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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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雨の音が沁みる

 テトラは消えた。言いたい事を言うだけ言って、そして再び霧となり消えていった。最後に不安にさせる言葉を残してだ。何が聖獣には気をつけろだ。そんなのわかってる。

 強力な敵だって事だろ。聖獣って言われる程だし油断なんかしないっての。初めから全力で打ち倒す! その気概で臨むさ! ――ってここまで聖獣戦への意気込みで盛り上げたけど、まだまだその聖獣を拝む事は出来なさそうです。


 黒い霧がなくなって、緊張感も解けてきたけど……なんだかとっても複雑な気分。なんでテトラの奴は最後にんな事を言ったんだ?

 どっち道これは避けられない戦いなんだ。なんと言われようと、この行動は止められない。


「ねぇスオウ……今のは本物のテトラなの?」


 シルクちゃんに抱きついてるクリエがそんな事を聞いてくる。まあ実体じゃないけど、あれは本物。僕に呪いを掛けた張本人なのは間違い無いだろ。

 信じられない気持ちも分かるけどね。このLROの住人とっては邪神と言っても神だからな。その神が目の前に現れるなんて実際思ってないだろうし。あれ? そう言えばアイツ、完全にクリエの事スルーしてたな。

 自分の力を持ってるらしいクリエをスルーとか、意図的か? それともマジで気付いてなかった? でも神が気付かないなんて無いだろうし……やっぱり関わりたくなかったのか?

 どうせならクリエの力の事とか聞くべきだったな。自分の用件だけ済ませてさっさと消えやがって、結局ヒントも何も無いじゃないか。


「スオウ!」

「んあっああ、悪い悪い考えごとしてた。今のがテトラで間違いないと思うぞ」

「そっか……」


 なんだかクリエは考えてる様子。この子供がこんな風に頭を使うなんて珍しい。こっちは何かを感じてたのかも知れないな。

 そうなると、やっぱりテトラの奴が何も気付かなかったなんて訳ないだろうな。やっぱり意図的にクリエの事をアイツは無視してた……でもなんで? 何か不味い事でもあるのだろうか?

 てかそもそもなんでクリエにそんな力が宿ってるのかとか、考えなくちゃいけない部分ってかなり多いよな。今まで僕達もそういう設定――で納得してたけど、クリエの願いを叶える為にはそういう適当な感じじゃダメなのかも知れない。

 そう思ってると、突然床をぶち抜く様な激しい音がこの場に響いた。


「くっそ! くそ……くそ……くそおおおおおおお!! 邪神が!! 次こそは必ず倒す!!」


 みんなしてその音の方を向くと、本当に悔しそうにリルフィンが床をぶち抜いてた。テトラに全く歯が立たなかった自分が情けなくて堪らないらしい。

 その姿はなかなか痛々しいものがある。だけど気にするな……とも言い辛いよな。そもそも僕らはそんなの言える立場に無いし。寧ろテトラはシスカ教からしたら最大の敵だ。

 その最大の敵に全く歯が立たなくて、それでも気にするな……なんて言えるわけ無い。プライドとか、使命とか、そんないろんな胸の中の物が安易な言葉をかけると砕けたり、逆上したりするかも知れない。


「あれがテトラ……アンタ本当に神に会ってたのね」

「今まで信じてなかったのかよ」


 ショックなんですけど。


「信じようとしてたわよ。その呪いは本物だし、アンタなら神と出会ってもおかしくないかな~って思ってた。だけど今確信したってだけよ。あれがこの世界の神の一人なんだって。

 ねえ、テトラが言ってた願いって何? 金魂水を使わせる事自体が願いじゃないわよね? その先にきっと彼の願いはあるはずよ」


 金魂水を使った先……か。それはきっとシスカと関連してるとは思う。でも邪神と女神だしな……そこがネックだ。そもそもどんな場面で金魂水が必要になるかすら僕達は分かってないんだ。

 まあ今は、このクリエとのイベントを進めていけばそんな場面があるんじゃ無かろうか……と期待してる訳だけど。

 実際どっかで反応とかしてくれないと、見逃す可能性とかあるよね。どうせなら過去の使用方とか分かれば、使う場面も分かると思うんだけど……


「金魂水の使い方か……確かに調べる必要はありそうだね」

「その後に何が起こるかも知りたいですね。それこそ彼が望んでる物に繋がる筈です。個人的には今の彼が、邪神って言うのはちょっと信じれなかったです。

 確かに不気味だし、ちょっと怖かったけど……彼は別に攻撃的でも無かったですし、もしかしたらとっても素敵な願い事があるのかも」


 そんな風にシルクちゃんがニコリと笑って言った。まあ僕もただの悪い悪党とはアイツの事思えない。邪神だし悪党の格が全然違うんだろうけど、アイツから邪悪を感じる事が僕にはないんだよな。

