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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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ガタンゴトンの上

 イベントは終わった。僕達は黄昏色の世界の中、電車に乗って帰路を急ぐ。この日出会った人たちとは別れて、秋徒と愛さんと僕の三人。今日のイベントを振り返ってると、ちょっとしたことに気づく事がある。

 実際それがちょっとしたことかはわからないけどね。

 ガタンコトンガタンゴトン……体を定期的に揺らす振動がお尻に伝わる。窓の外から差し込む日差しが黄金色に染まり、外の大きなビル群を輝かせてた。

 僕達は今、戦場と化してたアキバの街から離れてる。イベントと言う名の戦いはもう終わったんだ。僕達はそれぞれの帰路を目指してる。


「はあ……」


 思わず漏れるそんなため息。なんかもう色々と疲れたよな。取り合えず今は座れる事に大感謝。いつもなら進んで吊革を取るんだけど、今日位はいいよな。


「大丈夫ですかスオウ君? やっぱり無茶し過ぎですよ」


 そんな優しい声を掛けてくれるのは僕の隣に座ってる愛さん。お姉さん系のお嬢様風美人な大学生……で、後秋徒の彼女。

 愛さんのそんな言葉に触発されてたか、一人だけ吊革に掴まって立ってる秋徒も僕へ向けてこう言った。


「そんなにヒドい状態なら、もっと早くに言えよな。言ってれば、俺達の分まで付き合わせなかったのに」


 今更なに言うかコイツ。言っただろあの時。


「そうだったっけ? 『やるか!』とかじゃなかったか?」

「うるさい。あの時は勝利直後でテンションが上がってたんだよ」


 まあだけど、やった事を後悔はしてないんだけどね。寧ろ秋徒達には感謝してるよ。実際あの時は『秋徒の野郎、僕がこんな大変な時にただ愛さんとキャハハウフフな事してたら、ぶっ殺す』位は思ってたけどね。

 でも二人は二人で、派手に動いてた僕達やハゲ共の裏で、コツコツやってたらしいんだ。二人とも心配はしてくれてたみたいだけど、下手に連絡しなかったのは、状況はスレでわかったし、それにイベント関連を進めて置く方が結果的にいいかな~って事だったらしい。

 まあ、その結果的にって奴が今回は功を奏したよ。だって実際、三つあるアイテムの内、手に入れれるのはあの時目の前にあった奴だけ……そう思ってた。他の二つなんて言っとくけど、あの時点じゃ考えもしてなかったもん。

 けど今考えるとそれは愚かというか、浅はかだな~と思わざる得ない。だってあの第一の奴らが出してきた装置。アイテムに干渉する奴ね。あれって、元々アイテムを指定して影響を与えるとかじゃない。

 あれは三つのアイテムにそもそも影響を与えてた訳だよ。そして三つのアイテムが干渉しあって不思議な出来事、それこそ神隠しとかを起こしてた訳だから、一個を止めた位じゃまだダメだった。

 ブリームスの住民を助けるにはさ、元から三つのアイテムを手にしなきゃだったんだ。消えてしまったジェロワさんや所長を助ける為にもさ、やらない訳にはいかないだろ。


「だからって限界越えしてる奴が居たってな。スマホを渡してくれれば俺達でもやれたのに」

「うるさい。あそこまでやっておいて、蚊帳の外になんかいけるかよ。僕にはちゃんとみんなが戻ってきたかを知る義務があったんだ」


 まあ義務は流石になかったけどさ、あそこまでやったのなら最後まで付き合いたくなるのが人の性ってもんだろ。最後の最後で仲間外れなんてそんなのイヤだ。


「イヤとかの問題じゃないですよ。スオウ君は無茶が過ぎるから、心配なんです。こんな所で倒れて貰っちゃ困るじゃないですか。

 このイベントのアイテムを集めるのは私たちにも出来たけど、スオウ君にしか出来ない事があるんです」


 僕にしか出来ないこと……ね。そんなのあったっけ? まあ愛さんが言いたいことはLROの中での事だろ。それは勿論わかってるよ。


「本当にわかってますか?」


 なんだか念を押してくる愛さん。真剣な顔が近づいてくると、彼氏じゃないのにドキっとしてしまう。そして異様に秋徒に殺意が沸くね。

 こんな美人で優しいお姉さん的人が彼女って……なんか羨ましいなおい! 僕は胸のドキドキを悟られないように平静を装いながら、コクコク頷く。


「わかってますよ。てか、今回でイヤという程それはわかりました。大切な時に自分で動けない悔しさったらないですよ。

 LROはHPがある限りどうにかなってたけど、リアルはそうもいかなくて。動けると心では思ってても全然体はついてこない。情けなくて腹立たしく……あんな思いはもうしたくないですからね」


