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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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二つの檻

 俺は憂鬱だった。この国に戻って何度溜息をついただろうか。少しはふっ切ったつもりの記憶はそうでもなくて……突き付けられた罪に頭を抱えずにはいられない。

 そんな折にアイリと二人きりになる機会が訪れる。だけど僕はただ一心に逃げたかった。向き会えないよ彼女とは。泣いて去ったアイリを俺は追う事もしなくて、ただ灌漑にふけるだけ。

 そこにやって来たのはガイエンだ。上機嫌な奴が語るのはこの国の未来? アイリの事? ガイエンは言う。

「ここで結ばれるのに愛などいらない」

 俺のとる行動は一体……

「はぁ~」


 気持ちが落ち込む。ここに来ると決めたとき、自分はもう色々な事を吹っ切れてると思っていたのに――全然そんな事は無かったようだ。

 セラに上手く乗せられたというか何というか……俺はアイツ……スオウにまだ頼りになる自分でも見せたかったのかも知れない。


 LROに入って日も浅い筈のスオウが俺でも信じられないような事を次々やっていくのを一番近くで見て来て、怖くなったのかもしれないな。

 自分はまた……なんて。アイツはそんな奴じゃないと知ってるし分かってる。もう何年の付き合いだと自分に言い聞かせたい。

 アンフィリティクエストなんて言う訳の分からない物に巻き込まれて、命を削ってそれでもまだここで笑おうとするんだから天晴れな奴だよホント。

 まあただバカなんだろうけど……あのバカは結局どこでも変わらなくて、それだから俺もここで自分でいれる。


 誰だって違う自分を演じるこの場所で、実は素の自分で居ることが一番難しいのかも知れないと思う。俺だって最初は無様なヒーロー演じてたよ。きっと浮かれて、俺もバカになってたんだな。

 それは薄過ぎた殻で……追い込まれると直ぐに崩れる物だったからきっと無理してるってアイリにはバレてたんだ。

 だから俺を思って……背負って……行ってしまった。残ったのは自分のふがいなさと安っぽいヒーローの仮面と無駄な地位って奴だ。


 それはきっと精一杯のアイリの俺に対する配慮だったんだろうけど……それがどんどん縛るんだ。いらないしがらみや責任なんてのが次々にのし掛かってきてさ。

 そしてついには全部を投げる事になる。それを今更ガイエンのせいなんて言う気もないけど、顔を合わせるだけで胃の辺りがムカムカするのは押さえられない。

 あの時だって……アイリの横に当然と言わんばかりに立つガイエンに俺はいい気はやっぱりしなかった。でも俺に何が言えるのか。あそこで・・あの立派すぎる椅子に小さく座るしか出来ないアイリを放ったのは俺だ。

 見ることも出来ない癖に……逃げることもスオウの居る手前出来なかった。情けない姿を晒して、その少し前に言われてしまったんだ。


【お前らしくないぞアギト】


 真っ直ぐな目だった。いつもあのバカは真っ直ぐな目をして人を見る。それが誰かを傷つけるなんて全く思ってない顔でさ。それがスオウの良いところ何だけど……たまにイラッとするよな。

 でもそれをぶつけられるか? 出来る分けがない。何も知らないからと言ってスオウが悪い訳じゃないんだ。全てはぞんざいなヒーローの仮面を被った自分のせい。自分が巻いた種。

 憧れだけで心が伴わない結果だった。


「はあ~」


 再三のため息がこぼれでる。一体アルテミナスに戻って何回目だよ。俺は城の外の広場の端っこでふてていた。垣根に隔てられた、これも弱すぎる外界との壁みたいな物だ。

 俺はとことんこういう所が好きらしい。てか落ち着く。だけど自分の小ささに気づいてやっぱり肺から空気が出る。

 空を見上げると満点の星空が俺に降り懸かりそうだった。すると何かが目に止まった。いや……こっちを見つめてる? 黄色い目が俺を見下ろしてるんだ。城の先端部分に止まる白い生き物……あれはクーか?