 それに僕達はテトラよりもまがまがしい邪悪を知ってる。それこそ邪悪の塊とも言える存在。ガイエンの中から現れたらしいあの黒い存在。アギトが対峙したアイツこそ邪神クラスに邪悪を表してた筈だ。

 だからかな、テトラの邪悪は薄いのだ。無理してる風にも見えるかも。だからこそ神壇の姿が意味深に思えると言うか……世界樹を挟んで背中を向けあう二人の神。これって何を表してる?


「何を言っている。貴様等余所者はあの邪神の所行を知らないだけだ。アイツはそれこそ悪魔で魔王。この世界を幾度も終わらせようとした元凶だ。

 奴が顕現した年には必ず大きな戦が起きる。世界を分かつ大きな戦が。今この時代にも奴は現れた。そうなれば世界が大きく巻き込まれる戦いが起きると言うことだ。

 奴が引き起こす。そうやって幾百、幾千、幾万の命を消してきたのがアイツだ。あの性格に騙されるな。奴が邪神なのは歴史が証明しているし、それを名乗ったのもアイツだ。

 魔物を生み出した存在。それがあの邪神テトラだ!」


 そう言ってリルフィンは立ち上がった。そしてツカツカと出口へと向かい出す。


「おい、どこいくんだよ?」

「報告だ。邪神がここにまで現れたのを無視することは出来ない。結界が消えてた事も関係無いとは言えないが、やはりこの像を残しておくのは問題だ。それを主に進言する」

「いや、まあ重要な事だけど聖獣戦はどうするんだよ?」


 そっちも重要だぞ。報告なんて通信かメールで済ませろよ。そりゃあそんなに遠くないけどさ……いって戻ってくるのを待っとく時間がもったいないだろ。

 そもそも、テトラが出てきたせいで予想外に時間を使ってるんだ。聖獣を一刻も早く倒さないとこのリア・レーゼ事態が危ないんだろ。テトラの事は至急ってわけじゃない。アイツが動き出してる訳じゃないんだからな。それならどちらを優先するか分かるだろ。


「だがしかし、奴の事はこの国だけの問題ではない。ひいては世界中に拡散しかねない問題だ。一刻も早く何らかの策を取らないと……」

「だからって今の時点で何が出来る? 今僕達に出来るのは頭を抱えて悩む事じゃない。目の前の危機を体を張って遠ざける事だ。取りあえずテトラの出現の事だけ伝えれば十分だろう」

「聖獣の問題は貴様のせいなんだがな」


 うるっせぇ! それを言うなよな。僕だって悪いと思ってます。だけど一概に僕のせいと言ってほしくないと言うか……僕だけのせいは納得できない。

 そんな不満を持ってると、なんだかドアの方からドタドタと騒がしい音が近づいてくる。そして現れたのは杖とお札を携えた本殿の僧兵と巫女の面々。


「邪神成敗じゃあああ!!」


 一番真っ先に入ってきた一番年食ってそうなモブリが一番元気にそう叫ぶ。後ろの方々はどこか物怖じ気なのがみて分かる。まあ邪神の像で異常が起こったとか報告されたのだろう。だから気が気じゃないってのが見えるな。

 寧ろ元気一杯な老人モブリの方が異常だね。年だから一花咲かせる為には死なんて恐れてないのかも。

 だけど残念、既に異常は収まってしまってる。


「ぬぬぬ……リルフィン様、おかしな報告を受けたのですが、これはその……既に解決済みですかな?」


 老人モブリが辺りを見回してそんな質問を投げかける。リルフィンは無愛想に頷いたよ。


「やや! 流石リルフィン様! 若者共が渋ってて遅れてる間に問題解決とは素晴らしいですな。かーはっははは!」


 なんだかもの凄くうるさいモブリだな。体は小さいのに、声のデカサは大型スピーカー並にあるぞ。その体にどんな拡声器を積んでるんだよ。

 てかやっぱり若いモブリ達は渋ってたんだ。今は問題が既に解決してると聞いてみなさんホッと胸を撫で下ろしてる。するとそんな若者共を見て爺さんモブリが一喝する。


「何を安心しとるか! リルフィン様のお手を煩わせたことを恥ずかしいと思わんか!! それでも歴史あるこの本殿の勤務に就いている身か貴様等は!

