予想外の障害
僕とシルクちゃんは操舵室を占領した。これでハイジャックは出来た筈。後は下の方のセラ達の連絡待ちだ。そしてしばらくすると連絡は確かに来た。だけどそれはセラでもテッケンさんでもノウイでもなく、ましてや僧兵でもなくて……訳のわからない奴に行き成り宣戦布告された。
飛空挺が旋回する。これでサン・ジェルクへと戻る事は無くなっただろう。だけどまだまだ油断できない事はある。下のプレイヤー達や、残りの僧兵とかさ。まあ直ぐ下のプレイヤーがこっちにこない所を見ると、鍛冶屋が頑張ってくれてるんだろう。
だけどこのまま放置って訳には行かないし……どうやってあいつ等を止めるか考え物だな。取り合えず――
「シルクちゃん、そこの僧兵を魔法でどうにか出来ない? まだなんか伺ってる様だし、大人しくさせて欲しいんだけど」
「分かりました」
僕の言葉に一瞬ピクリと倒れてた僧兵の指が動くの見えた。まあ死んではないよね。大人しく寝た振りかましつつ、実は回復を待ってたみたいな感じなんだろう。
だけどお生憎様、そう易々と反撃の機会を与える訳には行かないんだよ。シルクちゃんが倒れてる僧兵に近づき詠唱を開始。魔法陣が奴の小さな体の中心に現れた。
なんだか僧兵自体が魔法陣に収まった様な……そんな感じだな。縄代わりの拘束具って事?
「まあ、そんな感じです。大丈夫、これも魔法詠唱禁止で強力な拘束魔法ですから」
流石シルクちゃん。魔法ならモブリにだって引けを取らない素晴らしさだ。個人的にシルクちゃんが魔法使い最強だと勝手に思ってるからね。
まっ、シルクちゃんしかマトモな魔法使い知らないからだけど。いや、そう言えばエイルがいたな。でもアイツは最強にはまだ程遠いから論外で。だけどシルクちゃんにはピクが居るし、ストック魔法という裏技を使える。それを使えば魔法使いのネックの詠唱時間なんて皆無だし、使い方をもっと熟練させれば絶対にシルクちゃんは最強になれると思うんだよね。
まあなにはともあれ、これでこのモブリが暴れる事は無くなったって事で一安心。
「このまま……リア・レーゼにたどり着けると思うなよ。既に……異常があった事は報告してあるんだ。飛空挺の戦闘艦が既に向かってきてる。
この船で……逃げきるのは不可能だよ」
胴体付近に現れた魔法陣がクルクルとゆっくり回る中、僧兵が途切れ途切れの言葉でそんな事を言う。飛空挺の戦闘艦? そう言えばノーヴィスには飛空挺の艦隊があるとかどうとか聞いたな。
バトルシップとか言ってたのがそれなのか? 確かに戦闘艦ともなれば速そうだ。こんな普通の船とはきっとスペックが違うんだろうな。
だけどそれでも、素直に捕まる訳にはいかない。サン・ジェルクに戻されたらクリエは元老院の道具にされるんだ。それが分かってるのに諦めるなんて出来るかよ。だから僕は僧兵にこう言ってやるよ。
「何を言われたって僕たちはリア・レーゼへ行くことを諦めたりはしない。不可能かもしれなくても、元老院の手の内になんて居られないんだよ。こいつの為にもな」
そう言って僕はシルクちゃんの抱きかかえるクリエを指さす。僧兵は胡乱だ瞳でクリエを見てる様だったけど、言葉を発する事無く、そのまま沈黙。どうやら気絶したみたいだな。
「おい、今から全速力でリア・レーゼを目指せ。全速力だぞ!」
僕は武器を突きつけて艦長を脅すよ。一応言っといた方が良いだろ。
「この船の最高速度と、バトルシップの最高速度は雲泥の差ですよ。この船はこれでも頑張ってる方です」
これで? いやまあ、普通に風を感じながら遊覧飛行をするのならこのくらいの方がいいのかもな。それにジェットエンジンじゃなくプロペラだし……そもそもの速度なんて期待できないか。
「それでももっと頑張れ! いいから最高速度でリア・レーゼを目指せよ!」
無茶な要求してるけど、なんか悪党っぽいな。いつか追いつかれるにしても、なるべくリア・レーゼに近づいておきたいんだ。僕はこの見晴らしの良い、操舵室から後方の空を見つめる。まだ何も見えない。けど油断も出来ない。
