雨が痛い
今度立ちふさがるのは魚聖獣。奴は降り注ぐ雨を自由自在に使って無限の攻撃を繰り出してくる。弾切れを起こさない奴の水弾に僕は追い込まれて行く。
足下を抉る水弾。僕はかわしたり切り裂いたりとして、なんとかその攻撃を耐える。だけどそれでも目の前のウンディーネ型の……と言うか、魚聖獣は自身に恩恵を与えるこの雨を使って、次から次へと水弾を放ちまくる。
それはきっと無限大。奴の水弾に終わりなんてきっとないと思える事だ。それにこの野郎、周りに居る仲間のモンスターへの影響もお構いなしだ。
さっきから僕が避けた分の水弾は周りのモンスターどもの体や頭を吹き飛ばしてるぞ。まあ同情はしないけどね。正直敵同士で勝手に自滅してくれるのはありがたい。
こいつらの攻撃の仕様が、仲間には影響しない――とかだったら、派手に暴れられるのに、敵の数は減らないとか、やってられんしな。
「ちょこまかと、逃げるな!!」
そんな言葉を言いつつ、ドカスカと口から連続して水弾を発射する魚聖獣。こいつも顔が体に比べて相当デカいからかなりバランス悪そうなんだけど……中距離攻撃を主体としてるから近づき辛いの現状だ。
今は必死に顔を左右に振らせてる。そしてきっといつか、頭の比重に傾いた重心とかのせいで、奴の足がもつれたりする瞬間が来ることを期待してるんだ。
実際来るかわかんないけど、皆さんの想像よりも奴は不気味な姿をしてる。その魚の顔をそのまま持ってきたかの様な顔は今まで見た中では最悪にヒドい顔してる。
こう考えてくれれると分かりやすいかな? 奴はキャラ者のヌイグルミの頭だけを装着してる状態に限りなく近いと!
しかも体はムッキムキの体だ。正直超気持ち悪い。いっとくけど、さっきから奴が飛ばしてる水弾。今は雨を元に作り出してるようだけど、普通に見てたら、唾を高速で飛ばしてる様に見えるから絶対に当たりたくない。僕は凹んでるこの場所を、左右に上ったり下ったりを、何度も繰り返す。地味に結構足に来る行動だけど……奴に隙を作る為、僕は頑張るよ。
とにかく今はこんな奴の相手をいつまでもしてられない。きっとどこかにあるエルフ聖獣の抜け殻を探し出さないと、そう崩れだよ。
必ずサン・ジェルク艦隊が到着するまで持たせないと……そうでないと、これまでの努力が無駄になる。みんな僕達の帰りを信じて、ここまで持ちこたえてくれたんだ。
ここで終わりになんか出来るかよ!!
「お前、そこに有った筈の抜け殻どうした!?」
僕は魚聖獣に聞いてみる。だけど案の定こう返された
「知るか!! やる気がないのか貴様!? そんなんでは直ぐに死ぬぞ!!」
そう紡いだ魚聖獣は、一瞬間を置いて、口をモグモグしだした。そして次に吐き出したのは水弾じゃなく、もっと広範囲に広がる液体。
僕はとっさに転がって避ける。だけど腕のあたりにベチャッとした感覚がした。
「なんだコレ?」
「言っただろう、そんなんじゃ直ぐに死ぬとな!」
腕が奴の吐いた液体にくっついてしまってる。今のは攻撃じゃなく、捕縛が目的だったのか。目の前の魚聖獣は随分な溜を作って、水球を生成してる。ヤバいな、こっちは動けないし、しかも片腕使えない状態なのに、あんなの放たれたら、実にヤバい。
だけど動こうとしても粘着力が強くてビクともしない。
「こなクソがあああああああ!!」
僕は必死に腕に力を込める。マジでこれは奴の唾とかじゃないだろうな。口モグモグしてたし、水弾とは製造方法が違ってた様に見えたぞ。
もしも唾とかなら、一秒でも早く解放されたい。けど、マジで取れない!!
「があ!!!!」
そうこうしてる間に、奴の熟成された水球が弾ける。それと同時に襲いかかって来る大量の水の弾丸。これは今までの一発を連続して撃つみたいなのとは違う。
一発で広範囲に大量の攻撃をバラマく様な――散弾銃的な攻撃だ! 僕は片方のセラ・シルフィングをその弾に向ける。だけどダメだった。
いつもよりも小さく速い球……それに今までとは違う量……まさかパターン化された動きを植え付けられてたのは僕の方?
