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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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偽の先の真実?

 暴れ始めたセラとリルフィン。奴等は自分達の主と誇りの為の戦いをやってる――んだろうけど、今やる事じゃないよね。だけどあの二人を止められそうな人達は早々に会場を後にした。

 そして残った無力な男共では二人を止めること叶わぬ事を悟ってた。一人二人と去っていく仲間達。セラにつこうとしたノウイはいらない子扱いされてやっぱり退場。そして最後に残された僕の足下には、何故かローレ? だった筈の小さなモブリがしがみつく。

 そんな動き出す二人の攻撃をかいくぐり、僕と彼女は知られざる秘密の通路へと飛び込んだんだ。

「はぁはぁはぁはぁはぁ……」


 大きな音と、建物全体が揺れる衝撃。遂に始まったセラとリルフィンのプライドと譲れない物を掛けた戦いは下手をするとこの建物自体を吹き飛ばしかねないよ。

 そんな戦闘に巻き込まれる訳には行かないから、僕はギリギリローレ(偽)と共に秘密の通路に逃げ込んでた。


「きゃっ!? あわ……わわわ……」


 振動が起きる度に僕の前の小さなモブリ、ローレ(偽)は肩を竦ませて震えてる。布をズリズリ引きずりながら、頻繁に顔を拭ってる所を見ると、もしかして泣いてるのかな?


「まあなんだ……命があっただけ良かったじゃないか。命有っての物種って言うぞ。僕もおかげで助かったし、もしも建物倒壊しても、全ての責任はあのバカ二人だから偽には罪はないからな」


 本物には何も言われずに置いてけぼりにされて、自分を守る役目だったリルフィンが建物事、自分を危機に晒らす。なんだか可哀想になってきたから僕は慰めの言葉をかけるよ。まあ、自分の保険もあったけどね。


「……あの、その偽って呼び方やめて頂けませんか」


 まさか最初にそこを突っ込まれるとは……イヤな間が僕と彼女の間で流れる。だけどローレって呼ぶわけにもいかないよな。だって偽なんだし。さてどうした物か?


「偽じゃないです。私はローレですよ」

「まだ言うか……僕の知ってるローレは君とは雰囲気も喋り方も違うぞ。それに本当にローレなら、リルフィンの奴もあそこまで滅茶苦茶にならないだろ?

 アイツローレの事めっちゃ大好きだし。良い格好したがりだしな。だから君はローレじゃない。偽だ!」


 はい、確定。論破論破。リルフィンの奴がローレの前で暴れたがる訳がない。まあ寧ろ、ローレがいたら、アイツ自信が煽りそうでは有るけどね。でもこの子はそんな事も出来ずに怯えてたからね。

 ローレ? もしもそうなら魂入れ替わったとしか思えねえよ。


「もしも……もしもそうだとしても偽って呼び方はどうかと……」

「じゃあ名前を教えろください」

「言葉遣いおかしいですよ。私はローレです」

「お前は頭がおかしいみたいだな」


 ローレはダメじゃん。どうなってんの? 言葉通じて無いのか? ズリズリ引きずってるこの布踏んでやろうか?


「ですから私はローレでないといけないんです。それ以外の名前で呼ばれたら困ります」

「でもローレじゃないだろ? ローレって事でローレの代わりをシルエット越しにしてるだけじゃん。誰も君自身を知らないのなら、普通に素顔晒して、別の名前でも問題ないと思うけど……バレないだろ。

 だってモブリはみんな同じ様な体型してるんだからさ。てかローレと呼ぶ方が不味いような……」


 そっちの方がバレるよね? ズングリムックリな体型のモブリだ。もしも全く違う奴がローレを語ってもきっと誰もが信じるぞ。シルエットにしてしまえば全員同じだし、別に彼女じゃなくてもきっと誰でも出来ると思う。

 それなのに何をそんなに拘ってるんだろう?


「良いじゃないですか。貴方に何もかもを話す必要性がありません。無粋な詮索はよしてください。これは私達の事情なんです」


 そう言われても……知ってしまったしな。みんなが見てるローレは替え玉だって……てか、そもそも何でローレ自身が出てこないんだ? アイツ目立ちたがりっぽかったと勝手に思ってるんだけど。

 自分を崇め奉りなさい!! とか言ってる奴じゃん。それなら自分自身でやった方が優越感とか味わえると思うんだけどな。何か不都合が有るのか? それを握れば、あのS野郎と対等になれるのかな? 