 この場所の守りを我らはローレ様から預かっているのだ! あの方の期待に少しでも応えようと言う気概を見せろ!!」


 爺さんモブリの説教に、若いモブリ達は直立不動でそれを聞いている。やれやれ、言ってる事は正しいけど、毎回こんな大音量で怒られてたら辟易するな。同情するよ。

 だけど確かにもう少しの気概は必要だとも思う。誰もが不吉の象徴にしてる邪神の像の問題ってのもあるだろうけど、この人達はエキスパートの筈。

 その人達が不安を持って脅えながらここに来るのは不味いだろ。もうちょっと自信を持って欲しいよね。


「さてさて、一体何があったのでしょう? 報告では邪神の像から黒い霧やらが出てきたとか」


 おお、これは丁度良い。僕はそう思ったから、リルフィンにこう言った。


「おい、このモブリ達を伝令に行かせればそれで済む事だろ。僕達は聖獣戦へ」


 僕がそういうと、明らかに「ちっ」とか舌打ちした。えええ!? どうして舌打ちされなきゃいけないんだよ。そんなにローレの所へ戻りたかったのか? いくら主従関係と言っても、こいつかなりローレの事好きだよな。

 そこら辺テトラも指摘してたし……実は何かと理由を付けてローレの所に戻る口実を探してるんじゃないか? 


「仕方ない。さっさと聖獣を倒して主への報告。それが一番かもしれん」


 なんだかブツブツとそう呟いて、リルフィンはモブリ達へと今の出来事を話すよ。すると明らかに若いモブリ達の顔が蒼白に……


「まさか……そんな……嘘ですよね? あの邪神がここに顕現したなんて……」

「お……遅れて来てよかったぁ」

「貴様等なんという事を!! もっとしっかりしろと言ったばかりじゃろが!!」


 情けない声を上げる若者達に渇を入れてる爺さんモブリ。だけど明らかに彼も同様してるのがわかるよ。目はしばたいてるし微妙に歯がカチカチ鳴ってる。

 それだけの恐怖の対象って事かな。テトラはさ。


「だってだって、邪神ですよ……実際相対する自信が無いです」


 一人がそう言うと他の人達もうんうんと頷いてる。そんな様子を見て、爺さんモブリは胆を絡ませてこう言うよ。


「かぁぁぁぁ! なんと情けない。邪神など恐れる事など我らにはない! 何故なら女神様が我らを守ってくれるからじゃ! それを忘れるでない!」


 爺さんモブリの熱演。素晴らしい精神論。だけど、信仰なんて精神が全てだし、それで奮い立つものなのかな~とか思ったけど、どうやらそうでもないらしい。


「だけど……女神様が自分たちを守ってくれる訳じゃ……それにグラ爺様も震えてるじゃないですか」


 グラ爺様は痛いところを突かれたな。


「これは武者震いだったんじゃ! 女神様の加護を貴様等はなんと安っぽくみてる!? 今儂等がこうやって生きてられるのも元を辿れば女神様のおかげじゃぞ!」


 まあNPCにとってはそうなんだろうね。僕達プレイヤーからしたら君達が存在するのは作り手のおかげだ。てか、加護ってそこから続いてる事を言ってたのかよ。

 それじゃあ当たり前すぎて、不慮の事故には対処出来ないじゃん。だから若いモブリ達はテトラと相対しなくて安堵してるわけね。

 世界中のみんなに掛かってそうなそんな加護じゃ、邪神からは守ってくれないもんね。命に危機が迫ると、加護が一時的に強まるとかなら、まだ安心なんだろうけど、実際そんな事はあり得ない。

 僕達が生きれてる事が神様のおかげ……そしてその時が来たらちゃんと死ぬ。それをみんな知ってる。当たり前だもんな。もしも女神さまが守ってくれるのなら、そもそも死なない様に不死にでもしてくれてたら良かったんだ。

 だけどそんな事はない。女神さまは命に残量を設けてる。だからこそ生きる事を楽しめて、死ぬ事を恐怖できる。世界の常識だよ。女神さまはご種族だけを贔屓してたりしないのだ。


「貴様等やることが無くなったのなら、信者を安心させにいけ。それと、この事を主に報告しろ」


 足下でギャーギャー騒ぐモブリ達を見下ろして、そんな指示をだすリルフィン。おお、結局聖獣倒しを優先してくれるんだな。よかったよかった。モブリ達はリルフィンの言葉に早速動き出す。若い奴らは部屋を出て行く。どこかに集めてる参拝客の所へ行って言い訳とかをするんだろう。

 どうやらやっぱり偉そうなグラ爺様がローレの所へ報告しに行く役目らしいな。まあ当然か。


「さて、それでは儂も行きます。リルフィン様もお気を付けて」


 そう言ってスキップしながらこの場を後にするグラ爺様。なんて元気な年寄りだよ。てか、今し方大変な事が起こったのに何故にご機嫌なんだ? そんなにローレの所に行きたかったのか?