バトルシップか……どんな船なんだろう。
「バトルシップはこういう船って形じゃないですよ。もっとこう、近未来的な感じだったと思います。この船は他国にも製造できる様に開示されてる技術で観光と旅行と、物資輸送程度の目的の物です。
だけどバトルシップ……いわゆる戦闘艦は違います。あれはノーヴィスが進んだ魔法の技術の粋を集めて開発してる物ですから……実際かなりの驚異ですよ。
数を製造出来れば、世界を取れる位には言われてます」
そこまでとは、背筋にイヤな悪寒が走るよ。つまりはこの船とは全くの別物を想像してた方が良いって事か。
「それって戦闘に使われた事あるの? 先の領土争いとかさ」
「う~んそれが無いんですよね。プレイヤーに与えられてない物だから、どうしようもないと言うか……もしかしたらサン・ジェルクにもプレイヤーの代表が付けば、それを解禁出来るのかも知れませんけど、現状ではリア・レーゼの巫女一人だし、その人がノーヴィスのバランス崩しを所持してるしで、難しいかもですね」
なるほどね。てか、随分詳しいよね? 一回も戦闘で使われてないのにどうして分かるんだろ?
「それはですね。ノーヴィスのミッションで見かける事があるからです。それに実際に使われはしなかったけど、サン・ジェルクの守りの時に展開されたりもしたんですよ。それはそれは壮観でした。
そもそも他の国は飛空戦団持ってないですし、使えばきっと強いでしょ?」
「まあ、それはそうだろうね」
他のどこも空を自由に飛べないのなら、かなり強いよね。空を飛べるだけで、戦闘には有利だし。ちょっとおっかなくなってきたな。
まあでもいきなり攻撃してくる……なんて事はないよね。ここには普通に乗り合わせただけの人たちも居るんだし。そんな風に考えてると、操舵室の端っこにおいてある小さなお札みたいな紙が線を流すように光りだした。それと同時にピーピーという音が響く。
「何々?」
僕は驚きつつそう言った。すると艦長が「通信だ。僧兵達からだろう。出ないと怪しまれぞ」とか言われた。なるほど、って事はこれは監視室とかからって事か。それなら、僕が出よう。きっとセラだろ。
「大丈夫大丈夫。どうやって出るんだこれ?」
僕はそう言って艦長に出方を教えて貰う。まあなんて事はない、ただお札を上から下になぞるだけって事だった。なぞるとお札にその人物の姿が浮かび上がる。
だけどそこに浮かび上がるのはセラでも無く、ましてやテッケンさんでもノウイでも無い。てか僧兵でも無いぞ。誰だこいつ?
「そこに居るお前もハイジャック犯だな?」
頭までも覆った全身こ汚い布で覆われてるソイツがそんな声を出す。声は男か女かも判断できないな。布のせいでクグモってる。
だけど通信越しでも感じるのは、向けられる敵意の様な物。肌がピリピリする。こいつ、明らかに強そうだ。僕は唾を飲み込んでこう言った。
「誰だお前? 何者だよ。お前もって言ったな? セラ達をどうした?」
お前もって事はきっとセラ達と接触したんだろう。そして僕たちの存在を知った。でもそこにセラ達がたどり着けなくて、こいつが居るってなると……なんかイヤな予感しかしないな。
「貴様の仲間なら、私が追い払ってやったよ。今頃はどこぞで倒れてるかもしれんがな」
「――っ!?」
まさかそんな……いくら何でも信じれないぞ。だってノウイはともかく、テッケンさんにセラだぞ? あの二人が負けるなんて、実際想像できない。相手がシクラとかならまだしも、こんな誰だかわからない様な奴に……
「本当なら捕まえてここに晒そうかと思ったんだが、厄介なスキルを持ってる奴が居るな。しかも良い目をしてる。私の攻撃から二人を救い出し脱出とは……だが、この船に居る以上は袋の鼠だ。
船の向きを変えたな。行き先は『リア・レーゼ』。だが危険分子を招く訳には行かない。この船に私が乗り合わせたのを呪え。貴様達は逃げ場のない空で、私が一網打尽にしてやろう」
