雨の代わりに竜が落ちる
追い詰められた僕達。聖獣は容赦なく迫りくる。だけどここで僕の元には戻ってきた武器がある。ここでこの武器が僕の元に戻った事は奇跡みたいな物だ。何かを言われてる様に思えてならない。
まだまだやれると、僕の相棒はきっと言ってる。だからもう一度、僕は奴等に挑む。
降りしき雨に、湿り滑る地面。エアリーロを囲む様に回り込んで来ようとする聖獣共。ヤバいな、このままじゃ反対側に居る僕が見つかってしまう。
そうなると僕は問答無用でメドゥーサ聖獣にブチ殺されるだろう。今の言葉を聞く限りきっとそうなる。
勝てる見込みなんて無いけど、エアリーロがこのままやられればどの道、僕は生き残る事なんか出来ない。怯えて死ぬか勇敢に死ぬかなら、後者を選びたい所でもある。
今ここで、この場所で、もう一度僕の側に戻ってきたコレも、最後まで諦めるなって言ってるのかも知れない。
「先にこの召還獣の力を全て頂くとしましょう。あの人間は後でも良い。そう楽しみは後に取っておきましょう」
イヤな事を言ってるメドゥーサ野郎。そんな声を受けて他の聖獣達の足音が聞こえる。もう時間はない。そう思ってると、魔法の網に囚われたエアリードが頭に直接声を響かせる。
『逃げなさい。今から僅かですが風を起こします。それに併せて動きなさい。いきますよ』
「えっ? おっ……おい」
一方的にそう言って、エアリーロは風を起こす。自身から吹き上がる様な風が出て周りの聖獣共を僅かだけど阻むんだ。
この間に逃げろって事だろう。『行きなさい!!』そんな声が頭に響くよ。だけど……僕はそんなエアリーロの言葉に素直に従えない。だって、今ここで戻って来た相棒には意味があると勝手に思うんだ。
僕は覚悟を決める。相棒を手に取り宣言するは「イクシード」。そして風のうねりで回り込もうとしてた聖獣共に攻撃を加える。
「うおおおおおおらああああああああ!!!」
風のうねりはやっぱり吸収される。だけどそれもお構いなしに、僕はうねりを出し続けてセラ・シルフィングを振り抜いた。向こうが無尽蔵に攻撃を吸収するのなら、こっちだって無尽蔵に攻撃を続けるだけ。
僕は吸収されながらも風のうねりで、四体の聖獣を押し退ける。ある程度の距離はなんとか取れた。でも……互いに動けない状況に成ったな。
イクシードのうねりを止めると、聖獣共が一気に迫る事になる。そうなれば瀕死状態の僕は速攻で殺されるだろう。それをさせない為にも、うねりを出し続けてこの膠着状態を維持しないといけない。
そもそもうねりが止まった時点で、今まで吸収させた分が戻ってくるんだからそれで僕はきっとやられる。いつまでイクシードが持つかわかんないけど……少しでも長く生きる為には、力を出し続けるしかない。
『なんてバカな事を……』
エアリーロが僕の行動を見てそんな事を言う。ほんと毎度毎度僕だってそう思う。だけど逃げてどうなったんだよ。この戦場から逃げる事なんか結局出来ないじゃないか。
聖獣共を調子づかせれば、そのままリア・レーゼにまで侵攻してくるのなら、今逃げ出したって意味なんてない。
それにそもそも、こんな状況を作り出したのは僕だ。その元凶な自分が真っ先に逃がされるなんて……そんなの耐えられる訳ないだろう。
どうにか出来る見込みがあるのなら別だけど、今の状況じゃそんな見込みもない。だからその見込みを作る為の時間の為にも、僕たちはたった数人で戦ったんだ。そしてローレも召還獣と言う切り札を寄越してくれた。
これでもダメなら、本当にリア・レーゼが終わってしまう。
「幾らバカだ愚かだってわかってても……このまま行かせる訳にはいかないんだ。絶対に……ここから先には行かせれない。だってそれを許す事は終わりだろ……なら、逃げるなんて出来かよ!!」
命の価値を自分だけが特別だなんて思っちゃダメだろ。そんな傲慢で、助けられるのが当たり前みたいな奴に僕は成りたくないだよ。
風のうねりを一本のセラ・シルフィングから出し続けながら、僕はそんな事を思う。
「逃げる必要なんてないわ。お前はここで死ぬのだから」
静かにそう紡ぐメドゥーサ。すると盾を別の聖獣に渡して、自分は頭の蛇をウネウネ動かしながらこちらに近づいてくるじゃないか。しまった、そう言う事も確かに出来るじゃないか!!