 そうそう立ち入れない場所だろうからテンションも上がると言うわけかな。でも偉いんだよなあの人? そんな事を思って見送ってると、リルフィンが僕らに対して口を開く。


「聖獣退治……貴様等は気が引けてないだろうな?」

「何で僕達がそうなるんだよ?」


 質問に質問で返す僕。だってそんな考えがどっから沸いた?


「邪神の奴が言ってただろ。その言葉に怖じ気付いた奴はいないかと思ってな。モブリ達が脅えてるのをみて、そうであってもおかしくないと思ったんだ。で、どうなんだ?」


 リルフィンの青い瞳が僕達を見回す。ふん、見くびるなよ。


「僕達が今更あんな言葉だけでビビると思うなよ。こっちだって相当な修羅場潜ってるんだ」

「そうよ、私達を舐めないでよね。寧ろアンタが逃げ出さないでいいの? って感じよ。逃げたかったんでしょ?」


 僕の言葉に続いてセラがまたもヒドイ事を言ってる。逃げたかったって、さっきのリルフィン自身がローレに報告に行くか行かないかの事を言ってるのか?

 まあ確かに、ひねくれてみればそう考えられない事もないね。流石セラ。


「私が逃げる? ふざけた事を抜かすな。主がここにいる限り、私は命に代えてもここを守る。逃げるなんて選択肢はない。

 まあしかし、自身の主を捨てるようなメイドには分からぬ事かもな」


 売り言葉に買い言葉とはこの事だな。この二人、口を開く度に互いを罵り有ってないか? 今のリルフィンの言葉に明らかに目つきが鋭く成ったよセラの奴。

 自分の事でも我慢できないけど、アイリの事に成るともっと我慢できない奴だからな。


「主を捨てる? 私がアイリ様を捨てたって言うの? 今日から寝込みは気を付けた方は良いわよ。ポックリと気づいたら三途の川を渡ってるかも知れないから」


 おいおい、セラの奴リルフィンを暗殺でもする気かよ。確かに暗器使いだし、暗殺は得意そうだけど……でも実際LROで暗殺は成立しそうにないよな。

 まず一撃必殺ってのがそうそう成立しないもん。だから寝込みを襲っても一撃入れた後は普通のバトルに突入だ。それとも何かやりようでも有るのだろうか?

 初心者をようやく脱したと勝手に思ってる僕には分からないな。


「ふん、貴様に私は殺せんよ。そもそも主の側を離れるメイドに負ける気がしない」

「側にいるだけで安心なんて安易な奴ね。本当の絆って奴はどこに居たって変わらないものよ。それに家の大将は四六時中守って上げなきゃいけない程に弱くないの。

 私達は互いに信頼しあってるからこそ、こうやって別行動が出来る。アイリ様は私を信頼してスオウの助けになる事を容認してくださったの」


 助け? の所で頭を抱えちゃだめだよな。一瞬冗談か? とも思ったけど、そんな感じではなかった。だけどセラも随分と言うように成ったね。アイリにはそれこそベッタリしてただろ。ものスゴく心配もしてたし、常に気を配ってた印象があるぞ。

 けどそれもあの戦いで色々とあって変わったって事だろう。アイリは自分で歩けるように成ったし、そんなアイリに安心してセラはアルテミナスを離れたんだ。

 アイリとリルフィンは互いに眉根を寄せてにらみ合ってる。その間にはバチバチと火花を散らす互いの視線光線があるな。

 たくしょうがないなこいつらは。


「いい加減にしとけよ二人とも。喧嘩なんてやってる場合じゃないだろ。セラもリルフィンも。さっさと聖獣を倒してローレの所に戻りたいんじゃんなかったのかよ」


 僕のそんな仲裁の言葉に目つきそのままでこちらを見る二人。なんかさっきまでそこでぶつかり合ってた視線光線がこっちに向かって来てる気がするな。痛くないけど……その目をやめろ。


