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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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届かせる空への思い

 動き出した飛空挺。追いかけてくる僧兵ども。湖の上の混戦状態。そこから僕達は抜け出して、飛空挺に乗り込まなくちゃいけない。僧兵の攻撃を潜り抜け、僕とセラはドデカイ攻撃で船の推進力を生む。

「おいいいいいいいいい! 動き出してるぞ飛空挺!」


 大きく揺れる水面で舟に全力でしがみつきながらそんな風に声を出す僕。だって既に出港し始めてるって、それはヤバいだろ。くそ、モーターボートならまだしも、流石に手漕ぎは予想以上に時間が掛かってたって事か?


「まだっす! まだ浮いてないなら、ミラージュコロイドで届かせて見せるっす! だからもっと近づいて欲しいっす!!」

 目が点エルフのノウイがそんな事を訴える。まだ間に合うか……確かにここはノウイのミラージュコロイドに賭けるしかないかも。既に入り口は閉じてるだろうしね。


「よし、力の限り全力で漕ぐよスオウ君!!」

「了解です。テッケンさん!」


 僕とテッケンさんはそれぞれの舟のオールを持ち、一気に回しまくる。今までは優雅に舟の旅をしてたけど、もうそんなのやってらんない。


「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」


 腕をグリングリン回す。もうこれでもかって位。既に飛空挺は発着場からバックで出て、今度は前に進み出そうとしてる風だ。

 前に進み出したら、きっと今までのスピードの比じゃないだろう。そうなったらこの舟で追いつくのは難しい。絶対に距離をあけられる。


「進路を飛空挺の進行方向に向けよう!! このまま真っ直ぐ進むんじゃなく、飛空挺の飛び立つ進路に向けるんだ。きっと飛び立つ前に交差出来る筈だよ!」

「了解!!」


 僕はテッケンさんのそんな言葉を受けて、やや右側に旋回。直接接触を諦めて、狙うのは衝突覚悟の交差点だ! 実際動く物に追いつくにはそうするのがベストだろ。進行方向を読んで、狙った場所で追いつく。これしかない。


「飛空挺のプロペラが回転を逆にしだした。そろそろ前に進むわよ!」


 セラのそんな声。間に合うか? この舟で交差地点まで行けるか? いや、行くしかないだろ。オールが激しく水を切り、滴も大量に宙を舞っている。

 もう腕がオールを漕ぐだけの機械にでもなった気分。だけど小さなオールで出せる速さなんて実際たかが知れてるのかも。ヤバい、間に合う気がしないぞ。


「諦めたらダメだよスオウ君!」

「わかってる! 分かってるけど……」


 シルクちゃんの言葉に何とか答えたい。でもさ、現実問題、推進力がよく分からない空まで飛んじゃうアレに追いつけるか?


「追いつくんじゃない、進行方向でぶつかれば良いだけだ」


 だぁ~もう、そんな事は分かってる。だけどこの距離を詰めるのに、手漕ぎオールじゃ限界があるって言ってるんだ。こっちに向かって飛空挺が進んで来るならまだしも、そうじゃないじゃないか! 

 このままじゃ実際、一気に爆発的な加速でもしないと、交差できずに飛び立ちそうだ。


「そこの船舶! 止まりなさい!」

「げっ!?」


 別方向からそんな声。視線を向けると、明らかに僧兵の部隊が見える。流石にバレたか。だけど、まだ怪しい舟が二隻ほど、飛空挺に向かってる位の認識だろう。

 もしも僕たちと気付いてたら、そんな勧告せずに撃ってきそうだもんな。


「見つかっちゃいましたね」

「「関係ない! このまま突ッ走る!!」」


 シルクちゃんのそんな声に、 僕とテッケンさんは同じタイミングでそう返したよ。てか、こっちの舟に居るシルクちゃんの声が良くを聞こえるね。


「止まりなさい! そこの舟。それ以上の接近は危険……ん? 何だ?」


 なんか警告が止まったぞ。そう思った矢先、周りの水面が大きな水柱をあげて弾けた。別の船舶からの攻撃?


