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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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話の筋を通せ

 僕達とローレの会話は、もう何と言うか紆余曲折の果てを極めてる。奴が無駄に僕達に爆弾を投下するから、話が横道にそれて、なかなか本題が進まない。今回だっていきなりシルクちゃんが嫌いだとかなんとか……その情報は得てたけど、思い出すのが突然なんだよ。

 しかもその理由が聞くまでもないし……だけど最後にはとりあえずこれからの為になる事をローレは提案してくれた。


 先を観ることが出来ると言い切ったローレ。それが本当かどうか、僕にはわからない。だけど幾らLROだからって……ってのはある。

 前にちょっと未来が観れるかも知れないアイテムが話題になったけどさ、それも結局ピクだったし……実際未来を観る事なんか出来る物なのかなぁと疑う事が先行するよ。

 だけど自分の顛末を知りたいと言ったローレの声は、今までのバカッぽさとかは無くて、寧ろどこか達観してるような感じを受けた。

 それにこいつが星詠みの御子と呼ばれてるのは本当だし、その評判だってきっと悪くないんだろう。それはリルフィンみたいな、頭堅そうだけど忠実そうな部下が居ることで何となくわかるよ。

 まあだけどそれはNPC達の評価って気もする。ようは定められた立場とでも言うのかな? NPCはその立場になったローレを無条件で指示するようなさ……本当に星詠みで未来が見える事を証明するなら、プレイヤーを相手にしてくれないとね。

 疑えば切りがない事……でも今重要なのは、ローレに未来が見える見えないじゃなく、僕達を受け入れてこれからをどうするかって事だ。

 まあ、ここまで招いたって事は、僕達を受け入れてくれたと観ても良いはずだよね。散々言い合ったけど、ある意味あれで、打ち解けれたと思うんだ。


「まあ一歩間違えば打ち首決定だったけど……でも既に災厄の元凶たるアンタ達はここに居ちゃうわけだし、色々と手遅れなわけ。

 てか、飛空挺でドンパチやってる時には腹決めてたのよ。ああ、面白くなりそうだなって」

「何に対して腹を決めたんだそれ?」


 ボケか? また話を逸らそうとしてるんだな。だけど生憎、流石に僕も話を進めたいから横道には逸れないぞ。天井に掛かってる布が光を受けて僕達の居るところをそのとりどりの色で淡く照らしてる。

 それに気づいたけど、なんだか鼻を擽るような不思議な香りもしてる。そんな中、僕達は布越しにローレと向き合い、話をしてるよ。


「まあそこまで言うのなら、いざって言うときはサン・ジェルクと事を構える事も辞さないって事でいいのか? 実際あいつ等、正攻法でクリエを渡さなかったら、きっと実力行使でくるぞ。それだけ元老院はクリエを……いや、あいつが持ってるっていう神の力を欲してる」

「神の力ね……」


 そういって再び指を鳴らすと上へ上がってたクリエとミセス・アンダーソンが降りてきた。そこには互いに堅く目を閉じる二人の小さな姿が上等そうな布に包まれてる。


「その小さな子が二人の神の力を宿してるって話よね?」

「ああ、そうらしいな」


 僕達は実際、その力がどんな物か、まだ体験してないけどな。ノエインが見せてくれた映像だけ。てか、思ったけどさ――


「ローレはクリエの事知らなかったのか? まがいなりにもリア・レーゼの代表トップだろ?」

「まがなりって言葉は余計だけど、まあ私はここのトップよ。それは間違いなく絶対ね。そんな私が何の話も聞いたことない……なんて事ある分けないでしょ。

 神の力を宿してるって所を知らなかっただけよ。元老院共が幼女を怪しい実験体にしてるって話は前からあったしね」


 幼女を怪しい実験体にって……そこだけ抜き出すとどうしようもない犯罪者集団だな元老院。その噂を流すだけで結構なダメージになりそうな言葉だよ。

 だけど実際これが間違っちゃいないから元老院は結局犯罪者集団か。幼女を拉致監禁した集団って事をもっと世間にアピールするべきだな。


「そんな事言ったって、もみ消すわよ。そんなの簡単。宗教ってある意味、とっても怖いのよ。その言葉を絶対にしてるんだから、偉い奴らが自分の存在を吐き違えるのも無理ないと思うわ」


