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「懸念がありますか?」
「それは……ね。だってこんなのおとぎ話のことじゃない。それに管理とか私だってしたくないし?」
最終的にきっと月は負けるだろう。それで月が落ちるのか、どうなるのかはわかんない。けど、それならまあそこらへんは考える必要はないのかもしれない。でも一応私は月の女王様。そして世界の敵である。
そんな私が負けるのを望んでるってのはダメだよね。やりたくてこの地位にいるわけじゃないんだけど……既に私の姿で色々と世界に向けて宣戦布告とかしてるからね。実は私がやる気ないってきっと皆さんが拍子抜けしてしまうだろう。
だってほとんどのプレイヤーが月、攻略に向けてその力を研いでる。世界樹がこっちにあるせいで、上限……いや天井にぶつかるように全てのプレイヤーやらあの世界の存在は押さえつけられてる。それがないのは私達月側の存在だけ。
それでもできることはあると沢山のプレイヤーは頑張ってる。全ては諸悪の根源である月の女王である私を倒すためだ。
「ねえ」
「はい?」
「私はここでやってくる人たちにどう声をかけるかを考えるので大変なの」
「なるほど……」
いきなり何言ってるんだこいつ? とか妖精王は思ってもおかしない。月の支配を絶対にしたいから妖精王はこの月に第一の世界樹を……と言ったんだろう。分かる、それは大切な事だ。
はっきり言って漫画とか映画とかでもいいけど、何が興ざめかってそれは敵がアホになることだ。最終的に正義が、主人公が勝つのは別にいい。そういうものだからだ。でも、間抜けな敵に勝ってもカタルシスも達成感だってない。
それになにより、面白くない。だってアホな敵なんておかしい。敵も全力できて、そして主人公サイドも全力をだす。知恵と力のぶつかり合い。それが面白いわけで……ここで私がこの第一の世界樹にゴーサインを出さないのはただの間抜けだ。
だって盤石にしないと……それをしないのはアホである。
「それは大切なことですね。ならば、私が世界樹の件、やりましょう」
「そうね。そうしてちょうだい」
これを引き出したかった。敵側がアホにならないように、けど自分はあんまり積極的に動きたくない。ならばどうするか? 委任である。押し付け……といってもいい。いやいややる気ある奴がやればいい。至極当然のことではないかな?
「一つお願いが」
「なに?」
「世界樹の苗木の為にコストをためないといけません。それを最優先にする許可をください」
「それはしょうがないね。それでそのコストっていくらなの?」
今までで一番多かったコストは何だったかな? と私は思い出そうとする。けど出てこない。でも確か5千とか7千とか……そんなのだったと思う。
「1億」
「はい?」
今なんてった? この歳で耳が遠くなったかな? そんな事をおもってたけど、妖精王はまっすぐにこっちをみてもう一度はっきりといった。
「一億コストが必要です」
――とね。