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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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緑の暴走

 どうなったんだ? 一体どうして……こんな事になってる? エルフ聖獣は様変わりした。知能を無くして、モンスターとしての本能の塊になった。そしてそんな奴は反則的な強さを有してた。

 どんな攻撃も効かない……それはこいつが聖獣として存在してたよりも強力になってる。


 落ちていく聖典。止まった周りの動き。その中で一人だけ動く、緑色した仮面の化け物。激しい雨の打ちつける音が聞こえる中に、さっきの奴の叫びが鼓膜の奥でジンジン鳴ってる。

 一体、どうなってしまったんだコイツ。こんな野生的じゃなかった筈だろう。そう思ってると、聖獣は顔を横に向けて、その方向へ一瞬にして消えた。

 そして次の瞬間聞こえたのは女の子の悲鳴。


「きゃああああああああああああああ!!!」


 僕は急いで声の方へ走る。すると後方のモブリ達の輪が乱れてる場所が……そこに奴の緑色の羽が見えた。近づくと襲われてる誰かの足がジタバタしてる。

 ブーツに黒タイツ……膝よりも長いスカートが見えるって事は……アレは――


「どき……なさいよ! 誰の許可を得て私の上に――ってきゃあ!!」


 ――やっぱりセラか。聖獣はどうやら邪魔された事に怒ってセラを襲ってるんだろう。本当に本能のままに行動してるな。

 理性って奴が無くなってる。うるさいセラの口を防ぐためにさっきは顔スレスレの地面を羽でぶっ刺したみたいだけど、今度はわざと外すとかしないだろう。

 周りのモブリ達は、聖獣の姿に完全に引いてるし、僕しかいない。さっきの借りはここで返す。


【殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す】


 そんな言葉を延々と紡いでる聖獣。僕は後ろからそんな聖獣を真っ二つに切り裂いてやる。


「どうだ!!」


 完全に胸の所から体が分かれたぞ。だけど奴は気にして無い様にこちらを見やがる。そして次の瞬間、翼が空気を斬り裂く音を立てて襲ってきた。


「くっ!?」


 僕はとっさにセラ・シルフィングで防御する。だけど完全には防ぎきれなかった? 服に僅かに切れ目が――それに剣から伝わる衝撃の強さ……腕に残る痺れる感覚。

 背筋が凍るような感じがした瞬間、続けざまに襲い来る鋭い翼。僕は二対の剣で必死に受け流す。

 だけど……これは――――――――速い!! 


「ぐあっ!?」

 

 追いつけなくなった所で奴の翼が僕の体に斜めに入った。飛び散る血が目の前を激しく彩る。僕は後方へ倒れて、傷部分を押さえる。

 だけど押さえても出血が収まる訳じゃない。またまたいつの間にか聖獣の野郎は完全に体がくっついてるし……まさか攻撃が効かない訳じゃないよな? そう思ってると、後ろから奴の体を貫通する黄金の刃。


「情けないわね。助けるなら、ちゃんと助けなさいよ!!」


 セラの奴、やっぱ相変わらずだな。可愛げが無い奴。すると聖獣は再び、大きな叫びをあげる。そして奴の翼が消える。

 消えるっていうか……見えない。僕のこの目でも追いきれないスピードを奴の翼は出してる。だからこそ、捌ききれなかったんだ。そして次の瞬間、セラの体が無造作に持ち上げられる。

 その体の中央から飛び出した奴の翼の一部。聖獣の奴、自分と同じようにセラをぶっ刺したのか! 


「セラ!!」


 僕は怪我をそのままに聖獣へと向かう。セラを助け出すには奴をぶった斬るしかない。だけど不気味に笑った奴は、セラをこちらに投げつけて来る。そしてその後ろから、迫る緑色の翼。

 コイツ、僕がセラを受け止める瞬間を狙ってやがる。セラを受け止めるには武器を納めるしか無い。だけど、それをやると、受け止めた後僕たちはなにも出来ずに奴の餌食に……どうすれば……思考の時間は刹那も無い。

 迷ってる僕。するとその時、セラの瞳と目が合う。アイツ、まだちゃんと意識が……高笑いの様な声を叫んでる聖獣。うるさい声の中、僕達はその視線の意味を読みとるよ。

 強い瞳……反撃に燃えるその意志を、僕は感じた。だからこそ僕は、落ちてくるセラを受け止める――そのタイミングを見逃して、そのまま聖獣へと突っ込む。


「うおおおおおおおらあああああああ!!」


 両の剣で奴の羽を斬り裂いて、本体へと迫る。味方を見捨てた事に度肝を抜かれてる聖獣。僕はその間に一気に奴の緑色の肉体を切り刻む。

 しかも今度は切り離した程度で満足なんかしない。出来うる限りその腕を動かして、最後に雷撃を纏わせたセラ・シルフィングで弾きとばす!