考えて無かったぞ。
「攻撃全てに反応するのは考え物ね。あんな攻撃なんて、一個の盾で十分なのに、全員を巻き込むとは……しかも攻撃が止まないと吸収した分は放出出来ない。
攻撃が続く限り、あの盾は反応し続ける。上手くやったものだわ」
「…………」
なんか予想外に褒められてるっぽいけど……別にそこまで考えて無かった。力を出し続ける限り、きっと吸い続けるんだろうって思っただけだ。
「だけどそんなのは浅はかとしか言えないわね。我らは別にあんな盾に頼る必要もないし、切り札でもない。お前達がそのご自慢の武器を無くすと何も出来なくなる……なんて脆弱ではない」
「は……はは、その割にはハゲに成ったとき、必死に逃げてた記憶が僕にはあるけどな。見間違いかアレは?」
必死に強がって僕はそんな事を言う。流石に吸収され続けるのは辛い。ただでさえ力が入りづらいのに、どんどん絞り取られていく感じがする。
こんなにイクシードって疲れる物だったんだな。いつもは勝手に風が集まってきてそれを振るうだけだったからわからなかった。
今はうねりが消えないように意識的にうねりを作り出し続けてるから疲労感が半端ないんだ。だけどここでフラフラする訳にもいかない。
気丈に振る舞ってないと、聖獣に攻める隙を与える事になる。まあ向こうはいつだって攻めれるだろうけど……というか既に攻めて来てる感じだろうけど、一秒でも長く僕たちは戦い続けるべきなんだと思う。
だから最後のその瞬間まで、僕は必死に戦うよ。既に聖獣と戦ってるのか、自分自身と戦ってるのか、そこら辺も色々と曖昧だけどさ、こうなったら思いのままに……だろ。自分の気持ちに従うからこそ、最後まで後悔せずにきっと立ってられると思うんだ。
「言ってくれるな貴様。我が力で滅して、その認識を改めさせてやろう」
僕の言葉が勘に触ったのか、メドゥーサ聖獣は明らかにイラッとした感じでそう言った。近づく足が少し早くなる。僕を早くその手で殺したい……そう言うことか。頭で呻く蛇の声。キシャーキシャーって言ってるのが不気味で成らない。
くっそ、どうすれば良いんだ? このままじゃ確実にやられる。けどかといって、ここでウネリを解除すれば、今度は聖獣が+3に成って迫ってくる事になるだけなんだ。
どっちみち最悪だよ。身動きが取れなくて一体にやられるのと、身動きは取れるけど、四体の聖獣になぶり殺されるの……どっちも選びたくない。
そもそも、この状況じゃ身動き取れても仕方無い部分がある。傷が大きくてそう動き回れないし、だからこそ一気に聖獣共を縛り付けたかったんだ。
一時的には上手く言った訳だけど……盾事態の力だったから他に任せられるってのが誤算だった。
「さあ、石となってその後にバラバラにしてやるわ」
数メートル先で立ち止まったメドゥーサはそう言って、頭に居る一匹の蛇を僕へと伸ばす。ニョロニョロと伸びて来て目の前で舌を出す蛇。気持ち悪い。いや、気色悪い。
この蛇が僕を石とするのか。片腕しかなくて、それすらもイクシードで塞がってる。だからこそ聖獣は余裕で蛇を近づけてる。
どうしよう……こうなったら蛇に噛みつく位しか出来ることが思いつかないぞ。いや、もうそれしかない。これだけ近づいてるんだ。一矢報いて噛みちぎってやらああ!!
