかの方だ。どっちも上手くやってくれそうじゃん。特にアイリとか信用できる。
アギトいるけど、あいつは演技下手だからな。ノエインも信用出来るし、ミセス・アンダーソンも上手くやってくれそうなんだけど、実際ただでさえ肩身が狭そうなモブリだ。ここで僕達まで取り逃がすとか、そんな事を背負わせるのは気の毒な気もする。
でもこの中じゃ一番数も少ないし、やりやすそうではあるんだよな。
「どどど、どうするっすか?」
「落ち着きなさいエイル。ミラージュコロイドはいけるわよね?」
「それは……そうっすけど−−んっ!」
何かノウイの様子がおかしいぞ。するとシルクちゃんが空を見上げて叫ぶ。
「みんなアレを‼」
その言葉を受けて空をみた僕達は驚愕した。だって……昼間の空に沢山の流れ星が流れてる。なんだあれ? シクラが見せたメテオに似てるけど、それにしては規模が極小だ。まるで、街を極力破壊しない様に配慮した様な、そんな感じ。
「お前達の中には、厄介な逃走能力を持った奴がいるんだろう?」
テトラのそんな言葉に、僕達はノウイを見る。すると、そのノウイが震えながらこう言った。
「鏡が……設置した鏡が…破壊されて行ってるっす……」
なっ‼? まさかこの流れ星はその為に……透明な鏡を見つけるのは一苦労だからって、街一つ丸々を流れ星でおおったって言うのかよ。目茶苦茶にも程があるぞこいつ。これで事前の逃走手段も潰された。どんどん詰んで行くな。
正直……冷や汗が止まらない。いや、マジで。握りしめる拳が、ビチャビチャしてる。不思議だな。空気とかちゃんとここにある筈なのに、息が苦しく感じる。
だけどまだ……まだ完全に詰んだ訳じゃない。最悪ミラージュコロイドを縦に一気に配置して空に逃げる手段もある。それなら直線での配置だから距離を目一杯稼げるという利点もある。問題は今壊された鏡は少し時間を置かないと使えないって事だ。
残してあった鏡がいくつかが鍵だな。
「ノウイ、後鏡は何枚残ってる?」
「……二枚っす」
二枚って……流石に詰んだかもしれない。最近運が無さすぎる気がする。二枚じゃ流石にダメだろ。だって一枚は起点として必要だ。そう成ったら移動できるのは、後一個の鏡まで……それじゃあ距離は稼げない。
思わず歯を喰い締める。
「クリエちゃん!」
シルクちゃんのそんな声に視線を向けると、クリエがローレ達の側に歩いて行ってるのが見えた。
「そんな……待て! 行くなクリエ!!」
僕はクリエの背中にそう叫ぶ。するとテトラの奴がしゃしゃり出て来て、信じれない事を言いやがった。
「お前にそれを言う権利は無い。何故なら、今お前はこの子供に助けられてるからだ」
「どういう……事だ?」
「聞きたいか? 良いだろう、教えてやろう。その子供も俺と誓いを交わしてる。自分がその身を捧げる事を−−」
「なっ‼? どうし」
「−−その代わりに、自分の大切な人達を殺さないで−−とな」
「「「「!!!」」」」」
僕達は全員その言葉でクリエを見る。この小さな子が、僕達を守る為に……その身を邪神に捧げたって言うのかよ!!
「クリエ……お前……」
「もう……良いんだよ。もう……充分だよ。クリエはね、やりたい事もまだまだいっぱいあるけど……でも、スオウ達だけは死んで欲しくなんか無い。だからもう、クリエのワガママは…………おしまいなの」
そう言ってクリエはローレの足元のモブリに飛び込む。あいつは確か身代わりの……あいつがクリエの面倒みてるのか。それにしても……だ。なんて事をあいつに言わせてるだよ。自分が情けなくて仕方ない。
僕が弱くて、頼りないから、クリエは自分を犠牲にしてまで僕達を……弱さはなんて罪なんだ!! あいつは僕達が勝てるとか、そう言うイメージさえきっと持てなかったんだ。今度こそ僕達が殺される。そう思って……
「くっ……」
いくら噛み締めても足りない。こんな判断をさせた自分が許せない。八方塞がり……袋のねずみ状態。僕達は助に来た筈のクリエに助けられてる。直ぐそこにクリエは居るのに。
「スオウ……」
「「スオウ君」」
「どどど……どうするっすかぁ〜〜?」
「スオウ」
セラにテッケンさん、シルクちゃんにノウイ、そして鍛冶屋がこちらを見てる。どうするべきか、誰もがわからない。そう思ってると、セラが小さくこう言った。
「ここは逃げるべきよ。私達を殺せないのなら、チャンスはあるわ」
確かにそうかもしれないし、それが最善かも知れない。でも……ここでまた逃げてしまって良いのか? クリエの思いに甘えて、僕達はまた負けるのか? そんなの、クリエが僕達に失望するのを裏付けるだけじゃ無いのか? 勝てないかも知れない。いや、勝てる可能性なんてほぼ無い。
だけど……伝えたい事が……伝えなきゃ行けない事が、ある筈だ!!
「ごめんセラ。僕は……逃げない」
「なっ!? あんた何言ってるのよ!」
確かにな、でもこうしない事には気が済まない。自分的には負け犬でも良かったけどさ、そのせいで、あいつが全てを諦める。それはダメなんだ。そんなのは絶対にいけない……だから僕は、クリエを見つめてこういうよ。
「クリエ、僕はお前の願いを叶える。絶対に叶える!! お前の心遣いとか気持ちを踏みにじるとか、そんなの関係あるか!! お前が諦めたって、僕は絶対に諦めないからな!!」
周囲のざわめきが大きくなる。とんだバカが居たものだと思われてるのかも知れない。だけどそれでも良い。これが僕の気持ちだ。蒼天の空のした、絶体絶命のピンチで、負けない事を選択した筈の僕は、逃げない事を選ぶ。
目の前の子供がいくら泣いて訴えても、そんな気持ちを無視して僕はお前の願いを叶えてみせる!!
第四百十一話です。
前書きでも言ったけどなにかご要望あったら書いてください。前書きの部分でやって欲しい事とかでいいですよ。このサイトに書き込んでくれてもいいですけど、もっと気軽にツイッターの方とかでもいいです。
uenouta って名前で検索すれば出てくると思います。まあ、この小説の投稿くらいしかつぶやいてないですけどね!
てなわけで次回は金曜日にあげます。ではでは。