 そう言って椅子に座って肩をあげて呆れた動作をするローレ。吐き違える……ね。


「じゃあ、ローレはどうなんだよ? ここでは元老院と変わらないんだろ? 吐き違えたりするのか?」

「そうね。アンタ達もここがどこにあるか観てきたでしょ? 雲の更に上、宇宙と星の狭間とでも言うのかしら、そんな場所。

 あの場所から下を見下ろしてたら、そりゃあ吐き違えもするわよ。私は良く一人で見下ろしながら『ゴミ虫共が今日も私を崇めなさい』とか『私は神だ!!』とか叫んでるわよ」

「やってるのかよ」


 まあ確かにあの光景を見れる立場に居るって考えるだけでも自然と笑みがこぼれそうだよな。あれはそれだけの光景だった。あんな所から見下ろしてたら確かに吐き違えるかな? そんな気がしてくる。

 地位って奴はあの光景と同じって事なんだろう。最初は感動出来るけど、見続けて馴れちゃうと違う物が出てくる……みたいな。


「だけど私はそれで終わらせてるから。ある意味そんな事を叫んで優越感に浸るだけで私は満足できるから可愛いものよ。

 だけど元老院のジジイ共は違うんでしょうね。アイツ等は自分達をより神に近い存在にしたいらしいから」

「神に近い存在? それの為にクリエを使うのか?」


 神に近い存在って言っても漠然とし過ぎてる様な気がするけどな。何を持って神に近づいたとするんだろうか? 普通は信仰の教示を守る事で少しでも神に近づこうするものなんだろうけど……奴らがそんな一般論で満足出来るとは到底思えない。

 神に近づく……奴らはそれを、神の力を手に入れることでそうしようとしてるのかも知れない。悪役が考えそうな事と言ったら、僕にはそんな事くらいしか思いつかないな。

 だからこそ、クリエに固執してるとも取れるしさ。どうだろうか?


「それの答えを私は持ってないわね。未来を観るのも万能じゃないし、特に今は観たくても観れない状況だしね。本当に神に近づく方法を奴らが知り得てるとしたら、この子をこのままにして置くはずがないわよね。

 というか、既にサン・ジェルク側から再三の命令が来てるわ。リア・レーゼに凶悪犯とそれに連れ去られた二名を確保次第送り返せって」

「それで、リア・レーゼの対応はどうするんだよ。僕達を庇ったのはバトルシップの奴らが観てるし、その気になれば乗り込んで来るぞ」


 やっぱりバトルシップを逃がさずに撃ち落としておくべきだったんだよな。そうすればまだリア・レーゼは言い訳出来た筈だ。

 僕達を庇った事を見られたって事は、あれが意図的かどうか教えた様な物だ。


「大丈夫よ。取り合えずその凶悪犯とやらはずっと捜索中で通してるし、あの時バトルシップに砲を向けたのだってちゃんと言い訳はあるわ。ねぇフィンフィン」


 そう言って話を振られたリルフィンがその怪しいローブに包まれた中の口を動かす。


「ええ、リア・レーゼが砲を向けたのは自分の為……そう言う事になってる。決してお前達を庇った訳では無いということだ」

「なるほどね。色々と考えてるんだな意外と」


 バカの筈なのに。


「まあだからしばらくは正攻法で通せるけど、奴らはアンタ達がここに入った事は知ってるんだし、その内何かしら手を打ってくるでしょうね。その先兵をまずは駆除した訳だし……てか、ここのサン・ジェルク側の要人が何度も何度も謁見を求めてきてうざいったら無いわ」


 そう言って首を左右に振って、肩を回すローレ。年行ってる人みたいだぞ。実際いくつなのかは知らないけど、そこまで年行ってる訳じゃないだろ。

 まあ代表とか確かに肩が懲りそうな事ではあるよな。そんな事を考えてると、可愛らしい声と共に元気な手が挙がった。


「はいはい! すみませんえっと……ローレ様。今言った先兵って私たちを案内したモブリですよね? 確か飛んで行っちゃったけどあれで良いんですか?」

「……」

「あれ? ローレ様?」


 シルクちゃんの言葉を完全無視なローレ。あからさまな虐めだな。


「おい、無視するなよ。可愛そうだろ」

「ふん、よくよく考えたら私シルクの事好きじゃないのよね。ちょっと前に油断して会話したのを無かった事にしたいくらい。あのままスルーしてればこんな事言わずに済んだんだけど『誰かの為に~』ってその姿勢がなんだか嘘っぽくて。