僕は大口を開けて、目の前の蛇に歯を突き立てる。だけど余裕でかわされて僕の瞳の中に蛇の真っ赤な瞳が映る。そしてその一転から僅かに集まる光。それはきっと石化の光。
(終わり……)
それを本当に覚悟した。けどその時、もう一度だけエアリーロが頑張ってくれる。キラキラの風が吹き上げる。その風に蛇は揺さぶれられるんだ。
だけどこれだけじゃ何も解決なんかしない。後数秒もすればこの風も収まって僕は結局石になる。こうなったら、出し押しみなんてやってられない、また入院する事に成るかもだけど……死ぬよりは良いだろ。
イクシード3……それしか僕には道はない。輝く風も舞ってるんだ。なんだかお誂え向きじゃないか。あらぬ方向に石化の光を出して盛大にぶれてる蛇。
それが僕に向く前に……そう思ってると、なんだかウネリの勢いが少し増した様な? エアリーロが放つ輝く風。それがイクシードのウネリに加わってないか? いや、周りの風を取り入れて放ってるのなら、あり得なくはない?
しかも風の質が違うからか、威力が上がってる様な……もしかしてコレなら!! 僕は意識を腕に……セラ・シルフィングへと集中する。
意識して取り込むんだ。吹きすさんで行った輝く風を、この刀身へ!! その瞬間、腕に掛かる負担が更に大きくなった。だけど僕は必死に耐える。
大きさを増したウネリ……そしてそのウネリの中にはキラキラとした風で一杯になった。すると勢いが増したからか、先端の方でイクシードを吸収し続けてる聖獣どもの方でも異変がおきた。
(風が流れてる?)
吸収しきれてないのか、聖獣の周囲へと輝く風が残ってる様に見える。
(これは……もしかしたらどうにか出来る?)
かも知れない。エアリーロの放った風は全てイクシードへと収束した。だから目の前の蛇は再び態勢を整えてこちらを睨もうと身構えてる。
こうなったら一か八かだ!! 僕は力一杯握りしめたまま、ウネリを最大限、強くする。この状態でやると、剣事態に振り回されそうだったからやんなかったけど、このまま拮抗してるだけじゃダメなんだ!
「う……おおおおおおおおおおおおおおお!!!」
煌めく風のウネリが膨張する。それに伴い勢いも増したウネリ。聖獣共はそんなウネリに押し流される。僕は自分自身が振り回されそうに成るほどのウネリを必死に押さえつけて、一番近づいてたメドゥーサ野郎の方にウネリを向ける。
「ちっ」
そんな声と共に、メドゥーサ聖獣は大きくウネリを避ける。今奴は盾を持ってないから、避けるしか出来ないんだ。聖獣達と僕たちの距離が開いた。今しかない!! 僕は意を決してウネリを解除する。そしてその瞬間に、後ろを向いて、エアリーロを拘束してる網を切り刻む。
「ああーー!!」
とどこからか聞こえて来てたけど、そんな声は無視した。
「「「させるかああああああ!!」」
そんな声と共に、聖獣共は吸収してたイクシードのウネリを僕たちへと向かって放つ。だけどそれが僕達へ届く前に、解放出来たエアリーロがその綺麗な翼を広げた。
『乗りなさい!』
「おう!!」
僕達は再び空へ。そういえばまだ酸の雨は続いてるっぽい。だけど再び復活したエアリーロの風の障壁と、僅かな回復効果で、何とか一息つける感じだ。
「はぁ……なんとか切り抜けたな」
『私達の相性が良かったのが幸をそうしましたね。もしかして主はそれを考えて私を真っ先に送り込んだのかも知れません。
考えてない様で色々と考えてる人ですからね』
そうなのかな? まあもしもそうなら助かった。イクシードはどうやら質の高い風でなら威力とかが強化されるという事がわかった。
まだやりようはあるのかも知れない。
『私の機動力と貴方のその力、あわせればお互いに無い部分を補えそうですね』
「腕が一本無いのが痛いけどな。手数は多いに越した事はないんだし……とりあえずもう片方のセラ・シルフィングも回収出来ないかな?」
『もう片方ですか……確かに一本よりは二本の方が良いと思いますけど、どこに装備するんです? 使えない物を回収しても意味ないです』
使えないって、確かに今の僕は片腕しかないから、その通りなんだけど……予備にだって出来るし、何も持つのは腕じゃなくても良いんでは無かろうか?