そう言えば僕も同じようにしか動いてなかったかも。思考が単調になってた。だからこんなとっさの対処に頭が追いつかない。
セラ・シルフィングをすり抜けて来た弾は勢い良く、僕の体にめり込む。水の筈なのに……その重さと威力は鉛とか鉄以上かも……しかもそれだけに止まらずに、当たった無数の小さな水弾は、その瞬間に大きく弾けた
「ぐああああああああああああああああ!!!」
水の攻撃を受けた筈なのに、体が燃えるように熱い。水弾の勢いに飛ばされた僕の体からは、白い蒸気があがってた。そして体は妙に赤い……火傷をした感じになってる。
(HPは……)
僕は必死に自分の命の残量を確認するよ。赤にギリギリ届かない程度――って今ので半分以上一気にHP持っていかれてる。
甘かった……幾ら聖獣の中で一番おかしな格好してる奴でも、奴は聖獣なんだ。簡単にやり過ごせる訳がない。焦りとかが生んだ失態……本当に僕は何をやってるんだ。
「くっ……」
「どうだ? ゲッハハハ、俺の攻撃は効くだろ? 今度はもっとクールなのをぶちかましてやるぜ。そしてお前は哀れに死ぬんだ」
ムカつく声を上げながらそんなことを言う聖獣。クールとか……一体どの面下げて言ってるんだよこいつ。一回自分の顔を鏡でみた方が絶対にいい。
きっと死にたくなる筈だから。まあ死にそうなのはこっちなんだけど……ここはモンスター共が埋め尽くしてるから、きっとシルクちゃんの回復魔法は期待できない。
アイテムの回復薬を使うしかないか……僕は震える腕でウインドウを開き、回復薬を取り出すよ。なんとか自由には成れたし、少し回復すれば、いつも通り動ける様になる。
そうなれば、次からはあんなミスしない。そんな決意の元、回復薬の瓶に口を付けた時、魚聖獣が新たな事をやってた。両手に集めた雨を空中に放ちそこにだけ水の膜が張られる。そしてそこにダイブ。そのまま尻の尻尾をウネらせて、空中を泳いで迫って来やがった。
しかもそのスピードがまたかなり速い。ズバン! ってな感じで盛大に水しぶきをあげるレベルだ。最初の突進は何とか避けたけど……あのスピードを維持したまま、戻って来やがる。
僕は一気に回復薬を流し込んで、片方のセラ・シルフィングに雷撃を纏わせる。そして突っ込んで来た魚聖獣に併せて振り卸す。激突する剣と魚聖獣。こいつ何かバリアでも張ってるのか? なんで通らないんだよ!!
いや、よく見ると、水が集まって刃を防いでる? すると魚聖獣は口を開けて至近距離から水弾を放ってくる。腹にめり込んで、中身が全部飛び出しそうになる感覚。吹き飛んだ僕は地面に激しく打ちつけられる。
「ぐはっ……がっかっ…………うっ! げっ……はぁ!!」
喉の奥からこみ上げて来る何か。僕はそれを盛大に吐き出す。くっそ……折角回復したHPが……やっぱり基本二刀流のセラ・シルフィングを片方だけで使うのはダメだな。
聖獣相手には尚更……だけど実は、もう片方のセラ・シルフィングは奴の吐き散らかした粘液の中なんだ。取り戻す方法がわからない。
こうしてる間にもエルフ聖獣は僧兵達の結界から出ようとしてるだろうし、焦る気持ちが強くなる一方だ。
「おらおらどうした!? その程度か貴様の力は!!」
そんな声と共に、低空を泳いでる聖獣の水弾が周りで弾ける。調子に乗りやがって……そう思うけど、今のたった一本のセラ・シルフィングじゃ奴に有効打が与えられない。どうしたら良いんだ?
