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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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探し物は宝物?

 結界を縄に変えてヒマワリを拘束出来た私達は早速尋問……じゃなくてお話に移りました。本を取り返すための交渉と言ったほうがいいのかな? だけどそこで問題発生。ヒマワリはなんと……その大事な本を無くしてました。

 シクラの逆鱗を振りきったヒマワリはご免なさい。ご臨終です、


「むぎゃぎゃああああああああああああ!!」


 街全体に張られていた結界がヒマワリへと収束した。彼女はまるで透明な縄で縛られたみたいに――ってなんだかもの凄く恥ずかしい縛られ方されてるような。

 亀甲縛りとか言う奴? そんな感じに縛られたヒマワリは、自由が効かなくなった体のまま上空から地面へと落ちていく。

 大きな土煙と衝撃を与えて地面にめり込むヒマワリ。私達はそんなヒマワリの元へと、ゆっくりと降りていきます。


「ねぇねぇシクラ。そう言えば結界の弱点がどうとか言ってたのは何だったの?」


 私はお姫様抱っこされた状態でそんな事を聞いてみる。だってヒマワリはそれを分かっててあんな上空に飛んだんでしょ? まあ意味なかったみたいだけど。


「結界は指定した支点から広がる様に張るから、必然的にその支点から遠い方が強度は落ちるのよ。だからこれだけ大きい場合は、数カ所の地面を支点にして広げて上空で繋げてるから、一番上が繋ぎ目で一番貧弱なの」

「へ~、でも良くヒマがそんな事知ってたね」


 アホなのに。


「ヒマにそんな知識があるわけないわ。だけどあの子はそう言うのを本能で見分けるから」

「本能って……どれだけ野生的なのよあの子」


 下に目を向けると、立ち上ってる煙の中でヒマワリが縛られた体をジタバタしてるのが見える。なんだかガウガウ言いながら魔法で編まれた縄を噛みきろうとしてるみたいだけど……その光景は確かに野生児だよ。

 到底女の子がやる行為じゃないよね。まああの子的には命が懸かってるんだろうから、そんな事どうでも良いんだろうけど、それにしてもって感じ。


「まあ実際には本能って言うかあの子の特性だけどね☆ あの子はいろんな事を見抜ける子だから。だからこそ、私たち姉妹の中では一番純粋なのかも知れないわ」

「特性って、それがヒマの能力って事?」

「そう取ってくれて良いよ☆」


 にっこり笑ったシクラは私を抱えたまま、フワリとヒマワリの元へ降り立った。そして私を地面に立たせてくれると、一歩地面を踏みしめてヒマワリを見下ろす。


「ふぎゃああああああああ!!」


 ものスゴい奇声と共に、更に激しく体をくねらせるヒマワリ。だけどその結界で編まれた紐が解ける事は無さそうだ。


「ヒマ、もう諦めなさい。あんたじゃこのシクラちゃんを出し抜ける訳ないじゃない。幾ら弱点を見抜こうと、私にはそれを補う術がある。

 弱点だって使い方に寄っては、罠に出来るのよ。良い勉強に成ったでしょ?」

「ぬがあああああ! だって僕はまだ死にたくない!」


 そう言ってまだまだ諦める様子がないヒマワリ。流石にシクラも呆れ気味。深い溜息をついて更にこう言った。


「あのね、本当に私がアンタを殺すとか思ってるの? 私たちは姉妹でしょ?」

「シクラならあり得る!」


 ドド~~ンと自信満々にそう言われたシクラ。思わずその足がヒマワリの顔面を踏みつけちゃってるよ! 


「痛い! 痛いよ! 助けてセツリ様!」


 ここで名前を呼ばれた私。まあ確かにフォローしようとは思ってたけど、さっきのはちょっとヒマワリが悪いよ。シクラだって鬼じゃないんだから、姉妹を手に掛けたりしないって。