 ホント、それだけは痛いほど痛感したよ。でもだからって無茶をしないようにするのはまた別の話だとも思うんだけどね。

 でもそれを言ったら、愛さんに叱られるから適度な所で口を閉じるのが上策だよね。


「それならいいですけど……」


 ほら、愛さんもちゃんと引いてくれた。やっぱり適度って大事だよね。


「まあお前に付いてきてくれてた人達が、あの後も協力してくれたのは大きかったよな。あれでお前結構楽してたし」

「背負われたスオウ君はなんだか可愛かったですよ。赤ちゃんみたいで」


 うっわ~~赤ちゃんみたいとか、言われても全然うれしくない。男として最下層みたいな感じ。まあ実際、僕はあれからずっと筋骨隆々の人に背負ってて貰った訳だから、弁解のしようもないけどさ。

 赤ちゃんはイヤだ、赤ちゃんは! 


「俺はそんな可愛い印象なんか消えてるな。あの奇抜な格好した子もそうだけど……特にあのシスターの印象しかないかも」


 そんな事を言った秋徒は、思い出したのか、ブルっと体を震わせた。


「あの方はとても頼りになる方でしたね。あの人のおかげで、あれ以降怖い人達が襲ってこなくなりましたし」


 まあそうなんだけどさ……不思議と愛さんってラオウさんを見てもさほど驚きはしなかったんだよな。肝っ玉が座ってるのか、それとも何か理由でも? 


「理由というか、別に恐れる事なんか何もないと思いますけど。どんな姿形で格好をしてても、今までの行動とかを知れば恐れる事なんかないってわかります。

 あの人はスオウ君を助けてくれてましたし、LROをやってれば姿が色々おかしい人なんて一杯じゃないですか?」

「いや、それはわかるけどさ、向こうはゲームなんだよ愛。リアルであれだけのインパクトがあることが凄いんだ」


 はは……全面的に秋徒に同意してやろう。LROはモンスターも魔法もある世界。何が起きるのかどんな生き物が居るのかにもワクワクと元からしてるわけだよ。

 だけどリアルの事はすでに齢十数年でもそれなりにわかるじゃん。だから出会う人は人以外にあり得ないと思ってる訳だけど……実際最初見たとき、人って思えなかったもんラオウさんの事。

 超失礼だけど、でも今はちゃんと受け入れてるから言えること。リアルにもああ言う存在がいるんだって勉強できたよ。

 まあ初対面だった僕のSOSにまで駆けつけてくれたあの人に、これ以上失礼な事なんか言えない。本当に世話になったしね。

 それに、向こうも満足してくれてた。今日のイベントはお互いの利益に繋がったと思う。僕達はアイテムを、ラオウさんはLROの体験をちょびっとだけ出来た……と思う。

 本物とはかなり違う方式だけど……だけど彼女はイベント終了の別れ際にこう言ってた。


【楽しかったです。今日のこれよりも全然派手に、LROでは暴れれるんですよね? とても興味が沸きました】


 実際こんな比じゃない位に暴れれるよね。魔法もあるし、技は派手だし、戦争みたいな事だってマジで出来るし……強面のモンスターも一杯。

 きっとラオウさんは満足してくれると思う。てかLROに一歩足を踏み入れて感動しない人とかきっといないよな。絶対にこう思うもん。


「とうとう人類は、ここまで来たか……」


 ってね。マジで僕は思った。だから絶対にラオウさんも……窓の外に見えるビル群がどんどん離れてく。だけど直ぐに次のビル群が見えるんだからやっぱ都心は凄いよ。黄色く染まる世界。黄金色の光がキラキラと輝いて見える時間帯。

 なんだか今日は長かったな。光の中にそんな今日の光景が見える気がする。秋徒と愛さん主導で手に入れれた第二のレアアイテム【バンドロームの箱】。実際ハゲ共がいなかったらこんなにスムーズにいけるんだなって思ったよ。

