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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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殺し続けたくないから

 死ぬまで逃げられない戦場があった。勝ち目がないと分かってても、僕達は撤退を許されないらしい。僕達の後ろにはリア・レーゼが……その街に生きる人達がいるからだ。

 パワーアップを果たした聖獣は直接襲い掛かってくるってのがリルフィンの見解。だから僕達が逃げると、奴等はリア・レーゼを襲う事になるらしい。確かにその可能性はある。

 だって聖獣には逃げる理由なんてないんだ。そして僕達には逃げれない理由が出来た。だけど仲間達は僕の命を心配してくれる。そして現れるはミラージュコロイドの鏡。

 僕はどうしたらいいんだ? 守るのか、逃げるのか……それはとっても難しい選択だ。


 死ぬことが前提の戦い。確かに普通のプレイヤーならそれをやれない訳じゃない。リスクはあるけど、助かるNPCが増えるのなら……そう思う人も居るだろう。

 だけどここにはそのリスクが時間で埋められない物だったり、絶対に取り返せない物だったりの奴が居るんだよ。だからこそみんな僕を見てる。


「貴様はどんな覚悟をもって敵を殺めてたんだ。戦いに身を投じる以上、死は誰もが覚悟をしておくべき事だ。我は主の為なら死ねる。その、覚悟がある!!」


 リルフィンは俯く僕にそう言うよ。死ぬ覚悟が貴様には出来てないのか? と問いただされてる。リルフィンはNPCだから思い的には一番僕に近いんだろう。

 NPCは基本、ミッションや役目が終われば、その時の記憶や出来事なんか忘れる様になってる。だから死んだことさえ忘れて元の場所に戻ってるなんてざらだ。

 まあそうしないと、同じクエを違う人が出来なくなる……とか出るからな。重要なNPCほど死んで居なくなるって事は無いよな。

 でもリルフィンは普通のNPCとは違うような気はする。だけどNPCだからその魂が完全消滅なんて事はやっぱりないと思うんだ。

 まあリルフィンは自分の命だって有限だって勿論思ってるだろうけど……


「スオウ君、君はクリエ様を連れて街まで戻るんだ」


 僕が俯いてると、下から僕を見上げてテッケンさんがそういうよ。それは確かに願ってもない事。


「そうっすよ。スオウ君は街まで戻ってくださいっす。ミラージュコロイドで送るっす!」

「…………」

「そうね、別にアンタなんて居ても居なくても一緒なんだし、それならせめてクリエだけを守る事を考えなさい。ここは仕方ないから、貸しにしといてやるわ。

 クリエを守りきれなかったら利子百倍で一生私の奴隷にするから、アンタはさっさと行きなさい」

「……セラ」

「ふん、仕方ない。俺にしてもここで終わらせたくはないからな。ここは俺たちに任せろ」

「……鍛冶屋」

「スオウ君は行ってください。スオウ君の分まで私達が頑張ります。しょうがない? 仕方ない? ううん、それじゃあちょっと恩着せがましいですね。

 え~と、取り合えず良いんです。自分だけが逃げてるなんて思わないでください。スオウ君がその命を懸けるのは、もっと別の場所で、貴方にしか出来ないその時まで、とっておいて欲しいんです。ねっ、ピク」


 そんなシルクちゃんの声に、肩に乗る桜色の小竜は「ピピク~」と泣くよ。


「……シルクちゃん……みんな」


 全員の言葉が胸に染みる。僕は本当に良い仲間に恵まれたらしい。みんな自分のリスクなんか度外視して、僕を生かそうとしてくれてる。

 本当にありがたい事だ。


「何を言ってる貴様等。今は一人でも戦力が減るのは痛いんだ。素晴らしい精神だが、助けを求めに来た場所がピンチに成ると逃げるのか?

 そんな奴に何が成せる!!」


 リルフィンはその白い毛や髪を逆立てて激しくそういう。確かにリルフィンにはそう映るのか……な?