まだここに来て十分も経ってないのに、追いつめられ過ぎだろ僕。どうにかして奴の本体に直接切り込めれば……奴は水、こっちには雷が有る。相性は良いはずなんだ。だから攻撃を当てさえ出きれば……きっと有効打になる。
今の僕は雷の力を収束させて、威力と鋭さをアップさせる事が出来る。その刀身を奴が防いだって事は、貰いたくないって事だろう。
たった一本でも、確実な一撃はアイツには効果がある……僕は避けるのを止めて、奴の正面に向かい立つ。こうなったら一か八かだ。
取りあえず保険で回復薬を事前に飲んで、有る程度はHPを回復させておく。
「諦めたか? ならそろそろ殺されろおおおおおおお!」
V字に飛び散る水しぶきの中で、魚聖獣事態が水に包まれて行く。おいおい、まさかそんなのありかよ? 奴自身が巨大な水弾と化してしまった。
パチンコ玉位の奴で、僕のHPは半分位持ってかれたのに、あんなの食らったら僕は跡形も無く消えるかも知れない。
けどだからって避けてもしょうがないか……コレを切り裂ければ……かなり大きな衝撃を奴に与える事が出来る。僕は落ち着く為に深呼吸を繰り返す。
幸い周りの奴らは手出ししてこないんだし、目の前の魚聖獣にだけ集中だ。さっきは防がれた……だけど今度こそは斬る!
二刀流が前提だけど、セラ・シルフィングの切れ味は相当の筈だ。それに今度はいつもの感覚の倍の量の雷撃をこの一本に込めよう。
いつもの感覚だと、どうしても二本有ることを意識して、分散させてしまうけど、今はここにたった一つの武器しかない。
このたった一つにだけ、自分の出来る全てを込める。
「応えてくれ、セラ・シルフィング!」
もっと鋭く、もっと鋭利に雷撃を纏わせるんだ。そして刀身全体じゃなくて良い。奴を斬る側だけに集中させる。にじみ出る額の汗……耳につんざく魚聖獣の迫る音。刀身の少し外に出来上がる鋭利なもう一つの刃。
迫る魚聖獣に併せて、僕は一歩を踏み出した。そのままの状態で待ってても良いんだろうけど、やっぱり動く――その事でセラ・シルフィングは風を掴む。
それに何よりも、このスタイルが僕には一番あってるんだ。鋭く、速く、僕は魚聖獣と交差した。接触した一瞬に眩しい位に光を放ったセラ・シルフィング。だけど本当にそれは一瞬過ぎた。
実際僕自身にも、感触は最初の触れ合った瞬間だけだったから、手応えが良くわからない。でも実際確信はしてたかも……手応えがわからないって事は、何にも阻まれなかったって事じゃないか?
それは確実に攻撃が通った証。僕は後ろを振り返る。すると、奴の周りを覆ってた水が一気に激しい音と共に弾け飛んできた。
「うわっ!?」
思わず後ろに飛んで回避する僕。壊された水を無くした状態で魚聖獣はその場に佇んでる。すると今度は奴の片腕に筋が入り、緑色の血液を鋭く飛ばした。そしてそのままゴトっと音を立てて、奴の片腕が地面に落ちた。
やっぱりだ……ちゃんと攻撃は通ってた。だけど……それなのに、魚聖獣の奴は不気味なほどに静か。ショックでも受けてくれてるのか?
そう思ってると、ドスドスと奴は魚の尾のような尻尾を何度も地面に叩きつけてる。ドンドン……ドンドン……奴が床を打つ度に、床に貯まってる水が振動を受けて跳ね上がる。
(何やってるんだコイツ?)
そんな風に思ってると、視界の端に何かがユラユラしてる気がした。僕はハッとしてそちらを凝視する。この通路のむき出しになってる木の部分……そこに引っかかってるあの不気味な何か……シワシワでグジョグジョなアレは……僕が探してたエルフ聖獣の抜け殻だ!!
魚聖獣が無闇に振動を与えたおかげで、ユラユラ揺れて、視界の端に引っかかった。まあ丁度周りのモンスター共が、聖獣の腕が斬られたことに動揺して、少し後ずさりしたのも有るかも知れない。
(アレがあれば……)
僕はそう思いつつ、魚聖獣に視線を戻す。相変わらず意味が分からないドスドスを繰り返してるな。
(今なら――いけるか?)
僕は意を決して走り出す。背中からぶっ刺してやりたいけど、今の僕の狙いはアッチだ。だから今回は向こうを優先――その時一際大きく床が揺れて、目の前で落ちてきた雨と、振動で弾かれた水がぶつかり合う。その瞬間、目の前が真っ白になった。響きわたる無数の悲鳴と爆発音。弾け飛ぶ自分の体。
気づくと、背中を盛大に打ちつけて転がってた。
「ガハッ! ハッ――な……にが起こった?」
耳がキーンとなってる。視力がおかしくなってるのか、全てが真っ白に見える。今の爆発……まさか魚聖獣の仕業? だけど一体何をどうやった?
