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「それで……なに?」
僕は取りあえず聞く姿勢って奴をとってやる。まあちゃんと向き合っただけだけど。すると目の前のフードを被った怪しい人物は周囲をキョロキョロとして「はぁ、やれやれ」――みたいな、そんな仕草をとった。
「私は対価は求めません。けど、ここは話しをするのにも、聞くのにもふさわしい場所ですか?」
なにか言い出したぞこいつ。身長的に人種の女の子……だと思うんだけど、そう思うとやっぱりなんか妖しさの方が増してきたような? だって人種って一番オーソドックスな種であって、神秘的な種か? と言われると一番ないみたいな? まあ実際、種で分けられてるのはただのゲームの都合上のバリエーションだと思うんだけどね。
もちろんこの世界、LRO事態にはちゃんとした成り立ちがある。歴史だって続いてたきた……とこの中の人たち、すなわちNPCは思ってる。けどそれはあくまで設定に過ぎない。昨今のゲームだと色々な種族が最初からいて、その中から自由に選んで新たな冒険を始めるなんてのは定番だ。だから取りあえずオーソドックスな見た目の種を用意してみました――的な?
まあウンディーネとかはなかなかに攻めてると思う。モブリ? あのマスコット的のがわいらしさのキャラってどんなゲームには1枠は有りえるから、それは別に……である。けどウンディーネの肌の色が青いのは攻めてるだろう。
確かにキャラとして肌の色に特徴がある存在ってのはあると思う。けどLROは今までのゲームとは違う。それこそ根本的に……だ。
今までも青だったり紫だったり緑だったり、そんな肌の色のキャラはいただろう。でもそれらは画面越しに見るだけだった。でもLROでは確かにそこに存在を感じるのだ。ちゃんといきてるし、なんならそのキャラを選ぶという事は自分が青色の肌のキャラになるのである。
それって結構抵抗感があるよね。事実ウンディーネはプレイヤーが一番選択しないキャラになってる。時々公式からどれくらい種にプレイヤーが偏ってるかという情報が出るのだ。
それによれば一番は人種であって、一番下はウンディーネだった。それは今の今までかわってない。
「わからない人ですね。私はケーキを所望ですよ。しってますか? レスティアにある『スイーツ・デ・パラン』は絶品らしいですよ」
ようはそれ奢れという事か……一体いくらくらいするんだろうか? まあけどLRO内では僕だってそこそこ小金持ちではある。だってモンスターを倒したらお金が手に入るんだよ? まあ直接的に……ではなく間接的にだけど。でもこれ以上ないくらいに簡単にお金が手に入るわけで、スイーツくらいは問題ないだろう。
「それでそれってどこにあるんだ?」
レスティアにはよくいるけど、別に僕は食事をしたりしないからな。だってこっちでも食べてリアルでも食べるのきつくない? そういうわけで僕は極力LRO内では食べないのだ。
なのでそんなスイーツ店なんて知る由がない。