「違うんですよリルフィンさん。スオウ君の命は一個しかなくて……だから……」


 シルクちゃんが必死にフォローする様にそう言ってくれる。だけどプレイヤーとNPCじゃそこら辺の考えが違う。この世界で息づく彼らには僕達の事情なんて知る由も無いことだ。


「命が一個なのは当然だ。そしてそれをどう使うかも勝手だ。だが、自分の都合だけでしか動けない奴が、誰かを救えるとは我には思えん。

 今ここで貴様が戦場から背を向けると言うことは、リア・レーゼを見捨てるのと同じだ。この街に住む、何百と言う命を見捨てるのと同じだ!!」

「そ……それは言い過ぎです!!」


 シルクちゃんが珍しく真っ向から立ち向かってくれる。だけど確かにそうなのかも知れない。僕は今、自分の都合でこの街を見捨てようとしてるのかも知れない。本当の命と、仮想の世界の命。天秤に掛けるのは間違いなのかも知れない。

 けど……この世界は息づいてる。僕はそれを知ってる。


「スオウ君早く行ってっす。リルフィンさんの言うことは今は気にしない方が良いっす。今度ばかりは仕方ないっすよ。

 言っちゃ悪いっすけど、NPCの命と君の命は比べられないっす」


 そう言ってノウイはミラージュコロイドを発動させる。僕の側には透明な鏡が現れた。これに入れば一瞬で街まで戻る事が出来る。この場から逃れる事が出来る。みんなを残して……この街を見捨てて?


「スオウ君、早くっす!!」


 ノウイの急かす声。僕が救いたい物……目的……約束。僕は抱えるクリエを見つめる。お前は自分の都合だけで逃げた僕を許してくれるだろうか?

 沢山の自分と変わらないNPCを犠牲にしたと知ったら、やっぱりリルフィンと同じように怒るだろうか……それとも理解なんか出来ないか?

 けど……それでもきっと気持ちよくは無いんだろうっては思う。確かに何か違う。今、ここで逃げるのは何かが違うのかも知れない。

 自分の都合……確かにその通りだ。リルフィンの言うことは何も間違っちゃいないよ。


 

 ここで死ぬ気はない……だけど、自分だけが逃げ延びる事はきっと違う。



 僕はノウイにクリエを渡す。そんな僕の行動にクリエを押しつけられたノウイは目を丸くしてる。まあ、いつも丸いんだけど、そのまん丸ゴマみたいな目を必死に見開いてる感じ。


「どういう事っすかこれは? 何のつもりっすか?」

「スオウ君……まさか……」


 ノウイの言葉に続いてシルクちゃんも僕の意図を察して不安気な声を出す。すると今度は横からセラも詰め寄ってきたよ。


「ちょっと、本気なの!? 私は認めないわ。アンタは何を言われようとここから離れるべきよ! ノウイ! こいつを強引にでも良いからミラージュコロイドの中に押し込めなさい!」

「了解っす!」


 セラはそう言うと一度後ろを向いて、素早く回転して僕の腹に蹴りを決める。


「ぐふっ!?」


 何しやがるんだこいつ? そう思ってると、セラは華麗に着地を決めながらこう言うよ。


「ノウイがどうやってアンタを押し込めるって言うのよ。今のはノウイへの合図と同時に、アンタの意識をノウイ側に逸らす為の作戦よ」

「セラっ――お前っ――」


 バランス崩して後ずさる僕の後ろにはノウイが出現させたミラージュコロイドの鏡が待ち受けてる。まさかこんな見え見えの手に引っかかるとは。

 仲間をおもいっきり躊躇いもなく攻撃できるセラだから出来る事だな。でもまさか、ここまでするなんて……僕は鏡に倒れる様になりながらも周りを見る。

 みんな誰もこの行為を止めようとはしない。みんな僕がここから離れる事を望んでる……そう言う事だろう。まあリルフィンは別だろうけど、奴はテッケンさんや、鍛冶屋に阻まれてる。


「さっさとこの場から消えなさい。アンタが居た方が私達は気が気じゃなくなって戦闘に集中できないわ。それに、アンタはわかってない。

 優しくて誠実で、どんな者の立場も分かろうとするアンタは立派よ。だけどそれがアンタの判断をおかしくしてる」


 倒れていく中で、セラのそんな言葉が頭に響く。雨を避けるお札の光に包まれて、最後にちょっと眉を寄せるセラ。

 雨の音に呑まれてしまいそうな程の声の筈だけど、なぜだか僕には聞こえる。だけどお札を使ってない僕にはその姿は雨に霞んで行ってた。


「アンタはね、自分の命にも価値を見いだしなさい。言ったでしょ……アンタはクリエの為だろうけど、私達はアンタを死なせない為に動いてるって」


 自分の命の価値……僕はそれをないがしろにしてるつもりは無かったんだけどな。ただ天秤にかけた時、僕の命は案外簡単に振れるってだけだ。だってその天秤の片側にはいろんな物が次から次へと落ちてくるからさ、守りたい物と無くしたくない物で、なんかわかんなくなる。