水を自由自在に操れるって事だろうけど……あんな事まで出来るのかよ。実際には爆発だったのかどうかも良くわかんないけど……奴がとんでもない事をやりやがったってのは紛れもない事実だ。
HPはどうなってるんだろう? 僕はそう思って、見えないだろうなと思いつつ表示させてみる。すると案外ハッキリ見えた。でもこれは……ギリギリ赤に届いてないって感じだ。
今までの聖獣共の攻撃を振り返ってみると、後一回でもまとも攻撃を受けたら、きっとやられる。その程度しか残ってない。
「でも……マジで案外見えるな」
それに驚きだよ。周りは全く見えないの……に……あれ? まさかこれって、水蒸気か? それが白く見せてるのかも。そういえば前の攻撃でもこんな風になってたな。まあここまで全部が真っ白って事は無かったけど……今のは規模が違ったか。
とりあえず僕はウインドウから回復薬を取り出す。今の状態は危なすぎる。周りが全然把握できなくて、しかもHPは残り僅かしかない。
こんな状態じゃ危なくて、動けない。あの規格外の化け物がいつ襲ってくるかわからないんだ。取りあえずは早急に回復するに限る。
僕は回復薬を二本まとめて飲み干す。テッケンさんがいっぱい作ってくれてて助かった。これで取りあえず一撃死は無いだろうけど……僕の場合人体の急所を突かれるのも痛いんだよね。
どの道楽観視は出来ないし、僕は慎重に動き出そうとする。するとその時、どこからともなくこんな声が聞こえてきた。
「これだ! この胸の高鳴り! やはり戦いとはこうでなくちゃあな! 面白い、貴様はやはり面白い!! さあ、もっと俺を楽しませろ」
ドンドン、ドンドンと床が揺れる。またさっきのをやる気か? くっそ、今の爆発で抜け殻がどうなったか確認したいのに……でもあの衝撃を思い出すと迂闊に動けない。
確実に奴が今の攻撃を仕掛けるタイミングが分かれば、僕の一度の絶対回避のスキルでどうにかなるけど……いや、どうにかなるのかな?
今のは連鎖的に衝撃が繋がって行ったように感じた。つまりは一度の攻撃じゃなく、複数の攻撃が繋ぎあわされてああなったのかも……そうなると、僕のスキルでも回避出来るかはわからないか……
「何が面白いだ。こっちは遊びでやってるんじゃない!」
僕は周りに視線を巡らせてそう叫ぶ。
「そうだな、これは殺し合いだ!!」
弾ける音が斜め前方から聞こえた瞬間、僕は体を沈めては地面を蹴った。頭上を二発の水弾が通過して行く。僕はそのまま勢いを殺さずに走って白い水蒸気の向こうを雷撃で強化したセラ・シルフィングで斬りさく。
「そこだああ!!」
わざわざ声に応えて反応を返したのこの為だ。待ってるだけじゃ後手に回る事は必死。なら、こんな何も見えない中でも奴の位置を知る術が必要だった。
そして便利なスキルを持たない僕が選んだのが声だ。原始的だけど、確実だろ。セラ・シルフィングは水蒸気で隠されたエリアを鋭く斬り割いて開く。相変わらず手応えはよくわかんないけど、確実に声はこちらから聞こえた。後は距離の耳鼻算があってるかだけ……
「!!」
だけどそこには何の姿もない? 次の瞬間、僕のわき腹に打ち込まれる水弾。
(ぐっ――――まさか、見誤った!?)
そんな事を思いながら僕は地面に落ちかける。だけど途中で態勢を立て直して、セラ・シルフィングを使い、襲ってくる水弾を斬り割く。
「はぁはぁ……」
「息が乱れてるぞ。今ので内蔵のどこがやられたかなぁ? うがっがっっがっがが! 心配するなよ。すぐに貴様の全ての臓器をそのせまっくるしい肉体から取り出してやる!」
ムカつく声を響かせて、再び攻撃が迫ってくる。僕は直ぐに飲めるようにポケットに回復薬を忍ばせて走り出す。やっぱり馴れない事はするものじゃないってさっきのでわかった。
結局自分のミスだったんだろう。だけど今度はそうは行かない。なんたってこの攻撃は奴自身が行ってるんだ。この攻撃が飛んでくる先に、奴は必ず居る!!
