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「それでどうするつもりなんだ?」
「そうね。取りあえずその人……ちょっと呼んでもらえない?」
「それってこの情報を教えてくれた?」
「うん、ダメ?」
そんなわけない。彼氏として、勿論セツリに協力するのは当然だ。そう彼氏としてね。
「いや任せろ」
とか言ったけど、よく考えたらあいつの名前も知らないぞ。フレンドになるとか、僕は自分からはそんなに言わないんだよね。ゲームだからって取りあえず組んだパーティーメンバーとは全員フレンドになる――とかいうやつもいるらしいが、僕はそんな事はやってない。
だってやっぱり友達って色々と大切じゃん? 自分にあうあわないとか、一回の経験でわかる物じゃないし? せめて2・3回はパーティーで一緒に冒険してから判断したいよね。
まあそんな事を言ってるから僕のLROの知り合いは一向に増えないのも知れない。でも別にそれが恥ずかしいなんて思ってない。いやいや、友達の数でマウントとるとかいつの時代だよって話だし? 僕は量よりも質を取ってるのだ。
だから当然だけど、あんな怪しい奴と「取りあえずフレンド登録しようぜ!」――なんて僕がいうわけない。
「えっと……」
「うん、わかったよ。こっちで探してみる。フードをすっぽりかぶった女性プレイヤーだよね? それだけだと結構いそうだけど……ほかに何か特徴ないかな?」
ふがいない彼氏ですまない。でもきっと会長ならどうにかするだろう。他の特徴か……実際別にないっていうか? いや、ただの真っ黒なローブというよりももっと深い色をしてたな……でもこれって特徴になる? 色の見え方とか感じ方って実は人それぞれらしいからな。
まあけど……その判断は僕がすることじゃないだろう。取りあえず伝えておけば、後は勝手に会長が判断してくれるだろう。大切なのは一つでも情報を増やしておくことだ。もしもそれを僕が言わなかったことで、万が一にでも見逃されたら? それだととても間抜けじゃないか。
だから知ってる事は全部言った方がいいだろう――と言う事で僕はそれも伝えた。
すると会長は紙にパパっと何やら書いた。それを覗くと、どうやら似顔絵? みたいなのをかいてた。まあ顔はそんなにわかってないからフードを被った女の正面絵みたいなものだ。
デフォルメされてて、肩口くらいまでの……ね。こいつ絵も描けたのか。そういえば小学生の時には沢山絵でも賞とか取ってた記憶がある。そのうち時間がかかるからなのか絵はあんまり描かなくなったんだよな。それよりも色々と忙しくなったからだろう。
でもささっとこのくらいかけるのなら、大したものである。僕なんて自分が描いたものを一斉に誰かに共有する? いやいや黒歴史になっちゃうよ。




