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「ふふ、大丈夫ですよ」
「な,なにが?」
私は興味なさそうにしてるはずだが、妖精王は全てを見通してますっていう風にほほ笑んでる。その微笑みはとても色っぽく、普通の女の子たちなら、その微笑みだけで恋に落ちてもおかしくない。
それだけの破壊力って奴が妖精王にはある。でも今の私にはその甘い……甘すぎる顔が恐ろしいっていうか? 背中に冷や汗が流れそうだよ。
「一億コストをためないといけないのです。あまり新規の物を作ってる暇はないでしょう」
ほっ……と私は息を吐く。確かにそうだ。世界樹の苗木を手に入れるためには一億コストの支払いが必要なのだ。はっきり言って今は数万くらいしかない。この前の大侵攻でかなり放出してしまったからだ。
ここから一億? かなりの節約が求められるだろう。それでも地上の皆々様が攻めてくる前に間に合うかわかんない。いや、これまでのコストの生産ペースを考えたら……
「間に合うの?」
「難しいかもしれません」
妖精王は目を伏せた。うわっまつ毛ながっ……と思った。いや、私も大抵長いらしいけどね。自分ではよくわかんないが、私は自分が抜群にかわいいというのは自覚してる。けどだからってそんな部分部分を把握してるかと言われたら……全然してない。だって私はメイク……とか? あんまり興味ないし?
なにせ私は素で抜群にかわいいのである。それなのにメイクってあんまり意味を成してないような気がするのだ。たがら私がやってるのは日々のお肌の手入れくらいである。まつ毛とかアイテムでくるんとさせる必要なんてないし?
私のは元からくるんとしてるのだ。だから必要と思ったこともない。まぁ今は私が矜持をもってすっぴんを貫いてる……というのはいいだろう。問題は結局の所、一億コストをためる事は出来なさそう……と言う事だ。
「もっと時間があれば……ね」
「そうですね。時間があれば間に合うでしょう」
「具体的にはどのくらいの時間があったら一億コストいきそうなの?」
「そうですね。今のペースを加速させたとしても、三か月でしょうか」
はいズコー! である。いや、ズコーしてないけどね。でもちょっとこの大きな玉座からお尻がずり落ちそうにはなった。踏ん張ったけどね。大殿筋に力を込めたよ。けどさ……まさかそこまで……とは思ってなかった。三か月って全然なんだけど。全然全く時間的に足りないよ。
だって会長たちがここに攻めようと、攻勢を仕掛けようとしてる時はわかってるのだ。それは次の週末、土曜日から日曜日にかけての夜に行われる予定だ。今は夏休みだから学生的にはいつだっていいだろうって思うけど、当然だけど夏休みは学生の特権なのだ。
それ以外の人たちは普通に働いてたりするわけで……そういう人たちのお参加も見込むとなると、やっぱり土日が候補に挙がる。LRO世界の人たちにとっては一刻も早く……と思ってるかもしれないが、これはある意味でみんなが参加できるイベントみたいな側面もあるのだ。
だからこそ、会長はより沢山の人たちが参加できるようにってその日にしたんだろう。それはわかる。それはわかるけど……まあつまりは全く時間が足りないという事だ。