「セツリ様! ヘループ! ヘループ!」

「もう、そこら辺にしてあげようよシクラ。流石にうるさいし、人も集まって来ちゃってるよ」


 周りを見ると何事かとちらほらギャラリーが増え始めてる。流石にこの土煙は目立つし、ヒマワリが地面に激突した時の衝撃は誰だって分かるよね。

 常にイベントに飢えてるらしいプレイヤー達が、こんな得体の知れない事を見逃す筈がない。


「まああんまり事を大きくしたくないし、そうねちょっと場所を変えましょう」


 そう言ってシクラが腕を一振り。すると再び大量の白煙が周囲に立ちこめた。


「せっちゃん、こっちに」


 何も見えない中、捕まれた腕に誘われるがままに私は走る。そしてそのまま建物内へ。どうやら宿屋に避難したみたい。

 部屋を一部屋借りて、ドタドタと上がり、縛られたヒマワリを無造作に床に投げ捨てる。その際「むぎゃ!」とか言う哀れな声をヒマワリは出してた。


「さて、ここならプライベートが守られてるから、何しても大丈夫よ。他人の目なんか、気にしなくていい。さて、じゃあヒマが思ってる私のイメージ通りの事をしてあげよっか☆」


 そう言ってコツっと足音を鳴らすシクラ。


「な……なんで! そんな事しないって言ったじゃん!」

「だってヒマがそれを望むのなら致し方ないわ。私は心痛むけど、そう言うイメージでお姉ちゃんを観てたのなら、期待に応えなきゃでしょ?

 ほら、私ってお姉ちゃんだし」


 にっこり笑ってその月光色の髪をウネウネさせ始めるシクラ。やばい、これは本当に殺されちゃうんじゃないかな?


「ごめんなさいごめんなさい! シクラはとっても優しいお姉ちゃんだから、そんな事しない! いつもとっても素敵な僕の憧れです!」


 必死にそう言い始めたヒマワリ。流石になんだか可哀想だね。


「最初からそう言えば良いのよヒマ☆」

「心得ました!」 


 逃げられないと判断したヒマワリは、シクラのご機嫌取りに移行したみたい。ほんと調子が良い子なんだから……だけどなんだか憎めない可愛らしさがあるんだよね。表情がコロコロ変わったり、ピコピコ動いたり、小動物的可愛らしさがヒマワリにはあるよ。


「最初から心得てなさい。私の絶対性くらいはね。それよりもさっさとアンタが私から盗んだ本を返しなさい。今直ぐに」

「アイアイサー!! って、この縛ってる変なの解いて貰わないと出せないよシクラ」


 そんなヒマワリの訴えを了承したシクラは、縄を解いてあげた。宙空に消えていく縄。これでようやくヒマワリは自由を手に入れた訳だ。


「ほら、縄は解いたんだからさっさと出しなさい。あれはアンタがオモチャにしていい物じゃないのよ」

「は~い、(たく、いつも自分だけフラ~と自由奔放なんてズルいよ。それでいて私達の行動は制限するんだからね。この悪魔!)」

「何か言ったかしらヒマ?」


 ブツブツと小さく呟いてたのが聞こえたと思ったのか、ビクビクッと体を震わせたヒマワリ。てか、実際私にも聞こえたからシクラが聞き逃してる筈はないと思うけどね。

 だけどシクラはあくまでも聞こえてないフリをしてる。一体何を企んでるんだろう? 


「な……何でも無いですお姉さま! あはは、ちょっと待ってくださいね。今出しますから……」


 そう言ってウインドウを表示させて、アイテム欄をスクロールするヒマワリ。


「え~と、え~と……」

「ヒマ?」

「あははは、確かここに……」

「ヒマ……」


 なんだか不穏な空気がこの狭い部屋に流れ出してる。ヒマワリは既に涙目だし、シクラの雰囲気はピリピリしてるよ。私はそんな空気を和ませる為に、明るくヒマワリに声をかける。


「もう、そんな冗談いらないよヒマ。パパッと出してササッとこの件は手打ちにしよう――ね!」

「グズ……はい……はい……グズ……」


 ええええええ!? どうして大粒の涙をこぼしちゃうの? 私何か不味いことを言ったかな? 涙と鼻水を垂らしながら、ヒマワリは必死にアイテム欄をスクロールし続けてる。

 でも既にもう何度下に行っては上へ戻ることを繰り返してるよ。


「ヒマ……あんたもしかて……」


 ピクピクと目尻をひくつかせがらシクラが一歩を詰め寄る。だけど次の瞬間ヒマワリは予想外のことを言ったよ。


「シクラ! 本が無くなってるんだけど何でだろう!?」

「私に聞くなああああああ!!」


 ドッガアアアアアアアンっと腕を一振りして宿屋の壁ごとヒマワリを吹き飛ばしたシクラ。再び白煙がこの港町に数カ所立ち上る羽目になった。

 てかあの威力は結構本気入ってたよね? 大丈夫かなヒマワリは?