 まあ他にやってた人達も少しは居たみたいだけど、僕達とハゲ達の競争に熱が行ってたからね。実際、それが終わると、自然とイベント事態がちょっと縮小したのかもしれない。内容じゃなく熱がって意味でね。

 まあ競合する相手が居なかった訳じゃないけど、きっと秋徒と愛さんが僕達の裏で一番、もう片方のイベントを進めてたんだ。

 だから正攻法でちゃんとやれた。まあ数の妙が今度はこっちにあったしね。それになんだかもうそこら辺の参加者とかの意識が変わってたと思うんだ。

 自分達がレアアイテムを手にする事は難しいと思ったのかどうかはわかんないけど、今度は制作側に対抗意識を燃やしたみたいだった。

 残り時間で全てのレアアイテムを表す事。そんな意識で一致してたみたいなさ。


「まあアレだろ? お前達の戦闘のせいだよアレは。運良く……本当に運良くお前は勝てたけど、人間の欲望を表したようなアレは、ちょっとやりすぎなイベントだろ。

 しかも相手ヤクザって……お前じゃなかったら絶対に立ち向かわずに終わってたっての。

 だからこその制作側のへの対抗意識が【ふざけんなぁ!】と出てきたんだよ」

「ま、誰もが協力してくれたような物だしな。あれはラッキーだった」


 電車の振動を感じながら僕はそう言う。ホント色々とラッキーだった。


「そう言えばあのスレのスレ主は凄かったですよね。情報収集の度合いがそこら辺のスレとはひと味もふた味も違いました」

「あれはもう信仰化してたしね。まあ一番世話にはなったよ。けど、最初は僕達が知る情報ばかりバンバン上げて……実際アイテムの争奪戦が激化したのはアレが原因だよ」


 愛さんの言葉に僕は愚痴をこぼしつつそう言った。まあ結局は感謝しなきゃ何だけどね。一番世話になったし、その信者の人達に。

 まず彼らがいなかったらハゲ共に勝つことなんか無理だったしな。


「けれど、争奪戦が良い具合にイベントを盛り上げたのも事実ですよ。それに自分だけが得たいはずの情報を開示するって所があのスレを伸ばしたきっかけでしょう」

「まあ、それはそうだろうけど……実際僕的には微妙なんだよな。感謝はしてる。だけどどこかに上手く飲み込めない物があるようなさ。

 そもそも豚の饅頭なんてふざけてるよな。なんだそれは」


 だけどまあ、そんな事行ったらネット上での名前なんて誰も彼も結構ふざけてるからな。意味ないか。でもホント、なんかこうモヤ~としたものがあの豚の饅頭さんにはある。

 なんなんだろうこれ? どこか素直になれない。実際一緒に苦労して集めた情報を開示されたメカブも、最後までその人の事に対しては微妙な反応だったもん。

 まあだけど全て今更。顔も見えないし知らないし、気にし過ぎる事もないか。ネットでの出会いなんてそんなもの。

 そう思って思考をまとめようとしてると、そこで愛さんが意外な事を言う。それは意味が無いと思ってたその人のハンドルネームの事。


「う~ん、豚の饅頭ってのはある花の別名じゃないでしょうか?」

「花ですか?」


 僕はありのままに返した。愛さんは相づちを打ちながらスマホを操作してる。そして見つけたのか、画面を向けながらこういう。


「ほらこれです。豚の饅頭って言うのはですね。【シクラメン】の別名ですよ」

「へぇ~シクラメンですか。ん? シクラ……メン?」


 おい、なんか引っかかるぞ。特にイヤなセンサーにビンビンと。


「シクラ……メ……ン……シクラ……シクラ……シクラ――ってやっぱあいつかよ!?」


 僕は立ち上がれないから取り合えず自身の太股を強く叩いた。


「いっつぅぅ」


 涙目になりそう。弱ってる所に自分で追い込みを掛けちゃったよ。だけど成る程。これで全部繋がったぞ。豚の饅頭がどうして僕達しか知り得てない情報をピンポイントに上げたのか。