 あんな所で一体何やってるんだろうか? そういえばスオウも言ってたけどクーもおかしな存在だ。モンスターって訳でも無いし……ピクと同じサポートモンスターの実験体でもないだろう。

 そこで俺が思いつくのは、LROの無意識……そんな噂が流行っていた時期があった。それはスオウが入るずっと前でアイツが知る由も無いことの筈だ。

 あのバカは目の前の事で一杯一杯だから情報がそこら中に溢れるこのご時世でも予めなるべく情報を集めようとしない。

 それはいわゆる愚の骨頂でもあるけど、だからこそ目の前で起きる全てに新鮮さを感じる事が出来て、素直に驚くことが出来るのかも知れない。


 古参プレイヤーなんて呼ばれる俺にはどうやったっても無理な事だな。新しい情報は常に掲示板で確認してるし、付き合いの長い情報屋もいる。それに友達からだって噂や色々はメールとして届く。

 それは一年もの間LROをやってきた上で身につけた他人より先に進むための術。スキルと言えるのかも知れない習慣だ。勿論努力もしたけど、努力だけじゃ絶対に看破出来ない範囲ってのがあるんだ。

 何しろLROは広大だからさ。そして学生である以上、ここに入れる時間には絶対的な制限がある。それでも俺が他の人達より前を走れてるのは集まる情報の差と、やはりあの事件。


「…………」


 なんてこった。思い出す度にもれなく付いてくるんだなアレが。


「……はあ」


 頑張ったけど、ほら、また出た。



 LROの無意識。それは単純に俺らプレイヤーからモンスターを守る存在。俺達はLROに元々配された者にとっては侵略者なんだ。

 だからある時期からモンスターを守るモンスターが現れた。それをLROの無意識と俺達は呼んだんだ。そしてその時現れたのが、青白い光を纏い枝葉の用に分かれた尻尾が特徴的なフィニックス。

 だからクーの変身後の姿を初めて見たときに感じた懐かしさはこれだな。


 あの存在がクーと言う事になってるとしても今の俺ならそこまで驚かない。ここ数週間で驚く事が有りすぎた。でもそれはあの頃に戻ったみたいでやっぱりとても楽しい時間だった。

 右も左もわからなかった頃、入る度に発見があって戦闘の楽しみを知って、そして初めて他の人を助けたあの頃。あんなにほのぼのとはしてないけど、それでもさ……スオウといると奮い立つ物がある。

 沸き立つそれを押さえられなくなった時あのスキルを見せてしまったわけだしね。相手がクーってのもなんだか運命的だ。

 俺は再び城の先端に止まるクーをみる。横では何やら大量の金属が鳴る音が聞こえていた。きっと軍が集い始めたのだろう。やっかいな事に成ったものだ。

 その時、城の方から聞きなれた声が聞こえてきた。


「では出発は九時頃になると思いますので。一声兵達に掛けてくださいアイリ様」

「わかりました。あの……ガイエン。セラ達の帰りを待たないのですか?」


 二人は何故かこちらに寄ってきて垣根の向こう側で足を止める。人が少ないからか? なんだか予期せずに盗み聞きみたいに成ってしまっている。

 アイリとガイエン。その関係はお姫様と親衛隊隊長で軍の総指令官なんだから二人でいる事に疑問はない。だけど何故だろうか……やはり何か言いしれぬ物が浮かんで来る。


「待ってるではありませんか。でもあれはあくまで保険。心配いりません。我らでタゼホは解放して見せましょう」


 やっぱりガイエンはスオウ達に何かをさせる気は無いようだ。と、言うかあてになんかしていない。ともすればこのまま戻らなくてもいいと思ってるのだろう。

 それか戻ってもそれは逃げ帰りを予想してるとか? そしたらアイリの期待を裏切ったとかで刑罰にでも処する気だろう。


「でも……」

「アイリ様。これ以上のワガママは聞き入れません。貴方はただ玉座に座っていてくだされば結構です。国の問題は全て我らが解決しますゆえに」


 ガイエンに押されてアイリは口を噤んでしまった。やっぱりガイエン達はアイリをただの人形……飾りとしか思ってない。


「では私は、軍を見てくるので目の届く範囲にいてください。街中で何が出来る訳もないですが、心配ですから。それとあの件も……そろそろ国民は嬉しいニュースを臨んでる筈です。