そう言って通信は一方的に切られた。おいおい、なんだかヤバい展開になってきたぞ。後ろからはバトルシップなる物が迫ってきてて、船内には謎の強者が居るって……どんだけ絶体絶命なんだよ。
幾ら回復役のシルクちゃんが居なかったからって、あの二人が揃ってて遅れを取る相手……絶対にヤバいな。
「お、終わりだよ。もうこんな事はやめるんだ。君達の仲間は今の人にやられたんだろ? ハイジャックはもう頓挫してる。
これ以上罪を重ねる前に――」
「うるさい! 良いからアンタは黙って運転してろ」
僕は艦長の喉元に切っ先を当てて黙らせる。何とか説得してみようとしたみたいだけどさ。言ったはずだろ。僕達は止まれないんだよ。
それに別にセラ達は完全にやられた訳じゃない。それは確実にわかってる。だって逃げられたって言ったしな。やっぱり案外役に立つよなノウイって。アイツの回避逃走スキルは、もはや最上級なのが証明された。
ノウイがついて行かなかったら今頃セラとテッケンさんは……考えただけでゾッとする。だってテッケンさんはある意味心の支えだぞ。良心だぞ。セラだって口は悪いけど、戦闘能力とその汎用性は一級品だ。
その二人が居なくなるとか、戦力の大幅低下だった。だけどノウイのおかげでそれが回避出来たみたいだしグッジョブだな。
「大丈夫でしょうかテッケンさん達は……」
不安そうにそう呟くシルクちゃん。確かに僕も不安だな。だけど僕までもそう言う訳にも行かない。だから皮肉混じりにこう言った。
「大丈夫だよきっと。だってセラとか、殺しても死ななさそうじゃん」
「はぁ……」
あの優しいシルクちゃんがとてもがっかりした感じのため息をついた。やっべ、ミスったかな。なんかショックがデカいよ。
「スオウ君はとってもセラちゃんの事、勘違いしてます。そんなんだから嫌いな態度を取られちゃうんです。仲良くしたいのなら、する気があるのなら、陰口なんてダメです」
怒られた。僕は素直に「はい」と言う。てか言うしかない。だってシルクちゃんは正しい。まあ陰口は最悪だよね。反省反省。
「さて、どうしよっか? まずは鍛冶屋を助けに行きたい所だけど……」
「色々と問題が山積みですよね……」
僕とシルクちゃんは難しい顔をして考え込む。後方からはバトルシップなる物が迫ってるらしく、この船事態にもなにやら厄介な奴が乗り合わせてる模様。迂闊に動けなくなってきたな。
でも結局逃げ場なんてこの空には無いんだ。それなら、さっさと鍛冶屋を回収して、一人でも多い状況であの謎の奴を迎討つ方が得策かも。
なんたってセラとテッケンさんさえも追い払った奴だ。僕とシルクちゃんだけじゃ心許ない。
「でもどうやって鍛冶屋君を助けますか? ここに見張りは必要ですよね。そしたら一人しか助けにいけません」
「そうだね。だから僕が行くよ。ちょっと待っててシルクちゃん。直ぐに戻ってくるからさ」
「そんな、無茶ですよ!」
僕の言葉にすぐさまそう返したシルクちゃん。うう、案外信用無いな。
「信用とかじゃなくて、客観的に戦力を見てです。だってついさっきも二人でやってて苦戦してたんだよ。状況変わらないですよ」
まあ確かにそれは言えてるけど……だけどシルクちゃんは戦闘タイプじゃないし、行かせれないじゃん。それにこのまま鍛冶屋を見捨てるなんて論外だろ?
「当然です!」
拳を握りしめて力強くそう言うシルクちゃん。勿論僕だってそのつもり。
「だけどやっぱり行けるのは一人だけ。だから僕を信じてよ。必ず鍛冶屋と一緒に戻ってくるからさ」
「……絶対ですよ。あんまり無茶はしないでください」
間を溜めてそう呟くシルクちゃん。僕は「了解」って気軽に言うよ。その位気軽が良いと思ったんだ。あんまり深刻そうに言うと、イヤな予感とかが浮かぶじゃん。
だから軽く、ちょっとそこのコンビニまで――の感覚で。
僕は部屋の隅に眠る二人のモブリを見る。ミセス・アンダーソンは仕方ないとしてもさ、クリエが全然起きないのが、実はさっきから気になってるんだよね。
クリエは僕と共に外に出れた筈なんだ。それなのに……何故か一向にその瞼を開かない。堅く閉じたままだ。一体どうして?