 やっぱり内側に反逆者が居たって事かよあの野郎。本当にアイツに踊らされてた形だな。今やいくら呼びかけてもうんともすんとも言わないし。

 勝手に出てきて、色々ひっかき回して、そして勝手に帰る。本当にまさにシクラだよ。どっかに何かが引っかかってた理由がわかった。

 それはきっとシクラだったからだ。今確認しました。僕はアイツが大嫌いです。絶対にあの野郎僕達が四苦八苦してるのを見てほくそ笑んでたに違いないよ。

 くっそ、まじで良いように踊らされたな。


「どうしたの?」

「おいおい、頭までこの暑さにやられたか?」


 愛さんは僕の身を案じてくれてるのに、秋徒の野郎のこの反応ときたら……たく、親友がいのない奴だ。てか、どうするか? 言った方がいいのかな? まあもういないっぽいし、別に言っても行いよな。

 イベント中にシクラの存在を隠してたのは、もしかしたらメカブがセラで、そうだったら画面の向こうでも一緒に行動するのは不味いと思ったからだったんだもん。

 でもその気遣いはもういらないだろ。逆に伝えて置くべきかも。


「違う。実はだな……」


 僕は途中で言葉を切って、隣に居る愛さんを見る。よくよく考えると、愛さんもシクラには一杯一杯振り回された訳だよな。ガイエンの今の状態はアイツに利用された結果。やっぱ言わない方がいいのかも。


「どうしたんですか? 私の顔に何かついてますか?」


 そう言って猫みたいに顔をこする愛さん。何この人、もうどっちかと言うと大人なのに可愛いぞ。お嬢様っぽいから無邪気さが残ってる。上品さの中に無邪気さ。最強だな。

 無性に秋徒に腹が立ってくるよ。てっ、今はそんな事じゃない。彼女にシクラの事を伝えるかどうか、それが問題。

 まあそれなら秋徒の事も考えた方がいいんだろうけど、秋徒の気持ちなんて配慮しないよ。取り合えずいいんじゃない? と思ってる。愛さんは繊細そうだから気を使うわけだもん。


「いや、何も付いてないよ。いつも通りの綺麗な顔です」

「あっ……はい。ありがとうございます」


 ニコっと黄昏色に映える笑顔をくれる愛さん。やばい、神々しいとはこの事を言うんだね。時間帯がもの凄い言い演出をしてくれてる。

 愛さんの髪の毛一本一本が輝いてる。柔らかな光に、柔らかなその笑顔が映えてる。


「おい、サラッと人の彼女に何言ってんだお前」


 そこで何故か不機嫌そうな秋徒の声。別に素直な感想を述べただけだぞ。他意はない。


「お前そんな簡単に女の人に綺麗とか言える奴じゃないだろ! それもなんでよりによって愛なんだよ!」


 何をそんなに吠えてるのか。秋徒は電車内で叫んでる。何ともマナーの悪い奴。僕が愛さんを狙ってるとでも思ってるのか?


「まあまあ落ち着けよ秋徒。確かに僕は簡単に綺麗とか可愛いとか言わないけど、なんて言うか愛さんには言いやすいんだよね。

 お前の彼女だからかも。だから安心して言える気がする」

「うれしくねーよ! 俺の彼女だから自重しろ!」


 折角素直に言ったのに、心の狭い奴。そんなに互いの絆が信じられないのか? そんな安っぽい物だったっけ二人の繋がりはさ。

 すると隣から白い腕が伸びる。そんな白い手が秋徒の手を取った。


「大丈夫ですよ。もっともっと信頼してほしいですね。私はそんな軽い女じゃないですよ」

「愛……」


 う~んやっぱり、こういう所は愛さんがお姉さん的だな。秋徒の奴、手を握られただけで明らかに赤くなってるし、ホント案外純情な奴。

 てか、まだ手も握ってなかったのかな? 秋徒の反応を見る限り、それもあり得そう。


「それに私だって同じです。スオウ君だから、私だって安心して受け止めれるんですよ。それはちゃんと秋君が居るからです」

「そっか……そうだよな。はは、見たかスオウ? これが俺達の絆だぜ。お前には壊せないぞ」

「あっそ」


 だから別に壊そうとか思ってないっての。寧ろ僕は応援してるぞ二人の事。秋徒はさ、愛さんの事になると被害妄想に走り過ぎなんだよ。

 まあ愛さんは美人でお嬢様で、ちなみに年上ってのもあって、吊り合いがとれてないとか常に思ってるようなんだよね秋徒の奴は。

 だから被害妄想が加速する。自分よりも他の誰かに靡いてもおかしくないってね。でもそれならさ、そもそも秋徒なんて選ばないと僕は思うんだよね。

 愛さんクラスなら、言い寄って来る男なんて五万と居るだろうに、その中で自分が選ばれた事にもっと自信を持てば言い物を……いままで言ってきた「俺ってイケイケなんだぜ」的な事はどこへやらだよ。