 最近は不安を煽る事だけが続いているので、それを取り払う物が必要でしょう。不安がる国民の姿なぞ見たくないでしょう……貴女はこの国のお姫様なのですから」


 ガイエンのその言葉に息を詰まらせる様なアイリを感じた。なんだあの件って? 二人の間に何があるんだ? 長くここを離れていた俺にはわからない。

 ただアイリの不安だけは垣根を隔ててもハッキリと伝わって来るようだった。



 気まずい時間だ。俺はアイリに気付いてるけど向こうは気付いてない。てか気付かせたくない。だからこの場を離れたいけど、生憎出る方向は垣根側しかなかった。反対は城の城壁だ。

 なら俺は息を殺して気配を絶って、この場を凌ぐしかない。アイリが演説をするために軍の前に上がるその時まで。我ながら情けない事この上ないけど俺はもうアイリを泣かせたくない。

 今日、会議の前に目の前で泣かれて……俺はどうする事も出来なかった。多分それは今も変わらない。きっとスオウはこんな俺を見たら笑うか罵倒しそうだけど、しょうがないだろ。苦手な物は苦手だ。


「はぁ~私ってダメだな。どうしてハッキリ嫌だと言えないのかな。折角……アギトも戻って来てくれたのに。どうしてあの時は怖くなかっただろう。

 あの会議の場でガイエン達に逆らう事言えたのかな?」


 アイリの口からコボレる言葉が心許ない壁を通して聞こえてくる。これはもう盗み聞きの何者でもない。しかも女の子の独り言……最低だ。

 アイリが言ってるのはスオウ達に協力を仰いだ時の事だろう。確かに今思えば、あれはアイリを知る面々からすれば驚きの事だった。 

 だからこそあの場の連中はやけにざわついたんだ。もしかしたらあれがアイリの初めての抵抗だったのかも知れない。

 周りに見せる王族としての姿と普段のアイリはギャップがある。こいつはいつだって無理してるんだ。頼まれると断れなくて……押しに弱い。

 だから心配で心配で……でも俺は、既にそんな権利もない。垣根一つ超えることだって許されない。


「あ、そっか……」


 ん? 何か答えを見つけたのだろうか?


「アギトが居てくれたから……だよね。――ふふ」


 顔が赤ペンキで塗りたくられたかと思った。何言ってるんだアイリの奴。どうしよう、もの凄く嬉しい。


「それにあの……スオウ君かな? 会ったばかりのアギトに似ててドキドキしちゃった」


 何故か一気に熱が引く感じがする。あのバカと俺が似てた? マジでやめてほしい。と言うか、その名前がアイリの口から出たことにショックを受けてる自分が居る。

 今でも俺はアイリの何だと思ってるんだろうか。自分から捨てた逃げた癖にだ。


「ほんと……何ショック受けてんだろ俺」

「え?」


 しまったーー! 思わず口を突いて出た言葉をアイリに拾われた。周りがそれなりにうるさいのにどうしてこういう時は届いてしまうんだろうか。

 それだけ薄い壁だって事かも知れない。

 するとガサゴサと垣根が揺れる。やばい、もしかしてこっちに来る気じゃ!? 


