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「とりあえず私はその人に会って話をしてみるよ」
「僕もいくか?」
あのフードのやつと面識あるのは僕だけだし、僕も行ったほうがいいのかな? とおもった。なにせいきなりテア・レス・テレスの人たちに囲まれて多分どっかに連れていかれたんだよね? きっと花の城とかさ……そんなところにいきなり連行されたりしてたら、不安になって頑なになってる可能性はある。
僕も別にあのフードを被った怪しいやつとは友達とかではない。知り合いってくらいだ。だから何ができるのか? はわかんないが、僕が顔を見せたら一応知り合いだし?
僕から話をきいてテア・レス・テレスが動いたってわかるだろう。それだけで目的はわかるだろうし、それがわかると「なんで自分が?」――って不安はなくなるだろう。会長の奴はテア・レス・テレスの人たちには詳しい事何もいってないからね。
ただその人物を見つけて欲しいと頼んだだけ……
(あれ? なら別に捕まえてる……とかじゃないのか)
勝手にテア・レス・テレスが囲んで同行を頼んだって思ったけど、そんな事会長は一言もいってない。確保したとはいってたけど……いや確保は既に接触してそうだよね?
「大丈夫。別に敵対するわけじゃないんだもん。わたしたちはちゃんと彼女に礼を尽くすから安心して。尋問とかしないよ」
「そんなのは心配してないけど……お前ら一応最大勢力だからな」
それだけで、個人は怖気づいたりするだろう。こっちにはその気はなくても、向こうは圧力を感じたりすると思う。まあそんなのを会長が考えないわけはないから、大丈夫だと思うけどね。
なにせこいつは人の心を開くのがめっちゃうまいやつだ。いつの間にかスルッと人の心に染み渡るように入り込む……そして友達になってしまうのが会長というやつだ。だからこんどあったら、もしかしたら会長とフードの奴は「マブダチ」になってるかもしれない。
「あっ、そうだ」
ここから離れる前になにか言いたいことがあったのか、会長が僕達に向きなおる。
「この石もそうだけど、他にも対策はあるの。そのための試作品があるから、鍛冶屋さんにあってみて」
そんな風にいって、会長は行ってしまった。対策……まあこの月の残骸はいきなり生えてきたようなものだ。偉い人たちはもっと別の対策を用意してた……ということなのだろう。