 だけど既に、これ以上詮索するなと釘を刺されたしな。さてどうするか……まあまずは呼び名を決める必要あるけどね。だってローレは無理なんだよ僕的に。イメージ悪すぎるから、知り合ったばっかりの人にローレって言えないよ。


「なかなかに聞き捨てならない言葉ですね。本当に貴方は……と言うか、あなた方はローレ様に対しての――じゃなくて私に対しての敬意と言う物が足りません」

「いやいや、もう良いよ。もう楽になって良いんだよ」


 僕はまだまだローレの役に徹しようとしてる彼女を楽にしてやろうとそう言葉をかける。きっとこの布を被ってるのもそのためなんだろうな。一体どれだけの弱みを握られてるんだ?


「楽とか何を言ってるのですか? 私はこの役目に誇りを持ってます。光栄の極みと言う奴――はっ! ずずず頭が高い! ひざまづき……づいてみなさいな」


 無理しすぎ。なんか逆にこんな子にいっぱい怒鳴ってたかと思うと、悪いことしてたなって思っちゃうよ。きっと布の向こうでビクビクしてたに違いない。だって言葉でさえ最後まで強気で居られない子だよ。

 精一杯ローレらしくしようとしても出来ないんだ。無理もない。だって本物鬼畜だもんな。

 僕は布で覆われてる頭をポンポンとしてあげるよ。


「何の真似ですか!? こんな事許してません! だからやめなさい!」

「ほんと、苦労してるんだな偽。ごめんごめん」


 僕は怒る偽も華麗にスルーして撫で撫でしまくるよ。モブリってちっちゃいからついつい撫で撫でしたくなるんだよね。だけど流石にテッケンさんには出来ないからね。

 こういうなんだかついついかわいくちょっと隙があって頑張ってる風なら自然に撫でられるな。


「だから偽はやめてくださいと何度言えば良いんですか!」


 力強くそう言った偽。すると想像以上に激しく動いたからか、全身を隠す為に被ってた布がズレ落ちた。それはあの部屋で僕たちと彼女の間にあった布だ。とっさにこの通路に飛び込んだ時に、一緒に持ってきちゃったんだよね。 まあこの布越しに偽は僕にしがみついてたから、当然っちゃ当然だけどね。だけどそんな布が遂に彼女と僕の間から落ちる――と、言うか落ちた。姿を現した彼女は、白と赤の巫女服に身を包んで、長い髪を後ろで束ねてる。髪の色は黒なんだけど、毛先だけ色が薄くなってる。

 瞳は大きくクリッと見開いて、こっちを見てた。瞳孔が開いて、そして縮小する。


「あ……あぁ……きゃあああああああああああ!!」


 狭い通路に響く甲高い叫び。僕は思わず耳を押さえる。それほどに強烈な叫びでした。女の子の声って時に狂気だね。鼓膜が破れるかと思った。

 僕が耳を押さえてる間に、偽は落ちた布を広い集めて団子状態になってる。おいおい、その状態で震えてるとまるで僕が襲い掛けたみたいじゃないか。

 僕たち以外に誰もいないから変な誤解は生まれないけどなんだか複雑な気持ちだよ。


「おい、大丈夫か?」

「………………見ましたか?」


 布にくるまった偽に声をかけると、そんなか細い声が返ってくる。ここは素直に答えてやろう。てか、きっと自分でもわかってるよな……ただの確認事項か、その事実を受け入れたくないかだろう。

 見てないって言うのは簡単だけど、見てしまったのをそう言うのは僕の良心が痛む――――――――かも知れない。多分痛まないだろうけど、ちゃんと言う方が面白そうだ。


「おう、案外ばっちりと見えた。胴体視力には自身あるんだよね僕」


 この世界で鍛えたからな。僕の売りはスピードなんだ。だからそれに自分自身が追いつかないと話にならないからね。ただ突っ込むだけじゃ猪と変わらない。

 僕は自慢のスピードと胴体視力で、相手が一撃叩き込む間に三発は攻撃入れるのが心情だ。だから今の瞬間とか、もう一つ一つコマになるよね。映画のフィルムの様に、その一瞬一瞬が鮮明に見えてた。

 あれを見逃せと言う方が僕にとっては難問っていうか~


「忘れてください。今すぐに」

「そんな事が簡単に出来る訳ないだろ。僕の頭はそんな便利に消去とか出来ないんだよ」


 パソコンじゃ有るまいし、デリートがその範囲だけで適用されるかよ。そんな事が出来るのなら、逆に簡単に授業の内容とかを覚えれる様になってて欲しい物だよ。

 消去が出来るのなら、記憶も出来るようにお願いしたい。だけど事実、そんな便利な頭なんかじゃない。なのでその願いはちょっと……


「殴ると記憶って飛ぶんでしょうか?」

「おいおい、折角暴力的な奴らから逃げて来たのにお前までそんな事言うなよな。意味ないじゃん。それにそんな小さな拳じゃ無理だと思う。そもそも偽じゃ僕の頭に届かないし」