「アギト……」


 そして案の定俺達は再び向かい合ってしまった。思わず飛び退いて城壁にぴったり体をつけている俺。そして顔だけ垣根から出したアイリの目には再び涙が貯まって―――


「泣くな、バカ!」


 俺は思わず近くに行ってアイリの目を隠す様に手で覆った。何やってるんだ俺は。意味がないにも程が有る。目だけを覆ってるから頬を流れる涙は丸見えなんだ。


「バカって……言った方がバカってアギトが言った。だからバカはアギトでしょ」

「なんだって? 俺は自分がバカだなんて絶対に認めないぞ。だからバカを連呼するなバカ」

「自分だって……連呼してるのぅ~にぃ~ズルいよ」


 なんだか昔を思い出す会話だった。てか、意外と普通に話せるものだ。今は二人きりだからだろうか。俺はしょうがないからアイリを引っ張り出す。

 いつまでも尻だけ垣根の外に晒してる訳には行かないだろう。だってお姫様なんだし。

 でもアイリの涙も止まり落ち着いたら流れるのは気まずい雰囲気。それほど広くはない空間で開いた微妙な距離もそれに拍車をかけてる感じだった。位置が悪い。

 耐えきれない―――俺はそう判断した。


「じゃあ、ごゆっくり……」


 俺はそそくさと退散する事を選んだ。だけどこれは失敗。だって垣根に顔を突っ込んだ時に聞こえた言葉で足が止まった。


「なんで逃げるの!?」


 それは奇しくもあの時と同じ台詞だった。「何で逃げるの」か……それは俺も知りたいよ。もっと素直に……強く成れればいいんだろうけどね。

 でも俺はどこまでも不器用で、素直になんて成れない奴なんだ。


「お前と一緒に居たくないから……」


 こうやって最低な言葉を口に出してしまう。それも垣根に頭突っ込んだまま――――もう引っこ抜く気もないけど。ある意味、楽だよコレは……間抜けで居れば話をはぐらかせる。逃げ出せる。


「嘘……だよねアギト? 私の事まだ怒ってるんだ……いっぱいいっぱい謝るから……行かないで」

「違う……そうじゃない……ん……だ。そうじゃ……」


 アイリは俺を責めない。こんな俺を今でも信じてくれてるのだろうか。でも……それは、だからこそ……アイリが謝る事じゃない。俺は……


「違うって……わかんないよ。隠し事は無しって……約束……したよ」

「ごめん……」


 僕は許せないんだ。自分自身に対して。でもそれを言ったらアイリはまた謝るだろう。そしてそうさせた自分がまた嫌になる。

 それは永遠に続きそうな悪循環。僕達はあの時から笑顔で居られなく成ったんだよ。だから……ごめん。

 垣根に頭を突っ込んだ間抜けなエルフは再び足を動かそうとする。今度こそこの場を去ろう。そう決めた時だった。


「ア……ア……アギトの……大バカ者ー!!」


 アイリの聞いたこともない大きな声に続いたのはわき腹への衝撃だった。女の子のタックルなんて生優しい物じゃない。あれは爆発の衝撃だった。

 垣根から吹き飛んで城壁に叩きつけられる。ダメージには成らないけどそれなりに痛い。目を向けるとアイリは小さな小さな短剣を翳していた。刃も無いそれは玩具にしか見えない。

 せめて三十センチ有るか無いか位の物。だけどあれは紛れもなく武器。それも最上級の稀少度を誇る国宝だ。あれを本気で使われたらアルテミナス領土でアイリに勝てるプレイヤーは居ないだろう。

 それだけ桁外れな物だ。ごく一部の武器がこう呼ばれる『バランス崩し』その一本『王剣カーテナ』それが俺に向いていた。


「アイリ……お前……そんなもん持ち出すんじゃねーよ!」


 危ないだろ! ここはいくら何でも怒らずには居られない。


「だったら逃げないでよ! アギトがバカでヘタレでバカみたいな事、ずっとやるから!」

「おい、今バカ二回言ったぞ! ワザと繰り返しただろ!」


 てかそんな物持ち出されて逃げない奴なんて居ない。いや、まあアイリの言葉の意味は分かるけど俺は……


「それが何? アギトなんてバカトで充分よ! ずっとずっとずっとずっとずっと――」

「おい! 待てアアイリ! カーテナから何か出てるぞ」


 それは黒く深く尖った鏃の様な物体……空間を蝕んでる。だけどあんなのはカーテナの能力の末席だろう。


「――待ってたのにぃぃぃぃ! バカァァァァ!」

「ぬあ!」


 カーテナから飛び出した鏃は俺の顔面数センチを掠めて空に消えていった。


「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ…………」


 アイリの息が荒い。あれだけ叫べば……とも思うけどそれだけじゃない。カーテナの副作用だ。強大な力にはリスクが有る。それはここLROの大前提だ。

 俺は畏れおののいていた。さっきの攻撃は洒落に成らない。文句でも言ってやりたいけど、あの顔をみたら自分の非が猛烈に襲ってきて口を金魚みたいにパクつかせるしか出来なかった。

 アイリは泣いていた。だけどその涙は今まで何度も見た涙の中で一番濃く感じた。いろんな感情が沢山混じり会った濃い涙。俺はあれと向き合わなくちゃ行けないんだろうか。

 多分……きっとそうなんだろう。だけど俺はやっぱり逃げる事を考えてしまう。あの涙を自分が止める資格は無いから。だけど荒い息を吐きつつ言ったアイリの言葉は俺のふがいない部分に突き刺さる。