「ぬあっ!? なんだ?」

「攻撃だ! どうやら奴らにバレたみたいだぞ」

「おいおい、ここでかよ!」


 くっそ、これで真っ直ぐ進むのが難しくなった。僧兵の奴らの槍から放たれる魔法が、水面に当たる度に小さなこの舟は大きな影響を受ける。それだけでタイムロスだよ。既に前方に動き出してる飛空挺。このままじゃ絶対に間に合わない。

 しかも間に合わなかったら、絶対に捕まるだろこれは。四面楚歌? 八方塞がり? そんな事を思ってると、「まだよ!」と大きな声で、少し前を進むもう一隻でセラが立ち上がってる。そしてその周りには聖典が……何する気だアイツ?


「ようは爆発的な推進力さえあれば良いんでしょ? なら爆発させるまでよ。そっちはそっちでタイミング合わせなさい!」


 弾ける水面をかわしながら進む中、セラがそんなことを言ってくる。別にあのウザい僧兵の舟を吹き飛ばすとかじゃないのか。

 まあでも確かに、アレに割いてる時間はないか。段々と飛空挺は加速してるし、もう少しできっと浮いてしまう。


「止まれ! この異端者共め!!」


 次々と降り注ぐ攻撃の嵐。空には太陽があるのに、僕達の周りだけ雨が降ってるみたいになってる。そんな中、大量の水しぶきは透明から聖典が凝縮する光の色を帯びていく。

 こっちも一気に加速力を生む力を――そう思って僕はこの舟のメンツを見る。鍛冶屋にシルクちゃんに眠ってるクリエ……おいおい、誰が聖典に匹敵する攻撃が出来るんだ?

 シルクちゃんは後方支援型だし、鍛冶屋は武器の力で肉弾戦タイプだからな。ダメじゃないかコレ?


「ちょっと代われ鍛冶屋!」


 こうなったら僕しかないだろ。そう思って無理矢理鍛冶屋にオールを渡す。そしてセラ・シルフィングを抜いて「イクシード」を宣言。

 刀身に風のウネリが集い出す。


「逃がすかああああああああああああ!!」


 数隻の舟から大きな炎の玉が僕達の舟へと向かってくる。今度は周りにハズレるなんて事はなさそうな進路。僕達目指して一直線に来てる。だけど僕達もこれ以上進行方向を乱される訳には行かない。

 僕達は攻撃をかわそうとしない。だからただ、この一撃で更に早く進むだけ!!


「行くわよ!! ブレイィィィィィク!!」


 金色の光が波を高らかにあげる。僕も同時にイクシードの風のウネリを水面にたたき込んでた。こちらは凝縮された風の力。向こうは圧縮された聖典の光で、それぞれ爆発したよ。

 更にその瞬間、僧兵達の打ち込んだ攻撃までも到達したけど、その時には僕達の舟は宙を飛んでいた。ただ一直線に飛空挺との交錯点を目指して。


「「「いっけえええええええええええええ!!」」」


 僕達はみんなでそう叫んでた。叫ばずには居られなかった。だって一日振りのLROでいきなりのこの状況。なんとも僕達らしくってさ、みんなきっと楽しんでたんだと思う。

 舟は徐々に失速していき、水面を二度・三度と水切りする。その度にガクンガクンと成る僕ら。後少し! だけど、交錯点を既に飛空挺は過ぎ去った。見えていた前方部分が見えなくなり、胴体……そして後ろとなる。

 しかも僅かだけど浮き始めてる。

 だけど僕もセラもまだ諦めてない!!


「「まだまだああああああああああああ」」


 そんな叫びと共に、再び攻撃を水面に放つ僕達二人。強制的な進路変更と、更なる加速が目的だ!! 再び十メートル越えの水柱が上がり、その中から僕達は飛び出した。ピッタシと飛空挺の後ろについてね。


「ノウイ!!」

「分かってるっす! ミラージュコロイド展開!!」


 飛空挺の甲板部分に向かって伸ばされる透明な鏡。だけどその時、限界が来たのか、ミシミシと言ってた舟が、空中でぶっ壊れた。そしてそれは僕達だけじゃなく、どうやらセラ達の舟もそうなってた。

 流石に強制的な方向転換は不味かったか。僕達は空中に放り出された格好だ。このままじゃ後一秒もしないうちに全員水面に叩きつけられる事に――


「手を伸ばすっす!!」


 そんな声に咄嗟にテッケンさんがいち早く反応してそれにセラが続く。更にそこへシルクちゃんが続いて、鍛冶屋――そしてクリエを受け止めた僕へと伸ばされる。でも片手はクリエを抱えて、もう一方はまだセラ・シルフィング……これを直接伸ばす訳にはいかない。

 僕はトッサにセラ・シルフィングを回転させて鞘へ納めて、そのまま鞘に入ったセラ・シルフィングを伸ばす。これで、距離も稼げて届くはず!!


