理解されないこと
何とか飛空挺へ乗り込めた僕達。だけど直ぐにあの爆発を聞きつけた僧兵がやってきた。なんとか撃退したけど、問題はまだ山積み。僕達はハイジャックをするために二手に分かれて、それぞれの目的の場所を目指す。
木造の飛空挺の中は、なにやらゴウゴウという機械音が響いてる。大穴は後ろに消えたから、これは風の音では無いのだ。
これだけ大きい船を浮かせる為の装置がきっとごっついんだろう。前に動力炉を見たけど、やっぱりそれなりにごつかったもんね。
これはきっとその音だ。僕達はセラ達と反対側に走り、プレイヤーが集う一番広い空間を目指してる。実際あんまり人に見られたく無いけどさ、上に行くにはそこを通らないといけないんだ。
「他のルートが有るとかは?」
「無いですね。飛空挺の構造はどれも同じですから、何度も使用してれば自然と覚えれますよ。まあスオウ君はこれで二回目だし、覚えてなくて当然です。それにあの時は色々と大変でしたしね」
「まあ確かに……」
初めて乗った飛空挺で墜落体験したもんね。飛空挺には感動してたけど、内部構造覚えるまでには行かなかったよな。
三人で足音を響かせて走る。前方ではピクが道を案内する様に優雅に飛んでるよ。そんな後ろ姿を通路に点在する淡いオレンジ色の光で追っている。
「思ったけどさ、ピクだってこれで二回目くらいだよね飛空挺? なのに構造をちゃんと把握してるの?」
僕は思い浮かんだ疑問をシルクちゃんにぶつけてみる。すると彼女は可愛い笑顔を向けてこう言った。
「勿論です。ピクはどうやら、マスターである私の記憶? データでしょうか? それを共有出来るみたいですね。だから私が知ってることは大抵あの子も分かってる筈です。勿論LROの事に限ると思いますけど」
「へ~それは便利だね」
記憶の共有って……実際どうやってるんだろ? 記憶って言うかデータとシルクちゃんも言い直したし、実際はシルクちゃん自身の記憶を共有してる訳じゃなく、LROが記憶してるシルクちゃんの行動の記録とかなのかも知れない。
だからデータ化出来てる所をピクは知ってる。実際シルクちゃんが覚えてなくても、ピクはデータを取得して飛空挺の内部構造を把握とかしてたのかもね。ピク自身にデバイスみたいな機能が有るのかも。
「確かにそう考える方が自然かもですね。ピクは時々空を一定時間見つめる癖みたいな物があるし、もしかしたらその時に色々更新してるのかも」
そんな癖が有ったんだ。流石シルクちゃんはよく見てるね。
「そんな機能が……一度ピクを良く見せて貰って良いかシルク?」
僕達の会話を聞いてた鍛冶屋が何やら興味深げにピクを見つめてそんな事を言う。
「言っとくけど鍛冶屋さん。ピクは武器じゃないですよ。私の友達です」
「分かってる。だが実はずっとウズウズしてたんだ。我慢してたんだ。考えてくれ、サポートモンスターは今はまだこのピクだけ。
そんな貴重な存在が目の前に居るんだぞ。武器とかよりも一人のプレイヤーとして気になるじゃないか。純粋な興味なんだよシルク」
なんだか随分真摯にそう言う鍛冶屋。こいつが武器以外に興味を持つなんて珍しい。まあ確かにピクの事は色々と興味深いのは同意だけどね。まさに言った通りピクはまだこのLROに一体しかいないサポートモンスターだ。
実際他のプレイヤーからも興味を注がれてる筈。鍛冶屋じゃないけど、色々とやりたい事はある。特にモフモフとか――モフモフとか。ピクの羽はとっても気持ち良いんだよ。
しかも胴体部分はつるつるピカピカで桜色の鉱石で出来てるみたいな感じ。それにこの時期には嬉しいヒンヤリ仕様ときてる。ピクって最高だね。
「まあ、切り開く訳じゃないなら良いですよ」
「切り開くって……どんな印象を俺はもたれてるんだ?」
笑顔でそんな事を言うシルクちゃんも良い。まあ冗談だと思うけど。でも鍛冶屋の武器に対する執着見てると、実際そんな心配もしちゃうかもね。
なんたって武器の擦れる音を判別する奴だからな。僕はもしかしたらそんなスキルがあるんじゃんかと疑ってるよ。