『どういう事です?』
「つまりはもう一本は口でくわえるとかすれば、二刀流じゃないかって事だよ!」
そういう風にして戦ってるマンガ見たことある。この世界もある意味同じ様な世界だし、出来るかも知れない。
『意味があるのなら良いです――つっ!?』
その瞬間下からレーザーみたいな水と、光線が突き抜けて来やがった。早速聖獣共の攻撃が再会された。だけどただ直線的に打ち出される攻撃なんてエアリーロの機動性に追いつける訳ない。
空を自由に飛べる。そのアドバンテージはかなり高い。そう思ってるとパチンパチンと言う音が聞こえた。また魔法か。そう思ってると、酸の雨が集まっていき、曇天の空から顔を出す蛇……というか竜と言うか、そんな首が出来上がった。しかも四・五体。
地上からは不利だから、空から追いつめる事にした。そんな感じだな。曇天の空からその首を伸ばす竜が僕達へと迫る。酸の雨がこんな形に成ってる訳だから、食われたりするときっとかなり不味いんだろう。
そう思ってると酸の雨で出来た竜は、僕達を丸飲み出来そうなその口を大きく開ける。だけどエアリーロのスピードは伊達じゃない。そんな口簡単にかわす。だけど一体だけじゃない竜は横からもその大口を開けて迫ってた。
「おい!」
『大丈夫ですよ』
エアリーロは体をクルッと回転させて、竜の顎の下に回り込んでその体に沿ってかわす。二体の竜は同士討ちだなあれは。
すると竜の体に異変が……モコモコと蠢きだした部分から再び顔が出てきて、僕達を追い出すじゃないか!! しかもその後ろに、もう一体。
まさかこの竜は液体だからどこからでもその頭を出せたりするのか? 倒せないじゃないか!! そう思ってると更に最悪な光景が目の前に!
「くわっはははっは!! ちょこまかと逃げ回りやがって! だが条件が揃えば我ら聖獣が負ける事などありはしない!! 世界樹が待ってるのだよ。だからさっさと落ちろ!!」
そう言ってもう一体迫る竜の頭部には魚聖獣の姿があった。奴はその竜の水を利用して既に数個の水球を作ってる。そしてその水球から、超圧縮の水を放って来る。レーザーみたいな攻撃は、かわしてもかわしても、水球が無くなるまでその攻撃を出し続けれるみたいだ。
聖獣の操作によって、方向を幾らでも修正してくる。
『しかも厄介な事に、あの攻撃の源はあの酸の竜そのもの。尽きる事はきっとないでしょう』
冷静に分析した事を伝えてくれるエアリーロ。あの聖獣と水も相性が良いって事か。しかも酸の雨を元にしてるからなのか、威力がえげつない事に成ってる。
地面を抉り、抉った場所を溶かすという二段構えの攻撃だ。雨が全てこの竜に注がれてて、視界は良好に成ったけど、空でのメリットは薄くなってしまったな。
竜も迫るし、聖獣もこの竜を使って空に進出してきやがる。きっと魚聖獣だけじゃない。他の聖獣も来るはずだ。
そう思ってると、上から、大口を開けた竜が! エアリーロは素早くそれをかわしその竜をあざ笑うかの様に上昇する。
それを追う様に迫る魚聖獣の攻撃。竜はその攻撃で頭部分が弾け飛んでるぞ。だけどそんなのお構いなく、魚聖獣は攻撃してる。迫る水レーザー。するとその竜の体沿いを回りながら上昇してたエアリーロの前方から大量の武器が落ちてくるじゃないか。
僕はとっさに風のウネリを作り出して、その武器を凪ぎ払う。するとその時、竜の水の中から、聖獣の一体が飛び出して来た。
「沈めえええええ!!」
自身の腕をまがまがしい凶器へと変貌させてる奴は、その勢いのままエアリーロを切りつける。しまった……今の武器の雨は囮だったんだ。
甲高い悲鳴の声を上げて、竜から離れるエアリーロ。大丈夫なのか? かなり強力そうな武器だったけど……
『大丈夫です。まだやれますよ』
そう言ってなんとか地面に落ちる前に態勢を整えて再び空へあがるエアリーロ。曇天の空には、汚らしい色をした、竜の首が待ちかまえてる。
『逃げてばかりもいられません。我らの目的は、奴らを一旦引かせる事なのですから』