まあ今起きて貰っても困るし、そこら辺はリア・レーゼに無事たどり着けたら考えよう。
「あっ、そうだ」
僕は何かを思い出したように服をまさぐるよ。一日空いて忘れてたけど……確かクリエが好きそうなの拾ってたんだ。
「あったあった」
僕はポケットから透明なイルカのキーホルダーみたいなのを取り出した。湖を泳いだときに見つけて取っておいたんだよな。
なんかこのLROには似合わない様な感じの土産物? まああってもおかしくはないけどさ、あれだよ、水族館とかのお土産にある感じの奴なんだよね。
だけど綺麗だし、きっとクリエは気に入ると思う。だから僕はそのイルカをクリエの服のポッケにそっと入れた。
「さっさと戻ってこい」
そんな言葉と共に。
「よし。じゃあ行くよ」
僕は立ち上がりドアに向かいつつそう言う。すると僕の体を淡い光が。
「気休めですけど、HPは完全に回復させときました。それと物理障壁に魔法軽減の陣。後は身体強化です」
「ありがとう」
力がみなぎってくる感じがするよ。
「それと後は、ピクも連れて行ってください」
そんな言葉と同時に、ドアの外に出た僕へと飛んでくるピク。外を一回旋回して、僕の肩へ止まった。
「ピクまで? いいの?」
僕はちょっと心配気にそう聞くよ。だってシルクちゃんの事心配だしね。だけどそんな僕の心配に気遣ってか、彼女は優しい笑顔で「はい、大丈夫です」と答えた。
「私、スオウ君が思うほど弱くなんてありませんよ」
そう言って杖を掲げるシルクちゃん。勇ましさを表現しようとしてるんだろうけど、その姿はモブリに負けない位に可愛らしい。
この子やばいね。反則的だよ。まあだけど、シルクちゃんの為にも戻ってこないとな。悲しい顔させたくないし。思いがシルクちゃんのおかげで決意くらいには変わる気がする。
「はは、それじゃピクはありがたく借りときます。そして返すために戻ってきますよ」
「はい!」
シルクちゃんの笑顔を受け取って、僕は階段を下りる。直ぐしたの扉――そこが飛空挺の内部へ入る扉だからね。だけど扉へ手を掛けようとしたとき、いきなりピクが甲高く鳴いた。
澄み切った朝の空へどこまでも広がるようなその声。この鳴き方……まさか!! 僕は急いで扉から離れる。すると同時に、勢いよく扉が激しい音とも共にぶち破られた。
「つっ!?」
結構デカい扉が空へと消えた。それと同時になんだか他にも飛び出して来たような……周りを見回すと、なんだか屍が類々してるな。
実際は死んでは無いようだけど、誰も彼も重傷だ。
「これは……」
「ななななな、何ですか今の音?」
慌てる声と共に、飛び出してきたシルクちゃん。操舵室のある高い所から甲板を見て更にビックリ。
「一体……これって……」
僕も聞きたい位だよ。すると無くなった扉の向こうからギシギシという音が聞こえた。扉周辺にも呻き声を上げるプレイヤーが多数。
あいつ等をぶつけて扉を破壊したって事なんだろうか? なんて無茶苦茶な。てか、そのせいかランプまで壊れてるみたい。普通なら中の様子が見える筈なのに、中へ続く部分がやけに暗いな。だけど辛うじて動く足部分が見えた。まだまだ太陽が斜めなおかげだな。
「スオウ君! これって――」
シルクちゃんが現状を把握するためにこちらに言葉を投げかける。だけどその時ふと気づいたよ。あの場所はヤバい。だって吹き飛ばされた扉の真上あたり……って事は今上って来てる奴の丁度頭上。
そう考えてると、更に足全体が見えてくる。そしてその足部分と共に、一人のプレイヤーの頭も見えた。それはきっと無造作に引きずられてるから地面との距離が近いんだ。
あれは……まさか!