「飛ぶっすよ!!」


 そんな声が聞こえた瞬間。僕達は鏡を潜り一気に数十メートルの上空へ。だけどそこには足を踏みしめる所なんかなかった。さっきよりも高く昇った飛空挺の側面部分しか見えない。


「まだっす!!」


 そう言って再びノウイはミラージュコロイドを展開させる。落ちる僕達を鏡で受け止め、一斉に上へと上昇する。だけどどうしても距離が足りない。後数枚鏡が多ければ行けそう何だけど、その数枚分で飛空挺の最上部にたどり着けない。


「諦めないでノウイ君! もう一度お願いします!」

「でも、後数メートルが足りないんす!」

「大丈夫、こうなったら少々荒っぽく行きましょう」


 荒っぽい? シルクちゃんの口からそんな言葉が出るなんて以外だ。そんな言葉を信じてノウイは再び飛ぶ。だけどやっぱり飛空挺の壁ギリギリまでしか届かない。

 だけどそこでシルクちゃんが行動を起こす。


「今ですピク! 壁に向かってブレストファイア!!」


 ピーと鳴いたピクが主人の命令を迷いなく実行。赤い炎が飛空挺を大きく揺らす。そして立ち上る黒煙の中に穴が!!


「あそこですノウイ君!!」

「了解っす!!」


 ミラージュコロイドは迷いなくその穴へと向けられる。そして僕達は一斉に転がる様に飛空挺への進入を果たした。



「いっつつつつ……」


 体の節々に鈍い痛みが。てかようやく自分って奴を支えてくれる場所に辿りついたよ。空には憧れるけど、やっぱり二本の足で踏みしめられるって大事だね。安心感が違うよ。


「なんとか、潜入成功っすね」

「シルクの機転が無かったら、今頃全員地面に叩きつけられてたかもしれないね」


 そんな事をいわれてシルクちゃんはちょっと照れ笑い。まあ僕としてはシルクちゃんがこんな大胆な事をする事の驚きの方が強かったけどね。


「ピクのおかげです。一応これで何とかなって良かったで――」

「そこの貴様等だな侵入者は!」


 シルクちゃんの声を遮って聞こえてきたそんな声。見るとどうやら飛空挺常駐の僧兵らしい奴らが二人程居る。勿論こっちに武器を向けて……状況を把握しようと僕はみんなに視線を向ける。

 みんな結構気まずい顔してるね。アチャーっていう顔してる奴もいれば、オロオロしてる可愛い子も居るし、そして明らかにため息漏らしてメンドクサそうにしてる奴も居る。


「おい、こいつの顔見たこと無いか?」

「ああ、確かに! 凶悪犯罪者の指名手配リストに載ってた奴だな! ハイジャックでもする気か?」


 おいおい、僧兵の人達はなんだか二人で盛り上がってるな。まあ盛り上がりのベクトルがちょっと違うけど……ハイジャックって、そんな――


「今直ぐ機長に連絡を! 凶悪犯を乗せたまま『リア・レーゼ』には行けない、直ぐに引き返させるんだ!」

「うおおおおおちょっと待ったあああああああ!!」


 僕はそんな僧兵の会話を聞いて思わずセラ・シルフィングを抜いちゃったよ。だって引き返されるのはやばいだろ。連絡なんか入れさせれない。


「貴様!? 抵抗する気か?」


 そう言いつつ僧兵二人の槍には光が集い出す。僕はもうやるしかないと判断したね。武器を抜いた時点で話し合いなんて無理なんだ。

 いや、そもそも兵隊は役割をこなすだけ。それがNPCなら尚更だろう。ここを切り抜けるには、もうハイジャックでも何でもするしかない!