「鍛冶屋君の印象はまさにそう言う印象としか言いようがないかな? ちょっと妖しい感じがあるし……私は分かってるけど、ピクはちょっと苦手にしてるかもです。
だからあんまりイヤがる事はしないでくださいね」
「……そう言えばあんまり俺には飛んでこないよなピクは。スオウや他の奴らには普通に懐いてるのに……」
そんな事を呟いてちょっと肩を落とす鍛冶屋。案外可愛い物も好きだったのかこいつ? いや、懐かれないからあんまり触れられない事への不満か。そうだろ。
「ふっ、武器になら誰よりも愛されてるんだがな」
なんかキザッたくそんな事を言う鍛冶屋。こいつは気付いてないだろうけど、きっとそんなキモい所をピクも感じ取ってるんだと僕は思う。
会話をしながら進んでると、ようやく見えてきた上に続く階段。これを上れば直ぐそこに大広間の扉が有るはずだ。
「うえ!?」
階段に足を掛けた所でそんな声が出た僕。なんかピクが大きく翼を広げて勢いを殺してると思ったら、こういう事か。階段の上にはなんかプレイヤーがいっぱいだ。
ピクは上れないから僕の肩に降りてくる。てか、一体何が? そんな事を思ってると、プレイヤーの中に僧兵の姿が辛うじて見えた。その僧兵へみなさん詰め寄ってる感じだな。
「落ち着いてください! 今さっきの爆発の原因を調査中ですから!」
そんな張り上げる声が聞こえる。どう考えても原因は僕達だな。
「もしかしてまたモンスターが攻めてきたとかじゃないのか? 少し前にそんな事があったって出回ったぞ。協力してやるよ。イベントは大歓迎だ!」
「俺たちだって!!」
「私たちも!!」
そんな言葉も続けざまに聞こえてくる。なるほど、みなさん爆発に怯えてる訳じゃなくて、何かのイベントだと思って駆け出そうとしてるわけね。
てか、前にあったって言う飛空挺でのイベントって、それも僕達のせいだよね? でも空の上だってのにみんなやる気有りすぎだろ。そんなにイベントに飢えてるのか?
「予想外のイベントや出来事、そう言うのもLROの楽しみだからな。それに告知されずに始まる物は、貴重なアイテムがあったりするし、何も無くてもその場に居合わせただけで普通はあんな風にテンション上がる。
まあド派手なイベントに事欠かないお前には分からないかもだがな」
嫌味かそれは鍛冶屋の野郎。僕だって出来るものなら一息尽きたいよ。もっとのほほんとしたいとも思う。だけど向こうからやってくるんだもん。次から次へと!!
文句言われてもどうしよう無いっての。
「ふふ、LROでは恐怖心よりも好奇心の方がやっぱり大きく成るんですよ。なんたって普通は本当に死ぬわけ無いですからね。リスクはあるけど、目の前にある何かにリアルよりは気軽に首を突っ込める。そこもLROの良いところですよ。
と言うかLROでは楽しみを探すことに枷がないですからね」
枷がない……か。確かにLROは進めば進むほど面白い物が有るかもね。飽きる要素ないし。世界は踏破出来ないほどに広い。リアルには無い魔法とかも有るし、やろうと思えば何だって出来る。
そりゃあブームに成るよね。ブームというか社会現象か。きっとこの長期休暇に併せて買った人は僕以外でも一杯居るだろう。
「まあ取り合えずさっさと進みましょう。僧兵がモミクチャにされて僕達に気付かれない今の内に」
僕はそう言って大量の人で溢れてる階上へ。プレイヤーを押し退けて前へ前へ。ここを通らないと甲板に出れないんだからな。
だけど僕の考えは甘かった。下から来た僕達に気付くのは別に僧兵じゃなくてもよかったんだ。一人のプレイヤーが僕達に気付くと、それが連鎖的に広がってモミクチャにされるのは今度は僕達。
「下から来たのかあんた達? 何があったんだ一体? モンスター共の襲撃か?」
「「「「なぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁ」」」
もの凄い勢い。何という暑苦しさ。バサバサとさっさと飛んで逃げ出したピク。するとそんな珍しい生き物に視線が向かうプレイヤー達。これはチャンスだ!