「はぁ……はぁ……アギト、私遠くに行っちゃうよ。捕まえてよ! 助けてよ! イヤな事っ……ぜんっぶ……言ったよね。すくってあげるって!」

「――!!」


 思い出す情景は一つの冒険の後。共に歩んだ道のりを振り返り、手の中に収まった小さなリングを噛みしめた。そして俺達は互いにそのリングを……

 俺は顔を背けた。輝き過ぎたあの瞬間を俺は見れない。だけどそれが合図だったのかも知れない。アイリの中で何かが崩れる合図。

 アイリは何かを投げた。そして走り去る。俺はアイリが捨てた物を見てアイリの去った方へ手を伸ばした。だけど大きく口を開いても言葉は出ない。

 出せるはずがない……これで良かったんだと思う自分には。震える腕が何を伝えようとしてる……だけどそんなの、知りたくも無かった。



「やはりお前かアギト」


 垣根から顔を出したのはオールバックの渋いオジサンガイエンだ。見たくも無い顔だから背を向けよう。


「アイリ様がさっき走り去った。どうするんだ? もうすぐ軍の召集も完了すると言うのに」


 ガイエンの言葉を俺は無視。話したくも無い、さっさと消えろ。


「まあ、だが……丁度良かったな。お前へのシコリは消し去ったみたいだから助かったと言っておこう」


 ん? なんだそれ? いや、そもそも何でこいつらが今になって俺を呼んだのかわからない。国を抜けた俺に助けを求めるなんて事しないだろ。

 けど……それを気にしてどうするんだ。俺はもう捨てられたんだ。このリングと同じようにやっとでさ。それにガイエンの声は明らかに誘ってる。乗るな俺。


「……だから何だよ。それだけならもう行くぞ。俺には関係ない」

「ああ、関係無い。無くなるさ。ようやくだ……ようやく私がこの国を手に入れる時が来た。このリングが彼女の指にはまる時がな」


 そう言ってガイエンは腕を動かして何かを取り出した。それは大きな青い宝石……中で泡の様に光が灯っては消えていく。そうあれは指輪だ!

 俺は振り返り腕を横に振って叫んだ。


「ふざけるな! そんなものアイツがはめる訳……それにお前、国だと!?」

「彼女ははめるさ。この国の声に負けて。そしてこの国の為に私と結ばれる。愛なんて物はここでは必要ない。そうだろう負け犬?」


 コイツが狙ってるのはアイリじゃない。ただ国という大きな枠組み。その頂点の椅子だ。その為だけに王族と直結したアイリを……俺は動揺を隠せない。

 負け犬だと!?


「お前みたいな奴にアイリは……!」

「今更何をしても遅いぞ。アイリ様は切り捨てたんだ。お前をな。後は簡単だ貴様には少しの間席を外して貰えばいいだけだ。私達の式の間な。

 邪魔はいかんだろ? 幸せな二人を祝福出来ないのなら退場は免れまい」


 奴はゆっくりと近づいてくる。垣根の向こうには奴の犬が待ちかまえているんだろう。それは軍と言う名のふざけた犬だ。

 俺に逃げ場はない。だけどたじろぐ足は止まらない。覚悟も決まらないのか。


「どうする? 牙を抜かれた元犬よ。それとも最後に足掻いてみるか? 我が国の『ナイトオブウォーカー』!」

「くっ!」


 互いの武器が音を立てて絡み合った。だけどその時、異変が起きる。風は冷たさを称え光明の塔の光が萎む。あの塔の光は連なる王族の輝きを示す。

 兵の一人が何かを告げる。だけど俺はそれより早く動き出す。

 明暗するは光のつぶて。木霊するは犬の叫び。

 何を俺はやってんだ? だけどこの足は止まらない!

 第三十六話です。

 今日は寝ないでそのまま投稿です。だから眠い! 目がチカチカする! 日光は自分には恐れ多い! とか思っちゃう今現在。

 今回はアギト視点のお話です。複数展開する話は大変です。最後にちゃんと合流できるかな? 頑張りますので優し眼でどうか見守ってください。評価・感想、随時受付ております。

 良かったらくださいな。ではまた明日にて、何か良い事あったらいいね。

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