「今だセラ!!」

「わかってるわよ!! ただでやられたりなんか、私はしない! 食らいなさい!」

 その瞬間、新たに展開してた八機の聖典の収束砲撃が炸裂する。黄金色の光の柱が、エルフ聖獣目掛けて飛んでいく。奴の体はまだダメージを残してる。防ぐ術はない。

 近距離攻撃が効かなくてもこれなら! だけど聖典の放った収束砲撃は、奴が構えた腕に吸い取られる様に消えて入ってる? 


「ちょっと……まさかアレって……」


 どうやらセラも気づいたらしい。ああ、あれはまさかの――


「聖獣共の使う盾! アイツいつの間に?」


 おいおい、アレがあったら遠距離攻撃だった全く効かなくなるんだぞ。どうやって倒せっていうんだ。今のLROにこんな事言っても無駄だろうけどさ、システムバランスおかしいだろ!!

 誰か改善しろ!! 元がLROのゲームに参加してないシクラ達ならともかく、コイツ等聖獣は元から組み込まれてたモンスターで倒せるべき敵の筈だろ。

 それがこんな近・遠双方の攻撃無効化みたいな能力を保有してるっておかしいとしか思えない。倒させる気がないとしか……


「くっそ、泣き言言っても何も変わらないか」

「そうね……」


 僕が地面に着地すると砲撃を全て飲み込まれたセラが近づいてきてた。おいおい、固まってるのはヤバいんでないの?

 だって次の奴の行動は、大体きっと多分……今の収束砲撃を返してくる――がパターンだろ。一緒の所に居たら僕まで巻き込まれるじゃねーか。


「大体あんな化け物染みた奴にしたのはアンタなんだから、責任とりなさいよ。何よアレ? 反則にも程があるわ。倒す手段はあるんでしょうね?」

「倒す手段があったらとっくに使ってるっての……」


 収束砲撃を吸い込んだ盾を満足気に撫でてるエルフ聖獣。使いどころを考えてるのか? と思ったら、いきなり奴の顔をめがけて吸収した筈の収束砲撃が炸裂した。


「「んな!?」」


 僕とセラは同時にそんな声を出す。だって「んなバカな!!?」な光景だろ。アイツやっぱアホになってるな。あの盾、いつまでもその内に吸収した力を内包出来る訳じゃないのか?

 一定時間を過ぎたら、強制的に吸収した攻撃を吐き出すのかも……何回か奪って使ったけど、実際そこまで検証してないんだよな。

 基本カウンター気味に返してたし、それが本来の使い方できっと仕様なんだろう。でも一定の時間で吐き出すって事は容量があるから……なのか?

 でも今まであの盾が攻撃を吸い込めなかった事はない。もしかして一定時間で吐き出す事で、容量をなくしてるのかも。

 いつまでも吸収した攻撃を溜めておけて、好きな時に使える変わりに容量制限を設けるか、それとも溜め続ける事は出来ないけど、幾らでも攻撃を吸い込む事が出来る様にするか……それであの盾は後者を選んでるって事かな。

 どちらにしても厄介極まり無いな。やっぱりどう考えてもバランスおかしいよ。


「そもそもLROにバランスなんて概念があるか疑問ね。バランス崩しの存在が良い例よ。【ゲームにとってこういう武器や存在って必要だよな】的な感じを受けるわ。それにこの世界を造った人は、夢や希望、心の強さ……そんな中二病的な病を抱えすぎよ。

 そもそもスキル一つとっても、テンションとか影響するし、LROは心でどうにか出来ない事は無いとか、そういう理念で作られてるんじゃないの? やけにチートな敵キャラが多いのも【追いつめられたら覚醒する筈だ】的な古い乗りを感じずにはいられない」


 はは、セラの奴もこの状況に相当参ってるのか、LROの否定しだしたよ。言われてるぞ当夜さん。まあわからなくもないけど……そんなLROの心を汲み取るシステムに救われて来た僕には何とも言い難いものがある。