「大丈夫よ。あんな子でも私達と同類。ほら――」


 そう言ってシクラは、壁に空いた穴から遠くを指す。するとそこではヒマワリが「僕だってわかんないもん!!」とか叫んでるのが見える。

 確かに無事だ。やっぱり姉妹だね。頑丈さは折り紙付きだよ。


「わかんないじゃ済まないわよ! さっさとこっちに戻ってきなさい!」

「…………」


 返事がない。何かを迷ってるみたい。まあここで戻ったらまた殴られたりしそうって所だろうけど、ヒマワリが動き出す前に、シクラはしっかりと釘を刺す。


「ヒマ、今度逃げたら殺しちゃうかも知れないわよ☆」

「あはっは~やだなお姉さま……今直ぐ駆けつけます!!」


 そう言った瞬間、ヒマワリは高速で戻ってきた。実際この距離を一足だった。どんな跳躍力してるのよこの子は。まあ十字架から一足でロケットのように飛んでたし、それを考えるとこれくらいは当然なのかな? でもこの子この力に支点影響されないみたいなんだよね。そこが不思議な所。これだけの勢いなら踏み込んだ建物を木端微塵にしてもおかしくないのに、傷一つ付けずに移動できるんだから凄い。

 なんだかこの姉妹は本当に色々と規格外だよね。だけど勢い付けすぎたのかヒマワリは私達を通り過ぎて、宿屋の反対側にも穴をあける始末。宿屋は大きく揺れて、私達の部屋は埃でいっぱいに……ケホケホだよ。


「やっちゃった。シクラが止めてくれれば良いのに! 避けた避けた!」


 ぶち壊した壁から出てきながらそんな文句を垂れるヒマワリ。あの勢いを止めろと? まあ、シクラなら出来るだろうけど……そう言うことじゃないよね?


「うるさいわね。アンタのミサイルみたいな勢いにわざわざなんで私が労力使わないといけないのよ。そんな事より……よ、分かってるわよねヒマ?」


 そう言ってガシっとヒマワリの肩……と思いきや頭を無造作に鷲掴みにするシクラ。


「あははは、痛いよシクラ。ほら、僕たち姉妹なんだし仲良く仲良くしようよ」


 必死におちゃらけてるヒマワリ。だけどシクラの雰囲気は背中越しに見てもゴゴゴゴなる効果音が聞こえてきそうな感じだよ。

 今度こそ、本当に殺されちゃうかもねヒマワリ。


「そうね……仲良くしたいわよね。大丈夫、まだ愛してるわよヒマ。だからさっさとあの本を出しなさい」


 まだ愛してるとか……本を出さなかったら愛す自信がなくなるわけだね。シクラの声がすっごく冷たく聞こえた。いつものフワフワとつかみ所のない感じじゃ全くない。実際あれはわざとあんな風にしてるんだろうけど、この素のシクラは見たくなかったかも。

 見てるこっちがガクガクと震えそうだよ。てか、さっきからもの凄く強く頭を握りしめてるのか、ヒマワリの頭から何かがオブジェクト化して消えていってるよ。

 あれはきっと血だと思うな。LROはそれを見せないから流れ出る前に処理してるんだと思う。てか良く我慢してるねヒマワリ。


「え~とね、それは僕もそう思ってるんだよ。本当だよシクラ。僕だってあの本を返したい……返したいんだ! だけど無いんだもん!! どうしてだろ!? ねぇねぇ僕にもわかんないよ!」


 必死にそう訴えるヒマワリ。シクラにまたぶっ飛ばされる――とか私は思ったけど、どうやらそんな無駄な労力を二度もする気は無いらしい。

 だけどシクラは「チッ」と舌打ちして、とっても不機嫌そうにこういった。


「ウインドウ出しなさい」

「どうぞ……」


 お殿様に献上するみたいな言い方のヒマワリ。無造作にそれを受け取ったシクラはさっきのヒマワリ同様の仕草を繰り返す。

 やっぱりアイテム欄を確認してるんだろう。


「どうだった?」

「嘘はついてないみたいね」


 そういってまたまた無造作にヒマワリのウインドウを投げ捨てるシクラ。

「だから言ったじゃん! 嘘なんて付くわけ無いよ。これ以上シクラの事怒らせないし! でも……なんでか本無くて……怒らせるって分かったら……逃げるしかなくて……」


 そう言って再びポロポロ涙を流し始めるヒマワリ。私はそんなヒマワリを見て胸が痛む。だけどシクラは全然変わらない口調で言葉を発する。


「いいから端的に答えなさいヒマ。アンタそもそも収納したの? 持ち歩いてたんじゃない? それを食べ物に夢中でどっかに置き忘れてたとか……」

「失礼な! 僕だって幾らなんでもそんなバカじゃ――」


 シクラのまさに失礼な言葉に最初は勢い良く涙を振り払って食い掛かろうとしたヒマワリ。だけど途中でその勢いが途切れちゃった。まさかとは思うけど……まさかだよね?