「シルクちゃんそこから離れるんだ!!」
僕は必死にそう訴える。だけど不運な事に彼女から奴は見えてない。
「――――っつ!?」
下の扉から一直線に破壊が延びる。木の板が無惨な音と共に空へと舞い上がり、飛空挺を更に破壊する。そしてその何かの衝撃が破壊したのは飛空挺だけじゃない。
あの破壊は明らかに彼女を狙って放たれた物だ。
「シルクちゃん!!」
彼女の銀色の髪の一部が青いエフェクト化して消えていく。シルクちゃんはギリギリでかわしたのかその姿は無事に見え……その時ゴトゴトとさっきの破壊の残骸が甲板へと落ちてきた。
そんな中、ピクが何かに反応して飛び出す。瓦礫が落ちてくる中、ピクがその一つを落ちる前に回収したような?
戻ってきたピクがくわえてる物を見て僕は仰天する。
「うわ!? ってこれ……腕」
それはきっとさっきの破壊で本体と切り離された彼女の……僕の視線は妙にブレながら扉の方へ。何かが胸の奥から沸き上がる。良くは見えない……だけど、その姿を確認出来るだけで十分だ。
その腕の先にいる、鍛冶屋も返して貰おう。僕はセラ・シルフィングを抜いた。
「ピクはご主人様の所へ行ってやれ」
僕がそう言うと、ピクは一鳴きしてシルクちゃんの方へ向かう。そんな中、扉の中側にいる奴が僅かに動くの見えた。もう一度シルクちゃんを狙う気なのかも知れない。そんな事させるか!
「やらせるかぁ!!」
僕は帯電させた雷撃をそいつに向かって放つ。だけど次の瞬間、僕の攻撃をかき消して飛空挺の床がベゴンと凹んだ。
(何?)
一体どういう原理だ? まるで見えない攻撃が来たような……でも取りあえず、こちらに意識を持って来て貰わないと困るから、僕は甲板を走りつつ、攻撃を続ける。放たれる雷撃は直ぐに消されて、甲板がどんどん凹んでいく。だけどその間にピクはシルクちゃんの元へ辿りつけたみたいだ。
淡い光が見える。きっと回復魔法で腕を元に戻してるんだろう。そうであってほしい。僕は絶え間なく二本の剣から青白い雷撃を放って甲板を走る。どうにかして鍛冶屋を救出する方法を探さないと。
でもこの攻撃の正体が分からない。基本奴から直線的に力が放たれてる感じなのはわかるけど、そのモーションすら無いってどういう事だよ。
一度破壊した部分から差し込む日の光で、ようやくその姿を現した訳だけど、いかんせんその姿をみたらなんか変なプレッシャーを感じる様になったぞ。マジで何者だ?
そんな事を考えながら腕を動かしてると、不意に奴が引きずってた鍛冶屋をこちらに向けた。僕は思わずガク付きながらも、攻撃をやめる。するとその瞬間、再び操舵室へと続く通路が弾け飛ぶ。
「しまった!」
あそこにはまだシルクちゃんとピクが! それに完全に操舵室を孤立させられた。あのフード野郎。やってくれたな。
「神の地に着く前に、貴様たちを葬ってやる。その存在を浄化しないとあの地には悪そうだ」
「テメェ……人を悪魔か何かみたいに言いやがって」
こいつはどの立場なんだ? 立ち位置を把握できないぞ。NPCなのか? プレイヤーなのかすらわからない。だけど言ってる言葉から考えるにNPCでリア・レーゼの奴? だけどモブリじゃない。そこがネックだな。
「悪魔も同然だ。星詠みで詠われたんだよ。近々リア・レーゼに不幸をもたらす存在がやってくる。それはきっと貴様達だろう」
「そんな確証ないだろ! 違ったらどうするんだ!」
僕は正論を吐いてやった。勘で襲ってくるなよな。
「その時は謝ってやろう。だがな生憎、私の勘は外れた事がない」
第二百八十三話です。
今回は新キャラ登場です。まだまだ謎のキャラ。だけどその実力はわかるでしょう。この新キャラのせいでさらに飛空挺内は混戦です。果たしてスオウ達は『リア・レーゼ』へ辿りつく事ができるのか!?
てな訳で、次回は月曜日に上げます。ではでは。