僕達はこの隙に強引に人の間を進む……筈だったんだけど、僕は途中であることに気付いて引き返した。だって僕や鍛冶屋は強引に進めるけど、シルクちゃんはそうは行かなかったみたいだ。
元々あんまり自分を主張するタイプの子じゃないから、強引に人の間とか進む事は出来ない用だった。まあ色々と損しそうだけど、シルクちゃんらしいよね。
オロオロしてる所見ちゃったら、自分達だけで先に行くなんて出来ないだろ。僕は人混みから手を伸ばしてシルクちゃんの手を取る。
「大丈夫?」
「スオウ君! ごめんなさい……」
ホッとしたような顔の後に、直ぐに申し訳なさそうに頭を下げるシルクちゃん。するとその頭に丁度ピクが止まり木感覚で不時着する。
「わっ、ちょっとピク!!」
「クピ~~」
頭に不時着されたシルクちゃんを見て、周りの人たちが「オオ~」とか声を上げてる。シルクちゃんは恥ずかしいのか顔が真っ赤に成っていくよ。
「それってサポートモンスター?」
誰かがポツリとそんな事を言った。すると更に誰かが「うおおおお!? サポートモンスター!?」とか興奮気味の声を上げる。再び勢い良く詰め寄ってくるプレイヤー達。シルクちゃんは完全に怖がってるよ。
「おま……えら……そろそろ……いい加減にしろ!!」
僕はたまらずセラ・シルフィングを抜いた。それと同時に周りにいたプレイヤー共を吹き飛ばす。
「イテテテテ……テメー」
「なんだよ? 怯えてるだろ。グイグイ来やがって、マナーって奴を教えてやろうか?」
僕がキレ気味に脅しを掛けてると、クイクイと服を引っ張られる感覚が。顔を向けるとシルクちゃんが顔を寄せて小声で囁いてくる。
「スオウ君、あんまり挑発するような事は……それに目立ってますよ」
目立ってるって、ピクの方がよっぽど目立ってる。それを頭に乗っけてるシルクちゃんもまた目立ってる……てか既に手遅れだろ。
「お前は……どこかで見たような……ハッ!」
僧兵がそんな風に呟いて何かに気付いた。そして向けられる背中の槍。ほら、手遅れだった。
「なるほど、あの爆発はお前達の仕業か! サン・ジェルクから逃げ出す腹みたいだが、大人しく捕まって貰おうか!」
鋭い切っ先をこちらに向けてそう宣言する僧兵。シルクちゃんは僕の後ろで「どうしましょう……」と困った感じ。そして周りのプレイヤー達は「どういうことだ?」と頭に疑問符浮かべてる。
「つまりは、アイツ等があの爆発の原因で、僧兵に追われてる奴らって事じゃないか? 子供を誘拐して逃亡中の極悪人に見えるぞ」
「確かに、なんかモブリの子供背負ってるな。それになんか指名手配されてた様な……」
なんだか不穏な空気が蔓延していく感じだ。空気がピリピリし出すのを感じる。敵意って奴が向けられてるからか?