「――バ……カじゃないよ」

「本当に? 言ってみなさい。そのスッカスッカの頭の言い訳を聞いてやっても良いわよ」

「うぬぬぬぬ……」


 必死に怒られない言い訳を考えてるんだろうヒマワリ。その顔はみるみる真っ赤っかに……どう見ても深く考える事が苦手そうな子です。


「ちょっと、ちょ~とだけバカかも知れないけど……実際覚えてないかも……」

「アンタを愛せなくなった。お姉ちゃんは悲しいわ」


 死刑宣告が出たみたい。私も悲しいよヒマワリ。こんな短い付き合いになるなんて思ってなかった――って流石にそれは無いよね。流石にちょっと本を盗んで殺されちゃかなわいよ。


「待って待ってシクラ! もっと筋道を立てて考えれば、ちゃんと思い出すよ。幾らヒマがバカでも!」

「せっちゃんはヒマのバカさを分かってない。それにバカは死ぬまで直らないって言うし、一度殺してみるのも手じゃないかしら☆」


 なんて綺麗な笑顔で物騒な事を口走っちゃうんだ。もう全く末恐ろしいよ!


「ダメだよ! それはダメ! 殺した時点でバカは永久にバカのままだよ! それが事実だもん」

「まあ確かに。バカのまま殺してもバカかもしれないわね」


 なんだか焦点がバカになってる様な……そんな事を思ってると、バカバカ言われすぎたのか、ヒマワリが泣き崩れた。


「ふ……二人してバカバカって……流石の僕でも傷つくんだよ……にぐっ……ぐずっ、うえええええぇえぇぇん!」


 そんな姿に思わずシクラは鷲掴みにしてた手を離す。流石にここまで本格的に泣かれると困るみた――


「ウザっ」


 ――恐ろしい声がボソッと聞こえたのは聞き間違いって事に私は自分の中でしておいた。まさか妹を泣かせて置いてウザって……少しも心が痛まないのかな。

 私も言い過ぎたかなって思ってたのに、シクラは全く悪いと思ってないっぽい。まさかこれが愛さなくなったって事? 早いよ! 幾らなんでも気持ちの切り替え早すぎ。

 私は泣き崩れちゃったヒマワリに寄っていき頭を撫で撫でしてあげる。


「ごめんねヒマ。大丈夫、そんなヒマはバカじゃないよ」

「そんなの嘘……だってバカバカって……力強く言ってたもん……」


 うう……しっかりと反論されちゃったよ。確かに力強く言っちゃってたけど、あれは勢いが九割で本音は一割程度だったんだよ。


「本当に?」

「本当だよ。それにヒマはそんな所もあわせてヒマなんだよ。十分可愛いから気にしなくてもいいんだよ」


 撫で撫で撫で撫で。ヒマワリのその名前通りの色をした髪を優しく撫でる。少しは受け入れてくれて来たのか、その体を私に預ける様にしてくれる。


「じゃあじゃあ……あのね……」

「うん?」

「本の事許してくれる?」


 早速それを話題にするなんて……まあヒマワリからしたらそれが原因でこんな事になってるんだから、早く許されたいって気持ちは分かる。

 だけどそれは私が判断する事じゃないんだよね。だってそれはシクラの物だもん。それを私が勝手に「良いよ」っっては言えないよ。


「シクラ……」


 私はシクラへと視線を移します。だってその判断はシクラにしか出来ないからね。するとシクラは溜息混じりこう言います。


「許す」


 パアアアアと明るくなるヒマワリ。私も思わず「良かったね」と言いそうなったけど、どうやらまだシクラの言葉は続いてた。こんな風に。


「――訳無いじゃない。私はせっちゃん程甘くはないわよ」

「知ってたよ! だけどそれでも期待しちゃったじゃん! シクラの鬼! 悪魔!」


 ぬか喜びに激怒するヒマワリ。だけどそんな権利、自分にはないと気付いた方がいいよ。実際当然だし。


「あらら、そんな態度で言い訳? 踏みつぶすわよバカ!!」


 もの凄い迫力。がっつり睨まれてガクガクブルブルと萎んだヒマワリ。「ごめんなさい」と言う言葉を涙ながらに言うのが精一杯。


「あはは……ねえシクラ。ずっと思ってたんだけど、あの本ってそんなに大事な物なの? えっとそれって、やっぱり私の為なのかな?」


