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「ん、これって……」
「どうしましたか?」
妖精王は結構鋭い。いや、そもそもが私なんかと違って妖精王はそれこそ上に立つようなやつとして設計して生み出されたような存在だと思うし? だから鋭いのは当然かも知れない。
あんまり鋭いとちょっときもいが……私があんまり月事態に興味ないってのはきっと妖精王は気づいてるだろうしね? 私と妖精王の月への熱量は違うのだ。私はあくまでゲームとして楽しんでるわけだけど、妖精王もっと真面目? な感じだ。
だから本当ならもっと私に対してイライラしておかしくない。私は一応は月の女王としての立場だし、一番に月の事を考えなくちゃいけない立場だ。でもそれで何やら妖精王に小言を言われたことなんてない。
彼は常に『すべてお任せください』――というスタンスである。私もそれがとても便利だから助かってる。そんな私だから、ちょっと興味が湧いた……みたいな声の変化に妖精王は気づいたのかもしれない。そもそも妖精王だって同じ画面を見れるのだ。
妖精王はNPCだ。普通はNPCはウインドウを開く……なんて事はできない。それが出来るのはプレイヤーの特権だ。けどこの月のウインドウは特殊だ。通常ならウインドウは個人に対して行うものだ。
だってそれはそのプレイヤーの個人情報を表示するものだからだ。ステータスとか称号、スキル……それらはすべてLROでは重要な個人情報だ。だから普通はウインドウはプレイヤー……ましてや本人にしか開けない。他人のウインドウを開けたらそれこそ大問題である。なにせその人のすべてがそこに詰まってる……といっても過言じゃないからだ。
でも月のウインドウはそういうのじゃない。もっと公……というのも違うのかもしれないけど、月のウインドウは月の発展をするための管理画面だ。いろいろな建築を管理したりリソースを見たり……そんな画面なわけだ。だからこそ、そこそこ広く、私が認めた相手にはそれをイジれる権利ってやつを与えられる。
私は自分で全てをするよりも、うまくデキる人がやったほうかいい……の精神をもってる。だって私はそんなに自分の能力が高くない……としってる。単純に言えば、私はバカだ。私の強みは顔の良さしかない。
けどそれもLROではそこまで輝く要素ではない。だってそこら中に美男美女が溢れてる世界だからだ。一人で全部やる……なんてできるわけない。私は会長じゃない。彼女ほどの頭と能力と行動力があればすべてを一人でやることも出来るんだろう。
でも私にはむりだから……
私は画面を見てる。そして眼の前の妖精王をみる。これに気づいてない? 彼が? いや、これがでてくるタイミングってやつもあったのかもしれない。
「これを見て」
私はそう言ってウインドウをスーと彼の前に動かした。そしてそれをみて、妖精王は驚愕する。
「これは!?」
「これって使えるよね?」
私は可愛らしく小首を傾げる。これは確実に使えるとわかってる。でもうまくいったら……地上の人々、そしてプレイヤーの皆々様にはごめんなさいしなきゃいけないかも? いや、すべての利益を独り占め出来るとなったら地上すべてに対して「ザマァ」したほうがいいのかもしれない。
だって戦いとは真剣であったほうがいいだろうからね。その結果なら、きっと皆受け入れてくれるだろう。