「それはわかってるけど……一体どうすれば?」
奴らを引かせるって、ノリに乗ってる奴らをどうやって……策を練ってる間に一本の首が僕達と併走する様に迫ってきて、そこには再びスレイプル型の聖獣がいる。そして大きく開いた口に手を突っ込んだと思ったら、デッカい手裏剣みたいなのを出しやがったよ。
何故に口から? アイツ背中からも出せるんなら口じゃなくてよさそうな物だけど……そう思ってると、躊躇い無くその手裏剣を投げつけて来る。
回転しながら迫る手裏剣。だけどそんなのが今更当たるとでも思ってるのか? 難なくエアリーロはその攻撃をかわすよ。不発の手裏剣は勢いそのままに上昇していく。すると丁度上から竜の首の一本が迫ってた。
手裏剣はそんな竜に当たってその雨を一斉に弾けさせた。
「なっ!?」
酸の雨の固まりが大量に僕達へと降り注いでくる。これが狙いか!! 大きな固まりは今での小粒の雨とは違う。きっと風の障壁くらいじゃ防げない。だからこそエアリーロは必死に避けるよ。
だけど無数のその粒を全て避けきる事は物理上不可能だろう。しかもそんな中、更に厄介な奴が一緒に落ちて来やがった。
「石に石に石に石に石に石に石に石に成れええええええ!!!」
メドゥーサ聖獣の頭の蛇の瞳が一斉に輝く。だけどその瞬間こっちだって動いてた。
「エアリーロ!! 風を!!」
『頼みます!!』
輝く風がセラ・シルフィングを包む。そしてウネリとなって一気にメドゥーサへ放った。光を僕達へ届かせない為に大きくし、そのまま真っ直ぐに尽きだして、最短距離を突く。
手応えはあった!! メドゥーサ野郎はまだ盾を持ってない。そのおかげで、奴は石化の光を取りやめてまで、その蛇共を防御に使ったようだ。
メドゥーサ聖獣は頭の蛇を何体か失ってウネリに弾き飛ばされてる。マジで危なかった。アイツの攻撃は一撃必殺。食らうわけにはいかない。ただ避ければ良いってだけでもないからな……僕はイクシードで落ちてくる大量の水を弾き飛ばしながら、エアリーロの進路を作る。
『あの頭に蛇を飼ってる奴を狙いましょう! 盾を持ってない今がチャンスです!!』
そんなエアリーロの意見に賛同して、僕達は弾け飛んだメドゥーサを追う。すると別の竜の首が一足早くメドゥーサを受け止めやがった。
「全くもう。無様な姿は見せないでよ。僕達まで評価が下がるじゃないか。忘れ物だよ」
そう言ってウサ聖獣がメドゥーサに例の盾を返そうとしてるじゃないか。これは不味い!! あれが戻ったら、途端にやりづらくなる。僕はウネリを奴らの間に落とした。
「やらせるか!!」
竜の首を真っ二つに切断する。その時、驚いたウサ聖獣が盾を手放したのか、メドゥーサに渡る前に盾は地上に向けて落ちていく。そしてメドゥーサはとっさにそれを追う。だけどエアリーロが風を起こして、盾を更に別方向へ飛ばした。
ナイスだ! これで盾に届くことはない。そう思ってると、エアリーロの羽を貫く一撃が入った。上空からの攻撃……この一点集中型の攻撃は例の超高圧縮された水。しかも酸性だから貫かれた部分が溶けてる。
「エアリーロ!?」
『大丈……夫……』
これまでの大丈夫とは明らかに苦しそうだ。上手く飛べなくなったのか、いきなりガクンと高度が下がる。だけどそれでも必死に羽を広げるエアリーロ。僕は向かってくる水にウネリをぶつけるけど……ダメだ。向こうの超圧縮された水に風のウネリは突き破られる。
そして更にもう一発が反対側の翼を貫いた。甲高い叫びが空に響く。そしてフラフラになりながら地上に落ちる。その時僕は同時に見つけた。キラッと世界樹の光を受けて光ったんだ。もう一本の剣……そしてその側には盾。更には盾へと近づくメドゥーサの姿を。
ヤバイ、奴にあの盾を取らせる訳にはいかない。
第三百三十四話です。
そろそろこの戦いも終わりを迎える頃合いです。きっと次回で一応の区切りが付くでしょう。リア・レーゼへの侵攻を許すのか、それともどうにかして聖獣を退かす事は出来るのか。
てな訳で次回は金曜日に上げます。ではでは。