 嘘っぽいのはまだ良いけど、それをヘラヘラとやるのがムカつくわね」


 スゲー言いがかりつける奴も居たものだ。どんだけ偏見もってシルクちゃんを見てるんだよこいつ。まあ、陰で言わずに本人を前に堂々と言えるのはある意味清々しいけど。言われた方はたまったものじゃないね。

 実際シルクちゃん凹んでるし。


「ご、ごめんなさい。私は知らずにローレ様を不快な気分にさせちゃってたんですね……」


 瞳を赤くして唇を噛みしめる様が可愛すぎるシルクちゃん。くっそ、シルクちゃんは全然悪くないのに、こんな表情をさせるローレは最低だな。


「またそうやって良い子ちゃんぶっちゃって、そこが一番嫌い。こんな理不尽に嫌われてムカつかないわけ? 言い返す位してみなさいよ。それともやっぱりいつもと同じように取り巻きの男共に庇って貰う?

 良いわよね。アンタを好きになる男は腐る程沸くんだから」


 そう言って僕やテッケンさんに「アンタ達の事よ」とか顎で言われた。ヒド! こいつバカなだけじゃなく性悪でもあったらしい。

 本当に救いようがないな。僕達は沸いたのか……虫扱いかよ。


「私は……そんな……」


 そう言って俯いてしまったシルクちゃん。なんて可愛そうなんだ。実際シルクちゃん何も悪くないし。ただムカつくからってこれはヒドいぞ。


「お前な、自分の性格が捻り曲がってるからって純真なシルクちゃんに当たるのはやめろよな。見苦しいぞ。てか、そう言う性格が男受けしないんだよ。気付け」

「黙ってろこのシルク信者が!!」


 うお!? なんと言う噛みつき方。やばいよコイツ、狂犬だよ。てか僕達はシルクちゃん派と認識されてるから何言ってもダメみたいだな。


「なら私が出てあげるわ。私、ああ言う自分が一番じゃないと気に入らない女が、この世で二番目に嫌いなの」

「へぇ~、じゃあ一番目は何なんだよ」

「そんなの決まってるでしょう。一番目は私の大切な人達をバカにする奴よ!! つまりそこのチビグゾモブリは私の大嫌いなワン・ツーね!」


 おいおい、セラの奴かなり切れてるぞ。どう考えても僕達とローレは相性悪い。てか、ローレの野郎が色々と爆弾を投下するから、こっちの印象が悪くなる一方だよ。利用はしてやるけど、仲良くはする気が全くないよな。


「ふん、等身が高いだけで偉いとか勘違いしちゃってるアバズレメイド何を言うかと思えば……アンタ達にはそこの女に受けた私の恥辱はわからないわよ!」


 そう言ってビシっとシルクちゃんを指さすローレ。一体二人にどんな因縁が? シルクちゃんはそう言われても心当たりが無いのか、困惑気味です。

 てか、アバズレって……随分古い語句を出してきたな。死語だろそれ。まあ言われたセラは怒ってるから効果は高かったみたいだけど……


「アバっ……メイド服が古くさいとかアバズレとか、アンタがリア・レーゼの代表じゃなかったら暗殺する所だわ。というか、せいぜい寝首を掛かれない様に注意した方が良いわよ。

 シルク様に何されたのか知らないけど、アンタの性格から考えてそんなの勝手な被害妄想でしょどうせ」


 うぁ、確かにそれは大いにあり得る。そんな気がする。流石セラ、なかなか鋭いな。キレてても冷静に相手の事を分析してるぞ。

 シルクちゃんが誰かを不快にさせるなんて早々ないんだし、どうせこの可愛らしさに勝手にキレてるだけだろ。そもそもシルクちゃんを嫌い続けてる理由が幼稚だし、きっとくだらない事を根に持ってるんだろうなって思う。


「ふん、アバズレメイドの分際に私が倒せるとでも? 一瞬でその存在消すわよ。それに何も知らないくせに被害妄想とか勝手に決めつけないでくれる。

 ただの被害妄想でも私のプライドはズタズタにされたのよ」


 おい、今ローレの奴、被害妄想だって認めたぞ。やっぱりそうかよ。僕達の呆れた様な目が輪郭しか見えないローレに集中する。だけど向こうからは僕達の表情は見えてないのか、意気揚々とその時の自分の屈辱(被害妄想)を語ろうとするローレ。