 命は無くしたく無いってちゃんと思ってる。でも目の前でどうにか成りそうな物があるのなら、どうにかしたいって気持ちが働くじゃん。

 それに無くしたくないって気持ちは受け身だけど、守りたいって気持ちは行動に移さないと何も生まれない事なんだよ。そして動かなかったら、そこには最悪とかが訪れる事が分かる。

 それが分かってるからこそ、動かざる得ない。命を投げ出したくなんかないよ。そんなつもり毛頭無い。だけど無くしたくないって事をどうやって行動に移すんだ? 

 ずっとビクビクと命の心配をして過ごさないといけないのか? そんな段階もうずっと前に……というか、この状態に成ったときからやってない。

 無くしたくないなんて思って気をつけてても、どうにも出来ない予期せぬ事態ってのがあるかもだもん。それなら、ビクビクして過ごすなんておかしな事だろ。

 そもそもそれなら、二度とLROに入らない様にするよ。でも僕はここに居る。何度も何度も死に掛けて……けど僕はまだ……それはさ、後悔しないほうを自分なりに選んできたからだ。


 例え危険が付きまとったって、誰かを見捨てるよりは助ける方を選びたかったからだ。

 でも……それも付き合うセラ達にしてみればヒヤヒヤ物だったんだな。もしも死んだら……それを考えてたのは当人の僕だけじゃなかった。みんなが僕の事を考えてくれてる。

 だけど今回ばかりはって事で、この対応。僕だって最初は逃げることも正しいって思ってたよ。こんな所で死ぬわけには行かない。僕にはやることがある。

 けど……リルフィンの言葉は正しかったよ。僕達を攻撃してきた聖獣。奴等がリア・レーゼに向かえばどうなるのか……それはもう惨劇としか言いようがない事だ。

 それを少しでも引き延ばす事……それに意味なんて無いわけ無い。その為には戦力は割けない。だけどこの戦闘に参加する事は勝てる見込みが無い敵へ、逃げることも許されずに、最後のHPまで戦い続ける事を義務づけられる様な物。


 でもそれでも……僕はそう思ったんだよ。プレイヤーが一人でも減るかどうかしたら、それだけ足止めの時間を稼げない。

 ノウイとかの戦闘要員以外なら、関係無いだろうけど、僕はまがいなりにも戦闘要員だ。


「くっ!」


 僕は鏡に入る前にセラ・シルフィングを地面に突き刺してそれを支えに踏みとどまる。


「ちょっ! 私が言ったこと、理解できなかったの? ここは私達に任せなさい。ちゃんと足止めしてみせる。だからアンタはここから離れるの! そうしなきゃ行けないのよ!」


 セラは踏みとどまった僕を見て、再び詰め寄ってくる。当然だな。向こうからしてみればどうして、そこまでやるのか理解できないし、自分達の思いをどうして分かってくれないのか……そんな感じだろう。


「アンタはどうしてそう死に急ぐのよ! アンタは自分が守る側に居ると思ってるんでしょうけど、私達もアンタを守ってる。だから……言うこと聞きなさい!」


 そう言ってセラが僕にその手を伸ばす。今度は腕を使って突き飛ばす気かな。僕は向かってくるその手を取るよ。


「ごめん、セラ……それにみんなも」


 そう言った瞬間、乾いた音と、衝撃で視線がブレた。なんか頬がジンジンするな。どうやらセラから平手打ちを食らったようだ。


「セラちゃん……スオウ君、どうしてですか? そこまで私達は信用出来ないですか?」

「そんな事無いですよ。みんなの事を頼りにしてここまで来たんです。僕を守ってくれようとしてるって事も分かります」

「それならなんでですか? 私達に君を守らせてください」


 シルクちゃんの言葉はとってもありがたい。心に染みる。だからこそ心苦しくもあるよ。僕はみんなの優しい気持ちを拒絶してるんだからね。

 僕はジンジンする頬を感じながら、シルクちゃんを見てセラを見る。するととっても意外な事に直面した。出そうとしてた言葉が出てこなくなった。

 だってセラの奴……眉根を寄せてすっごく厳しい顔をして……そしてなんとその赤くなった瞳を濡らしてる。それはどう見ても泣く一歩手前の子供みたいな顔だ。


(いや……えっ……ええ!?)