 だけどセラの、愚痴はまだあるみたい。


「そもそも、バランス崩しの獲得方法とか訳わからないし。まあそれだけじゃなく、超レア級のは大概そうだけど、獲得方法が不明な武器っていっぱいあるわ。

 そしてそんな奴らが口を揃えて言う言葉が【心が通じた気がした】とか【声が聞こえた】とかよ。確かに心を汲み取るなんて、凄いけどそれで何でもまかり通ってたら、一生懸命必死に経験を積んで、技能を磨いて来た人達は何なのよ。

 そういう人達はね、ここぞって時にこそ、冷静に対処する物なのよ。それなのにそれじゃあただ単にたまたまその時、覚醒しちゃった素人にも負けちゃうわけ?」

「いやいや、覚醒なんかそんな出来る物じゃないだろ。そう言う人達だって追いつめられた先に、諦めるか立ち向かうかで心の向き用は違うだろうし、ようは僕みたいな素人に毛が生えた様な奴は、そのベテランさん達よりも追いつめられる頻度が高いってだけ。

 絶対的な勝率なら、ちゃんと経験積んで来た人が高いに決まってるし、理不尽とは思わないけどな」


 僕はまあ、恩恵に預かる側なんで、こういう風に言うけど、実際どうなんだろうね。長く居る人程、ここをゲームとして理解してるから、やっぱり覚醒とかは無いのかもね。

 そんな恩恵は受けれないのかも……


「私はね、一生懸命やってきたわ。一人で初めて、ずっと一人でコソコソと悪者共をPKしてきた」


 何の話だ? ゾっとする事をさり気にぶっこんで来るなよ。


「聖典だって、適性だけじゃなく人一倍頭を痛くしながら頑張った。それなのに……現れるのよあんな奴が!! ムカつくでしょう?

 それに尚ムカつくのはアンタよスオウ」

「なんで僕だよ!!?」


 いきなり矛先向けて来るなよな。収束砲撃で吹き飛ばされた聖獣の頭がボコボコと戻り出してる。そろそろ襲ってくるぞ。


「アンタは私の積み重ねてきた時間に、その心で一気に迫る。無我夢中なだけなんでしょうけど……こうやって同じ敵を互いに倒そうとしてる。

 冷静に考えるとね……それって結構ムカつかない? 私たちの積み重ねて来てた時間は、アンタの心に凌駕されちゃうのかなって。

 それって空しいじゃない。取り戻せない時間を、簡単に越されてく……まあアンタには死んでほしくなんか無いけど、私は常にイライラしてるわ」


 それで僕に対して意地悪ばっかり取るのか。嫌いだけど好きってのもそこに繋がる訳? でもまあ、逆だったらって思うと、セラの言いたいことも分かる。

 自分が有意義だと思って積み重ねて来た時間。沢山の選択肢の中から選んで最も時間を割いてきた筈の積み重ね……それが誰かの付け焼き刃に越されてく――それは確かに受け入れ難い物があるんだろう。

 まあイライラされるのは僕にはどうしようもない訳だし、これだけは一応言っといてやるよ。


「僕はさ、誰より強い……なんて思ってねーよ。みんなに追いつけてるなんても思ってない。セラの言うとおり無我夢中なだけ。

 無我夢中に出会って、無我夢中に走って、無我夢中に目の前の事に立ち向かう。だけどそれも結局、僕一人じゃ全然出来ないって分かってるし……アギトやテッケンさん、シルクちゃんに鍛冶屋、そしてセラ。

 みんなの積み重ねてきた時間があったから、僕はきっとここまで来れてる。無駄とか、そんな筈あるわけ無いだろ。

 お前はどこかに自分の道に後悔でもあるのかよ?」


 最初は丁寧にしかもゆっくりと喋ってたけど、最後ら辺はなんだかやけに挑発的になってしまった。やっぱりセラ相手に、真面目に話し続けるのは厳しいな。

 そう思ってるとセラが「プフ」っと吹いた。


「後悔ね……そんなのあるわけ無いわ。私は最良で最前の、自分で納得出来る道をここではとことん歩いてきたもの。だから今もそうしてるだけ……」


 そう言ってセラは僕を見つめてる。なんだ? そう思ってると空から気持ちの悪い笑い声みたいなのが聞こえた。

 視線をそちらに向けると、完全に元通りに成ってる聖獣が、壷に入ったみたいに腹を抱えてる。自分が自滅したのがそんなに面白かったのか?