極悪人ね。僕達からしたらよっぽど元老院の方がそうなんだけど、それを他のプレイヤーに分かって貰うのは難しいのかな。
ここはさっさとこの目の前の僧兵を倒してここを抜けた方が良さそうな雰囲気。僕は後ろのシルクちゃんにこういうよ。
「シルクちゃん、僕が奴に切りかかるからその間にここを駆け抜けるんだ。なんか雲行き怪しいから、そうするのが良いと思う」
「それは納得ですけど、僧兵に切りかかったら周りのプレイヤーが立ち塞がらないですか?」
まあその可能性は十分あるね。だけどこの雰囲気からしてそれは時間の問題だろ。まだ誰も武器を抜かないのは迷ってるから。そして最初に襲いかかるのはリスクがあるしね。
だけど誰かがたがを外せば、後はみんな一斉に武器を抜く可能性はある。そうなってからじゃ、数で劣って庇う奴もいる僕達は不利だ。
ここはプレイヤーが迷ってる内に、さっさと目の前の僧兵を吹き飛ばして抜けるのが良策だろ。てかそれしかない。急がないとセラたちは既に僧兵達の部屋にたどり着いてるかも知れないしな。
僕は片方に持ったセラ・シルフィングに力を込める。
「僕が切りかかったと同時に走るんだ」
「分かりました」
シルクちゃんの同意の言葉を受け取って、僕は一足でモブリの眼前に迫った。そして小さいモブリに確実に当てる為に、下から上へとセラ・シルフィングを振りかぶる。
僧兵はそんな僕の攻撃を辛うじて槍で防いだ様だけど、狙いは達成できたよ。小さなモブリは僕の攻撃で体を浮かして吹き飛んだんだ。今の内……そう思うよりも早く動いてくれてたシルクちゃん。だけどどうやら、色々と考えてたのはどうやら僕たちだけじゃなかった様だ。
シルクちゃんが僕を追い抜いて行こうと横を通ったまさにその時だ。足下に現れた魔法陣が僕とシルクちゃんをその範囲に閉じこめた。
「なんだこれ!?」
「これは設置型の罠です。どうやらあの僧兵が自身の足下に仕掛けてたみたいですね」
冷静にそう告げてくれるシルクちゃん。だけどそんな冷静に言ってる場合じゃない。僕たち見事にはめられちゃってるよ。
「ふははは、我らモブリは崇高な魔法種族だ。貴様等の様な野蛮な肉弾戦を好んでやるわけがない。貴様等にはしばらくそこで大人しくしてて貰おうか。犯罪者をのうのうと闊歩させる訳には行かない」
そう言って僧兵が槍を背中に戻しながらそんな事を言う。元々こいつこれが狙いだったみたいだな。僕たちがコソコソ話してる間にでも仕掛けられたか。それに槍を向けておいて本命はこっちとか……この僧兵、かなり出来るな。
なんでこんな下っ端が尽きそうな飛空挺勤務なんだよ。
「くっそ!」
僕はセラ・シルフィングで魔法陣から浮かび上がる光を叩く。だけどダメみたい。物理攻撃は通らない仕様か?
「内側から壊すのはちょっと難しいですよ。こう言うのはハマったらどうにも出来ない事が多いですからね。考えられる策は、圧倒的な力で押し切るか、魔法自体を魔法で相殺させるか、他の誰かに術者を倒して貰うかです」
なるほど、圧倒的な力ね。イクシードでなら壊せるかもって事か。シルクちゃんの魔法はどうなんだろう?
「試してみたいんですけど、どうやら詠唱は出来ないみたいです。やろうとすると声が出なくなります。多分この魔法の効果なんでしょう」
なんと厄介な。でも破られない様に対策をこうじるのは普通か。向こうは魔法の国の住人だしな。自分達の最大のウリを易々と壊される訳には行かないよな。
「この結界は易々と破られはしないさ。さて、取り合えずサン・ジェルクに引き返す指示を――ん?」
不意に途切れた言葉。すると僧兵に掛かる影。振り返るとそこには大鎚を振りかぶろうとしてるプレイヤーが一人。それは言わずもがな鍛冶屋じゃないか!
「フン!!!」
飛空挺全体に伝わったかのような大きな衝撃。それと共に僕とシルクちゃんを囲んでた魔法陣が消えていく。どうやら倒せたみたいだな。
「助かったよ鍛冶屋。てか一撃とかスゴいな」
僕がそう言うと、鍛冶屋は振り卸してた大鎚を持ち上げてアイテム欄へ戻した。デカいからかどうか知らないけど、こいつは常時表示状態にしてないんだよね。まあだからこそミセス・アンダーソンを背負える訳だけどさ。
大鎚の下にはピクピクしてる僧兵が哀れに突っ伏してる。だけどどうやらHPが完全に無くなった訳じゃないようだ。それなのに魔法が解けるってどういう事だ?