「あの時の私は――」

「はいはい、やっぱりただの被害妄想お疲れ様っした~。きっと全然気にしなくて良いレベルだからシルクちゃんは普通に振る舞ってて良いと思うよ」


 僕はローレの語りを華麗に遮って落ち込んでるシルクちゃんを元気付けます。どう考えてもこれが正しい対処方だろ。


「こらあああ!! ここからがシルクを悪者にしていく為に重要な部分でしょうが! ちゃんと聞け!」

「既にその言葉が浅はかだと気付けよローレ。それに被害妄想だってわかったし、きっと聞いても何の印象の変化はない。これ決定事項な。

 それよりもさっさと話戻して、さっきのシルクちゃんの質問にちゃんと答えろよ。ローレみたいな奴でも、一応ここの代表ププだろ? (お気の毒なことにさ)」

「なんだか所々に聞こえてはいけない言葉が混じってる気がしたわ」

「気のせいだろ」


 僕は爽やかにそう返してやるよ。ホント、自分をバカにする言葉には地獄耳だな。脳の変な部分が反応してるよ。敏感になりすぎだ。

 だけど僕らが全員呆れて総スルーを決め込んでたのに、ローレの言葉を待つ心優しい子が一人。


「言ってくださいローレ様。私はどうやってローレ様を傷つけたんですか? それを知っとかないと私はどこかで、ローレ様と同じ様な痛みを作ってしまうかも知れません」


 わざわざモブリと視線の高さを合わせるように腰を下ろしたシルクちゃんがそう言って嘆願してる。ヤバいよこの子。僕達には余りの神々しさに後光が見える。なんて良い子!! それに比べてここの代表と来たら――


「良い心がけね。ふふ……それじゃあよく聞きなさいよ。自分の否をその胸に刻んで私を敬い敬意を払う……こと……を……」


 なんだか言葉が途切れ途切れになってくローレ。どうしたんだ一体? 折角何も悪くない筈のシルクちゃんが聞くと言ってるから、こっちもしょうがなく止めないのに、さっさと言えよそのくだらない被害妄想を。

 どうせみんながローレに呆れ返るだけだろ。そしてシルクちゃんの株は上昇だ。どうせそうなるから――とか思ってたら、ローレの奴はまたアッサリとこう言った。


「――やっぱ言わない。なんだかシルクに懇願されて言うなんてちょっと違うって言うか。そもそもこんな雰囲気じゃ言いたくない。

 それにシルクにはこのまま悶々とさせてた方が良いかもだし」


 何という腹黒。ヤバいよコイツ、こんな奴をリア・レーゼは崇めてていいのか? 今すぐに暴動を起こしてギロチンにでも処した方がいいよ絶対に。そのうちきっと「パンがなくても私を崇めるだけでいいじゃない」とか訳のわからない事を言いそうだ。

 ここまで人として尊敬できない奴、初めてだ。どうせ言いたくなくなったのも、自分の小ささに気づいたからだろ。それかくだらなさを自覚したか……まあ味方も当然出来ないだろうし、取り止めたか。

 だってさっきから今ここでの唯一の信者のリルフィンでさえも関係ない振りで通してたもん。


「そんな……私のどこが気に入らないんですか?」

「だから言わないっての! アンタはずっと私に嫌われてる事に思い悩んで、ここでの肩身の狭さに苦しむといいわ」


 そう言って高笑いを始めるローレ。僕は「こいつどうにかしろよ」的な目をリルフィンに向けてみた。すると何故か彼は背を向けて天井を仰いだよ。それがどういう事だったのか、僕にはよくわからなかった。


「もう良いですよシルク様。全然気にする事なんか無いんです。あんなの存在を消してしまいましょう。プレイヤーじゃなくNPCだと思って接しましょう。

 それなら仕方ないで済みますよ。あの痛さも多少は仕様だからしょうがないで済みます」


 スッゴいばっさりとローレの存在を切り捨ててるセラ。確かにそれは効率的だし、セラなら出来るだろうけど、どう考えてもシルクちゃんには無理だろ。ホント、そう思ってくれれば絶対に楽になるけど、シルクちゃんは臭い物に蓋をしようとはしないもん。