 てか壁をぶち破って侵入してる時点で、言い逃れも何もあったもんじゃないじゃん。その事実に気付いたよ。後ろで大穴のあいた壁の外がゴウゴウ唸ってるのが聞こえる。

 てか、空気がこの穴に吸い込まれて行ってるのか、もの凄い風が流れてる。モブリなんて速攻で吸い込まれて空に投げ出されてもおかしくはないのでは? って思うほどなんだけど、僧兵は案外大丈夫そうだな。

 僕は体を低く保って、クリエを片腕に抱えたまま飛び出した。


「引き返されてたまるか!!」

「凶悪犯が! 舐めるなよ!!」


 向かいくる僕に向かって僧兵二人が、切っ先を光らせた突きを狙ってくる。受け止めるか凪払うか……僕はチラリと腕の中のクリエを見て、そのどれでもない判断をする。 僕は槍が届く直前にセラ・シルフィングを床に突き刺した。それを支えに体を宙に浮かせて。向かってきてた僧兵二人の背後を取る。そして空に成ってる鞘で、二人の足を払ってみた。


「「うお?」」

 そんな間抜けな声を漏らした僧兵二人は、そのまま勢い良く、大穴へと吸い込まれて外へと放り出された。


「ふう」


 一仕事終えた僕は、セラ・シルフィングを回収してホッと一息。


「あんた鬼ね」


 すると冷めた視線を送ってそんな事を言うセラ。そしてみんながコクコク頷いてるし。だってだって、これはしょうがない事だよ。


「しょうがないで人を殺すなんて。まさに殺人鬼の言い分ね」

「うるせぇ!! だってサン・ジェルクに戻る訳には行かないだろ。それに死んじゃないだろ。まだギリ湖の上だ。モブリの軽さならきっとそこまで飛ばされる」


 僕は必死にそう祈るよ。きっと大丈夫さ。


「まあ確かにサン・ジェルクに戻るのはゴメンだけど……これじゃあ本当にハイジャック……するしかないかもね」

 さっきまでの僕をからかい気味の顔からちょっと難しそうな表情にシフトしてそう呟くセラ。


「ハ、ハイジャックってマジっすかセラ様? 何もそこまでする必要はないんじゃ? 自分達を見つけた僧兵は排除したわけっすし」


 目が点なノウイはその豆粒みたいな目を僅かに震わせてそんな事を言ってる。案外感情表現が豊かな目だな。それは不安とかを表してるのか?

 てか、排除とかやめてほしい。まるで僕が率先してやったみたい。あれは止む終えなかったんだよ。


「いや、ハイジャックは必要かもだよやっぱり。あの爆発はこの船に乗り合わせた人たちには気づかれてるだろうし、もしも僕達が隠れ通せても、こんな爆発が起こった船を飛ばし続けると思うかい?

 この穴が見つかったりしたら絶対に引き返す。普通にリアルで大穴あけたまま飛行機が飛び続けない様に、きっとそこら辺はLROだって同じだよ。

 そして戻られたら、僕達にとっては終わりだ」


 テッケンさんがハイジャックの必要性を丁寧に語ってくれた。まさにそれだよ。このままじゃどのみち、この飛空挺はサン・ジェルクへと引き返してしまうだろう。それを防ぐには最早、ハイジャックしか道がない。


「私が大穴開けちゃったからですね」


 そんな風に呟いたシルクちゃん。悲しそうな彼女の顔を見るのはゴメンだから僕はすぐさまこう言った。


「「「違うよ(っすよ)」」」


 何故か僕以外の声も混じってた。まあ男性陣全員が一斉に同じ事を言ってしまったみたいだね。なんか恥ずかしいな。

 セラの白い目が痛々しいけど、シルクちゃんはそんな僕らに「ありがとう」と言ってくれるよ。やっぱりシルクちゃんは良い子だね。

 まあ実際、僕たちは本心からそう言った。だってシルクちゃんが機転を利かせてくれなかったら、僕たち終わってたしな。ハイジャックなんて、サン・ジェルクに戻るよりは良いだろ。

 止む終えない事ってのがあるんだ。セラは犯罪鬼の理論とか言ったけど、最後の一線を越えないようにして、実際は誰も一般人を傷つけない様にすれば問題ない。

 ちゃんと後で誤解を解くためにさ。


「おい、複数の武器の音が聞こえるぞ。こっちに向かってきてる。僧兵も居るみたいだが、それだけじゃない。どうする? 本当にハイジャックするのか?」


 むむ……僧兵の仲間が来るのは分かる。二人が戻ってこないのを不安に思っての行動だろう。だけどその他はなんだ? 好奇心旺盛な野次馬根性全快の奴らかな?