「ふざけた奴ね」


 どういう事? セラがポツリと言ったその言葉は僕に向けたのか、それともあの様変わりしたエルフ聖獣に言ったのか……どっちなんだ? 

 そう思ってると、奴が重い衝撃音を立ててこの場に降りてきた。そう言えば忘れてたけど、ここはどうやら本殿へ続く、通路の途中みたいだ。

  リア・レーゼは中央の世界樹を中心に街が広がってて、その大樹の幹に土台を組んで立てられてるのがあの本殿を含めた大きな社な訳。

 地面伝いにも来れるんだろうけど、一番下らへんは太い根がごちゃごちゃ成ってるから、街から簡単に続く道が一本作られてて、それがここだ。かなり大きく長い通路で、何百段と言う階段の果てにこの長い通路だ。

 ここも木々が組まれた物で、かなりの高さのある場所。まあここが街から本殿へ続いてる道だから、ここで戦闘やってるのは当たり前だな。ここを抜けられると後は本殿へ続くだけ……ようは、後がないって事じゃなかろうか。

 そんな中に落ちてきて場を混乱させた……最前線の最終地点にいきなり来れたのは運が良かったとみるべきなのかどうなのか……


「来るわよ!」


 セラのそんな言葉で前を見ると、緑色の体をボコボコ沸き立たせながら聖獣が手と足を使って獣みたいに迫ってくる。


「くっそ、マジでどうなってやがんだアイツ?」


 聖獣としての高貴さとかが前はまだあったのに……完全にただのモンスターと化してるよ。そう思ってると、奴の周りに魔法陣が現れた。

 そして奴を縛る鎖が現れ、透明の板が箱上になり聖獣を閉じこめる。


「皆さん気を抜かないでください! 油断したら直ぐにやられます!」


 そんな声の方をみると、そこには銀髪の美少女シルクちゃんがいた。なんだか彼女の指示に従って僧兵達が動いてるようにも見えるけど……そう言う立場なのかな? そう思ってると、ピクがこちらに飛んできて、僕達の傷を治してくれる。

 細かな回復は大事だよね。捕らえられた聖獣にホッとしてると、上からモンスター共の攻撃が来る。魔法を発動してる僧兵のグループに奴らの攻撃が炸裂した。


「ちっ!」


 そうだった、敵は聖獣だけじゃない。圧倒的な物量で、奴らはここを突破しに来てるんだ。あまりにもあの変貌した聖獣の存在感が強くて、周りの奴らを忘れてた。

 忘れてったって言うか、殆ど周りに任せてました。僕はイクシードを風のうねりに変えて、空のモンスター共に向ける。だけどなんだかさっきから変な動きばかりしやがって……当てづらいったらない。

 離れたり戻ってきたり、それがとっても不規則でまるで飛ばされてるかのよう……ってそっか、ここもかなり世界樹に近い。風が乱れてるのか。

 だからさっきからあのモンスター共もおかしな動きをしてるんだ。でもそれにしては……さっきから的確に空のモンスターをセラは聖典で落としてる。

 どうなってるんだ?


「当てられないなら、奴に止めを刺しなさい。動きを封じてる今がチャンスでしょう?」

「それはそうだけど……止めって言ってもどうやって刺すんだよ? アイツは物理攻撃も効かないんだぞ。倒す術がない」


 そう何だよね。それに盾もあるし……聖典の砲撃もきっと無駄……攻撃魔法だって同じだろう。今は何とか束縛してるけど、あれもいつまで持つか分からない。

 手のだしようがない。そう思ってると奴の背中から別の羽がもう一本加わって透明な壁に傷を付ける。

 その瞬間周りの僧兵達に何か衝撃が伝わったようで、一斉に声があがる。どうやらあの結界は術者にも負担を強いる類の魔法の様だ。

 何回も何回も更に増やした羽で切り刻む聖獣。このままじゃ遠からずに結界は破られる。


「頑張ってくださいみんな! ここでアレを解き放つ事は、敗北に繋がります! だからお願い!」


 シルクちゃんの言葉に応えようとみんな頑張ってくれてるのは分かる。シルクちゃんもストック魔法をフル回転させながら、前線の人達に回復魔法を回してる。

 ギリギリの状態だ……何かもかもが、細い糸によって、ギリギリの状態で保たれてる。確かにシルクちゃんの言うとおりに今のアイツが解き放たれて無尽蔵に暴れ出したら、手のつけようがない。