 どうやったら受け入れられるか、それともその臭いの元を自分がどうやったら無くしてあげれるか考える子だよ。それは美徳だけど、何だって抱えるのはどうかと思うね。だって今回は別にシルクちゃん自身は悪くないもんな。

 勝手に向けられる敵意さえも自分のせいと思うのはよくないよ。体と言うか心がそんなの受け止めてたらキツいだろ。人はイヤな事でも忘れられるから生きていけるんだよ。

 抱えすぎたら、壊れてしまう。それが心配だ。


「でも私は……」

「取り合えずその話は終わりにしようよ。今はこれからの事! ここに居ればきっとその理不尽な評価だってその内覆せるかもだし……焦る事なんてない。

 そもそも全ての人に好かれようなんて土台無理な話だしね。シルクちゃんは十分過ぎる人に好きになって貰えてると思うよ」


 僕はシルクちゃんの頭に手を置いて優しくポンポンした。うん、スッゴいさらさらした銀髪がキラキラと指の間で輝いてる。何気にしたけど、なんだかドキドキするな。そんな風に思ってると、そのドキドキを見透かされたのか、セラに手を弾かれた。この野郎……僕達がシルクちゃんの頭上でにらみ合ってると、ポツリとこんな言葉が聞こえた。


「だけど私は……誰からも嫌われたくなんて……」


 なんだか切実そうなその声に、僕とセラは思わず二人して目をしばらくあわせて見つめあっちゃったよ。僕達は二人ともシルクちゃんの事には真面目なんだ。

 だけどそれで何かがわかるわけもない。僕達が何も言わずにいると、布越しのバカが再び口を開いた。


「さて、なんだっけ? ああそうそう、フィンフィンが捨てたサン・ジェルク側の奴を野放しにして置いて良いのか? だったかしら。

 不本意だけど答えると、あそこは気流が複雑で下に落ちる事も出来ないから大丈夫よ。まだきっと回ってるわね。それに他の奴らには嘘の情報を流してるし、少しは時間稼ぎになるでしょう」


 いきなり話に戻ったな。まあありがたいけど……そう言えばあそこは僕の体も持ち上げる風が吹いてたもんな。一人で抜けるには空でも飛べないと無理なんだろう。納得。


「まあサン・ジェルクが大々的に攻めてきたら、その時はその時でまた利用できる物を利用するだけよね。例えばそこのクリエだっけ? とか」

「お前!」


 僕は布にくるまれてるクリエを庇う様に立ち上がる。そんな事、させると思ってるのか。そんな事になったら僕達は敵だ。


「そんな怖い顔しないで欲しいわね。アンタ達にとってはその子が大事なんだろうけど、私はここを守る義務があるの。優先順位の違いよ。

 私は神の力になんか興味ないしね。だってこれ以上神々しくなっても困るでしょ?」


 何入ってるんだ? コイツの神々しさなんて僕には一生理解できないと思う。


「まあだけど、そのまま寝かせとくのは利用価値が余りないのも事実なのよね。その子の今の状態じゃ保険として弱いというか……元老院が何を考えてるのか、知りたくはある。

 それに興味はないけど、見てはみたいしね。神の力って奴を。だからアンタさっさとその子を起こしなさい」

「それが出来たら苦労しねぇよ! 箱庭から一緒に出た筈なのに、クリエだけ起きないんだよ」


 僕は歯を食い締めてそう言うよ。だけどそんな僕の無念さなんてどこ吹く風。ローレはあっさりとこう言った。


「だから連れ帰って来なさいよ。その子はきっと迷ってるんでしょう箱庭から出る際にね。扉は開いてあげる……その子を担いで中腹の社に行きなさい。案内はつけてあげるから」

「連れ戻せるのか?」


 僕は少しだけ震える声でそう聞いた。今初めてローレがまともに見える!


「それはアンタ次第。それとその子次第ね」

 

 第三百三話です。

 ローレ腐ってる。どんどん残念な奴に! まあまだ表層しか見せてないだけですけどね。これからきっと好きになって貰えると信じてます。多分? まあ、もしかしたら? 

 それとようやく無駄話も終わって、次回はいよいよクリエの為に動きます。

 てな訳で次回は土曜日に上げます。ではでは。

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