それに今更、普通のスピードの水弾でどうにか出来ると思うなよ。僕は再び水蒸気の膜を斬り裂く。だけど今度も奴の姿がない。
「なんっ――でっ!?」
腰の辺りにめり込む衝撃。そして一気にその何かが弾けた。
「ぐあああああ!!」
僕は頭から床に激しくぶつかる。今のは……散弾式の時と同じ感覚……でも、今までと全然違う方向から来たぞ。一体どうなってる?
「今のは外れ……か? 大腸か小腸か、それとも膵臓辺りで手を打っておくか? まあだが、飛び出してないからノーカウントだな。
今度は一気に六十ポイントの肝臓でも狙うか」
何をブツブツと……人の体でダーツゲームでもやってるのかよ。フザケやがって……僕は額から流れる血を拭いて立ち上がる。
すると今度は三カ所別々の方向から水弾が迫る。どういう事だよ。高速移動? それとも特殊なスキル? 取りあえず三つの水弾をそれぞれかわして、辺りをつけた場所へと飛び込む。だけどやっぱり誰も――――
「がっ!!」
肩口辺りにほとばしる衝撃。肝臓言ってた割には随分と場所が違うじゃないか。だけどおかげで、腕が上がらなくなった。
剣は一本しかないし、どうにか出来るっちゃ出来るけど、こんなハンデをいつまでも背負って戦う訳には行かない。僕はポッケに忍ばせて置いた回復薬を口に持っていく。
だけどその時、華麗な音を立てて、瓶が割れた。そして聞こえる沢山の雨切り音。僕はセラ・シルフィングを盾に使い、強引にこの場から離れる。その瞬間、後ろから弾ける大量の水滴。それは膨れ上がって、水蒸気爆発を起こす。
「ぬああああ!!」
今日と言う日はなんてよく転がる日だろうか。本当に自分の弱さが……心からイヤになるな。
「ダメだぞ。許されない。獲物が回復なんかしたら、いけないんだよ!!」
今度は大量の水弾が上から降り注ぐ。僕はそれを一本の剣で捌く。けど……圧倒的に手が追いつかない。たった一撃には、一本も二本も同じ思いと力を込められる。だけど……二本だから出来る事と、力強さ……そして心の支えって奴が僕にはあったらしい。
水弾が僕の頬を裂き、腕を傷つけ、腹を抉り、足を砕く。たった一本残った剣が腕からこぼれ落ちた時、全ての力が抜けた様な気がした。
「さあ! てめぇの真っ赤な血と内蔵をぶちまけて、百点満点、オールクリアだ!!」
セラ・シルフィングがこの手にないと、イクシードもこれ以上あげられない。冷たい雨が体を打ちつけてる。そしてどこからか現れた魚聖獣。
その手には止めを指すために造ったのか、三本槍の水の武器があった。
「これを刺せば、お前の体は内側から弾け飛ぶ。血管全部を弾けさせるからな! オシマイダよ……お前」
魚聖獣の仮面の向こうに無数の瞳が見える。誰かが薄ら笑ってるかのような瞳の束。僕はもう一度、その手をセラ・シルフィングへと伸ばす。
だけどその手が届く前に、聖獣は三つ叉の槍を振り下ろす。迫る槍をどうする事も出来ない僕の瞳に、眩しい光が一筋射した。
それは大きく妖しいそんな光。ハッとした聖獣は槍を止めて空を仰ぐ。白い水蒸気の隙間からわずかに見えるは星空だった。雨が止んでる。そしてその空の中央に、大きな月が鎮座してる。そんな月の中央で妖しく輝く一体の獣。
あれは……フィンリル?
その雄叫びが戦場に響き渡る。
第三百八十話です。
もうあれですね。聖獣強すぎ。だけどどこかに攻略する術はある……筈? それに最後に助けも来た筈だし、次は反撃! かな? そう言えば今回も表紙みたいなの描いてるんですけど、完成してないんですよね。
一番最初に表紙っぽくして入れたいんですけど……まあそのうち上げます。
てな訳で、次回は土曜日に上げます。ではでは。