 でもこのままじゃ……時間の問題でもある。前線は戦力不足だし、回復を担う筈の後衛の殆どが奴の結界拘束に回ってる。残りの少数でほぼ前衛全員の回復を回せてるのはシルクちゃんとピクのストック魔法のおかげ……だけどアレも使い続ける分にはじり貧だった筈。

 エルフ聖獣が獣化してメッキリ他の聖獣が姿を現さないのも気になる。他の聖獣共も近くに必ず居るはずなんだ……どこからでもこの均衡は崩れてもおかしくない。


「どうすれば……」


 どうすれば一体、こちらに戦局を傾かせる事ができるんだ? 取り合えず倒せる奴らを先に倒す? でも結局一番厄介な奴が残るだけ……でも何も出来ないんだ。あの今の状態の聖獣には何も通じない!


「それなら、通じる状態にしなさいよ!」


 通じる状態? セラの奴、無茶も休み休み言えよ――いや、それしかないのか。僕は考える。奴に攻撃が効かないのはズバリ血液――液体だからだ。ここは氷結魔法で奴を個体にするのは――ってそれじゃあの盾に吸収されるのが落ちだ。

 魔法も何も通じない状態だから困ってるんだよな。少なくとも前の生身の状態なら、ちゃんとダメージを与えられてた。


「うん? ……そうか、奴の肉体は確かまだ――」


 僕は戦闘の激しい方をみる。既にモンスターと僧兵達の戦闘で僕達が落ちた場所とか分からない状態だ。だけど、あの中にはある筈なんだ。

 奴の干からびた肉体が! それをどうしたら良いのかとかは分からない。でも、今はそれを手に入れる事が、見いだせた策だ。


「シルクちゃん! もう少しだけ、そいつを抑えててくれ!」

「りょ……了解です! 皆さん彼なら必ずやってくれます。後少し、頑張ってください!!」


 シルクちゃんを嘘つきにはしたくない。だから必ずやってみせる。


「何か思いついたって事よね?」

「ああ、有効かどうかは分からないけど、やってみる価値はある!」


 僕がそう言うと、セラは不適な笑みを浮かべてこう言うよ。


「なら行きなさい! 私が取りあえずの道は開いてあげる!!」

「おう!!」


 僕は強く地面を蹴った。そして一気に走り出す。僕に襲いこようとする敵は、聖典が攻撃をして、その間に一気に駆け抜ける。

 だけど奥に進むにつれて、聖典の援護はなくなる。取りあえずはここまでか。僕はイクシードを纏わせたセラ・シルフィングを振り回して、奴の抜け殻を探す。

 強化版ウッドールに、大蛇の様なモンスターに熊に木にイノシシに言葉に表せない変な奴にと、そこもかしもモンスターだらけ。

 だけどなんとか進んで、ようやく僕達の落ちた落下地点へたどり着いた。だけどそこには奴の抜け殻はなくて、変わりに一番会いたくなかった奴らが居た。


「ぐっぎゃーぎゃっぎゃ! やっぱり貴様が最初に来たな。やっぱり面白い奴だ。『ミトロ』の野郎をあんな風に変えちまうなんて、最高だああああ!! 

 賭は俺の勝ち。だからアイツは俺の獲物だ!!」

「ちぇ、つまんないの~、僕はそろそろこの街の支配者気取りの奴を殺したかったんだけどな~」

「ふん、俺は元々、一人をチマチマ殺すよりも、雑魚を恐怖におののかせて殺す方が好みなんだよ。大量のチビは、我が武器が全て鮮血に染まるまで殺し尽くしてやろう」


 そう言って、モブリ聖獣とスレイプル聖獣は姿を消した。くっそ、ここにきて更に面倒な奴等が動き出したぞ。

 第三百七十九話です。

 しょっぱなら手も足も出ない状況ですね。次回は暴走する聖獣をなんとか止めないとです。それには他の聖獣も相手にしないといけないし、もうホントあんまり前と状況変わってないっていうか……早くサン・ジェルクの艦隊が来てくれないとヤバいですね。

 それと今回から実は挿絵みたいなのも上げようかな~って思ってたんですけど、間に合わなかったです。残念。まあ出来たらどうにかしてあげます。そんな機能あったような? 気がするし。

 白黒ですけどね。色塗る道具無いし。書きかけならツイッターやフェイスブックに画像上げてます。これからは毎話ごとに上げたいな~なんて思ってます!


 てな訳で次回は木曜日に上げます。ではでは。

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