 私は泣き崩れてるヒマワリを抱えながらそう聞いてみる。だってシクラがこんなに拘るんなら……やっぱりそうなのかなって思うし。


「そう、あれはせっちゃんと私達の世界を創るために必要な物なの。マスターしか持ってない権限の一部を複製したアイテム。あれがあればマザーに干渉出来る。

 それなのにまさか身内に邪魔されるなんて思わなかったわ。ヒマ、あんた自分の存在意義を否定したのよ。私達はせっちゃんの為に居るの。その私達が、せっちゃんの夢と願いをを邪魔してどうするのよ」

「ちゃ……ちゃんと後で返す気だったよ」


 ちっちゃくちっちゃくなったヒマワリが、ボソッとそんな事を言う。まあヒマワリも無くすなんて思って無かったんだよね。


「ねえシクラ。それはこれからに絶対必要な物?」

「そうね。マザーが私達を受け入れないのなら必要かな?」


 別に無くても良いのなら、「もう良いよ」って言ったんだけど、絶対に必要ならそうは言えないね。


「ごめんセツリ様……僕のせいで」


 悲しげに私の胸に顔を埋めるヒマワリ。既に相当堪えてるみたい。流石に私の事には敏感になってくれるみたいです。


「今更よ。そう思うのなら、少しは役に立ちなさい。その軽い脳味噌を絞って思い出すのよ」

「が……がんばってみる」


 声に出しながら「うぬぬぬ~」と呻き出すヒマワリ。だけどそんな声を出してる時点でなんか思い出しそうに無いって言うか……そんな事をしてると、私達の部屋に武器を片手に入ってくる人が。


「何だなんだ! 一体なにがあったんだ!?」


 ボロボロになった部屋の参上を目の当たりにして、そんな声を出すその人。更に後ろからかも数人のプレイヤーがこちらを覗き込んでる。

 あ~あ、おもいっきり目立ってるよ。


「みなさんお騒がせして済みません。少しヤンチャしちゃって……だけど問題無いのでどうぞお引き取りを」


 シクラが今までの雰囲気をコロッと変えて爽やかにそう言う。凄い切り替えの早さだ。だけどこの状況をそれで納得してくれるのかな? だけどそこはLROなんだろう、結構簡単にプレイヤーの方々は引き下がってくれた。


「ふう、大事にならなくて良かったね」

「大丈夫よ。LROなんだから物騒な事はそれなりにあるし、それよりもせっちゃんの存在に気付かれなかったのが幸いね。

 せっちゃんは自分が思ってるよりも有名だから。それにその存在は特殊なんだから、レアアイテム感覚で狙ってる奴らがいてもおかしくないわ」


 そうなんだ……それは初耳かも。ちょっと外に出るのが怖くなっちゃうな。でもそう言えば、目覚めたばかりの頃、攫われた事あったっけ? だけどまあ大丈夫だよね。今はシクラにヒマワリも居るし、大概の事はどうにでもなるはず。


「ねえそうだ! もう一度朝市にいこうよ。そこでヒマが辿ったルートを辿れば、どこで無くしたか思い出すかもしれないよ」


 こんな所でウンウンと頭を悩ませてても思い出すかなんてわかんないんだし、行動を振り返る方が記憶って物を刺激するかもしれないよね。

 それにヒマワリは考えるだけじゃ上手く思い出さないだろし。


「そうね。確かにそれの方が早いかも。この子の記憶力なんか宛にならないけど、自分がどう行動したか位は分かるでしょ。そしてそこからはまたせっちゃんにちょっと頼るわ☆」


 頼る……なんか言い響き。私は元気に「任せて!」と言った。さあ、再びあの喧噪へ! だよ。

 第二百九十四話です。

 馬鹿でアホなヒマワリはまあ予想通りな事をしてくれてた……かも知れないですね。だけどどこか憎めなかったら幸いです。取り合えず予定では後一話位の予定だったけど、どうだろう? 

 納まるかは微妙かも知れないです。その場合はもう一話増えても勘弁してください。

 てな訳で、次回は火曜日に上げます。ではでは。

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