「で、言いかけ事は何だったんですか?」


 自然に流されたと思ってたら、再びぶり返された。しょうがないから、ここはさらっと軽い感じでいこう。そう思ってたら察しがいい愛さんは僕の反応とシクラメンなる言葉で答えにたどり着いてたらしい。


「もしかして、あのスレの主の豚の饅頭さんはシクラだったんですか?」

「何!? そうなのかスオウ?」


 驚愕と共に、こちらに詰め寄ってくる秋徒。僕は頷くしかない。


「まあ僕もさっき気づいたわけだけどね。アイツ僕のスマホを侵略してイベントに参加してたんだよ。まあ今はもういないみたいだけど」

「一体なんの為にでしょう?」

「僕が四苦八苦してるのをみたいとか言ってましたよ」


 それはきっと十分みれて満足しただろうな。悔しいけど。


「それだけでしょうか? アレは意味の有ることを意味のない様にするのが上手いですよ。あのふざけた性格してますから」


 確かにそうだね。けどそこまで愛さんが嫌悪感を出して言うとは……相当だな。


「まあだけどアイテムは三つとも俺達が手に入れた訳だし、アイツが何をしようとよかったんじゃね?」

「そうですね。今は幾ら考えても疑う事しか出来ません」


 プシューと電車の扉が開いて閉まる。僕たちはホームに降りたって、乗り換えの場所までを歩く。そして再び電車へ。

 そうそう、さっき秋徒が言ったようにアイテムは全部手に入れた。最後のアイテムは、二個のアイテムを手にした人が対象らしく、おかげで誰とも競争する事は無かったよ。

 ブリームスの空に三つの紋章が現れて、その交わりの下にそのアイテムが現れた。僕たちは無事にそれを手に入れて、イベントは無事終了。

 最後にはジェロワサンも所長もみんな元に戻ってた。死んだ人は流石にそうはならなかったけど。だけどめでたしめでたしだった筈だよ。

 メカブの正体は結局わかんなかったな。別れ際に直球で聞こうとしたけど、唇を指で押さえられて「女の子には秘密が必要なのよ」とか言われた。


「私は私、メーカーオブエデンのメカブね! 良かったら覚えてなさい。てか、忘れたら許さないからね! その時は私の千寿がどうなるか……覚えとくといいわ」


 やっぱり最後までメカブはメカブ。てか、結局メカブってあだ名気に入ってるじゃん。ま、一応覚えておいてやるよ。


 電車が進み、次第に僕たちの街が近くなる。だけどその数歩手前の駅で愛さんとはお別れ。だけどそこで何故か秋徒も降りた。

 まあ少しでも長くいたいんだろう……と思ったけど、秋徒は愛さんに怒られる。


「ダメですよ秋君。こんな状態のスオウ君を放っておくなんて許しません。ちゃんとお家まで送り届けてください」


 だってさ。てな訳で、ふくれっ面の秋徒の肩を借りて、僕はようやく戻ってきた。視線が微妙に気になるけど、しょうがないよな。

 改札を抜けて、タクシーでも拾おうかと考えてると、秋徒がこう言った。


「あれって日鞠じゃないか?」


 指された方を見ると確かにそこには日鞠が居た。何やってんだアイツ? てか、誰かと話してる。男の人と女の人……どちらもどっかで見たこと有るような……すると視線を感じたのか、日鞠が僕達に気付いた。


「あっ、スオウ! お~~い!! 秋徒もついでにおお~い」


 投げやりな感じに呼ばれた秋徒は渋々、日鞠の方へ。近づいたら気付いた。そっか、このお二人は確か、あの夜の……お墓であった夫婦。二人は僕達にも丁寧なお辞儀をしてくれる。

 第二百七十四話です。

 ようやく長い一日が終わろうとしてます。だけど次回にも半分くらいは日鞠との時間が入るかな。それでようやく一日が終わる感じ。長かった。だけどようやく次へ進めます。

 てな訳で次回は木曜日に上げます。ではでは。

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