 てか、何故に武器の音だよ。どう考えても、鍛冶屋の聴覚おかしいだろ。


「だから武器への愛が――」

「もう良いよそれは」


 武器への愛だけで分かるかよ。それよりも問題はどうやってハイジャックを完遂するかだろ。中途半端にやったら、変な抵抗とかされるかもしれないよな。だってここはLROだ。普通に誰もが武器を持ってる。

 ここら辺がリアルとは違うよな。誰もがハイジャック犯に一泡吹かせようと思えるんだからさ。リアルではハイジャック犯が絶対的に優勢だ。それはその手に武器を持ってるから。乗り合わせた乗客は下手に逆らうと命の危険を感じる。だから抵抗なんてしない。きっと楽に制圧出来るんだろう。

 けどLROは実際命の危険は他の人達にはないし、正しい正義感を気持ちのままに実行しようとする人が出てきてもおかしくはない。そうなると色々と厄介だよね。

 PKプレイヤーキル出来るし。思わぬ反撃は避けたい所。


「やっぱり最初に操舵室を押さえるのがベストよ。脅しを掛けてサン・ジェルクに戻らせないように出来るわ。プレイヤーは案外理由を話せば分かってくれるでしょう。問題は僧兵の奴らと乗り合わせたNPC。

 NPCも脅すとして、僧兵に外部との通信をされると厄介よね。この国には飛空戦団があるし、最悪そんな物を出されたら、一巻の終わりよ」


 おいおい、飛空戦団って……かっこいい。って思ってる場合じゃないか。確かにそんなの出てこられたら不味い。操舵室と共に、僧兵も制圧したほうが良さそうだ。でも確か僧兵ってこの飛空挺内にバラバラに配置されてた様な……


「僧兵が使う監視室っていうのがあります。きっとそこに通信手段も有るはずですよ。後は操舵室にも有るはずですし、取り合えずこの二つを押さえましょう」


 おお、なんだかシルクちゃんが犯罪に乗り気だ。以外だね。


「ちょっとワクワクしちゃってます。不謹慎かもしれないけど、こういう悪い事ってあんまりしたことなくて」

「はは、イメージ通りだねシルクちゃんって」


 なんて可愛いんだ。まさに悪いことしなさそう。いや、出来なさそうな感じ。ホント見てて良い子ってのが分かるんだから相当だよ。それに比べて、底意地の悪さしか見えない女もいる――


「何よ? 私はそもそもシルク様の様には育てられて無いもの。てか、そんな場合じゃないでしょ? 取り合えずアンタはクリエを連れて操舵質を制圧しなさい! 派手に成りそうな僧兵側は私が請け負ってあげるわ」


 なんか珍しくセラが厄介な方を請け負ってる。どんな裏が有るんだ?


「アンタは人の好意を疑う事しか出来ないの? いいからさっさと行きなさい! こっちは監視室を目指すわ」

「よし、なら僕もセラ君に付き合おう」

「自分も当然セラ様といくっすよ!」


 テッケンさんとノウイが真っ先にセラへの同行を申し出る。


「あの、私も一緒の方が良いよねセラちゃん? そっちが派手に成るのならヒーラーの存在は必要でしょ?」


 シルクちゃんもそんな事を……ってそれじゃあこっちは眠った二人を抱えて鍛冶屋と? なんかヤなんだけど。


「シルク様はスオウ側でお願いします。あの二人だけだと不安しかないので。大丈夫、このメンツならそうそう攻撃を貰ったりしませんよ」


 そう言ってシルクちゃんにはやんわりとした口調でそう告げるセラ。悪かったな不安しか抱けない二人で! でも実際助かった。確かに不安しか無かったからね。


「よし、じゃあそれぞれ健闘を祈ろうぜ。制圧出来たら、通信装置使って連絡取れるだろ」

「了解、モタモタしないでよスオウ」

「どっちがだ!」


 そう言い合って僕たちはそれぞれ反対側に走り出す。僕たちはきっと上を目指す事になる。セラ達は下側。木造の床にコツコツした音を響かせて、僕達はハイジャックを目論む。『リア・レーゼ』に行き着くために!!

 第二百八十話です。

 え~とまず、すみませんでした。ようやくです。お待たせ? しました! てな訳で、今回はハイジャックを心に決めるまでです。次回は直ぐに上げます。ではでは。

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