「しゃ、しゃがみなさい!! ――いえ、ください!!」


 おいおい、可愛いな。なんか蓑虫みたいな奴がモゴモゴ蠢いてるぞ。しかもやっぱり横暴には成りきれないみたいな所がそう思わせてくれるよね。

 本人は一生懸命ローレを演じようとまだしてるんだろうけど、この子は絶対にアイツみたいにはなれないよ。だって良い子だもん。

 まあシルクちゃんはローレの事も良い子っぽく思いたいらしいけど、僕にはアイツの良いところがわかんない。横暴だし、わがままだし、どこまでもその高い鼻は伸びてるしで、手のつけようがないよね。

 誰も止めなかったのかよ……と言いたい。


「はぁ……」


 思わず出るため息。すると目の前の蓑虫が人語を話して抗議してきた。


「なっ!? なんですかそのため息は。ローレの言葉にはちゃんと従いなさい――ください。ほら、頭を差し出すのです!」

「わざわざ殴られたくないので却下でお願いします」


 僕はやんわり断って通路の先を目指す事に。少し進むと下へ下る階段が続いてた。いつこの建物自体が壊れるか分かったものじゃないから先を急ごう。

 さっきから後方のドンパチが派手に成って行ってる気がするしな。すると僕がさっさと先に進みだした事に気づいた偽が慌てて僕の後に付いてくる。


「まっ――待ちなさい! ――あぁ、いえ待ってください。ここを勝手に歩くことは許しません――きゃっ!?」


 長い布で己の身を包み、さらには階段だったからだろう。足下が疎かになった偽は、階段に気付かずに転がり落ちていく羽目に。

 ゴロゴロゴロと一回目の階段を軽快に転がると、その布のおかげか、壁にぶつかっても勢いが衰えず反対に転じ次の階の階段までも転がる羽目に。そうやって偽は階下目指して一直線だ――と言うかジグザクな感じで転がってく。


「はわあわあああああああああああ!?」


 そんな可哀想な声がこの秘密の通路の下から上へと響きわたってた。




「大丈夫か?」


 それなりに急いで階下に到着した僕は、完全に布の上でダウンしてる偽へそう声をかける。大した怪我はしてない様だけど、いかんせん一気に落ちてきた物だから完全に目がグルグルしてるよ。

 誇張表現じゃなく、まさにアニメみたいにグルグルしてるんだ。僕の声にも「あわ~あわわ~」としか答えない。これはもうダメかも知れないな。

 てかもうばっちりその姿晒してるよ。有る意味ここでまともだったら、また面倒な事に成りそうだから、有る意味よかったのかも知れないな。

 僕は布の上で唸ってる偽を抱きかかえる。だって流石に放置にはしておけないだろう。さて、どうするかな。そう思ってると、上でドッガアアアアアアアンなる音が聞こえて、大きな振動と共にパラパラと藻屑みたいな物が落ちてくる。

 マジで壊しかねないなアイツ等。さて、一体どっちに行けば良いのか? 今までは一本道だったけど、降りて来た場所から左右に道が分かれてる。

 一体どっちに行けばいいのか……それとも別にどっちでも良いのか? まあ深く考える必要もないかな? とか思ってると、丁度低い位置に貼ってある張り紙に気付いたよ。それには『出口あっち』と矢印が左側を指してた。なるほど……


「じゃあ右に行こう」


 僕は躊躇わずに張り紙とは反対側を選択する。だってどう考えても怪しいだろ。ローレの奴がそんな親切心を垣間見せる筈がないと声を大にして言える。

 だからきっと左は罠だな。僕の直感がそう告げてるよ。迷う必要性なんてない。僕はスタスタと右側の通路を歩いてく。


(結構降りてきたし、もう一階まで来た筈だよな)


 そんな事を思いながら歩いてると、出口らしきドアが見えた。よしよし、やっぱりこっちが正解だったようだ。アイツの性格を知ってたらあんな張り紙に騙される訳がない。

 僕は早速その扉をガララっと開けた。


「ふう、どこに出るのかな~って外かよ」


 扉の外は世界樹の枝が生い茂る外の空間だった。いや、まあこんな物か。そもそも脱出用の秘密の抜け道っぽかったしな。外に出るのは有る意味妥当な気がする。まあ脱出出来たしよしとするかな。