 僕は自分の瞳に映る光景が信じられない。だってセラだよ。あのセラが涙を流しそうな顔してるなんて目の前に居ても信じられない。


「セラ……」

「これは………………雨だから!!」


 そう言って必死に涙が流れるのを我慢してるセラ。なんか初めて? セラがちょっと可愛いと思えた瞬間だ。セラがこんな意味ない言い訳するのも珍しいしな。

 お札で雨入ってないのに……墓穴だぞ。セラは溢れ出しそうな涙を手で拭い、確認するようにこう言うよ。


「アンタは……どうしても死にたいの? セツリの事も、クリエの事も……諦めてこんな所で終わらせるのね」


 涙で濡れた瞳。赤く火照った頬。それでも必死に眉をつり上げるセラ。ちゃんと言わないと納得してなんかくれないよな。

 元々セラは頑固だし。それにみんなも案外そうだしな。


「終わらせる気なんか無い。だけどさ、リルフィンが言ったように、僕だけ逃げるのもなんか違うかなって思ったんだ」

「それの何が悪いのよ。ゲームの存在でしかないこの街はいくらでも作り直せるのよ。命を懸ける価値なんて無い。セツリとは違うし、呪いを解くためのクリエとも違うのよ」


 価値がない……か。確かにNPCもこの世界も仮想だ。作り直しは幾らだって効くだろう。全てを失敗しても、世界はきっと今日と明日でも変わりはしないと思う。

 それこそゲームとして、沢山のプレイヤーがやることに成るような事なら……きっとその筈だ。


「確かに誰もが本当に死ぬ訳じゃない。それは分かってるよ。実際僕もNPCはしょうがないって思ってた。だけどリルフィンの言葉でそれも違うのかな~って思った。

 確かに彼らはLRO事態がなくならない限り、本当に死ぬなんて事はなく、この世界で生きて行けるんだろう。だけどさ、それは死なないって事なのかな?

 僕たちがやらなきゃ、犠牲となる人達は居るんだ。本当の意味で死んでなくても、彼らにとっては死ぬ事と変わりはない。

 それにLROのNPCはそれを感じる事が出来る奴等も一杯いるよ。だってこの世界の住人はここに生き、生活して人生を送ってるんだから。

 だからさ、僕たちは僕たちの都合だけで、その人達を殺して良いのか? 見捨てて良いのか……そこはきっとやっぱり人それぞれなんだろうけど……僕は死んでほしくないって思った。

 いいや、違うな。僕は自分達の失敗を彼らに擦り付けたく無いんだ。死なないから何度だって殺しても良い訳じゃない。死ぬ痛みを何度でも味わわせたくない。

 だってさ……痛いし、怖いんだぜあれ」


 僕は自分の思いを、考えをセラを見て言った。なんでそれを選択したのか、やっぱり理解はされないのかも知れない。セラもみんなもやっぱりLROはゲーム。その思いはきっとある。

 だってそれだけ長く、そしてその前提でやってきた筈だ。駆け出した時……躓いて前提をどっかに落とした僕とは違う。

 僕はリアルでも、LROでも生きてる感じがする。どっちでだって死ねるし、だからどっちでも僕はスオウと言う人間として存在してる。

 そんな僕だから、ただのNPCまでをも見捨てられないんだろうって思うんだ。だから理解されないのは当然だな。

 またセラに叩かれるかも知れない。でもそれも覚悟の上だ。


「バカ……じゃないのアンタ」


 小さなそんな声が耳に届く。掴んだセラの腕が震えてる。やっぱり殴りたいのだろうか? 僕は震えてるその手をもっと力強く握る。


「バカなんだと思う。でも……僕にはそんなバカな選択しか出来ないんだ。ひねくれて育ったからさ……こんなバカに付き合うのがイヤに成ったら、これっきりで良いよ。

 死ぬ気なんて無いけど、ここを生き残る可能性はきっと今までで一番低い。

 だけどここまでは付き合ってほしいんだ。あの街を……そしてやっぱりクリエを守るためにも」


 僕はセラの間近で誠心誠意の心を込めて、そう紡ぐ。やっぱり最後まで僕は自分のワガママを言ってるなって思ったよ。結局一人じゃ何も出来ない情けない奴。

 仲間に助けてもらわないと、聖獣を足止めする自信も無い。だけどそんなワガママもこれまでかも知れないと、ちょっとは心の中で覚悟を――――――その瞬間ゴチンと顎に走る衝撃。僕はくらっと来て、地面に膝を付く。


「つっ……」


 全然ビンタよりもダメージでかいぞ。何をしやがったこいつ。


「本当にアンタって身勝手ね。私なんかよりもよっぽど周りを引っかき回す。そしてその上、勝手に退場しようとしてるの?