「昏倒してるだろソイツ。鎚やハンマーの様な打撃系武器の効果だ。上手くやればこういう風に相手を気絶させる事が出来る。まあ今回は不意打ちだから出やすかったな」
なるほど倒してはないけど、術者が気絶したから魔法も解けたと言うことか。やるじゃないか鍛冶屋。
「いいからさっさと行くぞ。その内、操舵室の警備を強化されたりしたら厄介だからな」
「それもそうだな」
結構時間食ったし、実際この状況がどこから操舵室に伝わるかも知れない。この飛空挺の範囲なら、どうやら手軽な通信手段を持ってる様だし、そもそも爆発起こった時点で、反転したっておかしくはない。
最初にあの穴で出会った僧兵が様子見に使わされた奴らだとしたら、戻ってこない事に不信感を覚えて、なんの報告無かったとしても、安全上サン・ジェルクに引き返す判断もあり得るかも知れない。
そんな決定を下される前に操舵室を占拠しないと。シルクちゃんも鍛冶屋にお礼を言って、僕たちは大扉の向こう側へ行こうとする。だけどその時、プレイヤーの一人に呼び止められた。
「おい! ちょっと待てよ。お前達犯罪者なんだよな? これ自体をイベントか何かだと考えて良いのか? そしたら俺達は、お前達を行かせない様にした方が正解か?」
プレイヤーの一人が武器に手をかけようとしながらそう言う。強い眼差しを持った目だ。他の人達もこちらを同じ様な目で見てる。
まるで僕たちが悪者……って今は悪者なんだっけ? ハイジャックしようとしてるんだし悪者だよな。でもここでこの人達と戦うのはちょっと不味い。
まず不利だし、僕たちの狙いはここじゃないんだ。無視しようと思ったけど、シルクちゃんは振り返って頭を下げる。
「ごめんなさい! みなさんは納得出来ないでしょうけど、私達にはやるべきことがあります。これは私達のイベントなので出来れば見て見ぬ振りをしてください。
迷惑は掛けません。私達はただ、『リア・レーゼ』に行きたいだけです。サン・ジェルクには理由があってどうしても引き返す訳には行かないんです!」
シルクちゃんの言葉に少々頭を抱えるプレイヤー方々。シルクちゃんはとっても真摯に頭を下げてるからね。
「理由か……じゃあさ、そこの奴が指名手配受けてる奴ってのは本当? それは認めるか?」
そう言われて僕に視線が集まる。シルクちゃんは「はい」と答えたよ。
「だけどそれもみなさんには関係無い事のはずです。このイベントはとっても大切なんです。だから!」
「そうだね、大切なのは分かるよ。だって大々的にクエストとしてそこの奴の捕獲が確かあったから。報酬も確かなかなかのレアアイテムだった筈――だ!」
その瞬間、そのプレイヤーが小刀を投げた。狙いは勿論僕。
「お生憎様だけどさ、クエストとして出てる以上、見逃す訳にはいかないな! 目の前にお宝があるのに、わざわざ素通りするバカはいないだろ!?」
僕は向かって来た小刀を弾く。こいつ確証がほしかっただけみたいだな。僕がそのクエストに指定されてるプレイヤーかどうか。
そしてその確信を得た以上は、さっき言った通りって事だろう。確かにコイツに……いやコイツ等に僕達のイベントクエストは関係ない。だけど関係のある事柄でコイツ等は動き出した。
これも元老院側の策略か? ほんとやることがえげつない奴らだな。
「ま、待ってください! 私達がやってることは本当にとっても大切な事なんです!」
「そうかもね。だけど君が言ったんだよ。僕達にはそんなの関係ないってね! 関係あるのはクエストには彼が指名手配されてるって事! 今や彼はLRO中から狙われててもおかしくないさ!!」
僕に向かいくるプレイヤーの前に立ったシルクちゃん。最後の望みを掛けて紡いだ言葉も届かずにソイツはシルクちゃんをかわして武器を抜く。
僕の剣と奴の剣がぶつかり合う。片腕じゃどうもやりづらいな。僕は蹴りを腹に決めてソイツを突き放す。
「やるじゃないか犯罪者。大人しく俺達の糧になれよ。何をして指名手配なんか受けたか知らないけど、俺達プレイヤーにとって大事なのは、クエストになってるって事だ!!」
その言葉を聞いて次々に武器を抜くプレイヤーの面々。これはもう戦闘回避は無理だと思う。淡いランプの光のほかに、様々な物騒な光が輝きだしてる。
第二百八十一話です。
こんばんは! ついさっきに続いて連続投稿です。プレイヤーがクエストをやる理由。それはスオウ達の問題なんて関係ない! って訳で、大ピンチです。
でもこの続きは次回で。次回は木曜日にあげますね。ではでは。