 本当はこの先にローレの奴が居ることを期待したんだけどな。それか恥ずかしい個人部屋にでも繋がってる……とも思ったけど、全然そんな事はなくちょっと拍子抜けではある。

 そんな事を思ってると、再び上の方で激しい音が轟いた。マジでこの建物を崩壊させる気か? どう考えてもやりすぎだろ。ローレの奴は何で止めないんだよ。

 まあ実際崩れる事はないと思うけどね。だって普通の街とか村の建物って、そうそう壊れない様に成ってる。それはきっとここも同じ。

 だから本気の本気で壊そう思っても早々倒壊なんか起きない筈……だけど、実際あの二人の本気度によれば出来そうだから怖いよな。

 実際壊れ難い補正がシステムでしてあるだけであって、絶対に壊れない設定じゃないもん。でももしも、あの二人が壊したとしても、それを僕たちのせいにはして欲しくないよね。一応自分は守ってるけど、この偽を頼れるかは正直微妙だよね。

 そんな不安な思いで気を失ってる偽を見つめる。すると耳に、物騒な音とは違う旋律が微かに入ってくる。僕は辺りを見回すよ。だけど僅かな空間しか確保されてない場所だ。

 ぱっと見回しただけじゃ何もない。ここは裏口……なのかな? それにしてはちょっと不便な様な……いや、そもそもローレ専用の秘密の通路が外に出るだけで終わりっておかしい。

 もしもの時の為の脱出手段なら、ここで袋小路に成ったらいけないだろ。きっとどこかに道がまだ有るんじゃないのか? 僕は辺りを捜索してみるよ。

 ガサガサとほんのりと光ってる世界樹の枝をかき分ける。するとそこで明らかに一カ所おかしな場所を見つけたぞ。てかどうして気付かなかったのか不思議な位の不自然さ。

 まあ今は世界樹自身が光ってるから余計にそんな風に感じるのかも知れない。いつもならきっと溶け込んでる筈なんだろう。辺りの葉や枝が光ってる中で一カ所だけただ鮮やかな緑色のままの場所がある。

 僕はそこに手を突っ込んで見る。すると何の感触もない。どうやら魔法で作った幻影? みたいなものみたいだな。どう考えてもカモフラージュ。この先にローレは居るのかも知れないな。僕はそこを進むことに。


「なんだかトトロに出てきそうな雰囲気だな」


 独り言でそんな事を呟きながら進む。この通路の場所だけ比較的に細くなった枝が織り込まれるみたいにして辺りを覆ってるんだ。

 なんだか秘密の通路みたいだよ。その通りだけど。しかも今はこの枝や葉っぱ事態がほんのり光って、まるで別世界へ誘ってるかのよう。

 所々に灯籠がたってるんだけど、それは今や意味を成してない。世界樹自身の光で十分足下照らされてる。そして進むにつれて、荒々しい戦闘の喧噪は遠ざかり、逆に静かな旋律の音がはっきりとしてくる。

 まあ静かに成ってきてるからその声が耳に聞こえやすくなってるだけで、決して大きな音じゃない。だけど不思議と誘われる……そんな気がするよ。

 ペタペタと裸足のまま歩いていくことほんの少し。僕は広い空間に出た。それはきっと幹に近い部分なんだろう。大きな枝が一杯密集してる場所だ。そして僕が出た場所はその太い幹が窪んでた。そこに例の浄心水が貯まってる。淡く光る空間にキラキラと輝く、鏡の様な水。

 そんな水は上の枝から下の枝へと、滝の様に落ちてきてる。まさかここが浄心水の源泉なのか? 僕達が見つけたのはほんの少し染み出してた場所にすぎないようだ。だってここは規模が違う。


「うっわ……まぶし……」


 きっと普段はここまで眩しくは無いんだろうけど、今は世界樹自身が光をはなってるから、浄心水と相まってこの場所の至る所が光ってる様に見える。

 特に浄心水はハンパない透明度を誇ってるから、世界樹の光が反射の繰り返しで倍増してるのではないかって程。僕が目の前に眩しさに目を細めてると、チャプチャプと鳴る、周りの滝とは違う音が聞こえた。 