 ふざけるんじゃないわよ。どうせ無茶をやるのはいつもと変わらないんだから、せめて妙な自信だけは持っときなさいよ。

 端から諦めてる奴なんて、どんなに優秀で最高な、アンタにはもったいない位の仲間が居ても、どうにも出来なくなっちゃうでしょ」

「……ん?」


 頭が揺れてるせいで思考が追いつかない。だけど何か今の言葉は僕が思ってたのとはちょっと違ったような。少なくとも嫌気がさして――って感じではなかった。

 まあ見上げるセラはなんか不遜な態度に戻ってる訳だけど、いつも通りと思えばいつも通りだ。


「もう……セラちゃんはなんだかんだ言ってスオウの事を放っとけないんだよね」

「なっ!? そんなんじゃないですよシルク様。私はただ、みんなの声を代弁してですね……」


 シルクちゃんの言葉に、不遜な態度を示す顔面の仮面が剥がれてしまってるセラ。てか……みんなって……僕は膝を付いたままみんなに視線を送るよ。


「スオウ君、私達はどこまでも貴方に付き合いますよ。そして私はヒーラーとして宣言した筈です。……絶対に貴方を死なせたりはしません。それは私のヒーラとしての意地ですよ」


 そう言ってシルクちゃんはニッコリ笑顔をくれる。天使だな。でも実際、それで良いの? って感じ。まあ自分であれだけ能書き垂れといてって感じだけど、思っちゃう。


「貴様は勝手に突っ走るだろう。俺達はそれに振り回されるだけ。なかば諦めてるからな。だが、それも悪くはない……と最近は思ってる。

 まあ貴様が死ななければ後味も悪くはないしな。だから俺達は結局貴様を助ける事をやめたりしないって事だ」

「スオウ君……実際僕は反対だよ。幾ら君がNPCに同情しても、彼らは結局復活出来る。何も覚えてなくて、その時の痛みなんて知らずにだ。

 だけど君は違う。君の家族が、友人が……そして僕達が幾ら祈っても後悔しても、ここで死んだら、戻ってこないんだ。

 だけどそれを言っても君はやめたりはしないんだろう。それを僕達は分かってる。なら僕達は君を死なせない様にするしかないじゃないか」

「すみません……」


 テッケンさんも鍛冶屋も本当にね。


「あの~結局、スオウ君はここに残るんすか? 絶対に死ぬっすよ」

「イヤな事を言う奴だな……良いからお前はさっさとクリエを安全な場所まで運んでろ」

「なんか自分だけ扱いが違うくないっすか?」


 そんな事を言ってると、どこからかへんな合唱が聞こえてくる。実際それが何かの歌に聞こえるから僕らは驚くよ。


「これは……聖獣か?」


 リルフィンが雨の向こうに目を凝らしながらそう言う。確かにってか、それ以外に考えられない訳だけど……実際信じれない。だって……これはちゃんと歌に聞こえるぞ。言葉を奴らは得たのか?

 それにリルフィンは気づいてないだろうけど、僕達は顔を見合わせる。


「この歌……」

「いや、まさか……そんな」

「だけど奴等はクリエの力を取り込んだ。その時に一緒に付いてきたと考えれば……」


 雨に響く歌。それはクリエが紡いでた、寂しげな調らべの歌なんだ。

 第三百二十九話です。

 スオウの選択はどうだったでしょうか? 覚えてなくても、殺し続ける事をしたくない。彼等はその瞬間を味わいつづける事になるんだろうから。だけど実際はこのミッションはかなり特殊ですからね。

 一回ミスった程度でやり直しが効くものでもきっと無いです。そもそもこのミッションにやり直しがあるのか……最終的な失敗はリア・レーゼが無くなりそうだし。まあだけど、一般的なミッションやクエストは勿論、何回もと言うか、いろんな人が出来るようになってます。

 てな訳で次回は火曜日に上げます。ではでは。

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