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「これなんかどうだ?」
「そうですね。まあちょっとあるし、問題ないでしょう」
「本当にこんなんでいいのか?」
僕は疑ってる。彼女の言葉をね。彼女はいった。今このLROで頭を悩ませてる問題。それの解決策がある……と。今このLROは地上と月、で対立してる。そして世界樹という巨大な木がつき側に奪われた。
それによって地上側の全ての人達には天井が、上限ができてしまった。それはこれ以上強くなれないと上から押さえつけられてるようだ。だからこそ皆がその制限を取っ払えるようにと世界樹の奪還を望んでる。
でもその奪還するためには力が必要だ。そしてその相手が月側なんだよね。こっちは上限まで設けられたのに、月側にはそんなのはない。だからこそ、その差を埋める何かを皆が必死に探してた。
そしてそれを提示してきたこいつ。
僕達は早速あのファンシーなカフェからフィールドに繰り出してた。ここは別に難解なダンジョンの奥地……とか、森の奥深く……とかいう場所じゃない。レスティアの目と鼻の先といっていい門の外だ。言うなれば初心者とかでも安心して狩りができる場所というね。
そんな場所のモンスターは正直僕には敵にはならない。上限が設けられたからといって、流石にここらへんの敵には手こずるはずもない。なのでそこらの雑魚は無視してる。必死に狩りをしてる初心者さんたちの獲物を奪うのは気が引けるからね。
じゃあ僕達は何をやってるのか? となるだろう。それは適当な石を見つけてるんだ。適当な石ってなんだよ……と思うかもしれないが、実際適当な石なんだからしかたない。
そもそもこいつ……
「これは?」
「オーケーです」
「これは?」
「それもいいですね」
「じゃあこっちは?」
「合格です」
という肯定の言葉しか言わないんだもん。適当に落ちてる石を拾ってるだけなんだけどな。
「なんですかその目は? 疑ってます? 大丈夫ですよ。全てに月の残滓があります」
本当に? 僕には何も感じないんだが? そう、僕達が探してるのは月の影響を受けた物体だ。月の石があるように、石には月の影響が残りやすいのかもしれない。僕達は石を中心に集めてる。
彼女がいうには、月の影響が残ってさえいればいいらしい。それならじつは全ての物体が対象になりそうな? だって月の光……それをこの地上はずっと受け続けてきたはずだからだ。