 目を細めてると僅かだけど何か動いてるのが見える気がする。あれがローレかも知れない。そう思って僕は足下に注意しながら近づいていく。

 だけど僕はその時、あまり深く考えてなかった。この場所がローレにとってのどういう場所で、なんでこんなに水が貯まってて、しかもローレはその中に入ってそうな事を。

 近づくとその歌は次第にはっきり聞こえてくる。どうやた旋律を鼻歌で口ずさんでるだけみたいだな。僕は細めた瞳でなんとか視認しようと必死だ。 

 だって実際鼻歌だけじゃ誰か分からない。まあローレの姿は見たことない訳だけど、ここにいるならきっとローレだろ。

 今まで姿を隠してたからここで一気にその正体を暴いてやろうと僕は考えてました。


 パシャンと弾ける水の音。それを切る手は細くしなやかで、小さいけどお子さまとは言えない物だった。背中は白くて女の子らしい美しさと小ささだ。金髪の髪が見えてるけど、背中を隠さない様に纏めて肩から前へ流してるのはグットだね。てか、髪を洗ってたのかも……って、え? 僕は抱えてた偽を思わず浄心水の泉の中へと落としてしまう。

 ドボン――と言う音と共に、ブクブクと沈んでいく偽。だけどそんな事よりも僕は目の前のその誰かから目が離せない。


「えっと……だ――」


 偽を落とした瞬間にこっちに気付いた彼女は。胸を押さえて振り返った時には既にその腕を振るってた。その瞬間、浄心水が津波の様に僕に迫り僕の言葉は途中で流されてしまった。


「――うおぁッ!?」


 大量の水で後方に流された僕。そのまま一段下に落ちちゃったじゃないか。枝が密集してるからそれ以上は落ちなかったけど、やばかった。

 いきなり何するんだあの子。まるでセラみたいな躊躇いの無さだったぞ。僕は腕を伸ばして、上へとよじ登る。すると背中を見せてるあの子が、泉に沈んでた偽を助けてたよ。てかエロ……何あの背中。犯罪だろ。てかモブリじゃない……よね?


「犯罪はアンタよ。何堂々とこんな所まで来てるわけ? ロリコンが我慢できなく成ったわけ?」


 お尻の半分から上を惜しげもなく出す少女にロリコン言われた。いやいや、ロリコンじゃ無くてもきっと見るよ。だってキラキラしてるし……何というか嫌らしい意味じゃなく綺麗だ。

 女の裸を芸術だと言って彫刻にしてた昔の芸術家の心が分かる気がする。今まではただの変態オヤジ共が煩悩剥き出しで作ってたんだろ? とか思っててごめんなさい。


「ん?」


 色々と反論の言葉を考えてたんだけど、気になることに気付いてしまったぞ。なにやら聞き覚えのある声。だけどまさかな……僕はさらにまじまじと目の前の美少女を観察するよ。ないないない……ここまではきっとローレだろうと、願ってたけど今は逆に違うと願う。


「ちょっ!? あんたどれだけロリコンなのよ。こんな体に興味津々な訳? 通報するわよ。てか、ただで見てるんじゃ無いわよ!!」


 綺麗な金髪な髪を振り回してそういう彼女はなんだかとっても微笑ましい。だけど不思議だな、この声だけ聞いてると異様にムカつく。

 いや……でもまさかリア・レーゼってモブリの街だし……そんな訳ないよな。でもよくよく見るとあの子には少しただの人とは違う場所がある。まず耳がモフモフしてる。あれはモブリの特徴。エルフがシュと延びた長い耳でモブリはウサギの尻尾みたいな耳をしてるのだ。

 えっ、じゃあの子がモブリかって言うと、そうは見えない。だからここは確認するしかないよな。


「えっと取り合えず今更だけどさ……誰?」


 すると彼女は妖しく笑う。綺麗な金髪の髪が白い肌に張り付いて、なんだか見た目の幼さを凌駕する艶やかさを放ってた。

 第三百四十話です。

 今回の前書きは少し壮大な感じを意識して書いてみました。ただの説明ですけど、なかなか面白いものです。前書っていつも悩むんですよね。ここもですけど(笑) 

 別に書きたい事がある訳じゃないし、かと言って今更真っ白にするのも……って感じ。まあ無難に次回の予告とか、本篇にちょっと触れる程度の事で良いですよね? ってそれじゃ今まで通り!? でも他にやる事ないし……マイペースにやってくのが一番ですかね?

 まあ何かリクエストあれば受け付けます。ここじゃなくてもツイッターやフェイスブックでも良いです。まあもう結構やってるし、何か……何か出来る事があるかも知れない!! だってもう書き始めて一年過ぎ……二年目も過ぎようとしてない? 

 二千十一年も後二か月だよ!? ヤバいですね。一年が短すぎてヤバいです。二千十二年は世界終わるのかな? もしも来年世界が終ったら完結出来ないですね。その時はごめんなさい。

 てな訳で次回は水曜日に上げます。ではでは。

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