「ふん、貴様に言われるまでもない」


 そう言ってリルフィンは背中を向ける。なんとかここで収まったみたいだな。セラもプイっと首を逸らしてなんとかそれを受け入れた様だ。


「なぁ、そもそもどうしてここに来たんだよ? お札はついでだろ?」


 僕は背中を向けたリルフィンにそう聞く。確かまずここに来たのは意味があったはずなんだよ。テトラのせいで色々とウヤムヤに成ったけど、そろそろ聞いて良い頃合いだよね。

 するとしばらく沈黙を貫いて、ようやく口を開くリルフィン。


「それは必要な物があるからだ。主の話によると、封印の祠がリア・レーゼの外側に五つあるらしい。封印から目覚めた聖獣はその祠から出ようとしてる。

 だがそれを許す訳には行かない我々は、その祠の空間に突入して聖獣を倒す。しかしそれには特殊な札が必要なんだ。鍵となる札がな」


 随分説明口調な喋りだな。まあ説明してくれてるんだから当然だけど……


「で、その特殊な札は手に入ったのかよ」


 その為にここに来た時さっさと奥の方に行ったんだろ? てか、なんでそんな特殊な札をここのトップが、持ってないんだよ。自分で管理しとけっての。それなら直で行けたのに。


「いいや、交渉はしたがどうやら私でも無理らしい。それほどに重要な物と言うことだろう」


 それで諦めかけてる時に、こちら側が騒がしくなってたから飛び出してきたと……少し肩を落としてるリルフィンには悪いけど、君にはガッカリだよ。


「じゃあどうするんだ? お前が無理ならローレに頼もうぜ。それで万事解決だろ」


 権力って奴を使うんだ。それとアイツが口を酸っぱくする程にこだわってる威光とかな。それがあるなら速攻でくれるだろ。

 だけど何故か僕の提案に乗り気じゃないリルフィン。てかそんな事なら、さっきのグラ爺様に頼めばよかったんだよ。それでローレに指示を出して貰えただろ。


「しかし……これ以上主の手を煩わせるのも……」

「なに言ってるんだよ。それじゃあどうするって言うんだ。ローレに頼むしか無いだろ」


 目的を忘れるなよな。聖獣を倒さなかったら、結局ローレの手を煩わせる事になるんだ。大量のモンスターにこのリア・レーゼを攻めさせるか、僕たちが頑張って数体の聖獣退治だけで済ませるか……どっちが良いと思ってるんだ? 僕なら後者だと思う。


「しかし……それは出来ない……」

「出来ないって……」

「ダメだ。それはダメなんだよ。何故か理由は分からないが、それはダメな様な感じがする」


 おいおい、どうしたんだリルフィンの奴? いきなり言葉の内容がおかしく成ってるぞ。マジでやる気あるのかコイツ?


「まあまあ、直接言えば済むことだよ。幸い直ぐに行けるしね」


 そんなテッケンさんの言葉でグッと自分を押さえて僕たちは例の転送魔法陣へ。今回は雨も風の影響も受けないから楽だぜ。

 だけどここでも幾ら頼んでもリルフィンが転送してくれない。嫌がらせか!


「こうなったら連絡だ!」

「番号知らないですよ」

「じゃあメールで!」

「アドレスも分からないですね」


 鋭くシルクちゃんに突っ込まれた。僕はリルフィンを見るけど、やっぱり通信はしてくれない。てかどこからでも通信できるのなら、わざわざ行こうとする必要なんてないよね。でも上の方ではリルフィンにローレから通信来てたぞ。

 向こうからの一方通信? でもそんな訳……そんな事を思ってる間もリルフィンは自分の思いと言葉の整合性が取れない事に混乱してる。何なんだ一体? ちょっとおかしいぞ。


「こうなったらあの部屋の奥に僕達も行ってみよう。何か出来るかも知れないよ」

「そうですね」


 テッケンさんの提案で僕達は再び本殿の中へと戻る事にした。

 第三百十六話です。

 う~んなかなか聖獣戦まで行けませんね。まあすっ飛ばしてもいいのかも知れないけど、ここまで書いたら書くしかない心内です。聖獣戦に行くには色々と手順がね……そこら辺がリルフィンのおかしな言動なのです。

 ここがゲームだから逃れない物があるというか……そいう訳で、聖獣戦までもうちょっとお待ちを。

 次回は木曜日に上げます。ではでは。

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