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「そこだあああ!」
私は光を目印に輪っかに腕を何回も差し込んでラッシュをかけた。近くの輪っかに転送された私の腕が巨大になって妖精王に襲いかかる。でも手応えがなかった。
「單純だな」
そんな声が直ぐ側で聞こえた。まるで直接耳に囁かれたような……そんな低音イケメンボイスが私の耳をくすぐる。ASMRか!? って思った。私の体はビクッと震えたね。だっていつも使ってるイケメンボイスよりも生々しさがエグいんだもん。確かにいつも使ってるASMRボイスも生々しいなって思ってた。
イケメンが私の側に添い寝してくれる奴が好みで聞いてるが、いつもそんなASMRにあわせて「うんうん、チュキチュキ」――と言ってた私……でも今のを体験してしまったら、それらがただの録音でしかないと知ってしまった。
これが生……か。確かにASMRも吐息だった。でも今のは……今のは耳に熱まで伝わってきた。吐息が耳をくすぐるという感覚とは本当はこんなにドキドキするんだと……私はしった。
そうなると、これまでのASMRでは満足できなくなっちゃうよ!
「ぐはっ!?」
私は崩れ落ちる。けどその直後だった、私が立ってたら当たってたであろう位置に光線が走った。
「見切ったか。やるな」
いや、全然違いますけど……その低音ボイスにやられただけですけど……妖精王は自分の声を武器……だなんて思ってないから私の本当の動きの意味ってやつがわかってないのだ。
だから私が事前に妖精王の攻撃を読んで避けたのだと思ってる。でも事実は全く違う。ただ私がその声に萌えただけ……なんだよね。なんか申し訳なくなってくるな……そんなことを思ってると、召喚獣が割り込んできてくれた。
「大丈夫か? 無事なら立て。すぐにスオウたちも戻ってくる。それまで持てば――」
「それまで持つ? 本気でそう思ってるのか?」
二人のタイプの違うイケメンがぶつかり合う。まあイケメンがぶつかり合うのはLROではよくあることではある。でもよくあるから眼福じゃないか? といえばそんなことはない。それに今の状況ってなんか私を巡って戦ってるように見えない?
私は鼻を押さえつつ、その光景を撮影機能で密かに収めることにした。




